防風通聖散の飲み合わせで禁忌や注意点は?リベルサスや7つの漢方薬との併用も解説

メジャーでお腹を測る女性

防風通聖散とは、肥満症の治療に用いられる漢方薬です。その他にも、便秘、むくみ、高血圧に伴うのぼせや肩こり、睡眠時無呼吸症候群の治療にも用いられます。

防風通聖散と他の薬を併用する場合は、以下の点に注意が必要です。

・防風通聖散は他の薬との飲み合わせで禁忌となる医薬品や疾患はありません。

・防風通聖散に含まれる生薬と他の漢方薬に含まれる生薬が重複しないよう注意する必要があります。

特に飲み合わせに注意したい漢方薬や、医薬品、サプリメントなどについては以下で薬剤師が詳しく解説いたします。

漢方でのダイエットが気になる方、食事や運動を頑張っているけれどなかなか痩せない方は、漢方薬がお力になれるかもしれません。お気軽にYOJOの薬剤師にご相談ください。

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Contents

 防風通聖散とはどんな薬?肥満症の改善薬

メタボの人と体重計

防風通聖散とは、肥満症の治療に用いられる漢方薬です。体力がある肥満の人の体脂肪減少効果、基礎代謝量の増加作用があり、その結果としてインスリン抵抗性改善効果もあります。

構成生薬

滑石(かっせき)、黄芩(おうごん)、甘草(かんぞう)、桔梗(ききょう)、石膏(せっこう)、白朮(びゃくじゅつ)、大黄(だいおう)、荊芥(けいがい)、山梔子(さんしし)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、当帰(とうき)、薄荷(はっか)、防風(ぼうふう)、麻黄(まおう)、連翹(れんぎょう)、生姜(しょうきょう)、芒硝(ぼうしょう)

効能・効果

腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちな人の次の諸症:高血圧の随伴症状(動悸、肩こり、のぼせ)、肥満症、むくみ、便秘

防風通聖散はYOJOショップ▼でも購入できます。

YOJOショップの防風通聖散

防風通聖散はこんな人におすすめ!

体力がありがっちりとした体格の人

特にお腹に脂肪が多く、おへそを中心に盛り上がる太鼓腹の人

便秘がちでのぼせの症状がある

一方、以下の症状の人は別の漢方薬が適している可能性があります。

・むくみがあり水太り傾向→防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)

・がっちりとした体格で怒りっぽく胸につかえ感がある→大柴胡湯(だいさいことう)

ダイエットに使用される漢方薬については、こちら▼の記事で詳しく解説しています。

漢方はダイエットに効果的?おすすめ漢方薬や体質別の選び方を紹介

健康的にダイエットをするためには、自分の体質に合った漢方薬で体質を改善するのが大切です。自分の体質がわからない、どの漢方を服用すればいいのかお悩みの方は、ぜひ一度YOJOの薬剤師にご相談ください。

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防風通聖散の服用に注意が必要な人は?

以下のような合併症・既往歴のある人は服用に注意が必要です。

  • 下痢、軟便のある人
  • 胃腸が弱い人
  • 病後や体力の低下している人(虚証の人)
  • 汗をかきやすい人
  • 狭心症、心筋梗塞等の循環器系の疾患、重度高血圧症、排尿障害、甲状腺機能亢進症、高度の腎障害をお持ちの方

これらの症状や疾患をお持ちの方が防風通聖散を服用すると、症状や病状が悪化する恐れがあります。必ず服用前には医師や薬剤師に相談しましょう。

防風通聖散に禁忌はある?

NG

防風通聖散には禁忌となる医薬品や疾患はありません。しかし、構成生薬が18種類と多いため、飲み合わせには注意が必要です。

防風通聖散と他の医薬品やサプリメントとの飲み合わせについて

処方薬

防風通聖散との飲み合わせで注意すべき医薬品やサプリメントなどについて、具体的に詳しく解説いたします。

リベルサス®(GLP-1受容体作動薬)との飲み合わせ

リベルサス®(セマグルチド)は、2型糖尿病治療薬で、GLP-1受容体作動薬です。低血糖のリスクが低く、食欲減退や体重減少の効果も期待できる[1]ため、保険適用外ではありますが、ダイエット目的で使用されることもあります。

防風通聖散との併用には特に問題はありませんが、同時に服用する場合は注意が必要です。リベルサス®は食事の影響を受けやすいため、空腹時に服用する必要があります。また、服用後は少なくとも30分間は飲食や他の薬剤の摂取を避けるべきです[2]。したがって、リベルサス®を服用した後は、30分以上空けてから防風通聖散を服用するようにしましょう。

副作用にも注意が必要です。リベルサス®には「急性膵炎」などの重大な副作用が報告されています[2]。防風通聖散も悪心、嘔吐、腹痛などの副作用があるため、両方を同時に服用すると、どちらが原因か判断が難しくなります。リベルサス®と防風通聖散を同時に服用して胃腸の問題が起きた場合は、急性膵炎の可能性を考慮し、速やかに医療機関を受診しましょう。

サプリメント(ビタミン剤)との飲み合わせ

防風通聖散とサプリメントを一緒に服用する場合、サプリメントに含まれている成分が防風通聖散の構成生薬と同じでなければ、通常は問題ありません。たとえば、生薬成分の含まれていないビタミン剤などは、一緒に服用しても安心です。
ただし、防風通聖散には18種類もの構成生薬が含まれているため、サプリメントの中に同じ生薬が含まれていないか確認することが大切です。特に、食品やサプリメントに一般的に含まれている「甘草」には留意が必要です。

サラシアとの飲み合わせ

引用:小林製薬HP

サラシアとは、ツル性のデチンムル科サラシア属植物の俗称で、有効成分サラシノールが含まれており、糖分の吸収を抑えて血糖値の上昇を抑える働きがあるサプリメントです。[3] 防風通聖散とは成分が重複していないため、一緒に服用しても問題ないですが、サラシアには腸内細菌調整作用があると報告されており、防風痛聖散などの漢方薬の吸収には腸内細菌が関わっていることから、防風通聖散の吸収や効き目に影響を及ぼす可能性も考えられます。

メリロートとの飲み合わせ

引用:DHC HP

メリロートとは、マメ科シナガワハギ属の植物のことでハーブとして古くから使用されています。血行を良くする働きがあり、むくみを予防・改善する働きがあるとされています。[4] 防風通聖散の構成生薬の中にも、マメ科の植物由来の甘草が含まれており、有効成分であるクマリンなどの成分がメリロートと重なります。そのため、一緒に服用すると効果が強まる可能性が考えられるため、併用する際には医師や薬剤師に相談しましょう。

ピルとの飲み合わせ

ピルは、一般的に女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンが組み合わさった薬です。高血圧の人(ただし、軽度の高血圧を除く)は禁忌となっており服用できません。一方、防風痛聖散は高血圧に伴う動悸、肩こり、のぼせ、むくみなどに対処するための漢方薬です。ピルと防風通聖散の薬の飲み合わせ自体は問題はありませんが、高血圧の人はピルの服用について慎重に考える必要があります。

チラーヂンとの飲み合わせ

防風通聖散には生薬の麻黄が含まれているため、チラーヂン(レボチロキシンナトリウム)などの甲状腺製剤と一緒に服用すると、不眠、発汗、動悸などの神経症状が現れやすくなるため注意が必要です。もし一緒に服用する場合は、医師や薬剤師または登録販売者に相談しましょう。

降圧剤との飲み合わせ

防風通聖散と降圧剤との飲み合わせは問題ありません。防風通聖散は高血圧に伴う動悸、肩こり、のぼせ、むくみなどにも効果のある漢方薬なので、降圧剤と併用することも多いと思います。もし自己判断で防風通聖散を服用の際には、降圧剤を処方してもらっている主治医に伝えるようにしましょう。

風邪薬との飲み合わせ

防風通聖散と病院で処方される風邪薬は基本的には飲み合わせは問題ありません。ただし、市販の風邪薬や漢方薬で風邪症状に用いられるものの中には飲み合わせに注意が必要なものもあります。

例えば、市販の風邪薬の中に含まれていることがある、気管支拡張成分のdl‐メチルエフェドリン塩酸塩やテオフィリンなどは防風痛聖散と一緒に服用すると不眠、発汗、動悸などの精神神経症状が現れやすくなります。また、市販の風邪薬の中に生薬成分の麻黄、甘草が含まれるものも併用は控えましょう。

風邪に用いられる漢方薬の中では、麻黄や甘草を含む葛根湯、麻黄湯、小青竜湯などとの併用に注意が必要です。

風邪に効く漢方薬については、こちら▼の記事で詳しく解説しています。

風邪に効く漢方薬の選び方とは?咳のど鼻の症状に合わせた使い分けも解説

花粉症薬との飲み合わせ

防風通聖散と病院で処方される花粉症薬との飲み合わせは問題ありません。しかし、漢方薬の小青竜湯には麻黄が含まれており防風通聖散と生薬成分が重複するため同時に服用する際には注意が必要です。もし一緒に服用する場合には、医師や薬剤師または登録販売者と相談しましょう。

花粉症やアレルギー性鼻炎に効果のある漢方薬については、こちら▼の記事で詳しく解説しています。

花粉症・アレルギー性鼻炎に効く漢方薬とは?

YOJOでは、体質チェックとLINEでの薬剤師によるカウンセリングをもとに漢方薬のご提案や健康アドバイスを行っています。薬の飲み合わせについてもお気軽にご相談ください。

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防風通聖散と他の漢方薬との飲み合わせについて

漢方生薬

防風痛聖散は構成生薬が18種類と多いため、他の漢方薬と一緒に服用する際には生薬が重複していないか確認する必要があります。ここでは、特に注意したい生薬と具体的な漢方薬との飲み合わせについて解説します。

麻黄の重複に注意

麻黄の有効成分はエフェドリンで、交感神経刺激作用があります。麻黄の摂取量が増えると、交感神経刺激作用が強まり、不眠、発汗、動悸、血圧上昇、胃腸障害などの副作用が現れる可能性があります。

甘草の重複に注意

甘草の有効成分はグリチルリチンで、甘草の摂取量が増えると血圧上昇、むくみ、低カリウム血症などが現れる可能性があります。

目安としては1日に甘草を2.5g以上(グリチルリチン酸換算で100mg以上)摂取すると、低カリウム血症が起こりやすくなるため注意が必要です[5]。ただし、グリチルリチン酸の吸収は腸内細菌によるものであり、個人差がありますので、甘草を含む漢方薬を服用する場合は、量にこだわるよりも定期的にカリウム値のチェックを行うことが重要です。

大黄の重複に注意

大黄の有効成分はセンノシドで、これは腸の動きを活発にし、下剤のような作用があります。そのため、大黄の摂取量が増えると下痢や腹痛が起こる可能性があります。

葛根湯(かっこんとう)との飲み合わせ

葛根湯は風邪の初期症状や肩こりなどに使われる漢方薬です。葛根湯と防風通聖散には甘草、麻黄、生姜、芍薬という共通の生薬が含まれているため、一緒に服用する際には注意が必要です。麻黄による動悸、不眠、発汗、甘草による血圧上昇やむくみ、その他にも胃腸障害や薬疹などが起こる可能性があります。風邪で葛根湯を服用する際には、防風通聖散を一時お休みするなどの対処が必要です。併用する際は、医師や薬剤師または登録販売者に相談しましょう。

葛根湯と他の薬との飲み合わせについては、こちら▼の記事で詳しく解説しています。
関連記事:葛根湯と他の薬との飲み合わせを解説/ロキソニン・アレグラなどとの併用はOK?

八味地黄丸(はちみじおうがん)との飲み合わせ

八味地黄丸は疲労感、冷え性、頻尿、腰痛などに用いられる漢方薬です。八味地黄丸と防風痛聖散には共通する生薬は含まれていないので、飲み合わせは問題ありません。しかし、八味地黄丸は体力のない虚証で冷え性傾向の人に合う漢方薬で、防風痛聖散は体力のある実証でのぼせ傾向の人に合う漢方薬です。そのため、虚証の人が実証の漢方薬を服用すると下痢をしたり食欲が低下することがあるので注意が必要です。

加味逍遙散(かみしょうようさん)との飲み合わせ

加味逍遙散は体力があまりない人の月経異常や更年期障害など婦人科系の症状に用いられる漢方薬です。加味逍遙散と防風通聖散には芍薬、山梔子、甘草、生姜、白朮という共通の生薬が含まれています。そのため、特に甘草によるむくみ、血圧上昇、低カリウム血症、山梔子による腸間膜静脈硬化症、その他にも過敏症などに注意が必要です。
また、体力のない虚弱な人が防風通聖散を服用すると下痢や食欲不振が現れることがあります。

五苓散(ごれいさん)との飲み合わせ

五苓散はむくみ、頭痛、めまいなどの症状に用いられる漢方薬です。五苓散と防風通聖散には白朮という共通の生薬が含まれています。白朮で過敏症が起こったことがなければ一緒に服用しても飲み合わせは問題ないと考えられます。しかし、生薬の量が増えることで尿量の増加や過敏症を起こす可能性はあります。
併用する際は、医師や薬剤師または登録販売者に相談しましょう。

五苓散と他の医薬品との飲み合わせについては、こちら▼の記事で詳しく解説しています。
関連記事:五苓散の飲み合わせで禁忌のものは?他薬との併用やおすすめの飲み方も解説

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)との飲み合わせ

半夏厚朴湯は喉のつまり感や不安神経症、不眠症に用いられる漢方薬です。半夏厚朴湯と防風通聖散には生姜という共通の生薬が含まれています。生姜で過敏症が起こったことがなければ一緒に服用しても飲み合わせは問題ないと考えられます。しかし、生薬の量が増えることで過敏症を起こす可能性はあります。
併用する際は、医師や薬剤師または登録販売者に相談しましょう。

半夏厚朴湯と他の医薬品との飲み合わせについては、こちら▼の記事で詳しく解説しています。
関連記事:半夏厚朴湯の飲み合わせで禁忌のものはある?他の薬やサプリとの飲み合わせも解説

大建中湯(だいけんちゅうとう)との飲み合わせ

大建中湯はお腹の冷えや痛みに用いられる漢方薬です。大建中湯と防風通聖散には共通の生薬は含まれていないため、飲み合わせは問題ありません。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)との飲み合わせ

桂枝茯苓丸は月経不順や更年期障害、肩こりなどに使用される漢方薬です。桂枝茯苓丸と防風通聖散には芍薬という共通の生薬が含まれています。芍薬で過敏症を起こしたことがなければ一緒に服用しても飲み合わせは問題ないと考えられます。しかし、生薬の量が増えることで過敏症を起こす可能性があります。
併用する場合は、医師や薬剤師または登録販売者に相談しましょう。

桂枝茯苓丸と他の医薬品との飲み合わせについては、こちら▼の記事で詳しく解説しています。
関連記事:桂枝茯苓丸の飲み合わせで注意するものは?飲み方や他の漢方薬との併用も解説

 防風通聖散にはどんな効果がある?

お腹をメジャーで測る女性

防風通聖散には具体的にどんな症状に効果があるのでしょうか。詳しく解説いたします。

肥満症

日本肥満学会によれば、肥満症はBMIが25以上と判定され、かつ糖尿病や高血圧、脂質代謝異常症などの合併症があるか、あるいは合併症のリスクが高い場合、医学的な治療が必要とされ、肥満症と診断されます[6]肥満症の治療の基本は食事療法や運動療法であり、これに加えて防風通聖散などの肥満症治療薬が使用が検討されます。

漢方医学では肥満のタイプを堅太りタイプ(太鼓腹タイプ)、水太りタイプ、ストレス太りタイプなどと分類しますが、防風通聖散が合うのは堅太りタイプ(太鼓腹タイプ)の人で、お腹が硬く突き出た形をしているのが特徴です。

一方、様々な体質(証)が混ざった肥満症患者において無作為化試験において、

防風通聖散群はプラセボ群に比べて、内臓脂肪、胴囲が減少し、インスリン抵抗性が改善されることが明らかになりました。
(参照:メタボリックシンドロームに対する防風通聖散の有効性の検討,J Pharm Health Care Sci. 34(6) 513-521

しかし、体質に合っていないのに防風通聖散を服用すると下痢などの副作用を起こすことがあるので慎重に服用を検討する必要があります。

以下のようなエビデンスもあります。

防風通聖散 7.5g/日の投与が食事・運動療法単独群より 6 ヵ月で3.4kgの減量と内臓脂肪量及びウエスト周囲長を減少させることが報告されています。
(参照:日本東洋医学会EBM委員会 診療ガイドライン・タスクフォース 吉田俊秀, 日置智津子. 肥満治療としての漢方薬の作用機序. 医学のあゆみ 202: 1005-9.

肥満症の漢方治療については、こちら▼の記事でも詳しく解説しています。

肥満に漢方薬は効果的?体質別の選び方や正しい使用方法を解説

便秘

防風通聖散は便通を促す大黄(だいおう)、芒硝(ぼうしょう)が含まれているため便秘症に対しても効果があります。特に、便秘症状だけでなく、体重過多、高血圧、脂質代謝異常症などを合併している人に向いています。

便秘に用いられる漢方薬については、こちら▼の記事で詳しく解説しています。

便秘におすすめの漢方薬とは?選び方や市販薬についても解説

高血圧の随伴症状(動悸、肩こり、のぼせ)

防風通聖散には熱を冷ます作用、発汗を促す作用、血を補い巡りを良くする作用などさまざまな作用があります。それらが組み合わさることで、高血圧に伴う動悸、肩こり、のぼせの改善にも効果が期待できます。

 むくみ

防風通聖散には白朮(びゃくじゅつ)、滑石(かっせき)による水分の代謝を整える作用があり、それに加え当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、芍薬(しゃくやく)により血を補い巡りを良くする作用があるため、むくみの改善にも効果が期待できます。

むくみの改善に用いられる漢方薬については、こちら▼の記事で詳しく解説しています。

むくみや冷えの解消に漢方が効果的?おすすめケアや選び方とは

 睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりして体の低酸素状態が起こる病気のことです。平均して1時間に5回以上睡眠中に呼吸が止まる場合に診断されます。原因のひとつは肥満であり、肥満の人はのどへの脂肪沈着が増加するために空気の通りが悪くなり呼吸停止につながります。防風通聖散を6ヶ月服用したことで、体重減少がみられ、持続陽圧呼吸法治療が不要になった例もあります。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対して、以下のようなエビデンスがあります。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群と診断された120例を対象とした。防風通聖散投与60例、非投与60例の2群に分けて、防風通聖散を6ヶ月投与した。持続陽圧呼吸法(CPAP)治療使用頻度が良好かつ運動を十分にして、かつ防風通聖散投与群の28例では有意に体重減少(‐7.8kg)がみられ、CPAP治療離脱例も10例と多かった。(参照:中山真吾, 漢方医, 2007,31,164-165 [7]

防風通聖散は肥満症だけでなく、便秘症や睡眠時無呼吸症候群にも用いられます。健康状態で気になることがある人は、ぜひ一度YOJOの薬剤師にご相談ください。体質の相談や健康上のアドバイスも行っています。

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 防風通聖散服用時の注意点は?

注意点

こちらでは、防風通聖散の副作用や妊娠中・授乳中に服用できるかについて解説しています。

防風通聖散の副作用

重大な副作用

重大な副作用として、以下のものが報告されています。

(1)間質性肺炎:息切れ(呼吸困難)、空咳(痰のない咳)、発熱などが現れることがあります。
(2)偽アルドステロン症:低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、体重増加などの症状が現れることがあるので、定期的に血清カリウム値の測定などを十分に行いましょう。
(3)ミオパチー:低カリウム血症の結果として、横紋筋融解症や筋肉の病気が現れることがあります。脱力感、筋力低下、筋肉痛、四肢痙攣・麻痺などの症状が特徴的です。
(4)肝機能障害、黄疸:AST、ALT、Al-P、γーGTPの上昇を伴う肝機能障害、黄疸が現れることがあります。
(5)腸間膜静脈硬化症:山梔子(さんしし)を含む漢方薬を長期間服用(多くは5年以上)することで、大腸の色調異常や潰瘍が起こることがあります。主な症状は、腹痛、下痢、便秘、腹部膨満、悪心・嘔吐で、中には無症状(便潜血陽性を含む)のこともあります。このような症状が現れた場合は、漢方薬の服用を中止しCTや大腸内視鏡の検査を行うことが推奨されます。[8]

以上の症状が現れた場合には、漢方薬の服用を中止し、速やかに医療機関を受診しましょう。

その他の副作用

発疹や皮膚のかゆみなどの過敏症が起こることがあります。このような症状が起こった場合は、投与を中止して医療機関を受診しましょう。
その他にも、自律神経系の症状(不眠、発汗過多、頻脈、動悸など)、消化器症状(食欲不振、悪心、嘔吐、腹痛、軟便、下痢など)泌尿器の症状として排尿障害などが起こる場合があります。

妊娠中・授乳中の服用:流早産の危険性あり

妊娠中の漢方薬の服用については、催奇形性については未知の部分が多いので、原則として「妊婦への漢方薬投与は治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ」行います。もしも休薬できるのであれば、少なくとも器官形成期の間(4〜15週末)は服用しないほうが良いでしょう。

防風通聖散に含まれる「大黄(だいおう)」には子宮収縮作用および骨盤内臓器の充血作用があり、「芒硝(ぼうしょう)」には子宮収縮作用があるため、流早産の危険性があります。[9] そのため、妊娠中の服用には特に慎重になる必要があります。できれば妊娠中には服用しないか、服用する場合は必ず主治医に相談してからにしましょう。

また、授乳中の服用に関しても、大黄に含まれるアントラキノン誘導体が母乳中に移行し、乳児の下痢を引き起こすことがあるため注意が必要です。[9]

【参考文献】
[1]世界初の経口GLP-1受容体作動薬リベルサスⓇの開発
[2]リベルサス®錠 添付文書 
[3]FUJIFILM からだサイエンスラボ サラシアとは
[4]わかさ生活 わかさの秘密 メリロート
[5]日本漢方生薬製剤協会 カンゾウ(甘草)含有医療用漢方製剤による低カリウム血症の防止と治療法
[6]一般社団法人 日本肥満学会 肥満症治療ガイドライン2022
[7]伊藤美千穂 編著 エビデンス・ベース漢方薬活用ガイド第2版 
[8]日本漢方生薬製剤協会 漢方薬による腸間膜静脈硬化症
[9]ツムラ防風通聖散添付文書