桂枝茯苓丸の効果とは?向いている人や飲み方のポイント、副作用についても解説

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)には、血行を促進して血の巡りが滞った状態(瘀血:おけつ)を改善する作用があります。

更年期障害、生理不順、冷え性、のぼせ…など様々な疾患・症状に効果が期待できる桂枝茯苓丸ですが、服用する際には、体質・症状に合っているかや、服用の注意点についてきちんと確認して取り入れることが大切です。

この記事では、桂枝茯苓丸の効果や副作用、よくある質問について薬剤師がくわしく解説します。漢方薬の服用について不安な方はYOJOの薬剤師にご相談ください。

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桂枝茯苓丸とは

漢方生薬

桂枝茯苓丸は5種類の生薬から構成されており、配合生薬とそれぞれの作用については以下のとおりです。[1]

・桂皮(けいひ)…熱や痛みを取る発散作用のほか、体を温める作用、血行を促進する作用などがある。
・桃仁(とうにん)…血行を促進する作用がある。
・牡丹皮(ぼたんぴ)…血行を促進する作用や熱を冷ます作用がある。
・芍薬(しゃくやく)…痛みを取る作用や筋肉を弛緩させる作用、血行促進作用などがある。
・茯苓(ぶくりょう)…利水作用や精神安定作用がある。

桂枝茯苓丸はこれらの生薬が組み合わされることで相乗的に効果を発揮します。

漢方医学において、女性ホルモンは体の栄養素である「血(けつ)」を元に作られると考えられています。そのため、「血」の量が不足したり、巡りが悪くなったりすると、女性ホルモンの量や質にも影響を与えてホルモンバランスが崩れやすくなってしまうのです。
桂枝茯苓丸は、全身の「血」の巡りを整えて血行不良を改善することで、ホルモンバランスの乱れに伴って起こる様々な症状を緩和する作用があります。

桂枝茯苓丸の効果

漢方生薬と煎じ薬

ここでは、桂枝茯苓丸の服用で効果が期待できる具体的な疾患・症状についてお伝えします。

更年期障害の改善

日本人女性の平均閉経年齢は50.5歳であり、この時期の前後およそ10年間を更年期と呼びます。更年期において、女性は加齢とともに卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲン)の量が低下してホルモンバランスが崩れやすくなりますが、同時に体の機能低下や社会環境の変化も起きることが多くなります。
この時期に起こる、身体的・精神的な症状を更年期障害と呼び、主に以下のような血管運動系・精神神経系の症状が現れやすくなります。
【更年期障害で起こりやすい症状▼】

血管運動系の症状 ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ・発汗)、手足の冷え、動悸
精神神経系の症状 気分の落ち込み、イライラ、情緒不安定、抑うつ、不眠、頭痛、倦怠感、めまい
その他 肩こり、頭痛、食欲不振、肌の乾燥・シミなど

漢方医学では「血」の巡りが滞ると、本来うまく循環するはずの熱が逆上し、のぼせや下半身の冷え、頭痛などを引き起こすと考えます。また、「気」の巡りにも影響を及ぼし、イライラや情緒不安定などの精神症状ももたらしてしまうのです。
桂枝茯苓丸は、血行を改善して滞った血の巡りを良くすることで、このような更年期障害の様々な症状を緩和する作用が期待できます。

更年期障害に効果の期待できる他の漢方薬についても知りたい方はコチラ▼の記事もお読みください。

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生理不順・月経前症候群(PMS)の改善

正常な生理周期は25~38日とされており、この周期よりも短かったり長かったりする場合を生理不順といいます。

また、月経前症候群(PMS)とは、生理前の3~10日間に発生し生理開始とともに消失する身体的・精神的症状のことを指します。具体的には以下のような症状が起こりやすくなります。
【PMSで起こりやすい症状▼】

身体的な症状 頭痛、肩こり、腰痛、乳房の張りや痛み、むくみ、体重増加、吐き気、肌荒れ、貧血、めまいなど
精神的な症状 イライラ、抑うつ感、不安感、眠気、集中力の低下 、不眠、過食など

生理不順やPMSを引き起こす原因として、血行不良やストレスによるホルモンバランスの乱れなどがあげられます。

桂枝茯苓丸は血行を促進して女性ホルモンのバランスを整えることで、生理不順や生理周期に伴って起こる不快な症状を改善する効果が期待できます。

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PMS(月経前症候群)に漢方は有効?選び方や生活アドバイスも解説

冷え性の改善

検査では特別な異常がないにもかかわらず、手足や下半身などの体の一部、あるいは全身が冷えている状態を、一般に冷え性といいます
冷え性は、不規則な生活習慣や喫煙、ホルモンバランスの乱れなどから、血液循環が悪くなることで起こりやすくなります。

桂枝茯苓丸には血管を拡張し末梢血管の血液循環を改善する作用があることから[2]、手足などの末端を含むからだ全体を温めて、冷え性を改善する効果が期待できます。

冷え性に効果の期待できる他の漢方薬についても知りたい方はコチラ▼の記事もお読みください。

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そのほかにも、桂枝茯苓丸はその血行促進作用から子宮内膜症や子宮筋腫、動脈硬化による血行障害などの治療の選択肢の一つとして用いられる場合があります。

桂枝茯苓丸が合う人・合わない人

薬を飲む女性

桂枝茯苓丸は、体格がしっかりして体力は中等度以上、のぼせて赤ら顔が多く、下腹部に抵抗・圧痛がある方に向く漢方薬です。その効果効能から、とくに以下のような症状を訴える場合に向くと考えられます。[2]

・頭痛、肩こり、めまい、のぼせ、足の冷えなどを伴う場合
・生理不順やPMS、月経困難症などの月経異常がある女性の場合

一方で、胃腸が弱く、体力が低下している虚弱体質の方には桂枝茯苓丸は合わない可能性があります。服用することで食欲不振や吐き気、下痢などの消化器症状の副作用が出やすくなるため注意しましょう。

このように、漢方薬は体質や症状に合わせて処方が選択されるため、中には桂枝茯苓丸が合わない、服用を続けても効果が得られにくいといった方もいらっしゃいます。
そのような場合は、他の漢方薬を検討してみるのも一つです。
たとえば・・・

・冷えや腹痛・生理痛、下腹部の圧痛の症状があるが、虚弱体質で顔色が悪い
⇒当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
・みぞおちや下腹部のあたりに軽度の圧痛を認めるが、虚弱体質でさらにイライラや不眠などの精神神経症状がとくに強い場合
加味逍遙散(かみしょうようさん)

ご自身の体質や症状に合った漢方薬の選び方に悩まれている方は、YOJOの薬剤師に相談することもできますよ。

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桂枝茯苓丸の効果が出るまでの期間と、効果がない場合の対処法

カレンダーと時計

効果が出るまでの期間は個人差がありますが、まずは1か月程度、服用を続けたのちに効果を確認することが多いです。1か月以上服用しても症状の改善を感じられない場合は、体質や症状に合っていない可能性もあるため、主治医や薬剤師または登録販売者に相談しましょう。

桂枝茯苓丸の飲み方

薬を飲む女性

桂枝茯苓丸の効果を引き出すためには、正しい服用方法で取り入れることも大切です。ここでは桂枝茯苓丸の飲み方やポイントについてお伝えします。

桂枝茯苓丸の用法・用量

桂枝茯苓丸は通常、1日2~3回に分けて、水または白湯で服用します。
ただし、商品や服用者の症状、年齢・体重などによっても用法用量は異なるため、必ず医師の指導や添付文書の指示に従って服用しましょう。

服用するタイミングは食前または食間です。食前とは食事の20~30分前、食間とは食事と食事の間2時間くらいの空腹時を指します。ただし、食前に服用して胃もたれや吐き気を感じる場合は、食後に服用することで症状が軽減される場合もあります。

桂枝茯苓丸が飲みにくい場合

「味」や「香り」は漢方薬の大事な要素のひとつですが、桂枝茯苓丸の味はわずかに渋いことから、中には飲みにくいと感じる方もいるかもしれません。
そのような場合は、「漢方薬の顆粒を摂取する前に水または白湯を口に含み、その上で漢方薬を服用する」といった工夫を行うと良いでしょう。漢方薬が直接舌に触れないため苦みを感じにくくする効果が期待できます。また、オブラートや漢方薬専用の服薬ゼリーなども販売されているため、利用してみるのも良いでしょう。

漢方薬を飲みやすくするコツについて、さらに詳しく知りたい方はコチラ▼の記事もお読みください。

漢方薬の正しい飲み方は?上手に飲むコツや飲むときの注意点も解説

桂枝茯苓丸を飲む時の注意点

薬剤師の女性

桂枝茯苓丸を服用する際は、以下の点に注意して服用しましょう。

桂枝茯苓丸の副作用

桂枝茯苓丸の副作用には、頻度不明で以下のようなものが報告されています。[3]

過敏症 皮膚のかゆみ、発疹・発赤など
消化器症状 吐き気・嘔吐、食欲不振、胃部不快感、下痢

過敏症の副作用が出た場合は、すぐに漢方薬の服用を中止し医療機関を受診しましょう。消化器症状が出た場合には、服用のタイミングを食前から食後に変更して様子を見る、それでも症状が変わらない場合は漢方薬が合っていない可能性が考えられるため、服用を中止して医療機関を受診しましょう。

また頻度は非常にまれですが、重大な副作用として以下のような症状も報告されています。

肝機能障害 発赤、かゆみ、皮膚・白目が黄色くなる黄疸、褐色尿、全身倦怠感、食欲不振、血液検査でASTやALTγ-GTPなどの著しい上昇などがみられる場合がある。

気になる症状がある場合は、すぐに医療機関を受診し検査を受けることが大切です。

桂枝茯苓丸の飲み合わせに注意すべき薬について

桂枝茯苓丸は他の薬との飲み合わせで禁忌となる医薬品はありません。

ただし、他の漢方薬と併用する場合は、服用前に医師または薬剤師、登録販売者に確認しましょう。生薬が重複することで効果が強く出たり副作用が発現しやすくなったりする場合があります。

桂枝茯苓丸の飲み合わせについて、さらに知りたい方はコチラ▼の記事もお読みください。

桂枝茯苓丸の飲み合わせで注意するものは?飲み方や他の漢方薬との併用も解説

桂枝茯苓丸の妊娠・授乳中の服用について

桂枝茯苓丸を妊娠中に服用することは避けましょう。
配合生薬の「桃仁」「牡丹皮」には血行促進作用があり、妊娠中に服用すると流早産のリスクが高まります。[4]
授乳中はとくに問題なく服用できますが、母乳への移行が心配な場合は、授乳直後に服用するようにタイミングに気を付けましょう。

桂枝茯苓丸のよくある質問

Q&A

ここでは、桂枝茯苓丸の服用でよくある質問とその回答についてお伝えします。

桂枝茯苓丸の服用で太る?

桂枝茯苓丸の服用による体重増加の副作用は報告されていません。
一般に漢方薬の副作用で太ることはありませんが、胃腸の働きが高まることで食欲不振が改善し、元の健康的な体重に戻りやすくなることは考えられます。

桂枝茯苓丸は男性でも服用できる?

桂枝茯苓丸は、男性でも服用できます。
桂枝茯苓丸には血行を促進して微小血管障害を改善する作用があるため、性別にかかわらず深部静脈血栓症や手術・外傷後の皮下血腫、脳血管障害の慢性期などにも用いられることがあります。[5]

また、日本泌尿器科学会によると、桂枝茯苓丸は男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)の治療にも用いられる場合があります。[6]

男性更年期に効果の期待できる漢方薬について、他にも知りたい方はコチラ▼の記事もお読みください。

【薬剤師監修】男性の更年期障害に効果のある漢方薬5選!市販薬や生活養生のポイントも解説

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【参考文献】
[1] 高山宏世編著 漢方常用処方解説
[2]厚生労働科学研究成果データベース 桂枝茯苓丸臨床試験の報告
[3] ツムラ桂枝茯苓丸エキス顆粒(医療用)
[4]公益社団法人福岡県薬剤師会 妊婦への投与に注意が必要な漢方薬
[5]内田智夫(2009)下肢深部静脈血栓症の腫脹に対する桂枝茯苓丸の治療効果,静脈学20(1)1-6
[6]日本泌尿器学会 LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き