大柴胡湯の効果は?ダイエットにも効く?副作用や注意点も解説

肩周りが凝る体格の良い女性

大柴胡湯(だいさいことう)は、体格がガッチリした人の肥満症に使用される漢方薬で、特に「ストレス太り」による症状に効果的です。また、高血圧・肥満に伴う肩こりや頭痛、胃腸症状、不眠症やイライラ症状などにも効果が期待できます。

しかし、服用する際には副作用や、服用の注意点について確認しておくことが大切です。

この記事では、大柴胡湯の効果や副作用などについて薬剤師が詳しく解説します。漢方薬の服用について不安な方はYOJOの薬剤師にご相談ください。

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大柴胡湯とは

漢方生薬

大柴胡湯(だいさいことう)とは体格がよく体力もある方で食欲不振、悪心・嘔吐、便秘、イライラ、不安感などを伴う人に向いている漢方薬です。以下では、大柴胡湯の成分やどのように効くのかを解説します。

大柴胡湯の成分、効能・効果

大柴胡湯は以下の8種類の生薬で構成されていて、肥満症や高血圧・肥満に伴う肩こりや頭痛の症状に使用されます。

構成生薬

柴胡(さいこ)、半夏(はんげ)、黄芩(おうごん)、芍薬(しゃくやく)、大棗(たいそう)、枳実(きじつ)、生姜(しょうきょう)、大黄(だいおう)

効能・効果  [1]

比較的体力のある人で、便秘がちで、上腹部が張って苦しく、耳鳴り、肩こりなど伴うものの次の諸症:胆石症、胆のう炎、黄疸、肝機能障害、高血圧症、脳溢血、じんましん、胃酸過多症、急性胃腸カタル、悪心、嘔吐、食欲不振、痔疾、糖尿病、ノイローゼ、不眠症
※市販で売られている一般用医薬品の中には「肥満症」の効能・効果が書かれているものがあります。

大柴胡湯の効果の仕組み

気血水

漢方医学では、「気・血・水」が体内をバランスよく巡ることで健康が保たれると考えられています。このバランスが崩れ、量が不足したり流れが滞ると、さまざまな不調が現れるとされています。

さらに、「肝」という概念も重要で、肝は自律神経や血液循環を調整する役割を担っています。肝はストレスの影響を受けやすく、不調になると気や血の巡りが悪くなります。気の巡りが悪くなると、胃腸の不調、便秘、代謝の低下が起こり、肥満につながることがあります。また、イライラしやすくなったり、不眠を引き起こすこともあります。一方、血の巡りが悪くなると、頭痛や肩こりといった症状が現れることがあります。

大柴胡湯は、気の巡りを整えることで肝の働きを改善し、その結果、気や血の流れが良くなります。これにより、肥満症や肥満に伴う肩こり、頭痛、便秘などの症状を改善する効果が期待できます。

大柴胡湯の効果

体格の良い女性

大柴胡湯を服用することで、具体的には以下のような効果が期待できます。

肥満症

医療用漢方製剤の大柴胡湯には、「肥満症」という効能・効果の記載はありませんが、脂質代謝を改善し、余分な脂質の吸収を抑える働きが報告されています。[2] この作用により、体重減少への効果も期待されています。

大柴胡湯に含まれる柴胡(さいこ)や黄芩(おうごん)には、ストレスによる精神的な緊張を和らげる効果があり、これによりストレスが原因の過食を抑える働きがあります。また、枳実(きじつ)は気の巡りを良くし、胃腸の働きを整えます。さらに、黄芩と大黄(だいおう)の組み合わせには、胃熱を冷ます作用があるとされています。胃熱とは、胃や上部消化器系に熱感が生じ、胃炎や口内炎が起こりやすい状態のことを指します。西洋医学的には、胃炎によって食欲が亢進することが知られていますが、大柴胡湯はこのような胃炎による過剰な食欲も鎮める効果が期待されます。[3]   [4]

肥満症の治療に使用される漢方薬についてはこちら▼で解説しています。

脂質代謝異常症

大柴胡湯には、脂質代謝を改善する効果があるため、脂質代謝異常症の治療にも役立つとされています。西洋薬のプロブコールと大柴胡湯を併用することで、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の低下を防ぎながら、トリグリセリド(中性脂肪)を減少させる効果が期待できるとの報告もあります。[5]

高血圧症

高血圧の治療では、西洋薬だけでは肩こりやめまいといった随伴症状が改善しにくいことがあります。そうした場合、漢方薬を併用することで、血圧を下げるだけでなく、これらの症状の改善も期待できる場合があります。

特に、大柴胡湯には自律神経を整える効果がある柴胡(さいこ)が含まれており、ストレスを多く感じやすい方の高血圧に効果が期待されています。また、軽度の高血圧症の場合で西洋薬が必要ないケースでは、食事療法と漢方薬を組み合わせることで、症状が改善することも少なくありません。

以下のような症例もあります。

患者さんの訴え「血圧が高く、ずっと降圧薬を服用しています」

もともと神経質で、いらいらしやすい。ひどい肩こりで、のぼせやすい。肝鬱化火と見て大柴胡湯を使用。3ヶ月後に血圧が少し下がり、降圧薬が減量となった。6ヶ月後には、いらいらや肩こりも解消し、降圧薬は不要となった。(引用:医師・薬剤師のための漢方のエッセンス 幸井俊高著

胃腸症状(悪心・嘔吐、食欲不振)

大柴胡湯に含まれる柴胡と黄芩には、炎症を抑える消炎作用や、自律神経の緊張を和らげる鎮静作用があります。また、枳実には気の巡りを整え、胃腸の働きを良くする効果があります。
さらに、生姜と半夏の組み合わせには嘔吐を抑える作用があり、生姜と大棗の組み合わせには胃腸の消化吸収機能を整える効果があります。これらの生薬が相互に作用することで、悪心や嘔吐、食欲不振といった胃腸の不調を改善することが期待できます。

大柴胡湯以外に、食欲不振に効果のある漢方薬についてはこちら▼の記事をご覧ください。

不眠症、イライラ症状

大柴胡湯はイライラ症状からくる不眠症に効果があります。大柴胡湯に含まれる黄芩にはバイカリンという苦味成分が含まれ、鎮静作用があります。

不眠症やイライラ症状についての関連記事はこちら▼

以上、大柴胡湯の効果についてご紹介しました。漢方薬は体質に合ったものを選んで服用することがとても重要です。体質に合う漢方薬を飲めば効果が期待できますが、合わないものを服用すると、症状が改善しないだけでなく、副作用が現れる可能性もあります。
漢方薬を服用する際は、必ず自分の体質に合っているか確認してからにしましょう。ご自身の体質がわからない方は、YOJOの体質チェックをぜひお試しください。

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大柴胡湯が合う人・合わない人

女性薬剤師

大柴胡湯が合う人は、体格が良くて便秘がちな人です。具体的には以下の症状が挙げられます。

  • イライラして便秘気味
  • イライラして不眠症
  • 肩こりや耳鳴りがする
  • 食欲がなくて気持ちが悪い、口の中が苦い・ねばる
  • 脇の下から脇腹のあたりが苦しい、圧迫感がある
  • 高血圧傾向
  • 肥満傾向

一方、大柴胡湯が合わない人には以下の特徴があります。

・妊娠中
・胃腸が極端に弱い
・下痢をしている

ダイエットに使用される大柴胡湯以外の漢方薬

ダイエット

大柴胡湯は、ストレスによる過食が原因で太ってしまう「ストレス太り」の方に適した漢方薬ですが、それ以外にもダイエットに用いられる漢方薬があります。これらは、体質や体格、体力の有無、症状に合わせて選ぶことが大切です。

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)

体格が良く、お腹に脂肪がついて突き出したような「太鼓腹タイプ」の方に適しています。体内にたまった熱や脂肪を便と一緒に排出する働きがあります。

防風通聖散について詳しくはこちら▼

防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)

体力があまりなく、疲れやすい「水太りタイプ」の方に向いています。特に下半身のむくみが気になる方に適しており、水分代謝を改善し、胃腸の働きを整える効果があります。

それぞれの特性を理解して、自分に合ったものを選びましょう。どの漢方薬が自分に適しているか知りたい方はYOJOの薬剤師に相談することもできます。

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大柴胡湯を使う際の注意点

ポイント

こちらでは、大柴胡湯の飲み方、副作用、妊娠中や授乳中の服薬の可否などについて解説しています。

大柴胡湯のおすすめの飲み方

大柴胡湯は通常は1日量を2〜3回に分けて水またはお湯で内服します。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する必要があります。 [1]

食前や食間に服用するのが難しい場合は、食後に服用しても構いません。1日量をきちんと服用することがまずは大切です。

飲みにくい場合は以下の記事を参考に工夫してみてください。

大柴胡湯の副作用

以下のような症状が見られたらすぐに漢方薬の服用を中止し、医療機関を受診しましょう。[1]

・間質性肺炎

黄芩を含む漢方薬では間質性肺炎の発症のおそれがあると言われていますが、原因不明な要因や薬剤性アレルギーの場合もあります。
症状としては、発熱、空咳、息切れ、呼吸困難などが挙げられます。

・肝機能障害、黄疸

中・高齢者に多く、長期投与によって発症しやすくなります。初期症状がない場合もあるので長期投与する場合は定期的に血液検査を行う必要があります。
症状としては、体がだるい、皮膚や白目が黄色くなるなどが挙げられます。

その他の副作用として、食欲不振、腹痛、下痢などの消化器症状が挙げられます。

大柴胡湯の飲み合わせ

大柴胡湯と他の漢方薬を一緒に服用する場合に注意したいのが、生薬の重複です。生薬の量が増えると副作用や過敏症などのアレルギー症状が起こる可能性があります。特に、「大黄」という生薬が下剤の作用があるので量には慎重になる必要があります。
他の医薬品を一緒に飲む場合は、必ず医師や薬剤師または登録販売者に相談しましょう。

妊娠中・授乳中の服用について

妊娠中に大柴胡湯を服用する際には注意が必要です。大黄(だいおう)が含まれているため、子宮収縮や骨盤内の臓器への血流が増えることで流産や早産のリスクがあります。[1] そのため、自己判断での服用は避け、必ず主治医に相談しましょう。

授乳中の服用についても、大黄が母乳に移行し、授乳中の赤ちゃんに下痢を引き起こす可能性があります。もし服用する場合は、赤ちゃんの様子を十分に観察しながら行いましょう。

大柴胡湯のおすすめの市販薬

ドラッグストア

大柴胡湯をまずは手軽に市販薬で試してみたい方向けに、おすすめの商品をご紹介します。

ツムラ漢方大柴胡湯エキス顆粒

1日2回服用の顆粒タイプ

1日量に医療用漢方薬の1/2量の大柴胡湯エキスが含まれている商品です。スティック包装なので持ち運びしやすいのが特徴です。2歳以上から服用できます。

分類 第2類医薬品
効能効果 体力が充実して、脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく、便秘の傾向があるものの次の諸症:胃炎、常習便秘、高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘、神経症、肥満症
形状 顆粒剤
用法・用量 1日2回食前または食間に水またはお湯にて服用。
成人(15歳以上):1回1包
15歳未満7歳以上:1回2/3包
7歳未満4歳以上:1回1/2包
4歳未満2歳以上:1回1/3包
内容量 20包

「クラシエ」漢方大柴胡湯エキス錠

1日3回服用の錠剤タイプ

1日量に医療用漢方薬の1/2量の大柴胡湯エキスが含まれている商品です。錠剤なので、顆粒剤が苦手な方におすすめです。5歳以上から服用できます。

分類 第2類医薬品
効能効果 体力が充実して、脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく、便秘の傾向があるものの次の諸症:胃炎、常習便秘、高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘、神経症、肥満症
形状 錠剤
用法・用量 1日3回食前又は食間に水又は白湯にて服用。
成人(15歳以上):1回4錠
15歳未満7歳以上:1回3錠
7歳未満5歳以上:1回2錠
内容量 84錠

大柴胡湯に関するよくある質問

QandA

大柴胡湯は効果が出るまでどのくらいかかる?

個人の体質や症状によって効果が出るまでの期間は異なりますが、減量の目的であれば少なくとも1ヶ月は服用を継続して様子をみましょう。

便秘の改善目的であれば、大柴胡湯では5〜6日服用しても症状が良くならない場合は服用を中止し、医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください。[6]

大柴胡湯は長期服用しても問題ない?

症状によっては長期服用も可能です。しかし、自己判断で漫然と長期服用はせずに、副作用の発現がないか注意しながら、医師や薬剤師に相談の上服用するようにしましょう。

大柴胡湯はどこで購入できる?

医療用の大柴胡湯は病院で医師に処方してもらい、調剤薬局で調剤してもらうことができます。市販では一般用医薬品の大柴胡湯がツムラ、クラシエなどの会社から販売されています。また、漢方薬局でも購入できますが、YOJOではLINEでの相談を通して薬剤師のアドバイスのもと購入することもできます。

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大柴胡湯去大黄の効果は?大柴胡湯との違いは?

大柴胡湯去大黄は、その名前の通り、大柴胡湯から下剤としての作用を持つ「大黄」を除いた処方です。そのため、大柴胡湯のように体内にこもった熱を外に排出する働きはありませんが、作用がより穏やかなのが特徴です。
効果や効能自体は大柴胡湯とほぼ同じですが、いらいらや軽いうつ症状に対しては、大柴胡湯よりも頻繁に用いられることがあります。

大柴胡湯の効果や注意点を知って正しく使おう

薬を飲む女性

大柴胡湯にはダイエット効果が期待できる場合もありますが、体質に合った人が服用しなければ効果は出にくいとされています。いわゆる「痩せ薬」ではなく、次のような体質の方を対象とした漢方薬です。

・体格が良く、便秘傾向がある

・体に熱がこもりやすい

・自律神経のバランスが乱れがち

このような体質の方に多い、肥満や高血圧に伴う症状、胃腸の不調、不眠症などの改善を目的として用いられます。

また、大柴胡湯には「黄芩」や「大黄」といった生薬が含まれており、副作用が現れる可能性もあるため、服用する際は注意が必要です。医師や薬剤師に相談しながら使用しましょう。

YOJOでは、体質に合った漢方薬の選び方や、生活習慣を改善するためのアドバイスなどを薬剤師から受けられます。体の不調に悩んでいる方は、YOJOの薬剤師にお気軽にご相談ください。
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【参考文献】

[1]ツムラ大柴胡湯エキス顆粒(医療用)添付文書
[2]後藤正子ら (1992) 実験的ミネラルおよび脂質代謝異常誘発 自然発症糖尿病モデルに対する漢方方剤 (大柴胡湯,小柴胡湯,八 味地黄丸)の効果.日本薬理学雑誌 100 (4), 353-358
[3]高山宏世 編著 腹証図解 漢方常用処方解説[改訂版]
[4]神戸中医学研究会 編著 [新装版]中医学入門 
[5]日本東洋医学会 EBM 委員会エビデンスレポートタスクフォース 高島敏伸, 大森啓造, 樋口直明, ほか. プロブコールと大柴胡湯の併用療法 -大柴胡湯のHDL 代謝に対する影響- . 動脈硬化 1993; 21: 47-52.
[6]日本漢方生薬製剤協会 大柴胡湯の確認票