漢方解説 桂枝茯苓丸とは

こんにちは!YOJO編集部です。

漢方薬一つ一つについて効果や効能、それに伴うエビデンスを中心に取り上げていきたいと思います。

まずは漢方解説第3弾! 桂枝茯苓丸です。

体力中程度もしくはそれ以上の人で、のぼせて赤ら顔のことが多く、下腹部に抵抗・圧痛がある場合に用いる。瘀血(婦人科疾患・出血性疾患などにおこる、うっ血、出血などに関連した諸侯群)に伴う諸症状に適しています。

  • 頭痛、肩こり、めまい、のぼせ、足の冷えなどを伴う場合
  • 無月経、過多月経、月経困難など月経異常のある婦人

(婦人と書いてありますが、エビデンスには男性不妊患者に対するものも出ています。)

証の解説

・典型的な血のとどこおり【瘀血】による症状(月経不順、月経困難、痔疾患、肩こりなど)を改善させる駆瘀血薬です。

血をスムーズに巡らせるために、必要な生薬がうまく配合されている方剤です。

効能効果

体格はしっかりしていて赤ら顔が多く、腹部は大体充実、下腹部に抵抗のある人の次の症状

子宮ならびにその付属器の炎症、子宮内膜炎、月経不順、月経困難、更年期障害(頭痛、めまい、のぼせ、肩こりなど)、冷え症、腹膜炎、痔疾患、睾丸炎

配合生薬

桂皮(ケイヒ)・芍薬(シャクヤク)・桃仁(トウニン)・茯苓(ブクリョウ)・牡丹皮(ボタンピ)

生薬の解説

桃仁・牡丹皮・芍薬は、【瘀血】を取り除きます。芍薬は貧血などの【血虚】を治す補血作用を持ちます。

茯苓は、他の生薬と協力して瘀血に付随して起こる浮腫などの水のとどこおり【水毒】を改善します。また、茯苓は補気にも働きます。

桂皮は、気というエネルギーを巡らせます(理気薬)。血の巡りをスムーズにしてのぼせなどの気が頭に昇ってしまった症状【気逆】を改善します。

名前の由来

五種類の生薬からできており、桂枝と茯苓の名前をとって処方の名前となりました。

エビデンス

生殖器系疾患

*臨床研究

子宮筋腫あるいは子宮腺筋症と診断された24例を対象とした。ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト単独群とGnRHアゴニスト+桂枝茯苓群に分けた。GnRHアゴニストは4か月、桂枝茯苓丸は12か月投与した。

結果、腫瘍縮小効果は、治療4か月でGnRHアゴニスト単独群10例の著効率10%に比べGnRHアゴニスト+桂枝茯苓丸群14例の著効率は42.9%であり、縮小効果が高い傾向がみられた。だが、8,12か月後の腫瘍サイズ縮小率に差はなかった。

子宮筋腫のみの評価においても、治療4か月でGnRHアゴニスト単独群の著効率(0%)に比べGnRHアゴニスト+桂枝茯苓丸群の著効率(50%)は有意に高い縮小効果があった(p=0.0121)。だが、8,12か月後に差はなかった。

*症例報告

子宮内膜症・子宮筋腫と診断されGnRHアゴニスト治療を受けた84例を対象とした。投与開始時より4週毎に更年期様症状の出現状態を検討した。GnRHアゴニスト投与時の更年期様症状の出現率は50/84(59.5%)であり、桂枝茯苓丸併用投与群では47/50(94.0%)の出現を示した。

この結果、更年期障害様自覚症状の推移をみると、桂枝茯苓丸併用群での改善率は改善39/47(83.0%)、消失8/47(17.0%)であった。

*基礎研究

・雌SHNマウスに混餌投与したところ、子宮チミジンシンターゼ活性が減少し、子宮腺筋症の発症が抑制された。

更年期障害

*臨床研究

・77例の正常高値血圧で閉経期もしくは閉経後女性を健康・栄養プログラムの指導のみ受けた47例(コントロール群)と指導+桂枝茯苓丸投与群30例に分けた。

結果、6か月後桂枝茯苓丸投与群は、

収縮期血圧が148.4mmHg→134.8mmHg(p<0.05)

拡張期血圧が89.7mmHg→83.7 mmHg(p<0.05)

脈拍数が79.5/分→73.5/分(p<0.05)

有意に減少した。

発汗、入眠困難、覚醒時の倦怠感、頭痛、めまい等の更年期症状も改善した。さらに、桂枝茯苓丸投与群は、肉体的健康と生活満足の分野における健康関連QOLスコアが増加した。

*基礎研究

・卵巣を摘出したラットに経口投与したところ、Calcitonin gene related peptide (CGRP)誘発皮膚温上昇が抑制された。

男性への影響

*臨床研究

・前立腺がんの内分泌療法としてGnRHアゴニスト(酢酸リュープロレイン)の投与を開始した患者139例のうち、ホットフラッシュを認め、症状が比較的強く、薬物治療を要した16例を対象として桂枝茯苓丸投与前、投与4週後の推移を観察した。

結果、ホットフラッシュの頻度は平均5.1回→3.0回(p=0.0048)、持続時間は平均9.1分→7.3分(p=0.0049)に減少し、ともに4週後に有意差を認めた。

16例中11例で症状の改善を認め、有効率は68.8%、著効例は2例であった。

*症例報告

・過去6か月間に受診した精索静脈瘤のある男性不妊患者で、精子濃度が20×106/mL未満か、精子運動率が50%以下であった21例を対象とした。桂枝茯苓丸は最低3か月投与した。

21例、34精索静脈瘤についての投与前後の触診結果は、投与前Grade3が4、Grade2が13、Grade1が17であり、投与後それぞれの消失率はGrade3が25%、Grade2が69%、Grade1が94%で、全体は76%となった。

精子濃度の評価例は11例であり、著効4例(36%)、有効3例(27%)、不変1例(9%)という成績であった。有効以上は7例であり有効率は64%となった。

漢方解説第3弾!桂枝茯苓丸の記事はいかがでしたか?

YOJOでは桂枝茯苓丸以外にもさまざまな漢方を取り扱っております。

あなたのお悩みや体質に合わせて最適なものをご提案させていただきますので、お気軽にご相談くださいね!


参考文献

エビデンス・ベース漢方薬活用ガイド 京都廣川出版

漢方処方と方意 南山堂