冷え性の漢方薬の選び方は?タイプ別のおすすめ漢方薬・養生法を解説

ブランケットに包まり温かい飲み物を飲む女性

冷え性でお悩みの方は女性に多い傾向にありますが、最近では男性にも冷え性の方が増えてきています。西洋薬には冷え性の治療薬が存在しないため、体質改善を得意とする漢方薬が冷え性の改善に役立つことがあります。

この記事では、

・冷え性の改善におすすめの漢方薬

・冷え性のタイプ別おすすめの漢方薬と養生法

・市販で購入できる冷え性におすすめの漢方薬

について薬剤師が詳しく解説します。

冷え性でお悩みの方はぜひ一度YOJOの薬剤師にご相談ください。体質チェックをもとにあなたに合った漢方薬をご提案いたします。

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Contents

冷え性の改善にはなぜ漢方薬が効果的?

冷え性は、病気が原因で起こることもあるため、冷え性の症状が持続する場合は検査を受けて、潜在的な疾患が隠れていないかを確認する必要があります。しかし、原因が特定できない冷え性に対しては、漢方薬が効果的な場合があります。その理由としては、以下の点が挙げられます。

  • 漢方薬の中には体を温める作用がある生薬が含まれているため。
  • 体質改善を促すことにより、新陳代謝を向上させたり、血液の循環を良好にすることができるため。
  • 自律神経のバランスを整えることで、血行を改善することができるため

冷え性の改善のために、漢方薬を試してみたいけど何を選んだら良いかわからないという方も多いのではないでしょうか。以下では、冷え性の漢方薬の選び方のポイントを解説していきます。

冷え性の漢方薬の選び方のポイント

医療従事者の女性

冷え性の漢方薬を選ぶ時には、自分の冷え性のタイプや体質に合うものを選ぶことが大切です。手足が冷えるのか?全身が冷えるのか?など、自分のタイプを知ることから始めましょう。

冷え性のタイプを知る

冷え性のタイプには大きく分けて4種類あります。

冷え性のタイプ症状
全身が冷えるタイプ(新陳代謝低下型)全身が冷えてだるい、下痢・腹痛、食欲不振、やる気がでない、など
手足が冷えるタイプ(四肢末端型)手足が冷たい、しもやけができる、など
下半身が冷え上半身はのぼせるタイプ(自律神経失調型)顔のほてり、のぼせ、イライラ感、下半身の冷え、手足の冷え、など
体が寒いと感じる寒がりタイプ(体感異常型)イライラ感、疲れているのに眠れない、疲れやすい、食欲不振、など

冷え性の症状がある人で、詳しい改善方法を知りたい方はこちら▼の記事もおすすめです。

冷え性を改善するためには?原因や冷え性のタイプについても解説

体質を知る(気血水、虚証・実証)

漢方薬は、体質に合うものを服用して初めてその効果を発揮します。体質を決めるためにはいくつかのものさしがあり、その1つとして「気血水」の考え方があります。

気血水とは[1]
漢方医学では、「気・血・水」が体内をバランス良く巡ることで生命活動が維持され、健康が保たれると考えられています。しかし、「気・血・水」に異常が生じ、量が不足したり流れが滞ったりすることでさまざまな不調が現れるとされています。
特に、冷え性に関連してよく挙げられるのが「血虚(けっきょ)」という状態です。血虚とは、血が不足している状態で、全身に血が行き渡らずに熱も運ばれずに冷えが起こります。
漢方医学では、冷え性に悩む場合には血虚の可能性を考慮し、漢方薬や生活習慣、食事を通じて血を補うことで血虚を改善し、冷え性を緩和していくアプローチが取られます。

もう1つ、漢方薬を選ぶ上で重要なものさしとして「虚証・実証」があります。

虚証・実証とは[1]
「虚・実」は普段の体力や、病気に対する抵抗力や反応の程度を表す概念です。

「虚証」は体力がなく、病気に対する抵抗力や反応も弱い状態です。

例)きゃしゃな体格、気力がなく疲れやすい、目の光・声に力がない、下痢しやすい、風邪を引いても症状が激しく現れない、など

「実証」は体力があり、本来は病気に対する抵抗力や反応も強い状態です。

例)がっちりした体格、気力があり疲れにくい、目の光・声に力がある、便秘しやすい、風邪を引いた時に症状が激しく現れる、など

また、「虚証」「実証」のどちらとも言えない中間タイプは「虚実中間証」と呼ばれます。

冷え性の方には虚証が多いのですが、実証である男性にも冷え性が増えてきています。虚証、実証によって合う漢方が異なりますのでこの体質の見極めが重要になります。
ご自身の体質がどのタイプになるのか詳しく知りたい方は、LINEで簡単にできるYOJOの体質チェックをお試しください。

また、漢方の基本的な考え方やどのような症状に効果があるのかなど詳しく知りたい方は、こちら▼の記事もおすすめです。

漢方にはどんな効果があるの?正しい飲み方や副作用についても解説

冷え性を漢方で考えると?

気血水

漢方医学において冷え性を考えると、実際には複数の体質や状態が考えられます。冷え性は単純な原因だけで発生するものではなく、個々人の体質や症状によって異なるタイプが存在します。以下に、代表的な冷え性のタイプの漢方的な考え方をいくつかご紹介します。

漢方の考えでみる冷え性のタイプ[1]

気虚(ききょ)
気(体のエネルギー)が不足した状態です。全身が冷えやすく、胃腸の働きも低下しているので新陳代謝が低下して熱を生み出せません。冷えると下痢や胃もたれなど胃腸の不調があるのもこのタイプに多いです。

気逆(きぎゃく)
気の巡りに異常が生じ、本来上半身から下半身へと巡るべき「気」が逆流している状態です。そのため、自律神経のバランスも乱れやすく血行不良による冷えが生じています。また、下半身は冷えるのに上半身はのぼせる「冷えのぼせ」がある人にも多いタイプです。

血虚(けっきょ)
血(けつ)が不足した状態です。血(けつ)とは、血液と血液が運ぶ栄養分やホルモンなど、血液の働きまで含めた概念です。血虚だと、全身に血液が行き渡らずに手足が冷えやすくしもやけができやすくなります。

気血両虚(きけつりょうきょ)
気と血の両方が不足した状態を指し、主に病気の後などで体力が著しく低下した時に陥りやすいです。この状態では、体内で熱を生み出すことができず、それによって巡らせることもできないため、全身が冷えやすくなります。気血両虚の人は、手足の冷感や体のだるさ、倦怠感などが特徴的に現れることがあります。

瘀血(おけつ)
瘀血は、血の巡りが悪く血行不良の状態を指します。冷え性の多くは血行不良が関連しているとされています。体内の血液が滞ってしまうことで、手足の末端に十分な血流が行き渡らず、冷えを引き起こす原因となります。

水滞(すいたい)
水(すい)の巡りが悪く、体の一部に余分な水が滞っている状態を指します。例えば、下半身が冷えるという人の多くは足のむくみを伴いますが、むくみも水滞の症状のひとつとして考えられます。冷えがあると、さらに水の巡りが悪くなるという悪循環に陥る傾向があります。

腎虚(じんきょ)
五臓の「腎」は成長や生殖などの生命活動を司る働きがあり、全身の水分代謝の調節をし、体を温める働きもあります。腎虚とは加齢や生活習慣などにより「腎」が弱まった状態です。腎が弱まると、水分代謝が乱れむくみやすくなったり、特に手足や下半身が冷えるようになります。

冷え性の原因は、複数の体質要素が組み合わさっている場合もあり、それらを正しく見極めることが重要です。漢方薬や生活習慣の改善によって、不足している要素を補ったり、体内の巡りを良くすることで、冷えにくい体質に改善することができることもあります。
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冷え性のタイプ別おすすめの漢方薬・養生法

生姜と紅茶

冷え性の改善には、漢方薬と適切な養生法が重要な役割を果たします。冷え性には複数のタイプがあり、それぞれの体質や症状に合わせたアプローチが必要です。ここでは、冷え性のタイプ別におすすめの漢方薬と養生法について詳しくご紹介いたします。

全身が冷えるタイプ(新陳代謝低下型)

寒そうな女性

運動不足や加齢などが原因となり、新陳代謝が低下することで熱産生も低下します。その結果、全身が冷えやすくなる傾向があります。下痢・腹痛・胃もたれなどの胃腸の不調や倦怠感、めまいなどを伴うことがあります。
漢方のタイプでは気虚、気血両虚、腎虚に関連することが多く、さらに水滞を伴うとむくみやめまいの症状が出ることがあります。

おすすめ漢方薬
真武湯(しんぶとう)、人参湯(にんじんとう)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、八味地黄丸(はちみじおうがん)など

おすすめ養生法
・お腹を冷やさないようにしましょう。具体的には、温かいものを飲食する、体を温める食材(ねぎ、にんにく、しょうがなどの薬味類など)を摂る、腹巻きをするなどが挙げられます。
・胃腸の調子を整えるために、腹八分目を心掛け、スープや鍋類など消化に良い食事を心掛けましょう。
・適度な運動を心掛けて代謝を上げましょう。ウォーキングなどの軽い運動で良いので1度の運動は30分継続することを目標に。
・夏でもできるだけ湯船に浸かることを心掛けましょう。

手足が冷えるタイプ(四肢末端型)

靴下を履く女性

疲労や無理なダイエットなどが原因となり、血行不良により血液が手足の先まで適切に行き渡らず末端が冷える傾向があります。しもやけができる、ニキビや月経トラブルなどを伴うことがあります。
漢方のタイプでは、血虚や瘀血と関連します。

おすすめ漢方薬
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)など

おすすめ養生法
・血流を良くするために、体を動かしましょう。軽いウォーキングやストレッチなどから始めてみましょう。筋トレも行い筋肉もつけるようにすると効果的です。
・血を消耗しないために、夜は早めに寝るようにしましょう。また、パソコンやスマホなどで目を酷使しすぎないように心掛けましょう。
血を補う赤い食べ物(トマト、赤パプリカ、クコの実、赤身の肉や魚など)を積極的に食べましょう。
・体を冷やさないように冷たいものは避け、温かくして食べるようにしましょう。

下半身が冷え上半身はのぼせるタイプ(自律神経失調型)

頭が痛そうな女性

ストレスや更年期によるホルモンバランスの変化などが原因で、自律神経のバランスが乱れます。その結果、下半身が冷える一方で上半身がのぼせる傾向があります。
漢方のタイプでは、気逆や瘀血と関連します。

おすすめ漢方薬
加味逍遙散(かみしょうようさん)、五積散(ごしゃくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)など

おすすめ養生法
・ストレスを溜めないように、自分なりのリラックス方法を見つけましょう。好きな音楽を聴く、アロマを炊く、好きな映画やドラマを観るなどリラックスする時間を設けましょう。
・外と室内の温度差も自律神経のバランスを乱す原因になります。夏は室内の設定温度を下げすぎないようにし、外出時には冷房対策として上着などを持参しましょう。
・適度な運動を心掛け、特に下半身の筋肉を鍛えるようにしましょう。
・湯船に浸かる時は、のぼせないようにぬるめのお湯で半身浴がおすすめです。
血の巡りを良くする食材(お酢、青魚、にんにく、烏龍茶、ジャスミン茶)などを摂るようにしましょう。

自律神経を整える漢方薬の詳しい説明や、生活習慣で気を付けることなど詳しく知りたい方は、こちら▼の記事もおすすめです。

自律神経を整える漢方薬とは?体質別の選び方やおすすめケアも解説

体が寒いと感じる寒がりタイプ(体感異常型)

ストレスを感じる女性

ストレスや緊張によって自律神経のバランスが乱れ、血流が悪くなることで冷えを感じる傾向があります。[3]
漢方医学の視点では、このタイプは五臓のうち肝の調子が乱れており、気や血の巡りが悪い状態とされます。

おすすめ漢方薬
抑肝散(よくかんさん)、四逆散(しぎゃくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)など

おすすめ養生法
・ストレスを溜めないように、自分なりのリラックスする時間を作るようにしましょう。
・自律神経のバランスを乱す原因になるため、外と室内との温度差に気を付けましょう。夏は室内の設定温度を下げすぎないようにしましょう。
・自律神経を整える入浴法としては、交互浴がおすすめです。5分湯船に浸かったら冷たいシャワーを浴びて3分くらい休みます。これを3〜4回繰り返します。熱いシャワーと冷たいシャワーを交互に浴びるだけでも効果があります。

冷え性の改善におすすめの漢方薬

生薬

冷え性の改善には、漢方薬が有効な選択肢として挙げられます。ここでは、冷え性を改善するために用いられる8種類の漢方薬をご紹介いたします。これらの漢方薬の効果を高めるためには、お湯に溶かして服用し、体を温めるようにすることが大切です。

当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)

当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、血行を良くして冷えた体を温め、冷えによる痛みを取る薬です。男女問わず冷え性によく使われ、手足の先が特に冷える人に用いられます。

服用がおすすめの人
虚証で体力がない人に向いています。特に手足の冷えやしもやけができる人に用いられます。冷えると悪化する下腹部痛、腰痛、下肢痛などにも効果があります。

配合生薬
大棗(たいそう)、桂皮(けいひ)、芍薬(しゃくやく)、当帰(とうき)、木通(もくつう)、甘草(かんぞう)、呉茱萸(ごしゅゆ)、細辛(さいしん)、生姜(しょうきょう)

使用上の注意
甘草が配合されているため、他の漢方薬と併用する時には重複に注意しましょう。低カリウム血症による不整脈、血圧上昇、むくみが現れることがあります。
当帰を含むため、胃腸の弱い人では、嘔吐、腹痛、下痢などが起こることがあります。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

当帰芍薬散は女性三大漢方薬のひとつで、冷えを伴う婦人科系の諸症状を改善します。血の不足を補い、血や水の巡りを良くして体を温める薬です。冷えの症状に加え、月経周期に合わせてむくみが現れる場合に選ばれることが多いです。

服用がおすすめの人
虚証で体力がない人に向いています。寒がりで冷え、貧血、むくみ、肩こり、めまいなどがある人に適しています。更年期障害や月経不順、月経困難症、不妊症、妊娠中のむくみなどにも用いられます。

配合生薬
芍薬(しゃくやく)、沢瀉(たくしゃ)、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、川芎(せんきゅう)、当帰(とうき)

使用上の注意
当帰を含むため、胃腸の弱い人では、嘔吐、腹痛、下痢などが起こることがあります。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

桂枝茯苓丸は女性三大漢方薬のひとつで、婦人科系の諸症状によく用いられます。血の巡りが悪い状態である「瘀血(おけつ)」を改善する代表的な薬です。のぼせやすいのに下半身が冷える「冷えのぼせ」の症状がある人に選ばれることが多いです。

服用がおすすめの人
比較的体格がよく体力が中くらいの人に向いています。赤ら顔で、下腹部が張る感じがある人の更年期症状(冷えのぼせ、めまい、頭痛、肩こり)、冷え性、月経不順、月経困難などに用いられます。

配合生薬
桂皮(けいひ)、芍薬(しゃくやく)、桃仁(とうにん)、茯苓(ぶくりょう)、牡丹皮(ぼたんぴ)

使用上の注意
桃仁・牡丹皮血行を強く促すため、流早産の危険性があるので妊娠中の方は服用を控えましょう。

真武湯(しんぶとう)

真武湯は「水(すい)」が滞った「水滞」を改善する薬で、新陳代謝が落ちて全身が冷えてだるい人に選ばれることが多いです。附子(ぶし)という生薬を含むため、体を強く温めます。

服用がおすすめの人
新陳代謝が衰えた体力のない虚証の人に向いています。めまいやふらつき、冷え、むくみ、下痢や消化不良などの胃腸症状にも用いられます。

配合生薬
茯苓(ぶくりょう)、芍薬(しゃくやく)、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)、生姜(しょうきょう)、附子(ぶし)

使用上の注意
・体を温める附子を含むため、体力があり赤ら顔の実証の人や高熱・炎症がある人には向きません。
附子の副作用である舌のしびれ、動悸、悪心・嘔吐などの副作用が出る可能性があります。このような症状が現れた場合はすぐに服薬を中止しましょう。

人参湯(にんじんとう)

人参湯は、消化吸収機能が低下した人の胃腸全般の調子をよくする薬です。胃腸が弱く体力がない人の冷え性や体質改善を目的に使われることがあります。

服用がおすすめの人
体力がない虚証の人で、冷え性で胃腸が弱い人に向いています。胃もたれ、下痢、倦怠感などがある時に用いられます。

配合生薬
人参(にんじん)、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)、甘草(かんぞう)、乾姜(かんきょう)

使用上の注意
甘草が配合されているため、他の漢方薬と併用する時には重複に注意しましょう。低カリウム血症による不整脈、血圧上昇、むくみが現れることがあります。

十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)

十全大補湯は、病気後、術後、慢性疾患などで、体力・気力ともに衰弱した人の気や血を補う薬です。[2] 血行を促したり、滋養強壮作用のある生薬が配合されています。全身倦怠感があり手足の冷えがある人に選ばれることが多いです。

服用がおすすめの人
体力のない虚証の人で、気も血も不足した疲れやすい人に向いています。病気後の体力低下、手足の冷え、全身倦怠感、ねあせ、貧血のある時に用いられます。

配合生薬
黄耆(おうぎ)、桂皮(けいひ)、地黄(じおう)、芍薬(しゃくやく)、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)、川芎(せんきゅう)、当帰(とうき)、人参(にんじん)、茯苓(ぶくりょう)、甘草(かんぞう)

使用上の注意
甘草が配合されているため、他の漢方薬と併用する時には重複に注意しましょう。低カリウム血症による不整脈、血圧上昇、むくみが現れることがあります。
地黄・当帰を含むため、胃腸が弱い人は、食欲不振、悪心、下痢などが現れることがあります。

八味地黄丸(はちみじおうがん)

八味地黄丸は「腎虚」を改善する薬で、体を温めることで冷えに伴う足腰などの慢性的な痛みやしびれを取る働きがあります。

服用がおすすめの人
体力がない虚証の人で、高齢者の冷え性によく用いられます。疲労・倦怠感が激しく、寒がりで特に手足や腰から下が冷え、夜間にトイレへ行くことが多い人に用いられます。

配合生薬
地黄(じおう)、山茱萸(さんしゅゆ)、山薬(さんやく)、沢瀉(たくしゃ)、茯苓(ぶくりょう)、牡丹皮(ぼたんぴ)

使用上の注意
・体を温める附子を含むため、体力があり赤ら顔の実証の人や高熱・炎症がある人には向きません。
附子の副作用である舌のしびれ、動悸、悪心・嘔吐などの副作用が出る可能性があります。このような症状が現れた場合はすぐに服薬を中止しましょう。
地黄を含むため、胃腸が弱い人は、食欲不振、悪心、下痢などが現れることがあります。
牡丹皮血行を強く促すため、流早産の危険性があるので妊娠中の方は服用を控えましょう。

加味逍遙散(かみしょうようさん)

加味逍遙散は女性三大漢方薬のひとつで、婦人科系の心身の不調に広く用いられます。血の巡りを良くして「瘀血(おけつ)」を取り除くほか、「気逆(きぎゃく)」からくる神経の高ぶりや「気滞(きたい)」からくる抑うつにも効果があります。そのため、ストレスによる自律神経の乱れからくる冷え性の人に選ばれることが多いです。

服用がおすすめの人
体力がない虚証の女性に多く用いられます。精神不安、不眠、イライラなどの精神神経症状があり、疲れやすく肩がこり、時に便秘傾向のある人に向いています。冷え性、月経不順、月経困難、更年期症状などに用いられます。

配合生薬
柴胡(さいこ)、芍薬(しゃくやく)、当帰(とうき)、茯苓(ぶくりょう)、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)、山梔子(さんしし)、牡丹皮(ぼたんぴ)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)、薄荷(はっか)

使用上の注意
当帰を含むため、胃腸の弱い人では、嘔吐、腹痛、下痢などが起こることがあります。
山梔子を含む処方を長期間服用すると腸間膜静脈硬化症が起こることがあります。感受性には個人差が大きく具体的な限度値を示すことができないため、連用する際には定期的に大腸カメラによる検査をすることが勧められています。
牡丹皮血行を強く促すため、流早産の危険性があるので妊娠中の方は服用を控えましょう。
甘草が配合されているため、他の漢方薬と併用する時には重複に注意しましょう。低カリウム血症による不整脈、血圧上昇、むくみが現れることがあります。

漢方薬を飲むのが苦手な方や、上手な飲み方を知りたい方にはこちら▼の記事もおすすめです。

漢方薬の正しい飲み方は?上手に飲むコツや飲むときの注意点も解説

薬局で購入できる冷え性のおすすめ市販薬

病院や漢方薬局に行く時間がない、まずは手軽に市販薬で試してみたい方向けに、市販薬でおすすめの冷え性に用いられる漢方薬をご紹介します。

ツムラ漢方当帰芍薬散料エキス顆粒

引用元:ツムラHP

冷え性でむくみやすい人の婦人科の諸症状に

当帰芍薬散エキスを有効成分とした商品です。冷え性でむくみやすい方に向いています。

分類 第2類医薬品
適応する人 体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴える人
形状 顆粒剤
用法・用量 1日2回食前に水又はお湯にて服用してください。
成人(15歳以上):1回1包
7歳以上15歳未満:1回2/3包
4歳以上7歳未満:1回1/2包
2歳以上4歳未満:1回1/3包
服用対象年齢 2歳以上(2歳未満は服用しないこと)
効能効果 月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による障害(貧血、疲労倦怠、めまい、むくみ)、めまい・立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え症、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴り
内容量 20包/48包

当帰四逆加呉茱萸生姜湯エキス錠クラシエ

手や足の冷えが気になる方に

当帰四逆加呉茱萸生姜湯エキスを有効成分とした商品です。冷えによって起きるしもやけや、下腹部の痛み、腰の痛み、頭痛などに効果があります。

引用元:クラシエHP
分類 第2類医薬品
適応する人 体力中等度以下で、手足の冷えを感じ、下肢の冷えが強く、下肢又は下腹部が痛くなりやすい人
形状 錠剤
用法・用量 1日3回食前又は食間に水又は白湯にて服用。
成人(15歳以上):1回4錠
7歳以上15歳未満:1回3錠
5歳以上7歳未満:1回2錠
服用対象年齢 5歳以上(5歳未満は服用しないこと)
効能効果 冷え症、しもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛、下痢、月経痛
内容量 48錠

ツムラ漢方加味逍遙散エキス顆粒

冷え性でイライラなどの精神症状もある方の婦人科の諸症状に

加味逍遙散エキスを有効成分とする商品です。精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のある人に向いています。

引用元:ツムラHP
分類 第2類医薬品
適応する人 体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のある人
形状 顆粒剤
用法・用量 1日2回食前に水又はお湯にて服用してください。
成人(15歳以上):1回1包
7歳以上15歳未満:1回2/3包
4歳以上7歳未満:1回1/2包
2歳以上4歳未満:1回1/3包
服用対象年齢 2歳以上(2歳未満は服用しないこと)
効能効果 冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症、不眠症
内容量 20包/48包

「クラシエ」漢方桂枝茯苓丸料エキス錠

手足の冷えや冷えのぼせがある方に

桂枝茯苓丸エキスを有効成分とした商品です。のぼせや手足の冷えを伴う生理の痛み、しみ、肩こり、打ち身などに効果があります。

分類 第2類医薬品
適応する人 比較的体力があり、ときに下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどを訴える人
形状 錠剤
用法・用量 1日3回食前又は食間に水又は白湯にて服用。
成人(15歳以上):1回2錠
7歳以上15歳未満:1回1錠
服用対象年齢 7歳以上(7歳未満は服用しないこと)
効能効果 月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、血の道症、肩こり、めまい、頭重、打ち身(打撲症)、しもやけ、しみ、湿疹・皮膚炎、にきび
内容量 90錠

クラシエ八味地黄丸A

夜中に頻繁にトイレに起きる冷え性の方に

八味地黄丸エキスを有効成分とした商品です。疲れ、かすみ目、下肢痛、頻尿、排尿困難などの症状に効果があります。

引用元:クラシエHP
分類 第2類医薬品
適応する人 体力中等度以下で、疲れやすくて、四肢が冷えやすく、尿量減少又は多尿で、ときに口渇がある人
形状 錠剤
用法・用量 1日3回食前又は食間に水又は白湯にて服用。
成人(15歳以上):1回4錠
服用対象年齢 15歳以上(15歳未満は服用しないこと)
効能効果 下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、かゆみ、排尿困難、残尿感、夜間尿、頻尿、むくみ、高血圧に伴う随伴症状の改善(肩こり、頭重、耳鳴り)、軽い尿漏れ
内容量 60錠/180錠/360錠/540錠

冷え性の漢方薬に関するよくある質問

よくある質問

不妊症や更年期に関連する冷え性、男性の冷え性などに関する質問にお答えいたします。

病院で処方される漢方薬と市販薬との違いは?

病院で処方される漢方薬は、医師の処方箋に基づいて提供される医療用漢方薬です。現在、医療用漢方薬は148種類が保険適用されています。一方、市販薬は一般用医薬品(OTC医薬品)として知られており、その効能及び効果において人体への作用が著しくないものであり、薬剤師などの専門家から情報提供を受け、処方箋なしで購入可能な医薬品のことを指します。そのため、一般用医薬品は医療用漢方薬の有効成分の1/2量や2/3量などが含有されることが一般的です。

夏の冷え性におすすめの漢方薬は?

夏の冷え性には、冬に比べて自覚しにくく、冷えることで腹痛や胃もたれなどの胃腸の不調や全身の倦怠感が現れる場合があります。特に、冷房が効いた室内に長時間いることで起こる頭痛や腹痛、冷えなどの不調は「クーラー病」とも呼ばれます。夏の冷え性を改善するためには、適切な漢方薬を用いたアプローチが有効です。
クーラー病によく用いられる漢方薬として、五積散(ごしゃくさん)や当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)があります。
冷たいものの飲み過ぎや食べ過ぎによる胃腸の冷えには、人参湯(にんじんとう)や六君子湯(しっくんしとう)などが用いられます。
冷えによるだるさや食欲不振などのいわゆる夏バテ症状には、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や清暑益気湯(せいしょえっきとう)などが用いられます。

更年期の冷えのぼせにおすすめの漢方薬は?

冷えのぼせとは、下半身や手足などの末端は冷えるのに顔や頭などの上半身はのぼせたように熱くなる症状のことをいいます。
冷えのぼせに対しては、体質や症状によってさまざまな漢方薬が使用されますが代表的なものには、加味逍遙散(かみしょうようさん)や桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)が挙げられます。

更年期の症状を緩和する漢方薬の詳しい内容を知りたい方は、こちら▼の記事もおすすめです。

更年期障害におすすめの漢方薬とは?症状や体質別の選び方も解説

不妊症にも冷えは関係している?

冷え性は不妊症にも関係しています。血行不良が起こると、子宮や卵巣に必要な栄養や酸素が十分に届かず、女性ホルモンの分泌が乱れる可能性があります。これにより妊娠しにくい状態が生じることがあります。さらに、冷え性の人は自律神経のバランスが乱れやすく、その結果女性ホルモンのバランスも崩れ、月経不順や卵巣機能の低下に繋がる可能性があります。したがって、冷え性を改善することは不妊対策にも有益と言えるでしょう。体温調節を整え血行を促進する漢方薬や養生法を取り入れることで、不妊による悩みを軽減し妊娠の可能性を高めることが期待されます。

不妊症の原因や不妊治療で使われる漢方薬などについて詳しく知りたい方は、合わせてこちら▼の記事もお読みください。

妊活と漢方薬の効果とは?不妊症の原因や妊活法も解説
妊活は何から始めたらいい?妊活のポイントや不妊治療についても解説

男性の冷え性におすすめの漢方薬は?

冷え性の方は体力のない虚証の人に多い傾向がありますが、最近では筋肉も体力もある実証である若い男性の方にも冷え性が増えているといわれています。
若い男性の冷え性の原因としては、ストレスや緊張により自律神経のバランスが乱れ、血行不良が生じることが多いです。このタイプによく使用される漢方薬が四逆散(しぎゃくさん)です。また、年齢を重ねるにつれて腎虚(じんきょ)になり、生命エネルギーが衰えてくると冷え性に悩むことが増えてきます。腎虚に対しては、八味地黄丸(はちみじおうがん)や牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)が用いられ、体を強く温めるだけでなく、冷えに伴う腰痛や頻尿なども改善する効果があります。男性は女性に比べて冷えを自覚しにくい方が多いので、腰痛や頻尿、手足の冷えが続く場合は冷えが原因である可能性も考えてみてください。

上記で紹介した漢方薬は、すべての状況に適用されるものではなく、症状や体質、体力の有無などによって選択が異なります。ご自身に合った適切な漢方薬を知りたい方は、ぜひ一度YOJOの薬剤師にご相談ください。丁寧にお話を伺い、あなたに最適な漢方薬を提案いたします。

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【参考文献】
[1]嶋田豊著 NHKきょうの健康 漢方薬事典 改訂版
[2]伊藤美千穂編著 エビデンス・ベース漢方薬活用ガイド 第2版
[3]株式会社ツムラ 冷え改善のススメ 岡村 麻子監修