2024年4月8日に、日本初の内臓脂肪減少薬である「アライ」の販売が開始されました。
「なかなかダイエットの効果が出ない」「食欲が抑えられずつい食べてしまう」といった方の中には服用を検討されている方もいらっしゃるでしょう。
また、「他にもダイエットに効果が期待できる市販薬はないの?」と疑問に思われる方もいるかもしれません。
この記事では
・内臓脂肪減少薬「アライ」の効果と服用の注意点
・他にダイエット効果が期待できる市販の漢方商品
について薬剤師が解説します。
Contents
日本初の内臓脂肪減少薬「アライ」とは
ここでは、日本初の内臓脂肪減少薬である「アライ」についての効果や副作用、飲み方・購入時の注意点について解説します。[1]
アライはどのような商品?
アライは腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上の方を対象にした内臓脂肪減少薬です。商品の仕様は以下のとおりになります。
分類 | 要指導医薬品 |
---|---|
薬効成分 | オルリスタット |
効能効果 | 腹部が太めな方(※)の内臓脂肪および腹囲の減少。 ただし、生活習慣改善の取り組みを行っている場合に限る。 (※)腹囲:男性85cm以上、女性90cm以上 |
形状 | カプセル剤 |
用法・用量 | 1日3回食事中または食後1時間以内に、水またはぬるま湯で服用。 成人(18歳以上):1回1カプセル |
内容量 | 18カプセル/90カプセル |
なぜダイエット効果があるのか?
アライの薬効成分である「オルリスタット」には、脂肪吸収阻害作用があります。
私たちが食事から脂質を摂取したときには、すい臓から分泌される脂肪分解酵素「リパーゼ」によって脂質が分解され、消化管から吸収されます。
オルリスタットは、この「リパーゼ」の活性を阻害することで、食事由来の脂質の吸収を抑制し、便として排出させる効果があります。
服用時の注意点や副作用
ダイエット効果を引き出すためには生活習慣の改善が基本であり、薬はそれをサポートするものです。服用3か月以上前から服用期間中を通じて、薬の服用と共に食事の改善や適度な運動を取り入れることが大切です。
また、治療で以下の薬を併用されている方は、病状の悪化や薬の効果が減弱する恐れがあるため、服用することができません。
・免疫抑制剤(シクロスポリン製剤)
・抗HIV薬(エイズ治療薬)
・抗凝固薬(ワルファリンなど)
そのほか、治療中の疾患がある方は服用できない場合もあるため、必ず主治医や薬剤師に相談しましょう。
アライの副作用としては、以下のような症状が報告されています。
皮膚 | 発疹、かゆみ、乾燥、水疱など |
消化器 | 食欲不振、吐き気、胃痛、腹痛、血便など |
泌尿器 | 排尿困難など |
精神神経系・その他 | 不安、倦怠感など |
このような症状があれば服用を中止し、医師や薬剤師に相談しましょう。
また、薬の作用により服用を開始して早い段階で、下痢や軟便、便・油漏れなどの症状が見られる場合がありますが、これらの症状が持続または増強する場合にも、相談することが大切です。
購入時の注意点
商品を購入する際には、薬剤師から対面で情報提供や指導を受ける必要があります。これは、「アライ」が要指導医薬品に分類されるためです。
オルリスタットは、医療用医薬品として1997年にアルゼンチンで初めて承認された後、米国や欧州を中心に多くの国で医療用医薬品・市販薬として販売されています。しかし日本では、医療用医薬品の販売を経ずに市販薬として承認を受けた「ダイレクトOTC」であるため、服用者の安全性を考え、厚生労働省によりこのように定められています。[2]
また、初回購入の1か月前からは、生活習慣および腹囲・体重を記録し、必ず薬剤師による確認を受けましょう。
市販薬で他にダイエット効果が期待できる商品はある?
市販薬でダイエット効果が期待できる商品の例としては、例えば以下のような「漢方薬」があげられます。
・防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん):代謝を改善し、脂肪燃焼を促進する効果
・防己黄耆湯(ぼういおうぎとう):水分代謝を向上させ、水太りを改善する効果
・大柴胡湯(だいさいことう):自律神経を整え、ストレス太りを軽減する効果
ここでは、それぞれの漢方薬の特徴やその選び方、服用の注意点について解説します。
【体力が充実し、太鼓腹で食欲旺盛な方に】防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
防風通聖散には、からだを温めることで発汗を促し、腸の熱を下げながら体内に蓄積された不要物を排出しやすくする働きがあります。
防風通聖散は全身の新陳代謝を高めることで脂肪を燃焼させる作用をもつため、お腹まわりの皮下脂肪を減らすだけでなく、内臓脂肪にも効果が期待できます。
服用がおすすめな人
体力のある実証タイプの人の「脂肪太り」におすすめの漢方薬です。
特に、太鼓腹で食欲旺盛、便秘、のぼせ、赤い吹き出物ができる人に服用が向いています。
服用上の注意
妊娠・授乳中の人は服用を避けましょう
「大黄・芒硝」に子宮収縮作用があるため流早産をまねく恐れがあります。また授乳中も大黄が母乳中に移行して、乳児の下痢を引き起こす場合があります。
胃腸が弱い人・冷え性の人は注意しましょう
下痢や軟便の症状が悪化したり、冷え症が悪化したりする可能性があります。
複数の漢方薬を長期で服用する場合は注意しましょう
配合生薬に「甘草」が含まれています。複数の漢方薬を服用する場合には、偽アルドステロン症などの副作用が起こりやすくなります。
病気の治療で食塩制限をしている人は注意しましょう
配合生薬の「芒硝」は含水硫酸ナトリウムの一種であり、食塩と同じナトリウムが含まれています。
不眠、発汗、動悸などの副作用が起こる可能性があります
「麻黄」が含まれているために不眠や発汗過多、全身脱力感、動機・頻脈、精神興奮などを引き起こす可能性があります。また、一部の咳止めや甲状腺の機能を補う薬などには麻黄と似た作用をもつお薬があるため、併用する場合には注意しましょう。
長期服用に注意しましょう
「山梔子」が含まれており、長期服用(多くは5年以上)で大腸粘膜に異常が生じる例が報告されています。
体質や症状に合った漢方薬の選び方については、YOJOの薬剤師にも相談できます。
防風通聖散はYOJOショップでも購入できます▼
関連記事:防風通聖散の飲み合わせで禁忌や注意点は?リベルサスや7つの漢方薬との併用も解説
【体力がなく、むくみや下半身太りが気になる方に】防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)
防己黄耆湯は、胃腸の消化を助ける作用とともに、からだの水分代謝を高めることで、余分な老廃物を尿として排出する働きがあります。
内臓脂肪型肥満は、血液中の中性脂肪や悪玉コレステロールが増えてしまい、動脈硬化の原因にもなりやすい肥満です。防已黄耆湯には、内臓脂肪型肥満および動脈硬化の予防効果がある可能性についても研究で報告されています。[3]
服用がおすすめな人
虚証タイプで体力は虚弱~中程度、疲れやすく胃腸が弱い人におすすめの漢方です。虚証タイプの人は気の不足から水・血の流れが滞っていわゆる「水太り」の状態になっています。そのため、特に下半身太りが気になる人で、水太りによる関節の痛みやだるさがある人に向きます。
服用上の注意
複数の漢方を長期で服用する場合は注意しましょう
防己黄耆湯には「甘草」が含まれており、複数の漢方を服用している場合は重複して副作用が起こりやすくなります。
【体力があり、ストレスにより暴飲暴食をしてしまう方に】大柴胡湯(だいさいことう)
大柴胡湯は、自律神経に働きかけながら消化管機能を整える作用があります。
ストレスによる過食を抑え、胃腸の働きを活発にし便の排出を促すことで腸内環境を整えてくれる効果も期待できます。
服用がおすすめな人
実証タイプの便秘の訴えがある人で、ストレスから暴飲暴食してリバウンドをくり返してしまう人におすすめの漢方です。特に筋肉質の人に向き、体力があり元気な人の胃炎、便秘、高血圧のほか、肥満に伴う肩こり・頭痛・神経症などにも効果があります。
服用上の注意
妊娠・授乳中の人は服用を避けましょう
「大黄」が配合されているため、妊婦の流早産や、母乳中に移行して乳児の下痢を引き起こす恐れがあります。
胃腸が弱い人・冷え性の人は注意しましょう
下痢や軟便の症状が悪化したり、冷え症が悪化したりする可能性があります。
大黄配合の漢方の重複に注意しましょう
下痢や軟便の副作用が悪化する可能性があります。
ダイエットに効果の期待できる漢方薬について、さらに詳しく知りたい方はこちら▼の記事もお読みください。服用と合わせて行いたい生活習慣のアドバイスについても解説しています。
また、漢方薬の選び方や服用について不安がある方は、YOJOの薬剤師にも相談できます。
市販で購入できる漢方商品とは?
ここでは、まずは手軽に漢方を試してみたいという方向けに、薬局やドラッグストアなどで購入できる漢方商品の一例をご紹介します。
ナイシトールZa (防風通聖散)
お腹まわりの脂肪が気になる人に
分類 | 第2類医薬品 |
---|---|
効能効果 | 体力が充実して、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちな人の次の諸症:肥満症、高血圧や肥満に伴う動悸・肩こり・のぼせ・むくみ・便秘、蓄膿症(副鼻腔炎)、湿疹・皮ふ炎、ふきでもの(にきび) |
形状 | 錠剤 |
用法・用量 | 1回5錠、1日3回 |
服用対象年齢 | 15歳以上(15歳未満は服用しないこと) |
内容量 | 105錠/315錠/420錠 |
ビスラットアクリアEX (防己黄耆湯)
むくみがちな人、体脂肪を減らしたい人に
分類 | 第2類医薬品 |
---|---|
適応する人 | 体力中等度以下で、疲れやすく、汗のかきやすい傾向がある人の次の諸症:肥満症(筋肉にしまりのない、いわゆる水ぶとり)、むくみ、肥満に伴う関節の腫れや痛み、多汗症 |
形状 | 錠剤 |
用法・用量 | 1回5錠、1日2回 |
服用対象年齢 | 15歳以上(15歳未満は服用しないこと) |
内容量 | 70錠/210錠/280錠 |
コッコアポG(大柴胡湯)
ストレスが原因で太ってしまう人に
分類 | 第2類医薬品 |
---|---|
適応する人 | 体力が充実して、脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく、便秘の傾向がある人の次の諸症: 胃炎、常習便秘、高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘、神経症、肥満症 |
形状 | 錠剤 |
用法・用量 | 1日3回食前に服用 成人(15歳以上):1回4錠 15歳未満7歳以上:1回3錠 7歳未満5歳以上:1回2錠 |
服用対象年齢 | 5歳以上(5歳未満は服用しないこと) |
内容量 | 60錠/312錠 |
ダイエットには薬の服用だけでなく生活習慣の改善も大切!
上記でも述べましたが、ダイエットの基本は生活習慣の改善であり、それは漢方薬の服用においても同様です。服用の継続とともに、以下のような点について意識しましょう。
・栄養バランスの整った食事を3食きちんと摂取する
・有酸素運動と無酸素運動を組み合わせた、適度な運動を取り入れる
・睡眠時間はきちんと確保する
YOJOでは体質や症状に合った漢方薬のご提案や、薬の飲み合わせについての相談、生活改善のアドバイスなども受けることができます。気になる方はYOJOの薬剤師にご相談ください。
【参考文献】
[1]大正製薬 アライ製品HP
[2]日本OTC医薬品協会 OTC医薬品の販売方法について
[3]吉田麻美,高松順,吉田滋,北岡治子,増井義一,大澤仲昭 (1998) 内臓肥満型糖尿病患者に対する防已黄者湯の効果.日本東洋医学雑誌第49(2), 249-256