五苓散が二日酔いに効くのは本当?飲み方のポイントや注意点を解説

酔って眠っている女性

お酒を飲みすぎた日の翌日に起こるつらい症状、二日酔い。
「二日酔いには五苓散(ごれいさん)が効く」
と聞いたことがある方は多いかもしれません。

この記事では、五苓散が二日酔いにどのように有効なのかや、飲み方のポイント、注意点についても薬剤師がお伝えします。

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そもそも二日酔いはなぜ起こる?

ビールとおつまみ

二日酔いは、過度のアルコール摂取の後に起こる身体的な不快感が、翌日まで持ち越された状態をさします。具体的な症状には以下の症状がみられます。

  • 頭痛… アルコールが体内で分解されてできた代謝物(アセトアルデヒド)が脳の血管を拡張することで起こります。
  • 吐き気・嘔吐:…アルコールが胃粘膜を刺激することで胃が荒れやすくなります。
  • 疲労感… 脳のエネルギー不足を引き起こし、疲労感をもたらします。
  • 口渇:…アルコールには利尿作用があり、脱水症状を引き起こします。
  • めまい… 平衡感覚を司る三半規管などに影響を与えるために起こりやすくなります。 
  • 判断力の低下… 神経伝達物質の働きに影響を与えることで起こるとされています。

二日酔いが起こるのは、アルコールの代謝物である有害物質「アセトアルデヒド」が分解されずに蓄積されるためであると以前は考えられていました。しかし、アルコールやアセトアルデヒドの血中濃度が低くても二日酔いの症状が出ることから、近年では、必ずしもアセトアルデヒドの分解能力(=体質)だけが二日酔いの原因ではないと考えられています。

二日酔いのメカニズムは完全には解明されていませんが、ホルモン異常や脱水、炎症反応の亢進、酸塩基平衡や電解質の異常、胃腸障害などの要因も複雑に絡み合うことで起こるのではないかと推察されています。[1]

漢方から考える「二日酔い」

気血水

では、漢方では二日酔いをどのように考えるのでしょうか。
漢方医学では、「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」がバランス良く体内を巡ることで健康を維持できるとされています。
漢方の観点から二日酔いは、 体内の「水」の巡りが悪くなって起こる「水毒(水滞)」の状態ととらえます。
水毒(水滞)では例えば以下のような症状が起こります。

  • むくみ(浮腫)…体内に余分な水がたまり、顔や体がむくみやすくなります。関節に水がたまると関節痛の原因にもなります。
  • 吐き気や下痢…脾(胃腸)でも水の巡りが滞ると、吐き気や嘔吐、下痢、腹部膨満感などの不調が起こりやすくなります。
  • 倦怠感…体に余分な水分がたまっていることで体が重だるく感じます。頭痛や頭重にもつながります。
  • めまい…耳で水の巡りが滞ると、内耳のむくみやリンパ水腫が起こりめまいが生じやすくなります。

五苓散とは

漢方生薬

五苓散は「水」の巡りを整える、代表的な利水剤の一つです。
利水効果や健胃作用などの働きをもつ、茯苓(ぶくりょう)、猪苓(ちょれい)、沢瀉(たくしゃ)、朮(じゅつ)、桂枝(けいし)の5種類の生薬から構成され、水毒(水滞)の状態を改善する効果が期待できます。

五苓散に配合される朮は、メーカーによって蒼朮(そうじゅつ)と白朮(びゃくじゅつ)の2種類があります。両者の効能はよく似ていますが、白朮は健胃作用が強く、蒼朮は利水作用が優れているとされています。[2]

西洋薬の利尿剤とは異なり、五苓散は体内の水分バランスを正常に整えることから脱水や電解質異常の副作用が起こりにくいことも、二日酔いの際に取り入れやすい理由の一つと言えるでしょう。

五苓散を二日酔いに飲む際のポイント

女性薬剤師

ここでは、五苓散を飲む際のポイントや注意点についてお伝えします。

五苓散を飲むタイミング

五苓散は、通常1日2~3回に分けて継続して服用する漢方薬です。
ただし二日酔いに関しては即効性も高いことから、不調を感じた必要時に服用すれば良いでしょう。飲むタイミングは空腹時である「食前」または「食間」に飲むのが一般的です。二日酔いの予防として服用する場合にも、宴会の当日にお酒や食事をとる前に飲むのが良いでしょう。

五苓散の服用が向く人と、効かない場合の対処法

五苓散は、体力に関わらず服用できる処方です。上述のとおり、むくみや頭重、倦怠感、吐き気などの「水毒(水滞)」の症状が見られる方に向きます。

ただし、二日酔いで五苓散を服用する場合、5~6回服用しても効果が見られないときには体質や症状に合っていない可能性があります。[3]その場合はいったん服用を中止し医療機関を受診しましょう。

五苓散を服用する際の注意点(副作用・飲み合わせ)

五苓散の副作用としては、発赤や発疹、かゆみなどの皮膚症状が頻度不明で報告されています。[3]そのほかにも服用後に気になる症状が出た場合には医療機関に早めに相談するようにしましょう。

また、五苓散の飲み合わせについて、禁忌とされている医薬品はありません。ただし、他の医薬品と併用する場合には念のため医師や薬剤師、登録販売者に一度相談するようにしましょう。
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五苓散の他に二日酔いに効果の期待できる漢方薬とは

漢方薬

ここまで五苓散についてお伝えしてきましたが、他にも二日酔いの症状に効果の期待できる漢方薬もあります。ここでは、2種類の漢方薬についてお伝えします。

【赤ら顔で、胃もたれや頭痛、動悸が気になる方に】黄連解毒湯(おうれんげどくとう)

黄連解毒湯は、体内の余分な熱を冷まして炎症を抑える作用のある漢方薬です。
お酒を飲んだ当日に、酔いがなかなか醒めずに顔が赤くなっている時に服用すると良いでしょう。頭痛や動悸がする場合や、お酒と共に脂っこいものを食べ過ぎて胃のむかつきがある場合にもおすすめです。
体力中等度以上の方に向く処方です。

【吐き気や、お腹がゴロゴロして下痢をしている方に】半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)

半夏瀉心湯は、胃腸の働きを高めて消化不良や下痢、吐き気を改善する漢方薬です。
二日酔いで胃がむかむかしたり、お腹がゴロゴロしたりする時に服用すると良いでしょう。お腹がゴロゴロと鳴る状態は、漢方医学では「腹中雷鳴(ふくちゅうえらいめい)」といって、腸の働きが鈍っている状態とされます。
体力中等度の方に向く処方です。

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二日酔いに効果の期待できる市販薬とは

ドラッグストア

ここでは、薬局やドラッグストアで購入できる漢方商品の一例をご紹介します。

「クラシエ」漢方五苓散料エキス顆粒[12包]

「クラシエ」漢方五苓散料エキス顆粒
引用元:クラシエHP

二日酔いのむくみや頭痛がつらい方に

五苓散エキスを有効成分とした漢方商品です。1日量として医療用漢方薬の約1/2量の五苓散エキスを配合しています。

分類 第2類医薬品
効能効果 体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔
形状 顆粒剤
用法・用量 1日3回食前または食間に水または白湯にて服用。
成人(15歳以上):1回1包
15歳未満7歳以上:1回2/3包
7歳未満4歳以上:1回1/2包
4歳未満2歳以上:1回1/3包
2歳未満:1回1/4包
内容量 12包

大正漢方胃腸薬〈内服液〉

引用元:大正製薬HP

2種類の漢方薬処方で、飲み過ぎや食べ過ぎによる吐き気・胸やけに

五苓散と黄連解毒湯、2つの漢方薬を配合した商品です。

分類 第2類医薬品
効能効果 飲みすぎ、はきけ(二日酔・悪酔のむかつき、むかつき、胃のむかつき、嘔気、悪心)、 食欲不振、消化不良、胃部・腹部膨満感、胃弱、食べすぎ、胸やけ、もたれ、胸つかえ、 嘔吐
形状 液剤
用法・用量 1日3回食前または食間に水またはお湯にて服用。
成人(15歳以上):1回1本
内容量 1本30mL

ツムラ漢方15黄連解毒湯エキス顆粒A

引用元:ツムラHP

二日酔いで顔がのぼせて胃もたれする方に

黄連解毒湯エキスを有効成分とした漢方商品です。1日量として医療用漢方薬の1/2量の黄連解毒湯エキスを配合しています。

分類 第2類医薬品
効能効果 体力中等度以上で、のぼせぎみで顔色赤く、いらいらして落ち着かない傾向のあるものの次の諸症:鼻出血、不眠症、神経症、胃炎、二日酔、血の道症(※)、めまい、動悸、 更年期障害、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ、口内炎
形状 顆粒剤
用法・用量 1日2回食前または食間に水またはお湯にて服用。
成人(15歳以上):1回1包
15歳未満7歳以上:1回2/3包
7歳未満4歳以上:1回1/2包
4歳未満2歳以上:1回1/3包
内容量 20包

半夏瀉心湯エキスEX錠クラシエ[36錠]

引用元:クラシエ

二日酔いの吐き気や下痢がつらい方に

半夏瀉心湯エキスを有効成分とした漢方商品です。1日量として医療用漢方薬の4/5量の半夏瀉心湯エキスを配合しています。

分類 第2類医薬品
効能効果 体力中等度で、みぞおちがつかえた感じがあり、ときに悪心、嘔吐があり食欲不振で腹が鳴って軟便又は下痢の傾向のあるものの次の諸症:急・慢性胃腸炎、下痢・軟便、消化不良、胃下垂、神経性胃炎、胃弱、二日酔、げっぷ、胸やけ、口内炎、神経症
形状 錠剤
用法・用量 1日3回食前または食間に水またはお湯にて服用。
成人(15歳以上):1回4錠
15歳未満7歳以上:1回3錠
7歳未満5歳以上:1回2錠
内容量 36錠

薬の服用以外でできる二日酔いへの対処法&予防法とは

最後に、二日酔いに効果的な対処法と予防法についてお伝えします。

【対処法1】水分補給を心がける

お酒を飲みすぎた時には、水分を取っているつもりでもアルコールの利尿作用により体は脱水状態になりやすいです。とくに脱水が気になるときには、水よりも経口補水液などの電解質を含んだ飲料水を利用すると体内により吸収されやすくなります。

また、水分補給はお酒を飲んでいる時から心がけましょう。お酒を飲みながら併せて水分も補給することで、飲酒量を減らしたり胃内のアルコール濃度を下げたりすることにも役立ちます。お酒のあてによく出される枝豆の塩ゆでやもろきゅう、トマトサラダなどは電解質を多く含む食品のため、水分補給と共に食べるのがおすすめです。

【対処法2】二日酔いに良い栄養素も摂取する

二日酔いの時に効果的な栄養素として、ビタミンがあげられます。とくにビタミンCは、アルコールの代謝物である有害物質「アセトアルデヒド」の分解をサポートしたり肝臓の酵素の働きを活性化したりする作用があります。
また、アルコールを代謝する際にはビタミンB1が多量に消費されます。ビタミンB1は糖質の代謝にも関与しており、不足すると糖質をエネルギーに変換できずに疲労感が抜けない原因となるため積極的に摂取するように心がけましょう。

◎ビタミンCが多く含まれる食べ物:柿やオレンジ、キウイなどの果物類、トマトやブロッコリー、赤ピーマンなどの野菜類

◎ビタミンB1が多く含まれる食べ物:豚肉、豆腐や枝豆などの大豆食品、ナッツ類、穀類など

【対処法3】向い酒は避ける

二日酔いの時にさらに飲酒をする「向い酒」は飲酒には逆効果です。症状がラクになったと感じる場合があるのはアルコールで脳がマヒしているためです。
向い酒はアルコールを分解する肝臓の負担をさらに増やして、習慣化するとアルコール依存症になる恐れもあるため、絶対にやめましょう。

【予防法1】適量を守って、ゆっくり飲酒する

二日酔いを予防するのに最も大切なことは、お酒を飲み過ぎないことです。
厚生労働省は、適度な飲酒の目安として、1日平均純アルコール約20g程度としています。[4]

【主な酒類の量の目安】

ビールアルコール度数5%中瓶1本(500mL)
ウイスキーアルコール度数43%ダブル1杯(60mL)
焼酎アルコール度数35%1合(180mL)
ワインアルコール度数12%1杯(120mL)
日本酒 アルコール度数15% 1合(180mL)

ただし適量には個人差もあるため、まずはご自身の適量を知り、飲み過ぎないことが大切です。また体調不良の場合には、アルコール分解能力が低下するために通常よりも酔いやすくなるため注意しましょう。

【予防法2】空腹時は避けて食事と一緒に飲酒する

空腹時にお酒を飲むと、アルコールが胃の粘膜を刺激するため胃が荒れやすくなります。さらに、空っぽの胃にお酒が入ることで、アルコールが急速に吸収されてしまい、早く酔いが回ることもあります。

食事と一緒に飲酒をすることで、胃の中の食べ物が胃粘膜を保護する役割を果たしてくれますし、食べ物を口に運ぶことで飲酒のスピードも自然とゆっくりになり、アルコールの吸収がゆるやかになります。

YOJOでは、体質に合った漢方薬の選び方や生活習慣を改善するためのアドバイスなども薬剤師から受けることができます。なかなか改善されない不調に悩んでいる方は、YOJOの薬剤師に相談するのも良いでしょう。

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【参考文献】
[1]厚生労働省e-ヘルスネット 二日酔いのメカニズム
[2]神戸薬科大学 薬用植物園レター
[3]厚生労働科研究費「漢方製剤の安全性確保に関する研究」五苓散の確認票
[4]厚生労働省 アルコール