妊娠を意識し始めたら、何を食べたらいいのだろう?逆に何は食べてはだめ?など食生活について気になる方は多いと思います。
こちらの記事では
・妊活中におすすめの食べ物5選
・妊活に効果的な飲み物
・妊活中に避けたい食べ物
を薬剤師が詳しく解説しています。
妊活中で生活習慣や食生活には気を付けているけど、体質改善がうまくいかない方がぜひ一度YOJOの薬剤師にご相談ください。体質チェックとカウンセリングをもとにアドバイスいたします。
妊活中におすすめの食べ物5選
妊娠を考え始めたら、食生活に気を付けることが重要です。何を食べたら良いのか気になる方も多いでしょう。ここでは、妊活中におすすめの食べ物を紹介します。
良質なたんぱく質を含む食品
授かりやすい体質を作るためにまず大切なのはたんぱく質です。たんぱく質を多く含む食品には、肉、魚、大豆、卵、乳製品などが挙げられます。
肉・・・豚・牛・鶏・鴨・猪・鹿
魚・・・魚類・しらす・じゃこ・ツナ・煮干し
大豆・・・豆腐(絹・木綿・高野豆腐)、納豆、茹で大豆
卵・・・鶏卵・うずらの卵・魚卵
乳製品・・・ヨーグルト・牛乳・チーズ・スキムミルク
たんぱく質の必要量は妊娠前で体重1kgに対して1〜1.4gです。[1]目安としては、1回の食事で手のひら1枚分を意識して食べると良いでしょう。魚なら切り身1切れまたは小さめのアジなどは1尾、肉なら70g程度、豆腐なら1丁(200g)、卵なら2個、納豆なら2パックが手のひら1枚分の目安になります。[2]
1回の食事で手のひら1枚分が難しい場合は、いろいろなたんぱく質を組み合わせて1日の合計が手のひら3枚分になるように心掛けましょう。
精製度の低い炭水化物
炭水化物は主に糖質と食物繊維から成り立っており、どちらも腸内細菌の重要な栄養源で、良いエネルギー源です。ただし、選ぶ際に注意が必要です。茶色い炭水化物である玄米や胚芽米、全粒粉、ライ麦パンなど、精製度の低いものを選ぶことがポイントです。これらは「低GI値(グリセミック・インデックス)食品」と呼ばれ、食後の血糖値を急激に上昇させにくい炭水化物です。
玄米が苦手な場合は、白米に「もち麦」を混ぜて炊くことを試してみましょう。もち麦には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維が豊富に含まれており、食後の血糖値の上昇を緩やかにする効果があります。[3]
血糖値の急上昇を防ぐことが妊活に大切
妊活において重要なのは、「血糖値の急上昇を防ぐこと」です[2]。白米や白砂糖、うどんなど、血糖値を急上昇させやすい食品を摂ると、血糖値が高い状態が長く続き、体のたんぱく質(骨・肌・血管など)が焦がされ、肌や血管の老化を引き起こす「糖化」が起こります。この糖化により、女性の卵巣機能が低下することが知られています[4]。男性の場合も、精子の劣化やED(勃起障害)の原因になる可能性があります。
精製度の低い炭水化物を摂取すること以外にも、以下のポイントを意識して食事をしましょう。
血糖値の乱れを防ぐ食生活のポイント
- 食事の際、糖質(炭水化物)を先に摂取しない。食物繊維が豊富な野菜や汁物、魚や肉などのたんぱく質を優先的に摂るようにする。
- 毎日規則正しく3回食事をとる。
- 食事に「酢」を取り入れて、血糖値の上昇を緩やかにする。
良質な脂質を含む食材
油には体に良い油と悪い油があります。良質な油としては、魚油などのオメガ3不飽和脂肪酸を摂ることが良いですが、逆にトランス脂肪酸を摂りすぎると排卵障害のリスクが高まります。トランス脂肪酸を含む食品には、マーガリン、ポーションミルク、ショートニングなどがありますので、これらはできるだけ避けるように心がけましょう。
脂肪酸の種類 | 例 | |
授かりに良い脂質 | オメガ3脂肪酸 | 魚油、アマニ油、エゴマ油、くるみ |
体に良い脂質 | オメガ9脂肪酸 | オリーブ油、菜種油、べに花油 |
体に必要な脂質(摂りすぎ注意) | オメガ6脂肪酸 | 大豆油、コーン油、グレープシード油 |
体に必要な脂質(摂りすぎ注意) | 飽和脂肪酸 | 肉の脂、乳製品の脂質、バター、パーム油(加工食品やスナック菓子などに多く使われる) |
授かりに悪い脂質 | トランス脂肪酸 | マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、加工油脂 ※ファストフード、スナック菓子、パンなどに多く使われる |
オメガ3脂肪酸は細胞膜や神経組織の材料になるほか、体内の炎症を抑え、血糖値の調整をすることで授かり率を高めます。
オメガ3脂肪酸の積極的な摂取とオメガ6脂肪酸の過剰摂取を控えることは、卵巣の老化を遅らせ、高齢期の卵母細胞の質を改善するための効果的かつ実用的な方法である可能性があります。
オメガ3脂肪酸の1日の目安量とは
サバやブリなどの青魚を1日に1切れ食べると、1日分のオメガ3脂肪酸の目標量を満たすことができます。手軽に摂る方法としては、サバ缶やイワシ缶を利用するのも一つのアイデアです。また、アマニ油やえごま油を利用する場合、1日に小さじ1杯が目標量の目安です。[2]
食物繊維を豊富に含む食品
妊活において、腸内環境を整えることも重要です。腸内が健康でないと、栄養素の吸収が十分できず、冷え性などの原因にもなります。同時に、腸内環境は免疫力やストレス軽減にも影響を与えます。
特に、妊娠中は便秘が起こりやすく、赤ちゃんは出産時に母親の腸内細菌を受け継ぐため、妊娠前から腸内環境を整えておくことが大切です。
腸内環境を整えるためには、食物繊維を摂ることが重要ですが、その種類は大きく2つあります。
①不溶性食物繊維
便のカサを増やし、腸を刺激して排便を促す働きがあります。
◎豊富に含む食材:緑黄色野菜、穀類、小麦ふすま、大豆、ごぼう、ココア、きのこなど
◎効率よく摂るポイント:主食を玄米やライ麦パンにしたり、白米にもち麦などの雑穀を加えると効率よく摂取量を増やすことができます。[5]
②水溶性食物繊維
善玉菌のエサになって腸内環境を整える働きがあります。また、妊活にマイナスとなる血糖値の急激な上昇を抑える働きもあります。
◎豊富に含む食材:根菜、いも類、海藻、果物、大麦・ライ麦などの麦類など
◎効率よく取るポイント:納豆、ごぼう、オクラ、ナメコ、キウイ、ドライフルーツ、アボカド、押し麦などを意識して摂りましょう。
食物繊維以外に腸内環境を整える食品
ヨーグルトやキムチ、味噌などの発酵食品、玉ねぎやはちみつなどに多いオリゴ糖もおすすめです。
ビタミンやミネラルを豊富に含む食品(ビタミンD、葉酸、鉄)
妊活において重要なのは、バランスの良い食事を通じてビタミンやミネラルを摂取することです。特に、「葉酸」「鉄」「ビタミンD」は妊娠に特に重要な栄養素とされています。
葉酸
葉酸はビタミンB群の一種で、赤ちゃんの神経管閉塞障害のリスクを低減する役割があります。そのため、日本人の食事摂取基準(2020年度版)では「妊娠を計画している女性は妊娠1ヶ月以上前から、通常の食事に加えて葉酸400μgのサプリメントを毎日摂取しましょう」と推奨されています。[6] 女性が妊娠に気づくのは早くても4週目以降であり、この時期には神経管が形成されているため、妊娠が確定してから葉酸を摂取しても神経管閉塞障害の予防には遅すぎることが分かっています。妊娠を意識したら、早めに葉酸の摂取を心掛けましょう。
葉酸を多く含む食材
ほうれん草、モロヘイヤ、芽キャベツ、ブロッコリー、枝豆、納豆、海苔、いちご、マンゴー、アボカドなど
鉄分
葉酸と同様、女性が不足しがちなのが鉄分です。鉄が不足すると、体内で酸素が適切に行き渡らず、卵巣や子宮の機能が低下する可能性があります。妊娠中に適切な鉄分を補給することは、赤ちゃんの出生体重を増やす可能性があると報告されています。そのため、妊活中から妊娠中まで、積極的に鉄分を摂ることが重要です。
鉄分を多く含む食材
牛もも肉、煮干し、カツオ缶詰、牛ヒレ肉、納豆、乾燥ひじき、小松菜、あさり、豚ヒレ肉など
◎効率良く摂るポイント
鉄分にはヘム鉄(肉類、魚類など動物性食品)と非ヘム鉄(ほうれん草やひじきなど)があり、植物性食品に含まれる非ヘム鉄の吸収率は2〜5%と低いため、ビタミンCと一緒に摂ることで吸収率を高めることができます。
ビタミンD
ビタミンDは通常、骨の健康に寄与するビタミンとして知られていますが、近年の研究から妊娠にも重要な役割があることが分かっています。
ビタミンDは卵巣年齢(AMH)、卵胞の発育(=妊娠率)、体外受精の成功度に影響を与えるだけでなく、不足することで不育症や着床障害のリスクが高まる可能性が報告されています[1]。また、男性でもビタミンD濃度が高い男性ほど、精子の活性が良いという研究結果もあります[2]。
ビタミンDを多く含む食材
紅鮭、うなぎ、サンマ、しらす干し、さば、きくらげ、マグロ水煮缶、アジ、まいたけなど
◎効率よく摂るポイント
・魚ときのこを積極的に摂りましょう。魚は脂の多い青魚、しらすやジャコ、きのこはきくらげや干ししいたけ、まいたけに特にビタミンDが多いのでおすすめです。
・紫外線対策を過度にせず、日光を浴びることも大切です。紫外線により体内でビタミンDを合成することができます。
妊活中から葉酸を摂ることが大切
葉酸は、胎児の神経管閉塞障害の予防以外にも、受精卵の正常な発育や流産の低下も期待できるため、まさに妊活ビタミンといえます。
葉酸を効率良く摂るコツ
葉酸は水溶性ビタミンであるため、水に溶けやすく調理によって失われやすいという特徴があります。また、加熱や光によって栄養が失われやすいため、加熱も水にさらすのも短時間でササッと行うことが効率よく摂るためのポイントです。食材を保存する場合は、なるべく日の当たらない冷暗所にしましょう。
葉酸を摂るのにおすすめの食材が生で食べられる食材です。いちごやマンゴーなどのフルーツやアボカド、納豆、海苔などを意識して摂るようにしましょう。また、春菊や水菜などを生で摂るサラダもおすすめです。
葉酸サプリメントも妊活中から飲むのがおすすめ
なぜ葉酸は食事摂取に加え、サプリメントも必要とされているのでしょうか。それは、食材が含む葉酸は水溶性で調理によって失われやすく、体内への吸収率も高くないので不足しやすいからです。
これに対してサプリメントに含まれる合成型の葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)は通常の食事中の葉酸と比べると体内で使用される割合が高いことが報告されています。[6] そのため、食事からの葉酸摂取に加えてサプリメントなどの栄養補助食品からも合成型の葉酸として摂取することが推奨されています。
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妊活中におすすめのサプリメントや、葉酸以外の成分についてもこちら▼の記事で詳しく解説しています。
抗酸化作用のある食材
女性は加齢とともに卵子が老化し、同様に男性も精子が老化して妊娠しにくくなる可能性があります。老化には、体を錆びさせる物質である活性酸素が関与しています。通常、体内で発生する活性酸素は抗酸化成分によって消去されますが、ストレスや不規則な食生活によって活性酸素が過剰に発生すると、抗酸化が追いつかなくなり、老化の兆候が現れることがあります。
酸化ストレスを抑えるためには、抗酸化作用のある栄養素(ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE)、ビタミンD、オメガ3脂肪酸などが効果的です。これらの栄養素は、色鮮やかな野菜や果物に多く含まれています。
妊活に効果的な飲み物
妊活におすすめの食べ物をご紹介しましたが、では飲み物では何がおすすめなのでしょうか?以下で解説します。
水
基本的な水分摂取は、水がおすすめです。ミネラルウォーターにも軟水や硬水など種類があり、硬水だとマグネシウムやカルシウムが豊富に含まれています。成人は1日あたり水分補給として1.5リットルの水が必要とされています。一度にたくさん飲むのではなく、こまめな水補給を心掛けましょう。
ノンカフェインのハーブティーやお茶
お茶を飲む時には、カフェインの含まれていないハーブティーなどがおすすめです。中でも、ルイボスティーにはビタミンやミネラルが豊富で抗酸化作用もあります。その他にも、むくみの解消に役立つ黒豆茶などもおすすめです。ハーブティーの中には、妊娠中には避けたいものも存在するので購入する際には注意が必要です。
豆乳
豆乳には葉酸が豊富に含まれています。加えて植物性たんぱく質、鉄、なども含まれていて妊活に必要な栄養素が補給できます。調製豆乳、無調整豆乳など種類がありますが、できれば砂糖などが添加されていない無調整のものを選びましょう。甘みが欲しい場合は、少量のはちみつやオリゴ糖を加えるのがおすすめです。
ビタミンCを含む飲み物
鉄分の吸収を助けるビタミンCを含んだ飲み物もおすすめです。簡単にできるのはレモン汁を絞った水です。
スムージーやジュース
食欲がない時でも、栄養を摂りやすいビタミンやミネラルが豊富なスムージーやジュースがおすすめです。ただし、砂糖などが添加されたものではなく、できるだけ生の野菜や果物を使用したスムージーを選ぶように心がけましょう。
妊活中の男性におすすめの食べ物
約50%の不妊の原因は男性に起因していると言われています。妊娠を考え始めたら、女性だけでなく男性も食生活を見直すことが重要です。以下では、おすすめの食材を3つ選び、解説します。
緑黄色野菜
精子を活性化させるために大切なのは、活性酸素や酸化ストレスを抑えることです。そのために効果的なのが、抗酸化作用のある緑黄色野菜です。赤や緑、黄色などカラフルな色の濃い野菜を意識して食べるようにしましょう。
緑黄色野菜の例:トマト、パプリカ、にんじん、ほうれん草、ピーマン、小松菜、しそ、ニラ、ブロッコリー、モロヘイヤなど
背の青い魚
緑黄色野菜と同様、抗酸化作用がある食材として知られているのが背の青い魚です。青魚には、DHA・EPAといった体に良い油(不飽和脂肪酸)が豊富に含まれており、中性脂肪を溶かし血液をサラサラにする効果、抗炎症効果があります。
背の青い魚の例:アジ、イワシ、サバ、サンマなど
亜鉛が豊富な食品
亜鉛は男性ホルモンの合成や精子の形成に必要と言われています。精子のコンディションを高めることから別名「セックス・ミネラル」と呼ばれています。男性においては臓器中の亜鉛濃度が最も高いのが前立腺で、前立腺における亜鉛の役割は精子形成の関与が考えられています。
亜鉛を多く含む食材:牛肩ロース(赤み)、牡蠣水煮、牛もも肉、うなぎ、牛ヒレ肉、高野豆腐、煮干し、卵黄、アーモンド、木綿豆腐など
妊活のポイントや不妊治療について詳しく知りたい方は、こちら▼の記事もおすすめです。
妊活中に避けた方が良い食べ物
これまでは妊活中におすすめの食材を紹介してきました。こちらでは逆に、避けた方が良い食材をご紹介します。
カフェインを多く含む飲み物
カフェインの過剰摂取は赤ちゃんの成長に悪影響を及ぼすとされ、流産との関連が指摘されていますが、具体的な量は決まっていません。安全を第一に考え、1日に1杯までにしておきましょう。コーヒー、紅茶だけでなく、栄養ドリンクなどにもカフェインを含むものがあるので注意しましょう。
清涼飲料水
砂糖がたっぷりと含まれた清涼飲料水は排卵障害による不妊のリスクを高めます。
ファストフードや市販の菓子類
ファストフードや市販の菓子類、マーガリンの中には「トランス脂肪酸」が多く含まれています。トランス脂肪酸を摂りすぎると、体内で炎症が起こり、卵巣の機能が低下して排卵を乱す原因になります。また、流産や子宮内膜症のリスクを上げたり、男性では精子数が減るといった報告もあります。
アルコール
アルコールは胎盤を通過してしまうことから、胎児性アルコール症候群(FAS)のリスクが高まるため、妊娠を意識し始めたら飲酒は控えておく方が良いでしょう。もし飲む場合は、妊娠の可能性がない時期に飲むようにしましょう。
食生活は気を付けているけど、体質改善をもっと頑張りたい方には漢方薬もおすすめです。こちら▼の記事で妊活におすすめの漢方薬を詳しく解説しています。
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【参考文献】
[1]Luvtelli Tokyo&New York監修 Baby BookⅡ
[2]松林秀彦、長有里子 監修 生殖専門医と妊活栄養士が導く 授かるための2人の生活術
[3]農研機構 もち性大麦配合ご飯は大麦の割合が高いほど食後血糖値の上昇を抑える
[4]八木雅之、米井嘉一 Glycative Stress Research 2019; 6 (1): 064-067 糖化ストレスとアンチエイジング : 11.糖化ストレスと不妊症
[5]厚生労働省 e-ヘルスネット 食物繊維の必要性と健康
[6]厚生労働省 e-ヘルスネット 葉酸とサプリメント‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果