漢方薬「五苓散」の効果はすごい?利尿剤との違いや服用のポイントも解説!

薬を持つ女性

五苓散(ごれいさん)には、体内の水分代謝の異常を調節して、正常な状態へと導く作用があります。

むくみ、めまい、下痢、二日酔い、暑気あたり…など様々な症状に効果が期待できる五苓散ですが、服用する際には、体質・症状に合っているかや、服用の注意点についてきちんと確認して取り入れることが大切です。

この記事では、五苓散の効果や副作用、よくある質問について薬剤師がくわしく解説します。漢方薬の服用について不安な方はYOJOの薬剤師にご相談ください。

体質チェックをはじめる

五苓散とは

漢方生薬

五苓散がどのような漢方薬なのかをお伝えするために、まずは漢方医学の考え方と五苓散の働きについて解説します。

漢方医学の「気・血・水」の考え方と五苓散の働き

気血水

漢方医学では、「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」がバランス良く体内を巡ることで健康を維持できると考えられています。

気(き)…体や心を動かすエネルギーのことです。
血(けつ)…血液や血液に含まれる栄養をさします。
水(すい)…リンパ液、汗、涙、だ液など、血液以外の体液をさし、からだ全体にうるおいを運びます。

このうち体内で水の巡りが悪くなった状態を「水毒(すいどく)」または「水滞(すいたい)」と呼び、以下のような症状が現れます。

【水毒(水滞)で起こりうる症状】
むくみ、めまい、頭痛・頭重、めまい、頻尿、手足の冷え、関節痛など

五苓散は「水」の巡りを整える、代表的な漢方薬の一つであり、水毒(水滞)の状態を改善する働きがあります。

五苓散に含まれる生薬とは

五苓散は、以下の5種類の生薬から構成される漢方処方です。[1]

・茯苓(ぶくりょう)…水分代謝を正常に整える作用がある。
・猪苓(ちょれい)…排尿を促し、不要な水分を取り除く作用がある。
・沢瀉(たくしゃ)
…利尿作用や、口渇を緩和する作用がある。
・白朮(びゃくじゅつ)または蒼朮(そうじゅつ)…余分な水分を取り除き、また胃腸の働きを高める作用がある。
・桂枝(けいし)…体を穏やかに温めて発汗を促すと共に、余分な熱や痛みを取る発散作用や健胃作用がある。

五苓散の服用が向く人とは

上述の作用から、五苓散は体力に関係なく、以下のような症状がある場合に効果が期待できる可能性があります。[1]

・口渇や尿量減少がある。
・水を飲むと吐いてしまう(水逆)。
・全身にむくみ傾向がある。
・みぞおちの辺りをたたくとポチャポチャと音(振水音)がする。

体質や症状に合った漢方薬の選択についてはYOJOの薬剤師に相談することもできます。

体質チェックをはじめる

五苓散の効果

足のむくみのマッサージ

五苓散の服用で改善が期待できる症状・疾患には以下のようなものがあります。

むくみ(浮腫)

むくみは、皮膚の下にある皮下組織の部分に余分な水分がたまっている状態です。体内の水分は、細胞や血管の中を絶えず行き来してバランスを保っていますが、血行不良や過剰な塩分摂取などが引き金となってこのバランスが崩れると、行き場のなくなった水分が細胞の隙間にたまってむくみの原因となります。

五苓散は、「水」の巡りを整えて体内の水分の偏りを調整することでむくみを改善する効果が期待できます。

むくみや、むくみに効く漢方薬についてさらに知りたい方はコチラ▼
【関連記事】むくみや冷えの解消に漢方が効果的?おすすめケアと体質別の選び方とは

【関連記事】【薬剤師監修】足のむくみを解消する方法は?ツボ6選も紹介

めまい・耳鳴り

めまいや耳鳴りを起こす原因の一つとして、体内の余分な水分が、頭部で脳脊髄液や耳の内リンパ液の循環に影響を及ぼしている可能性があげられます。このような「水毒(水滞)」によるめまいや耳鳴りに対して、五苓散は効果的です。
急性期の目がぐるぐると回るような回転性めまいに、頓用薬として用いられることも多くあります。

めまいや耳鳴りに効く漢方薬についてさらに知りたい方はコチラ▼
【関連記事】めまいに効く漢方薬は?原因やおすすめの市販薬も解説
【関連記事】耳鳴りに効く漢方薬とは?おすすめの市販薬や養生法についても解説

低気圧頭痛

低気圧頭痛は、気圧や湿度の変動に伴って起こる頭痛をいいます。
低気圧頭痛が起こる詳しいメカニズムは解明されていませんが、漢方医学では体に余分な湿気(湿邪:しつじゃ)が入り込んで「水」の代謝に異常が生じている状態だととらえて治療を行います。

五苓散は、低気圧頭痛や低気圧に伴って起こる体のさまざまな不調に対して効果が期待できる場合があります。

低気圧頭痛や、低気圧頭痛に効く漢方薬についてさらに知りたい方はコチラ▼
【関連記事】低気圧頭痛はなぜ起こる?雨の日の不調の原因とおすすめ対策とは

【関連記事】低気圧頭痛に漢方薬は効くの?体質や不調に合った選び方も解説

急性胃腸炎

急性胃腸炎は、細菌やウイルス感染によって胃腸の粘膜に炎症が起きる疾患で、嘔吐や下痢、腹痛などの症状が現れます。

嘔吐を伴う下痢の場合、漢方医学では上部消化管の「水毒(水滞)」の状態と捉えて五苓散が使用される場合があります。

下痢に効く漢方薬についてさらに知りたい方はコチラ▼
【関連記事】下痢に効く漢方薬はある?選び方やおすすめ市販薬も解説

二日酔い

二日酔いとは、お酒を飲みすぎた日の翌日に起こる、吐き気や頭痛、顔のむくみ、下痢などの症状をいいます。これも、漢方医学の観点からみると「水毒(水滞)」の状態ととらえます。
五苓散は二日酔いの改善だけでなく、飲酒をする前後に服用することで二日酔いを予防する効果も期待できます。

暑気あたり

暑気あたりとは、高温多湿の日本の夏で起こりやすい、倦怠感や食欲不振、頭痛、めまいなどの症状が複合的に現れる体調不良をいいます。

私たちの体は、自律神経の働きにより気温の変化に応じて汗をかいて体温を一定に保つ働きがあります。しかし、高湿度の環境下で汗が十分に蒸発できなかったり、室内外の温度差で自律神経の働きが乱れて発汗をうまくコントロールできなくなったりすると、体に熱がこもって暑気あたりを引き起こしてしまうのです。

五苓散は、体内の水分バランスを整えることで脱水状態を緩和し、暑気あたりの症状を改善する効果が期待できます。

漢方薬「五苓散」の水分調節メカニズムと、西洋薬「利尿剤」との違い

トイレと高齢者

五苓散は古くから用いられる代表的な利水薬ですが、近年の研究で五苓散が「アクアポリン」と呼ばれる水チャネルに作用して水分調節作用を示す可能性が報告されています。

五苓散に含まれる蒼朮・猪苓が、水を細胞内へと取り込むタンパク質であるアクアポリンの働きを阻害することで、異常な水の移動を抑制し、結果的に体内の水分バランスを正常に整えてくれるのです。[2][3]

体の状態にかかわらず水分を排出してしまう西洋薬の利尿剤とは異なり、五苓散は余分な水分があるときは利尿作用、脱水状態のときは水分の排出を抑える抗利尿作用を示します。

そのため必ずしも尿量やトイレの回数が増えるわけではないことから、五苓散は脱水や電解質異常の副作用が起こりにくいのが特長です。

五苓散の服用のポイントと注意点

注意点

上述のように利尿剤のような副作用は起こりにくいものの、五苓散の効果をきちんと引き出すためには、正しい服用方法で取り入れることが大切です。

ここでは、五苓散を服用する際のポイントや注意点について詳しく解説します。

五苓散の用法・用量

五苓散は1日7.5gを2~3回に分けて、水または白湯で服用します。[4]
ただし、用法用量は商品や服用者の症状、年齢・体重などによっても異なるため、必ず医師の指導や添付文書の指示に従って服用しましょう。

また服用するタイミングは食前または食間です。食前とは食事の20~30分前、食間とは食事と食事の間2時間くらいの空腹時を指します。

五苓散が飲みにくい場合のおすすめの飲み方

五苓散は、味がわずかに辛く[4]、なかには飲みにくいと感じる方もいるかもしれません。漢方薬は以下のような工夫をすることで、ぐんと飲みやすくなります。

【方法①】水または白湯を先に口の中に含んでから服用する
漢方薬の顆粒を摂取する前に水または白湯を口に含み、その上で漢方薬を服用します。これにより、漢方薬が舌に直接触れないため苦みを感じにくくする効果が期待できます。
【方法②】オブラートに包んで服用する
オブラートで漢方薬を包んだ後、少量の水の入ったコップに入れて溶かします。数分後オブラートが徐々に溶け始めたあたりで水と一緒に飲み込むと、つるっとのどを通って漢方薬の味を感じずに服用しやすくなります。

また、吐き気があるときに五苓散を服用する場合は、冷たい水で服用したり、熱いお湯に五苓散を溶かした後に氷で冷たくして服用したりする飲み方(冷服)がおすすめです。

五苓散の副作用

五苓散の副作用としては、頻度不明で起こりにくいものの、以下のような症状が報告されています。 [4]

過敏症 発疹、発赤、掻痒など
肝臓 肝機能異常(血液検査でAST・ALT値などの上昇)

気になる症状があれば、服用を止めてすぐに医療機関を受診するようにしましょう。

五苓散の服用を避けた方が良い人

五苓散には「桂皮」の生薬が含まれます。そのため、シナモンアレルギーの方が五苓散を服用するとアレルギー症状を起こす可能性があることから、服用は避けるようにしましょう。[5]
また他の医薬品と同様に、妊娠・授乳中の方は服用する前に、必ずかかりつけ医に確認しましょう。

五苓散の飲み方や注意点については、YOJOの薬剤師に相談することもできます。

体質チェックをはじめる

五苓散の市販薬について

ドラッグストア薬剤師と患者

五苓散は市販でも購入できる漢方薬です。ドラッグストアや薬局で販売されている五苓散の商品には、例えば以下のようなものがあります。

ツムラ17漢方五苓散料エキス顆粒

ツムラ17漢方五苓散料エキス顆粒
引用元:ツムラHP

お昼に服用なし:1日2回服用の顆粒タイプ

五苓散エキスを有効成分とした漢方商品です。1日量として医療用漢方薬の2/3量の五苓散エキスを配合しています。2歳以上から服用できます。

分類 第2類医薬品
効能効果 体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔
形状 顆粒剤
用法・用量 1日2回食前または食間に水またはお湯にて服用。
成人(15歳以上):1回1包
15歳未満7歳以上:1回2/3包
7歳未満4歳以上:1回1/2包
4歳未満2歳以上:1回1/3包
内容量 10包(5日分)/48包(24日分)

クラシエ五苓散錠 

クラシエ五苓散錠
引用元:クラシエHP

顆粒剤が苦手な方へ:1日3回服用の錠剤タイプ

五苓散エキスを有効成分とした漢方商品です。5歳以上から服用できます。

分類 第2類医薬品
効能効果 体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔
形状 錠剤
用法・用量 1日3回食前または食間に水または白湯にて服用。
成人(15歳以上):1回4錠
15歳未満7歳以上:1回3錠
7歳未満5歳以上:1回2錠
内容量 240錠(20日分)

五苓散の服用でよくある質問

Q&A

ここでは、五苓散の服用でよくある質問とその回答について、まとめてお伝えします。

五苓散はどれくらいで効果が出るの?

五苓散は、効果が出るまでの時間が比較的早い漢方薬です。
とくに頭痛や倦怠感など、症状によっては数時間程度で効果が期待できる場合もあります。頭痛の診療ガイドライン2021では、五苓散の頓用での使用について以下のように述べています。

五苓散は、片頭痛、緊張性頭痛、二次性頭痛と頭痛全般に広く用いられる。基本は定期服用であるが、低気圧で発症しやすい頭痛に関しては、普段の服用量に追加するか、定期服用していない場合には、頓服での使用も可能である。

ただし、体質改善を目的とした服用であれば、効果を感じるまでに少なくとも1か月程度は毎日継続して服用することが大切です。

五苓散に痩せる効果はある?

五苓散は、いわゆる「やせ薬」ではないため、一般に痩せる効果は期待できないでしょう。
しかし五苓散には、体内の水分代謝を正常にしてむくみを改善する効果があるため、「水太り」に悩んでいる方の中には「飲み続けたらスッキリしてきた」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

ダイエットに効果の期待できる漢方薬について、くわしく知りたい方はこちら▼の記事もお読みください。

漢方はダイエットに効果的?おすすめ漢方薬や体質別の選び方を紹介

五苓散に飲み合わせの悪い薬はある?

五苓散の飲み合わせで禁忌とされている医薬品はありません。
そのため基本的には問題ないと考えられますが、治療中の疾患がある方で他の医薬品と五苓散を併用する場合は、主治医や薬剤師に伝えるようしにましょう。

五苓散の飲み合わせについて、さらに詳しく知りたい方はこちら▼の記事もお読みください。

五苓散の飲み合わせで禁忌のものは?他薬との併用やおすすめの飲み方も解説

五苓散が効かない場合は?

1か月程度継続して服用しても効果が得られない場合は、体質や症状に合っていない可能性があるため、服用を中止して医療機関に相談しましょう。

ただし急性胃腸炎や二日酔いの場合には5~6回、下痢や暑気あたりに服用する場合には5~6日間服用して症状が改善されなければ中止します。[6]

五苓散が合わない場合、例えば以下のように、体質や症状に合わせて他の漢方薬が検討されることもあります。 [1]

・尿量減少や口渇があり、さらに排尿痛や排尿後の不快感などがある場合
⇒猪苓湯(ちょれいとう)
・中高年~高齢の方で、口渇に加えて頻尿、乏尿、排尿痛、夜間頻尿などの排尿異常があり、冷えや倦怠感も気になる場合
八味地黄丸(はちみじおうがん)
・動悸やめまい、のぼせ、胃内停水などの症状があって、尿量減少や口渇、嘔吐の症状は顕著でない場合
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)

漢方薬の服用や、体質・症状に合った漢方薬の選び方について悩まれている方は、YOJOの薬剤師に相談することもできます。

体質チェックをはじめる

【参考文献】
[1]高山宏世編著 漢方常用処方解説
[2]伊藤美千穂編著 エビデンス・ベース 漢方薬活用ガイド
[3]礒濱 洋一郎(2011),五苓散のアクアポリンを介した 水分代謝調節メカニズム ,Science of Kampo Medicine 漢方医学 Vol.35 No.2(93)189
[4]ツムラ五苓散エキス顆粒(医療用)添付文書
[5]日本漢方生薬製剤協会 安全性委員会 漢方服薬指導Q&A
[6]厚生労働科研究費「漢方製剤の安全性確保に関する研究」五苓散の確認票