「もう何週間も下痢の状態が続いている」「緊張するとすぐにトイレに行きたくなる」
そんな人には漢方薬が有効な対処法の一つになることがあります。
しかし漢方薬の効果をきちんと発揮させるには、下痢の原因や状態に合った漢方薬を選択することが非常に大切です。
この記事では、
・漢方でみる下痢の状態
・漢方薬で効果が期待できる下痢の種類
・下痢の治療に頻用される漢方薬
・下痢のときのおすすめ養生法
について解説します。
なかなか改善されない下痢にお悩みの方はYOJO薬剤師に相談することもできます。
Contents
下痢の治療と漢方の処方とは
下痢を引き起こす代表的な原因として感染性腸炎や炎症性腸疾患などがありますが、これらに対しては病因を早期に取り除くために抗生物質の服用や点滴、診療ガイドラインに従った各疾患の治療法が優先されます。
一方で漢方薬は、胃腸虚弱による消化不良性の下痢や、冷えやストレスなどに起因する下痢に対する治療を得意とします。
このように下痢が起きた原因によっても治療法が異なり、適切な漢方薬も変わります。まずはご自身の下痢の状態や原因を確認してみることが大切です。
そもそも下痢はどんな状態?~ブリストルスケールで解説~
そもそも「下痢」とはどのような状態なのでしょうか?
まずは便の状態を7段階に分けて表す世界的な基準ブリストルスケールをもとに解説します。[1]
1~2 : 腸内の停滞時間が長く、便秘と判断されます。
3~5 : 正常便で、特に「4」が理想便とされます。
6~7 : 柔らかすぎるため、下痢と判断されます。
このように下痢は健康時の便と比較して非常に緩い泥状、もしくは液体状である状態をいいます。便に含まれる水分含有量は、理想便(スケール4)で70~80%、泥状便(スケール6)で80~90%、水様便(スケール7)で90%以上にもなります。
腸内で水分の分泌量が亢進または吸収量の低下が起こった場合に、下痢の状態になってしまうのです。
下痢には4種類のタイプがある?
下痢は起こるメカニズムや原因によって以下の4種類のタイプに分けられます。[2]
(1)浸透圧性下痢
腸からの水分吸収が低下して起こる下痢です。食べたモノの浸透圧が高いと腸で水分がきちんと吸収されないまま排便されるため、下痢になります。
例)糖分の消化吸収が良くないとき・人口甘味料を過剰に摂ったとき
牛乳を飲むとお腹をくだす乳糖不耐症の人の下痢
(2)分泌性下痢
腸からの水分分泌量が亢進して起こる下痢です。便の中の水分量が多くなり下痢になります。
例)腸に入った細菌・ウイルスによる毒素
ホルモンバランスの影響 など
(3)ぜん動運動性下痢
腸のぜん動運動が活発になり過ぎると、食べたモノが短時間で腸を通過してしまい、水分の吸収が不十分で下痢になります。
例)過敏性腸症候群
甲状腺の病気(バセドウ病など)による影響 など
(4)滲出性下痢
腸に炎症があると血液成分や細胞内液がしみ出てくることで便の水分量を増やして下痢になることがあります。
例)潰瘍性大腸炎
クローン病 など
急性下痢と慢性下痢とは
日本臨床検査医学会によると、急性下痢は1~2週間以内で症状が治まるもの、慢性下痢は3週間以上症状が続くものをいいます。[3]
急性下痢には、たとえば以下のようなものがあげられます。
・食中毒や感染症による下痢
・食べ過ぎや飲み過ぎによる下痢
・非感染性の急性腸炎による下痢
・薬剤性の下痢
一方で、慢性下痢は以下のようなものがあげられます。
・過敏性腸症候群によるストレス性の下痢
・潰瘍性大腸炎やクローン病、大腸がんのような疾患に起因する下痢
・胃腸が弱い体質が原因で起こる下痢
漢方薬はストレスや体質などに起因する慢性下痢におすすめ?
潰瘍性大腸炎などの疾患にかかわるもの以外では、一般に慢性下痢はストレスや体質などの内因性の下痢とされています。
漢方はこの内因性の下痢に対してとくに効果が期待できます。
下痢はストレスや更年期などによる自律神経やホルモンバランスの乱れ、冷えなどが影響して起こることも多いです。
漢方薬は複数の生薬が総合的に作用して、体質改善を促し、からだ全体の状態を整えてくれる効果があります。単に下痢を止めるのではなく、腸を含む心身を健康な状態にまで戻してくれるのが漢方の強みです。
漢方でみる下痢の状態とよく使われる漢方処方とは
陰と陽
漢方では下痢の状態を「陰」と「陽」に大別してとらえます。
「陰」とは新陳代謝が低下して熱産生が衰えた状態、逆に「陽」とは新陳代謝が亢進した状態です。
「陰」の下痢
・腹部に冷えがある
・しぶり腹(便意を感じるにも関わらず便が出ない状態)を伴わない
・大便臭や粘り気のない未消化の便が排出される
・消化管機能が低下している
・慢性で非炎症性の場合が多い
「陽」の下痢
・消化管に炎症などの熱がある
・しぶり腹が強い
・下痢や腹痛などの症状が激しい
・ときに血液や膿などを排出する
「陽」の下痢は、主に細菌やウイルス感染や炎症性腸疾患に伴うものであるため、漢方薬では「陰」の治療がメインです。
具体的には以下のような漢方薬が頻用されています。[4]
陰の下痢 に頻用される漢方薬 |
真武湯、人参湯、半夏瀉心湯、桂枝加芍薬湯、大建中湯、茯苓四逆湯、桂枝人参湯、啓脾湯など |
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陽の下痢 に頻用される漢方薬 |
五苓散、黄芩湯など |
また「陰」の下痢には腹部の冷えがあるため、漢方薬の服用と共に、下腹部を腹巻きで温めたり、寒性食物を避けて温性食物を多く摂取するなどの食事養生を行うとさらに効果的です。
気血水
また、漢方では下痢の状態を水分が過剰になり胃腸にたまった「水毒」の状態であるともとらえます。過剰な水分が胃腸にたまると腹部や腰が冷えます。その結果、下痢や腹痛、おなかの張りといったさまざまな症状が出てしまうのです。また、最近ではストレスなどが原因で起こる「気」の停滞で下痢をする人も増えています。
ご自身の状態に合った漢方薬の選択について相談されたい方は、まずはYOJOの体質チェックを行ってみましょう。
下痢に効果の期待できる漢方薬と選び方
では、自身の下痢の症状に合った漢方薬は、具体的にどのように選べば良いのでしょうか。ここでは臨床で下痢の治療によく使用される7種類の漢方薬とその選び方、服用の注意点をお伝えします。
【冷え腹・食あたりによる下痢に】胃苓湯(いれいとう)
漢方では胃腸で食べ物を消化するためには熱が必要と考えられており、からだの冷えや冷たい飲食物を過剰に摂取すると熱が奪われて、胃腸機能が低下してしまいます。すると胃腸に水分が停滞して、下痢や軟便の原因になります。
胃苓湯は、余分な水分を排出し冷えや胃腸運動を改善する作用があります。
胃苓湯は、胃もたれや消化不良に用いられる「平胃散(へいいさん)」と、水分代謝を改善する「五苓散(ごれいさん)」を合わせた処方です。
配合生薬
厚朴、蒼朮、沢瀉、猪苓、陳皮、白朮、茯苓、桂皮、生姜、大棗、甘草
服用がおすすめな人
体力が中程度で、冷え腹や食あたりによる下痢におすすめの漢方薬です。急性胃腸炎や腹痛、暑気あたりにも適しています。
服用上の注意
複数の漢方薬を服用する場合は注意ましょう
配合生薬の「甘草」が重複し、偽アルドステロン症などの副作用が起こりやすくなる可能性があります。
【代謝が落ちた虚弱体質な人の下痢に】真武湯(しんぶとう)
真武湯は、「水」の滞りを改善したり、からだを温めて身体機能を高めたりする働きのある漢方薬です。別名を「玄武湯(げんぶとう)」とも呼ばれます。
高齢者や虚弱体質な方の下痢に多く用いられ、経管栄養に伴って起きる下痢にも効果が期待できます。[5]
配合生薬の「附子(ぶし)」がからだを温めて水分循環を改善します。また「茯苓(ぶくりょう)・蒼朮(そうじゅつ)」が余分な水分を取り除く作用があります。
配合生薬
附子、茯苓、芍薬、生姜、蒼朮
服用がおすすめな人
体力虚弱で、新陳代謝が低下して冷えや倦怠感がある人におすすめの漢方薬です。
服用上の注意
動悸、のぼせ、ほてり、舌のしびれなどに注意ましょう
配合生薬「附子」の主要成分であるアコニチンは、神経細胞の興奮を伝えるナトリウムイオンに作用して神経細胞の機能不全をもたらすことがあります。その結果、動悸やのぼせ、しびれなどの神経症状の副作用を引き起こすことがあります。
【ストレスや過敏性腸症候群の下痢に】半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
半夏瀉心湯は、「気」の巡りを良くして胃腸の働きを助けることで、消化不良や胃もたれ、吐き気・嘔吐、下痢などの症状を緩和する作用があります。“瀉心”とはみぞおちのつかえを取るという意味をもちます。
吐き気を抑える作用のある「半夏」を中心に、口のねばりや胃痛などの熱・炎症を抑える「黄芩・黄連」など、胃腸の働きを助ける7種類の生薬で構成されています。
配合生薬
半夏、黄芩、乾姜、甘草、大棗、人参、黄連
服用がおすすめな人
体力が中程度でみぞおちがつかえた感じがある人におすすめの漢方薬です。ときに吐き気や嘔吐、げっぷの症状があり、下痢傾向のある人に適しています。
服用上の注意
複数の漢方薬を服用する場合は注意ましょう
配合生薬の「甘草」が重複し、偽アルドステロン症などの副作用が起こりやすくなる可能性があります。
間質性肺炎の副作用に注意しましょう
発熱、咳、呼吸困難などの症状があらわれた場合には、服用を中止しすみやかに受診するようにしましょう。
肝機能障害の副作用に注意しましょう
無症状のまま血液検査で判明することも多いですが、発熱、全身の倦怠感、吐き気・嘔吐、黄疸などが出た場合には、服用を中止しすみやかに受診するようにしましょう。
【腸が過敏な人の下痢に】桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
下痢や便秘をくり返す状態は、漢方では「気」「血」のバランスが崩れていると考えます。桂枝加芍薬湯は、からだを温めて緊張をほぐし、気血のバランスを整えて正常な便通へと導く作用があります。
そのため過敏性腸症候群の下痢型・下痢便秘混合型の治療にもよく使用される漢方薬です。
桂枝加芍薬湯は「桂枝湯」を基本に、痛みをやわらげたり腸管のけいれんを抑えたりする作用のある「芍薬(しゃくやく)」の量を増やした処方です。ほかにも穏やかな発汗・発散作用のある「桂皮(けいひ)」、からだを温める「生姜(しょうきょう)」、緩和作用のある「甘草(かんぞう)」などが配合されています。
配合生薬
芍薬、桂皮、大棗、甘草、生姜
服用がおすすめな人
体力中等度以下で腹痛やしぶり腹がある人の下痢症状におすすめの漢方薬です。高齢者や妊娠中の女性にも使いやすい処方です。
服用上の注意
複数の漢方薬を服用する場合は注意ましょう
配合生薬の「甘草」が重複し、偽アルドステロン症などの副作用が起こりやすくなる可能性があります。
【胃腸が弱く冷えのある人の下痢に】人参湯(にんじんとう)
人参湯は、胃腸機能を高めて、胃もたれや食欲不振、下痢などを改善する働きのある漢方薬です。
主薬の「人参」は滋養強壮作用があり胃腸機能を高めて体力と気力の回復を助けます。「朮」には胃を乾かし食欲を増加させて消化を促進する働きや、消化器系に停滞した余分な水分を取り除き下痢を止める働があります。
配合生薬
人参、乾姜、白朮または蒼朮、甘草
服用がおすすめな人
体質虚弱の人または体力低下した人、手足などが冷えやすく尿量が多い人におすすめの漢方薬です。
【腹部の冷えや腹痛がある人の下痢に】大建中湯(だいけんちゅうとう)
大建中湯は、からだを温めて胃腸の調子を良くし、腹痛や腹部の冷え、腸のぜん動を改善する作用があります。臨床では、胃腸の調子を整えたり、大腸がん手術後の腸閉塞を予防・改善したりする目的で広く用いられています。
大建中湯には胃腸の調子を整える「膠飴(こうい)」のほかに腸の運動を活発にして腹部の冷えや痛みをやわらげる「山椒(さんしょう)・乾姜(かんきょう)」、滋養・強壮作用のある「人参(にんじん)」が配合されています。
配合生薬
膠飴、乾姜、人参、山椒
服用がおすすめな人
体力虚弱で、お腹が冷えて痛む人や腹部膨満感のある人におすすめの漢方薬です。
服用上の注意
重大な副作用として、間質性肺炎や肝機能障害に注意しましょう
間質性肺炎の症状(たとえば発熱、咳、呼吸困難など)や、肝機能障害の症状(たとえば発熱、全身倦怠感、嘔気嘔吐、黄疸など)があらわれた場合は、服用を中止しすみやかに受診するようにしましょう。
【急性ウイルス性胃腸炎の下痢に】五苓散(ごれいさん)
五苓散は、からだに余分な水分があるときは利尿作用、脱水状態のときは水分の排出を抑える抗利尿作用を示すことで、からだ全体の水分代謝を整えてくれる代表的な利水剤です。
五苓散には「沢瀉(たくしゃ)・猪苓(ちょれい)・茯苓(ぶくりょう)・朮(じゅつ)」といった利尿作用をもつ複数の生薬が配合されており、症状によっては即効性も期待できます。
臨床ではノロウイルスのような嘔吐を伴う下痢に対して、上部消化管の水毒(水逆)の状態と捉えて五苓散が使用される場合があります。[6]
五苓散を白湯に溶かして少量ずつ服用させると効果的です。
配合生薬
沢瀉、猪苓、茯苓、白朮または蒼朮、桂皮
服用がおすすめな人
体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ない人の下痢症状に適しています。水様性下痢や急性ウイルス性胃腸炎などの嘔吐を伴う下痢によく使用される漢方薬です。
市販で購入できる下痢におすすめの漢方薬とは
まずは手軽に漢方薬を試してみたいという方向けに、ここでは市販で購入できる下痢におすすめの漢方薬をご紹介します。
胃苓湯エキスEX錠クラシエ
分類 | 第2類医薬品 |
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適応する人 | 体力中等度で水溶性下痢、嘔吐があり、口渇、尿量減少を伴う人 |
形状 | 錠剤 |
用法・用量 | 次の量を1日3回食前又は食間に水又は白湯にて服用してください。 成人(15歳以上):1回4錠 7歳以上15歳未満:1回3錠 5歳以上7歳未満:1回2錠 |
服用対象年齢 | 5歳以上(5歳未満は服用しないこと) |
効能効果 | 食あたり、暑気あたり、冷え腹、急性胃腸炎、腹痛 |
内容量 | 36錠 |
サンワロンS顆粒 真武湯
分類 | 第2類医薬品 |
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適応する人 | 体力虚弱で、冷えがあって、疲労倦怠感があり、ときに下痢、腹痛、めまいがある人 |
形状 | 錠剤 |
用法・用量 | 次の量を1日3回食前又は食間に水又はお湯と一緒に服用してください。 成人(15歳以上):1回1~2包 |
服用対象年齢 | 15歳以上(15歳未満は服用しないこと) |
効能効果 | 下痢、急・慢性胃腸炎、胃腸虚弱、めまい、動悸、感冒、むくみ、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ |
内容量 | 45包 |
半夏瀉心湯エキスEX錠クラシエ
分類 | 第2類医薬品 |
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適応する人 | 体力中等度で、みぞおちがつかえた感じがあり、ときに悪心、嘔吐があり食欲不振で腹が鳴って軟便又は下痢の傾向のある人 |
形状 | 錠剤 |
用法・用量 | 次の量を1日3回食前又は食間に水又は白湯にて服用してください。 成人(15歳以上):1回4錠 7歳以上15歳未満:1回3錠 5歳以上7歳未満:1回2錠 |
服用対象年齢 | 5歳以上(5歳未満は服用しないこと) |
効能効果 | 食急・慢性胃腸炎、下痢・軟便、消化不良、胃下垂、神経性胃炎、胃弱、二日酔、げっぷ、胸やけ、口内炎、神経症 |
内容量 | 36錠 |
ツムラ漢方人参湯エキス顆粒
分類 | 第2類医薬品 |
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適応する人 | 体力虚弱で、疲れやすくて手足などが冷えやすい人 |
形状 | 顆粒剤 |
用法・用量 | 次の量を1日2回食前又は食間に水又は白湯にて服用してください。 成人(15歳以上):1回1包 7歳以上15歳未満:1回2/3包 4歳以上7歳未満:1回1/2包 2歳以上4歳未満:1回1/3包 |
服用対象年齢 | 2歳以上(2歳未満は服用しないこと) |
効能効果 | 胃腸虚弱、下痢、嘔吐、胃痛、腹痛、急・慢性胃炎 |
内容量 | 10包 |
「クラシエ」漢方桂枝加芍薬湯エキス顆粒
分類 | 第2類医薬品 |
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適応する人 | 体力中等度以下で、腹部膨満感のある人 |
形状 | 顆粒 |
用法・用量 | 1日3回食前に服用。 成人(15歳以上):1回1包 15歳未満7歳以上:1回2/3包 7歳未満4歳以上:1回1/2包 4歳未満2歳以上:1回1/3包 2歳未満:1回1/4包 |
服用対象年齢 | 2歳以上(2歳未満は服用しないこと) |
効能効果 | しぶり腹、腹痛、下痢、便秘 |
内容量 | 24包 |
ツムラ漢方100大建中湯エキス顆粒
分類 | 第2類医薬品 |
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適応する人 | 体力虚弱で、腹が冷えて痛む人 |
形状 | 顆粒 |
用法・用量 | 1日3回食前に服用。 成人(15歳以上):1回1包 15歳未満7歳以上:1回2/3包 7歳未満4歳以上:1回1/2包 4歳未満2歳以上:1回1/3包 |
服用対象年齢 | 2歳以上(2歳未満は服用しないこと) |
効能効果 | 下腹部痛、腹部膨満感 |
内容量 | 20包/48包 |
ツムラ漢方17五苓散料エキス顆粒
分類 | 第2類医薬品 |
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適応する人 | 体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う人 |
形状 | 顆粒剤 |
用法・用量 | 次の量を1日2回食前又は食間に水又は白湯にて服用してください。 成人(15歳以上):1回1包 7歳以上15歳未満:1回2/3包 4歳以上7歳未満:1回1/2包 2歳以上4歳未満:1回1/3包 |
服用対象年齢 | 2歳以上(2歳未満は服用しないこと) |
効能効果 | 水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹注)のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔 |
内容量 | 10包/48包 |
ツライ下痢に漢方の服用以外にもできること
下痢の症状には漢方薬の服用だけでなく、生活面での改善や養生法を取り入れることも非常に大切です。
ここでは辛い下痢症状に対してのおすすめの養生法をお伝えします。
適切な水分補給をしよう
下痢をしているときは体内の水分と電解質(ナトリウムやカリウムなど)が多量に失われるため、両方を補給することが大切です。放置すると、脱水症状が起こって口の渇きや尿量減少、重症化すると頻脈や血圧低下などの全身症状をきたして、さらに悪化すると意識混濁などの危険な状態にいたる場合もあります。[7]
下痢のときに推奨される飲み物としては、たとえば以下のような飲み物がおすすめです。
・経口補水液
・スポーツドリンク
・乳幼児の場合は赤ちゃん用のイオン飲料
・野菜スープや果汁ジュースなどの電解質や糖質を含む飲み物
消化吸収が良いものを摂取しよう
三大栄養素である、タンパク質・脂質・炭水化物の中でもとくに炭水化物は胃の滞留時間が短く消化しやすいとされています。
そのため下痢のときは炭水化物を中心に消化の良い食べ物をしっかり摂取することが大切です。
消化吸収に良いとされるものには、たとえば以下のようなものがあります。
・おかゆ
・よく煮込んだうどん
・味噌汁や野菜スープ
・リンゴのすりおろし
一方で脂肪分の多い食べ物は胃の滞留時間が長く消化吸収が悪いです。
また、コーヒーや炭酸飲料、アルコール類もお腹を刺激して下痢を悪化させる可能性があるため控えるようにしましょう。
下痢のときは避けた方が良い食べ物として以下のようなものがあります。
・脂肪の多い肉や魚
・そばやラーメン
・玄米や赤飯
・生野菜や海藻
・菓子パンやケーキ
・人口甘味料
薬の副作用で下痢が起こることも
下痢は、治療薬の副作用として起こることもあります。
薬剤性下痢は一般に、薬を開始して1~2週間以内に起こることが多いです。
下痢の持続時間が2週間以内である急性下痢のうち90%以上は感染症が原因ですが、それ以外で最も多いのが薬剤性の下痢になります。[7]
ただし薬剤の種類や体調によって服用後1~2か月後に下痢が起こる場合もあります。
下痢の副作用を引き起こす薬剤は多くありますが、代表的なものとして以下のような薬剤があります。
・抗がん剤(イリノテカン、メトトレキサート、フルオロウラシルなど)
・免疫抑制剤
・抗菌薬(ペニシリン系、セフェム系など)
・一部の消化器用薬(PPI、ミソプロストール)
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
・山梔子を含む漢方薬(加味逍遙散、黄連解毒湯など)
・大黄を含む漢方薬(防風通聖散、桃核承気湯など)
ほかの重大な病気が隠れている可能性も?
下痢と共に以下のような症状がある場合は、重大な病気である可能性もあるため速やかに医療機関を受診し治療を受ける必要があります。
・便に血が混ざっている
・下痢以外に吐き気や嘔吐、発熱もある
・同じものを食べた人も同時に下痢になった
・排便後にも腹痛が続く
・脱水症状(尿が出ない・少ない、口が異常に乾くなど)がある
・経験したことのないような激しい下痢である
また、消化管領域での疾患の特徴として、悪性腫瘍(ガン)が多いことがあげられます。たとえ自覚症状が改善したとしても、重大な病気を見逃さないように、定期的に消化管検査を行うことも大切です。
YOJOでは下痢症状への適切な漢方薬のご相談だけでなく、下痢が起きているときの具体的な養生法などの指導も受けることができます。改善されない下痢の症状に悩まれている方は、一度YOJOの薬剤師に相談してみるのもよいでしょう。
【参考文献】
[1]大分大学医学部 便の状態を判別するブリストルスケール
[2]一般社団法人 日本臨床内科医会 下痢の正しい対処法
[3]日本臨床検査医学会 下痢
[4]新井信(2020)下痢,ファルマシアvol.56(3) 213-217
[5]東京医科大学病院 病院漢方医学センター 及川哲郎,下痢について
[6]新井信ら(2009)急性ウイルス性胃腸炎への漢方治療,日本東洋医学会誌vol.60(1)1-23
[7]PMDA 重度の下痢