六君子湯の効果とは?副作用や合わない人、類似処方との違いも解説!

胃もたれする女性

六君子湯(りっくんしとう)は、胃腸機能を高める漢方薬です。
食欲不振や胃痛、吐き気などの消化器系の不調に効果が期待できる六君子湯ですが、服用する際には、体質・症状に合っているかや、服用の注意点についてきちんと確認して取り入れることが大切です。

この記事では、六君子湯の効果や副作用、よくある質問について薬剤師がくわしく解説します。漢方薬の服用について不安な方はYOJOの薬剤師にご相談ください。

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六君子湯とは

漢方薬

六君子湯がどのような漢方薬なのかをお伝えするために、まずは漢方医学の考え方と六君子湯の働きについて解説します。

漢方医学の「気・血・水」の考え方と六君子湯の働き

気血水

漢方医学では、「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」がバランス良く体内を巡ることで健康を維持できると考えられています。

気(き)…体や心を動かすエネルギーのことです。
血(けつ)…血液や血液に含まれる栄養をさします。
水(すい)…リンパ液、汗、涙、だ液など、血液以外の体液をさします。

このうち「気」が不足した「気虚(ききょ)」の状態では、エネルギーが不足して元気がなくなり、胃腸の働きも低下します。また、「水」の巡りが滞って余分な水分がたまった「 痰湿 (たんしつ)」の状態では、胃のつかえ感や吐き気、軟便・下痢などの不調をもたらします。

六君子湯は「気」の不足を補って、さらに、「水」の巡りを良くすることで胃腸機能を改善する効果が期待できます。

六君子湯の成分

六君子湯は8種類の生薬から構成されており、配合生薬と各生薬の主な働きは以下のとおりです。[1]

・人参(にんじん)…胃腸の働きを高める作用や滋養・強壮作用がある。
・白朮(びゃくじゅつ)または蒼朮(そうじゅつ)…利水作用や胃腸の働きを高める作用がある。
・茯苓(ぶくりょう)…利水作用や精神安定作用がある
・半夏(はんげ)…精神を安定させたり、吐き気を抑えたりする作用がある。
・陳皮(ちんぴ)…胃腸の働きを高める作用や、補った気を巡らせる作用がある。
・甘草(かんぞう)…抗炎症作用や健胃作用などがある。
・大棗(たいそう)…
胃腸の働きを高める作用や滋養・強壮作用がある。
・生姜(しょうきょう)…体を温める作用や胃腸の働きを高める作用がある。

六君子湯が向いている人

六君子湯の服用が向いている人は、体力の低下した胃腸の弱い人です。具体的には、

  • 食欲不振や食後の腹部膨満感がある人
  • 吐き気や嘔吐、下痢傾向がある人
  • 胃がポチャポチャ鳴る人(胃内停水)
  • 全身倦怠感や手足の冷えを伴う人

が服用すると良いでしょう。

六君子湯の効果

六君子湯を服用することで、以下のような効果が期待できます。

食欲不振や胃もたれの改善

六君子湯には、「人参・陳皮」などの胃腸機能を高める多くの生薬が配合されています。そのため服用することで、消化管運動や胃排出能が亢進されて食欲不振や胃もたれを改善する効果が期待できます。

さらに近年では、六君子湯が食欲亢進ホルモン(グレリン)の分泌を促進することで食欲不振や消化管運動の低下・胃排出遅延を改善することが報告されています。[2][3]
そのため、シスプラチンなどの抗がん剤の副作用対策としても六君子湯が注目を集めています。

吐き気・嘔吐の改善

六君子湯に含まれる「半夏」は、吐き気や嘔吐を改善するのに重要な生薬です。また「朮・茯苓・陳皮」と合わさることで、胃内にある余分な水(胃内停水)を取り除く作用が強まります。[1]

そのため、六君子湯を服用することで吐き気や嘔吐、胃のつかえ感、胃内停水などの症状を改善する効果が期待できます。

機能性ディスペプシアの改善

機能性ディスペプシアとは、胃もたれやみぞおちの痛み、胸やけ、食べ始めてすぐに満腹になってしまうような症状が自覚される一方で、内視鏡検査をしても異常が認められない病気をいいます。胃腸の運動機能が弱まっていたり、胃酸過多の状態になったりすることで起こりやすくなるとされていますが、原因はまだきちんと解明されていません。

六君子湯は機能性ディスペプシアの症状改善に有用であるとして、機能性消化管疾患診療ガイドライン2021でも治療薬の選択肢の一つとして強く推奨されています(エビデンスレベルA)。[2]

漢方薬の服用について相談したい方はYOJOの薬剤師に相談することもできます。

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六君子湯の飲み方のポイント

生薬

六君子湯は定められた量を1日2~3回に分けて、水または白湯で服用します。
ただし、用法用量は商品や服用者の症状、年齢・体重などによっても異なるため、必ず医師の指導や添付文書の指示に従って服用しましょう。

また服用するタイミングは食前または食間です。食前とは食事の20~30分前、食間とは食事と食事の間2時間くらいの空腹時を指します。

六君子湯の副作用と飲むときの注意点

ここでは、六君子湯を飲む際の注意点についてお伝えします。

六君子湯の注意すべき副作用

六君子湯では、頻度不明で以下の副作用が報告されています。 [3]

過敏症 皮膚のかゆみ、発疹・発赤など
消化器症状 吐き気・嘔吐、食欲不振、胃部不快感

過敏症の副作用が出た場合は、すぐに漢方薬の服用を中止しましょう。消化器症状が出た場合には、服用のタイミングを食前から食後に変更して様子を見て、症状が落ち着かない場合には中止し、医療機関を受診しましょう。

また、重大な副作用としては以下のような症状も報告されています。

偽アルドステロン症・ミオパチー 手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
肝機能障害 発赤、かゆみ、皮膚・白目が黄色くなる黄疸、褐色尿、全身倦怠感、食欲不振、血液検査でASTやALTγ-GTPなどの著しい上昇などがみられる場合がある。

気になる症状があれば、すぐに医療機関を受診して検査をすることが大切です。

六君子湯の飲み合わせについて

六君子湯は他の医薬品との飲み合わせで、禁忌となる医薬品はありません。
ただし、六君子湯には「甘草」の生薬が含まれており、他の甘草を含む漢方薬と長期併用する場合には注意が必要です。

六君子湯の飲み合わせについてさらに詳しく知りたい方はこちら▼の記事をお読みください。

六君子湯と類似処方との違い

AとBの比較

六君子湯と同じく胃腸の不調に効果の期待できる漢方薬は他にもあります。ここでは、六君子湯と類似処方との違いについてお伝えします。[1][4]

六君子湯と人参湯(にんじんとう)の違い

人参湯に含まれる、体を温める作用のある「乾姜(かんきょう)」を利水効果のある「茯苓」に換えて、「陳皮・半夏・大棗・生姜」を加えたのが六君子湯です。人参湯は、六君子湯と同じく脾(胃腸)の働きを高める「補脾剤」に分類されます。[5]
人参湯はとくに冷えが強いとき、六君子湯は胃がつかえたりポチャポチャしたりするような痰湿の症状がより強く見られるときに用いられます。また、吐き気やげっぷが見られる場合にも六君子湯を選ぶと良いでしょう。

六君子湯と補中益気湯(ほちゅうえっきとう)の違い

補中益気湯は、六君子湯と同じく「気」を補う働きをもつ代表的な「補気剤」です。気虚の状態が強い場合に多く用いられます。
補中益気湯はとくに全身の虚弱や手足の倦怠感、無気力感が強いとき、六君子湯は胃もたれや吐き気などの消化器系の不調が強いときに選ぶと良いでしょう。

補中益気湯の効果についてさらに詳しく知りたい方はこちら▼の記事もお読みください。

六君子湯と半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)の違い

六君子湯と半夏瀉心湯は複数の生薬が重複しています。
半夏瀉心湯の特徴としては、「気」を補い巡りを良くする生薬と共に、熱を冷ます生薬
が配合されています。
そのため半夏瀉心湯は、みぞおちのつかえと共に胃酸の逆流で胃・のどに灼熱感を感じる場合に向きます。六君子湯の証よりも比較的実証タイプの人に用いられる漢方薬です。

六君子湯の市販薬

ドラッグストア

六君子湯は市販でも購入できる漢方薬です。薬局やドラッグストアで販売されている六君子湯の商品には、例えば以下のようなものがあります。

ツムラ漢方43六君子湯エキス顆粒

ツムラ漢方43六君子湯エキス顆粒
引用元:ツムラHP

六君子湯エキスを有効成分とした漢方商品です。1日量として医療用漢方薬の1/2量の六君子湯エキスを配合しています。1日2回服用します。

分類 第2類医薬品
効能効果 体力中等度以下で、胃腸が弱く、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいものの次の諸症:胃炎、胃腸虚弱、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐
形状 顆粒剤
用法・用量 1日2回食前または食間に水またはお湯にて服用。
成人(15歳以上):1回1包
15歳未満7歳以上:1回2/3包
7歳未満4歳以上:1回1/2包
4歳未満2歳以上:1回1/3包
内容量 10包

「クラシエ」漢方六君子湯エキス顆粒 [45包]

「クラシエ」漢方六君子湯エキス顆粒 [45包]

六君子湯エキスを有効成分とした漢方商品です。1日量として医療用漢方薬の1/2量の六君子湯エキスを配合しています。1日3回服用します。

分類 第2類医薬品
効能効果 体力中等度以下で、胃腸が弱く、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいものの次の諸症:胃炎、胃腸虚弱、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐
形状 顆粒剤
用法・用量 1日3回食前または食間に水または白湯にて服用。
成人(15歳以上):1回1包
15歳未満7歳以上:1回2/3包
7歳未満4歳以上:1回1/2包
4歳未満2歳以上:1回1/3包
2歳未満:1回1/4包
内容量 45包

六君子湯の服用でよくある質問

医師

ここでは、六君子湯の服用でよくある質問とその回答について、まとめてお伝えします。

六君子湯はどれくらいで効くの?

六君子湯は、症状の程度や体質によっても効果の感じ方が異なります。
効果が出ているかを正しく判定するためにも、まずは1か月程度継続して服用しましょう。

六君子湯とセロトニンの関係は?

セロトニンは脳内の伝達物質の一つで、精神を安定させて幸福感を得やすくする働きがあることから「幸せホルモン」として広く知られています。
セロトニンは脳だけでなく、実は胃腸にも作用し消化管機能に密接に関わっています。セロトニンが胃腸を過剰に刺激してしまうことで、嘔吐反射や腸の過活動を起こしたり、食欲亢進ホルモン(グレリン)の分泌を抑制して食欲不振を起こしたりする場合があるのです。

六君子湯は、セロトニンの刺激を受け取る受容体(セロトニン受容体)を阻害してグレリン分泌の低下を抑えることで、食欲不振を改善する効果が報告されています。[6]

六君子湯の服用で痩せることはある?

六君子湯の副作用として体重減少や増加の報告はありません。
ただし、胃腸機能が改善されて消化吸収力が高まることで、代謝が向上して痩せたり、逆に栄養吸収が高まって健康な体重に戻ることなどは考えられるでしょう。

六君子湯が合わない・効果がない場合は?

1か月以上服用しても症状改善の兆しが見られない場合は、体質や症状に合っていない可能性があります。いったん服用を中止して、医師や薬剤師、登録販売者に相談しましょう。

六君子湯が合わない場合、例えば以下のように、体質や症状に合わせて他の漢方薬が検討されることもあります。 

・胃腸の不調と共に冷えの症状が強い場合
⇒人参湯
・元気がなく、四肢の倦怠感や無力感が顕著に強い場合
補中益気湯
・お腹がゴロゴロするなどの胃腸の不調があるが、比較的体力があり、胸やけやげっぷなどの症状が強い場合
⇒半夏瀉心湯

YOJOでは、体質に合った漢方薬の選び方や生活習慣を改善するためのアドバイスなども薬剤師から受けることができます。なかなか改善されない不調に悩んでいる方は、YOJOの薬剤師に相談するのも良いでしょう。

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【参考文献】
[1]高山宏世編著 漢方常用処方解説
[2]機能性消化管疾患診療ガイドライン 2021―機能性ディスペプシア (改訂第 2 版),日本東洋医学会 EBM 委員会 診療ガイドライン・タスクフォース
[3]ツムラ六君子湯エキス顆粒(医療用)
[4]朝日公一ら(2023)機能性ディスペプシアに対する漢方治療-六君子湯を中心に他の方剤との使い分け,日病総診誌19(5)361-366
[5]木村容子ら(2010)補脾剤と気剤の併用についての検討,日東医誌Vol.61,No.5.690-698
[6]武田宏司ら(2010)機能性ディスペプシアおよび食欲不振に対する漢方治療,日消誌.107.1586-1591