こんにちは!YOJO編集部です。
漢方薬一つ一つについて効果や効能、それに伴うエビデンスを中心に取り上げていきたいと思います。
漢方解説第2弾! 当帰芍薬散です。
証
比較的体力の低下した成人女子に用いられることが多く、一般に冷え性で貧血傾向があり、性周期に伴って軽度のむくみや腹痛などがある場合に適しています。
- 全身倦怠感、四肢冷感、頭痛、めまい、耳鳴り、肩こりなどの症状がある場合
- 無月経、過多月経、月経困難など、月経異常がある女性
・【血虚】と【水毒】による状態を改善します。血虚は補血薬によって、水毒は利水薬によって改善します。
・血虚による、顔色不良、皮膚の乾燥や荒れ、あかぎれがみられます。
・水毒による、めまい、むくみ、また車に酔いやすい、などの症状がみられます。
・冷え性は血虚水毒両方による原因が考えられます。
・むくみやすく色白で冷え性は典型的な適用例です。
効能効果
筋肉が一体に軟化で疲労しやすく、腰脚の冷えやすい人の次の症状:月経不順、月経困難、不妊症、動悸、慢性腎炎、妊娠中の諸症状(むくみ、習慣性流産、痔、腰痛)、かっけ、半身不随、心臓弁膜症
配合生薬
芍薬(ショウヤク)・蒼朮(ソウジュツ)・沢瀉(タクシャ)・茯苓(ブクリョウ)・川芎(センキュウ)・当帰(トウキ)
・もともと、貧血を治す補血剤である四物湯と、むくみなどの水毒を治す四苓湯を合わせて調整した漢方です。
・当帰・川芎・芍薬は、顔色が悪い、貧血などの【血虚】を治す補血薬です。血を補うことで「貧血や、無月経、過多月経、月経困難などの月経異常」に効能を示しています。
また、当帰は甘温、川芎は辛温と、温める役割を持った生薬です。
・当帰・川芎・芍薬は、鎮座の作用も持ちます。そのため、月経痛などの腹痛の改善が期待できます。
・蒼朮、沢瀉、茯苓は、【水毒】に用いる利水薬です。水分の停滞に効果があるので、「むくみ、頭痛、頭が重い状態を改善する」効能を示しています。
名前の由来
6種類の構成生薬のうちの、主薬である当帰と芍薬の名前をとって「当帰芍薬散」と名付けられました。古くは、華奢で色白の女性が当帰芍薬散の適応になりやすいことから、「当芍美人」という表現もありました。
エビデンス
*臨床研究
・更年期症状に対する効果を漢方薬(当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸の単独あるいは2剤併用)投与群18例とHRT(ホルモン補充療法)を行った16例で比較した。
その結果、漢方薬投与群はすべての更年期症状(ホットフラッシュ、汗をかきやすい、四肢の冷え、心臓の不快感、睡眠障害、過敏性、うつ、頭痛、疲労、肩こり・腰痛)が治療前後で優位に改善したが、HRT群では治療前後では四肢の冷え、睡眠障害、肩こり、腰痛、疲労に有意な改善がなかった。
*症例報告
・更年期障害で通院した女性170例に対して、慶応式中高年健康維持外来調査票(精神的症状11項目、身体的症状29項目)を用いて調査した。
当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸のいずれかを投与した群と従来のHRT(ホルモン補充療法)を投与した群をそれぞれ調査した。
結果、総合的効果は漢方療法とHRTは同等であった。当帰芍薬散は、動悸。興奮しやすい、憂うつなどに効果が高かった。
*基礎研究
・卵巣摘出マウスに経口投与したところ、ストレス負荷によるペントバルビタールナトリウム誘発睡眠時間短縮が抑制された。
*臨床研究
・1年以上月経困難症を有していて、気虚スコア30点以上であり、陰スコア30点以上、瘀血スコア30点以上の女性のうち、整形外科的異常を認めず、低用量ピルおよび抗不安薬を服用していない女性40例を、二重盲検法により当帰芍薬散群20例とプラセボ群20例に分けて比較検討した。
月経周期2サイクルの観察期間をおき、引き続いて治療期間を2サイクル、フォローアップ期間を2サイクルの計6サイクル(半年間)観察し、VAS(痛みのスケール)および、ジクロフェナクナトリウム(鎮痛薬)の使用量で評価した。
その結果、当帰芍薬散群は有意に月経困難症が改善した。
*臨床研究
・揮発月経、無排卵周期症および第一度無月経の患者を対象とし、封筒法によりクロラミン単独投与群52例とクロラミン・当帰芍薬散併用群41例に分け比較した。
排卵率は、単独群では症例別で86.5%(45/52)、周期別で72.6%(136/190)、併用群では症例別で87.8%(36/41)、周期別で70.0%(98/140)であり、両群間に有意差を認めなかった。妊娠率は単独群で21.2%(11/52)、併用群で34.1%(14/41)であり、両群差に有意差を認めなかったが、併用群のほうが妊娠率が高い傾向がみられた。
・不妊症と診断され、体外受精-肝移植を行った93例を当帰芍薬散群と非投与群で比較した。
その結果、移植胚数は当帰芍薬散群で多い傾向があった。採卵当たりの移植キャンセル数は当帰芍薬散群で少ない傾向がみられた。
血中FSH濃度は採卵時点で当帰芍薬散群で有意(p<0.01)に高値を示した。
*基礎研究
・幼若ラットに飲水投与し、hMG (ホルモン剤)を投与したところ、hMG 単独投与に比べ排卵率が増加した。
*基礎研究
・妊娠した高血圧自然発症ラットに飲水投与したところ、胎盤血流および胎児体重の低下が抑制された。
*臨床研究
・本鼻学会嗅覚検査検討委員会が提唱する治療開始時T&Tオルトファクトメーターによる障害の程度が中程度以上で、ステロイド点滴を行っていた嗅覚障害患者の治療成績85例と当帰芍薬散投与症例46例との治療成績を比較した。
結果、軽快と治癒を合計した改善率には両群に差を認めずほぼ7割程度の改善率であった。だが、治癒率では当帰芍薬散投与症例で54%と有意に高い効果を示したのに対し、ステロイド点鼻群では治癒にまで至った症例は24%であった。
*症例報告
・嗅覚障害患者のうち当帰芍薬散を投与した症例で2か月以上経過を追えた19例において、自覚改善度は11例(57.9%)、嗅覚検査の改善は9例(47.3%)で、この9例は自覚的にも改善しており、全体の有効率は47.3%であった。
・ステロイド点鼻療法に抵抗し漢方治療を施行した97例(男32例女65例)を対象とした。当帰芍薬散群は31例で、約43%の症例が治癒または軽快した。
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参考文献
エビデンス・ベース漢方薬活用ガイド 京都廣川出版
漢方処方と方意 南山堂