何度もくり返す頑固な便秘には、漢方薬の服用が有効な治療法の一つになることがあります。
「便は健康のバロメーター」とも呼ばれるほど、 便は胃腸の健康を把握するための大切な情報源です。便秘を放置すると腸内で便がますます硬くなり、症状がさらに悪化したり、大腸や直腸の病気につながることもあるため注意が必要です。
この記事では、
・便秘の種類と漢方薬を選ぶメリット
・体質別の漢方薬の選び方
・おすすめの市販薬
・便秘解消に効果的な養生法
について解説します。
Contents
便秘の種類と漢方の処方とは
ひとことで便秘と言っても起こる原因はさまざまです。たとえば・・・
・食事量が少ないまたは食事中の繊維質が少ない
⇒便の量が少なく、排便反射が起こりにくくなります。
・運動不足である
⇒大腸の動きや排便時の腹筋の力が弱まります。
・女性ホルモンの周期
⇒黄体ホルモンには大腸のぜん動運動を抑制する働きがあります。
・生活習慣やストレス
⇒自律神経のバランスが崩れて腸の働きが低下します。
そのため原因によっても適切な対応や用いるべき漢方薬は異なります。
ここでは便秘の種類と漢方の処方について解説します。
便秘の種類
まず、病気に関わる場合を除いて、私たちが通常起こしやすい便秘は、大きく3種類に分類されています。[1]
①弛緩性便秘(しかんせいべんぴ)
大腸を動かす筋肉が緩んで、ぜん動運動が弱まると便が運ばれていかなくなるために起こります。
(原因)加齢(とくに高齢者)、食生活の乱れ、運動不足など
②痙攣性便秘(けいれんせいべんぴ)
大腸のぜん動運動に連続性がなくなり、便の通過に時間がかかり過ぎて起こる便秘です。
(原因)ストレス
③直腸性便秘(ちょくちょうせいべんぴ)
便が大腸から直腸に運ばれると、排便反射が働き便意を催しますが、便意を日常的にがまんしていると神経の感度が鈍って、直腸に便が入っても便意を催さなくなります。
(原因)便意を我慢する生活、温水洗浄便座による刺激
便秘の薬物治療とは
便秘を治療する際の基本は、
(1)腸管での水分調節により便を柔らかくする
(2)腸管粘膜を刺激して腸管運動を促す
(3)腸管の過剰収縮をやわらげる
ことです。
臨床で頻繁に使用される西洋薬には、たとえば以下のようなものがあります。
塩類下剤 (酸化マグネシウム) |
・大腸内の水分を増やして便を柔らかくする薬剤 ・薬の作用は比較的穏やか ・高齢者や腎機能低下の方は高Mg血症の副作用に注意 |
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便秘型過敏性腸症候群治療薬 (リナグルチド) |
・大腸内の水分を増やして便を柔らかくする作用のほか、大腸の痛覚過敏を抑える作用ももつ薬剤 ・薬の作用は比較的穏やか ・下痢や腹痛の副作用に注意 |
刺激性下剤 (ピコスルファートNa、センノシド) |
・大腸を刺激してぜん動運動を促す薬剤 ・即効性が高い ・腹痛や下痢の副作用や習慣性に注意 |
浣腸 (グリセリン浣腸) |
・直腸や大腸の粘膜を直接刺激して排便を促す薬剤 ・即効性が高い ・習慣性に注意 |
とくに刺激性下剤や浣腸は、常用すると次第に効果がなくなってしまったり、下剤がないと排便がスムーズにできなくなるような習慣性がついてしまったりします。これらの下剤は市販薬でも多いため注意が必要です。
漢方薬での便秘治療と強み
では漢方薬の場合、便秘に対してどのような処方があるのでしょうか。
便秘に効果の期待できる生薬としては以下のようなものが知られています。[2]
(1)腸管での水分調節により便を柔らかくする生薬:芒硝(ぼうしょう)、膠飴(こうい)
芒硝 | 防風通聖散、調胃承気湯など |
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膠飴 | 大建中湯、小建中湯など |
(2)腸管粘膜を刺激して腸管運動を促す生薬:大黄(だいおう)、山椒(さんしょう)
大黄 | 大黄甘草湯、防風通聖散、麻子仁丸、潤腸湯など |
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山椒 | 大建中湯など |
(3)腸管の過剰収縮をやわらげる生薬:芍薬(しゃくやく)、甘草(かんぞう)
芍薬 | 防風通聖散、潤腸湯、麻子仁丸、桂枝加芍薬湯、桂枝加芍薬大黄湯、大柴胡湯など |
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甘草 | 大黄甘草湯、桃核承気湯、防風通聖散、調胃承気湯、潤腸湯、桂枝加芍薬湯、桂枝加芍薬大黄湯など |
また、薬の作用点が1点に集中しやすい西洋薬に対し、漢方薬は複数の生薬が総合的に効果を発揮するため作用点が多岐に渡ります。
便秘の場合、単に便が排出されないだけでなく、腹部膨満感や腹痛、イライラ、肌荒れ、冷えなどの周辺症状にも悩まれている方も少なくありません。
体質や状態に合った漢方薬を服用することで、このような周辺症状にも対応することができます。
漢方でみる便秘の状態と適切な漢方薬の選び方
では体質や症状に合った漢方薬はどのように選べば良いのでしょうか。
ここでは、漢方医学でみる便秘の状態と、適切な漢方薬の選び方についてご説明します。
気血水
漢方医学では、健康を維持するためには、気血水の三要素が重要であると考えます。「気」は精神やからだの臓器を健康に働かせるエネルギー、「血」は血液・リンパ液などの全身を循環・栄養する物質、「水」は生体内の水分バランスをさします。
便秘は、ストレスなどによって気の流れが停滞したり(気滞)、血の巡りが悪くなったり(瘀血)することで起こるほか、水の不足でも起こると考えられています。
実証・虚証
便秘の治療に漢方薬を用いる場合は、個々の体質(証)を見極めることも大切です。
漢方医学では、今のからだの状態を判断するものさしの一つとして、実証・虚証があります。「実証」は余分なものを体外へと排出することができていない状態、「虚証」はからだに必要な気・血・水が不足している状態をさします。
たとえば虚証の人が実証の人と同様の漢方薬を服用すると、強い腹痛や激しい下痢などの副作用が生じる可能性があるため注意が必要です。
実証向きの漢方薬や虚証向きの漢方薬の例としては、以下のようなものがあります。[2]
実証向き の漢方薬 |
防風通聖散、桃核承気湯、調胃承気湯など |
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虚証向き の漢方薬 |
潤腸湯、麻子仁丸、桂枝加芍薬大黄湯、大建中湯など |
ご自身の体質や症状に合った漢方薬について悩まれている方は、YOJOの薬剤師にも相談することができます。
便秘に効果の期待できる漢方薬とは
ここからは便秘に効果の期待できる具体的な漢方薬についてお伝えします。
【便秘以外の症状がない方に】大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)
大黄甘草湯には、腸の動きを活発にして便通を改善する作用があります。
配合生薬の「大黄(だいおう)」はアントラキノン系の大腸刺激性の下剤成分を含みます。また、「甘草(かんぞう)」には便秘にともなう腹痛や排便時の痛みをやわらげる効果が期待できます。
大黄甘草湯で効果が不十分な場合は、大黄甘草湯に「芒硝(ぼうしょう)」を追加した調胃承気湯(ちょういじょうきとう)が用いられることもあります。
配合生薬
大黄、甘草
服用がおすすめの人
どちらかというと実証向けですが、体力に関わらず使用できます。
便秘や便秘に伴う周辺症状(たとえば頭重、のぼせ、ふきでもの、腹部膨満、痔など)にも効果が期待できます。
服用上の注意
妊娠・授乳中の人は服用を避けましょう
「大黄」に子宮収縮作用があり流早産を起こす可能性があります。また大黄は母乳中に移行して、乳児の下痢を引き起こすこともあります。
複数の漢方薬を服用する場合は注意ましょう
配合生薬の「甘草」が重複し、偽アルドステロン症などの副作用が起こりやすくなる可能性があります。
【肥満を伴う便秘症の人に】防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
食事でカロリー(熱量)を取り過ぎると、胃腸に熱がこもりやすくなります。その結果、消化機能の低下や便の乾燥をもたらし、便秘の原因となってしまうのです。
防風通聖散には、からだを温めることで発汗を促し、腸の熱を下げながら体内の不要物を排出しやすくする働きがあります。便秘の改善だけでなく、むくみや熱を持つような炎症疾患にも効果的です。
また、配合生薬の「麻黄(まおう)」による交感神経の活性化作用や「甘草(かんぞう)・荊芥(けいがい)・連翹(れんぎょう)」による脂肪分解や褐色脂肪組織の熱産生持続効果から、防風通聖散にはダイエット効果があることが報告されています。[2]
配合生薬
滑石、黄芩、甘草、桔梗、石膏、白朮、大黄、荊芥、山梔子、芍薬、川芎、当帰、薄荷、防風、麻黄、連翹、芒硝、生姜
服用がおすすめな人
体力のある実証タイプで、腹部の皮下脂肪が多い、いわゆる太鼓腹の人におすすめの漢方薬です。
むくみやのぼせ、赤い吹き出物、肥満症にも効果が期待できます。
服用上の注意
妊娠・授乳中の人は服用を避けましょう
「大黄・芒硝」に子宮収縮作用があり流早産を起こす可能性があります。また大黄は母乳中に移行して、乳児の下痢を引き起こすこともあります。
病気の治療で食塩制限をしている人は注意しましょう
配合生薬の「芒硝」は含水硫酸ナトリウムの一種であり、食塩と同じナトリウムが含まれています。
不眠、発汗、動悸などの副作用が起こる可能性があります
「麻黄」が含まれているために不眠や発汗過多、全身脱力感、動機・頻脈、精神興奮などを引き起こす可能性があります。
長期服用に注意しましょう
「山梔子」が含まれており、長期服用(多くは5年以上)で大腸粘膜に異常が生じる例が報告されています。
他にも、ダイエット効果のある漢方薬についてさらに詳しく知りたい方は、こちら▼の記事もお読みください。
防風通聖散はYOJOショップでも購入できます▼
【のぼせやイライラもある方に】桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
桃核承気湯には、血の巡りを良くして熱を分散させるとともに、消化管の働きを整えて便通を改善してくれる作用があります。
配合生薬の「桃仁(とうにん)」が血液循環を良くして便の排出を促します。さらに桃仁は植物の油であることから油分を多く含み、腸に潤いを与えてスムーズな排便を促します。また「大黄(だいおう)・芒硝(ぼうしょう)」が緩下作用を示すほか、「甘草(かんぞう)」が消化管の調子を整え炎症を抑える作用を持ちます。[3]
そのため桃核承気湯は排泄作用が強く、老廃物の蓄積や炎症が過剰にある場合に処方され、痛みを緩和してくれる漢方薬です。
配合生薬
桃仁、桂皮、大黄、甘草、芒硝
服用がおすすめな人
実証タイプで血行不良があり便秘がちな人、ホルモンバランスの乱れからくる冷えのぼせやイライラがあるような人におすすめの漢方です。痔や生理不順や月経時・産後の精神不安などにも効果が期待できます。
服用上の注意
妊娠・授乳中の人は服用を避けましょう
緩下作用のある「大黄・芒硝」や、血行を強く促進する作用のある「桃仁」は、特に妊娠中の女性が服用すると流早産の危険が高まります。
複数の漢方を長期服用する場合は注意しましょう
桃核承気湯には「甘草」や「大黄」が含まれており、複数の漢方を服用している場合は重複して副作用が起こりやすくなります。
病気の治療で食塩制限をしている人は注意しましょう
配合生薬の「芒硝(硫酸ナトリウム)」には食塩(塩化ナトリウム)と同じナトリウムが含まれています。
【高齢者や虚証タイプの方に】麻子仁丸(ましにんがん)
麻子仁丸は、便が乾燥して硬く排便しにくい状態に対して、腸を刺激するとともに、腸に潤いを与えて便を軟らかくする作用があります。
「水」が不足して腸の潤いが低下し、便が硬くなりがちな高齢者の便秘薬としてよく用いられます。
配合生薬の「大黄」に加えて、「麻子仁(ましにん)・杏仁(きょうにん)」などの植物の種子や果実を利用する生薬が配合されています。これらは油分を多く含み潤滑剤としてスムーズな排便を促します。また、芍薬は腸管の痙攣を緩和すると考えられています。[4]
配合生薬
麻子仁、大黄、杏仁、芍薬、枳実、厚朴
服用がおすすめな人
虚証タイプの体力中等度以下の人で、便が硬くコロコロしている人に向きます。高齢者や病後の便秘におすすめの漢方です。便秘や便秘に伴う周辺症状(たとえば頭重、のぼせ、ふきでもの、腹部膨満、痔など)にも効果が期待できます。
服用上の注意
妊娠・授乳中の人は服用を避けましょう
「大黄」に子宮収縮作用があり流早産を起こす可能性があります。また大黄は母乳中に移行して、乳児の下痢を引き起こすこともあります。
【腹痛やしぶり腹が伴う方に】桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
過敏性腸症候群の症状ように便秘や下痢をくり返すときは、漢方では「気」「血」のバランスが崩れていると考えます。桂枝加芍薬湯は、からだを温めて緊張をほぐし、気血のバランスを整えて正常な便通へと導く作用があります。
桂枝加芍薬湯は「桂枝湯」を基本に、痛みをやわらげたり腸管の痙攣を抑えたりする作用のある「芍薬(しゃくやく)」の量を増やした処方です。ほかにも穏やかな発汗・発散作用のある「桂皮(けいひ)」、からだを温める「生姜(しょうきょう)」、緩和作用のある「甘草(かんぞう)」などが配合されています。
「大黄」を含まない便秘薬として、「大黄」の刺激が問題になりやすい高齢者や妊娠中の女性の便秘にもよく処方されます。
配合生薬
芍薬、桂皮、大棗、甘草、生姜
服用がおすすめな人
体力中等度以下で腹部膨満感がある人、とくに高齢者や妊娠中の女性におすすめの漢方薬です。便意を催すにも関わらず便が出ない状態の「しぶり腹」、腹痛、過敏性腸症候群の下痢・便秘にも効果が期待できます。
服用上の注意
複数の漢方薬を服用する場合は注意ましょう
配合生薬の「甘草」が重複し、偽アルドステロン症などの副作用が起こりやすくなる可能性があります。
【腹部膨満や冷えもある方に】大建中湯(だいけんちゅうとう)
大建中湯は、からだを温めて胃腸の調子を良くし、腹痛やお腹の張りをやわらげる作用があります。臨床では、胃腸の調子を整えたり、大腸がん手術後の腸閉塞を予防・改善したりする目的で広く用いられています。
大建中湯には4種類の生薬が配合されています。滋養・強壮作用のある「人参(にんじん)」や腸の運動を活発にする「山椒(さんしょう)」、からだを温める「乾姜(かんきょう)」、腸管内の水分調節をして便をやわらかくする作用のある「膠飴(こうい)」が含まれます。
また2022年に理化学研究所より、大建中湯が大腸において特定の腸内フローラの増加を促し、その代謝物が大腸上皮を介して免疫細胞に作用することで、炎症反応から大腸を保護する作用があることが明らかになりました。[5]
配合生薬
膠飴、乾姜、人参、山椒
服用がおすすめな人
体力虚弱で、お腹が冷えて痛む人や腹部膨満感のある人におすすめの漢方薬です。
服用上の注意
重大な副作用として、間質性肺炎や肝機能障害に注意しましょう
間質性肺炎の症状(たとえば発熱、咳、呼吸困難など)や、肝機能障害の症状(たとえば発熱、全身倦怠感、嘔気嘔吐、黄疸など)があらわれた場合は、服用を中止しすみやかに受診するようにしましょう。
高齢者・小児・妊娠中の方の便秘に使用される漢方薬
漢方薬に限らず、高齢者や小児、妊婦の方が薬を服用する際には注意が必要です。ここでは、高齢者・小児・妊娠中の方の便秘によく使用される漢方薬と注意点をお伝えします。
高齢者で使用される漢方薬
高齢者では、潤腸湯や麻子仁丸の漢方薬がよく使用されます。
また、高齢者ではからだの冷えが腸の運動を低下させる原因の一つになるため、冷え症に用いる漢方薬が使用される場合もあります。[2]
小児で使用される漢方薬
小児では、大建中湯や小建中湯、大黄甘草湯の漢方薬がよく使用されます。[3]
ただし小建中湯や大黄甘草湯には「甘草」が含まれるため、複数の漢方薬を服用する場合は注意しましょう。
妊婦で使用される漢方薬
妊婦では、桂枝加芍薬湯や小建中湯などが第一選択とされます。腹痛を伴う場合は短期間の使用でのみ桂枝加芍薬大黄湯、頑固な便秘で兔糞状の便が続く場合は頓服で麻子仁丸、潤腸湯を使用することもあります。[4]
「大黄」を多量に含む漢方薬は妊娠中に服用すると流早産の危険性が高まるため避けましょう。また芒硝や桃仁、牡丹皮、麻子仁、乾姜などが配合されている漢方薬も避けた方が良いとされています。
妊娠中の漢方の服用や注意すべき生薬について、さらに詳しく知りたい方は、こちら▼の記事もお読みください。
市販で購入できる便秘におすすめの漢方薬とは
まずは手軽に漢方薬を試してみたいという方向けに、ここでは市販で購入できるおすすめの漢方薬をご紹介します。
タケダ漢方便秘薬(大黄甘草湯)
分類 | 第2類医薬品 |
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適応する人 | 体力に関わらず使用できます |
形状 | 顆粒 |
用法・用量 | 1日1回、就寝前に水またはお湯で、かまずに服用。 ・成人(15歳以上) 軽い便秘 (2~3日便通がないとき):1回1~3錠 頑固な便秘 (4日以上便通がないとき):1回2~4錠 ・5歳~14歳 軽い便秘 (2~3日便通がないとき):1回0.5~1錠 頑固な便秘 (4日以上便通がないとき):1回1~2錠 |
服用対象年齢 | 5歳以上(5歳未満は服用しないこと) |
効能効果 | 便秘、便秘に伴う腹部膨満・ふきでもの(にきび)・腸内異常醗酵・痔・頭重・のぼせ・湿疹・皮膚炎・食欲不振(食欲減退)などの症状の緩和 |
内容量 | [ビン入り品]65錠/120錠/180錠[分包品]12錠(4錠×3包) |
ツムラ 防風通聖散エキス顆粒
分類 | 第2類医薬品 |
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適応する人 | 体力充実して、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちな人 |
形状 | 顆粒 |
用法・用量 | 1日2回食前に服用。 成人(15歳以上):1回1包 15歳未満7歳以上:1回2/3包 7歳未満4歳以上:1回1/2包 4歳未満2歳以上:1回1/3包 |
服用対象年齢 | 2歳以上(2歳未満は服用しないこと) |
効能効果 | 高血圧や肥満に伴う動悸・肩こり・のぼせ・むくみ・便秘、蓄膿症(副鼻腔炎)、湿疹・皮膚炎、ふきでもの(にきび)、肥満症 |
内容量 | 20包/48包 |
ツムラ漢方 桃核承気湯エキス顆粒
分類 | 第2類医薬品 |
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適応する人 | 体力が中等度以上でのぼせて便秘しがちな人 |
形状 | 顆粒 |
用法・用量 | 1日2回食前に服用。 成人(15歳以上):1回1包 15歳未満7歳以上:1回2/3包 7歳未満4歳以上:1回1/2包 4歳未満2歳以上:1回1/3包 |
服用対象年齢 | 2歳以上(2歳未満は服用しないこと) |
効能効果 | 月経不順、月経困難症、月経痛、月経時や産後の精神不安、腰痛、便秘、高血圧の随伴症状(頭痛、めまい、肩こり)、痔疾、打撲症 |
内容量 | 20包 |
麻子仁丸料エキス錠クラシエ
分類 | 第2類医薬品 |
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適応する人 | 体力中等度以下で、ときに便が硬く塊状な人 |
形状 | 錠剤 |
用法・用量 | 1日3回食前に服用。 成人(15歳以上):1回4錠 |
服用対象年齢 | 15歳以上(15歳未満は服用しないこと) |
効能効果 | 便秘、便 秘に伴う頭重・のぼせ・湿疹・皮膚炎・ふきでもの(にきび)・食欲不振(食欲減退)・腹部膨満・腸内異常醗酵・痔などの症状の緩和 |
内容量 | 96錠 |
「クラシエ」漢方桂枝加芍薬湯エキス顆粒
分類 | 第2類医薬品 |
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適応する人 | 体力中等度以下で、腹部膨満感のある人 |
形状 | 顆粒 |
用法・用量 | 1日3回食前に服用。 成人(15歳以上):1回1包 15歳未満7歳以上:1回2/3包 7歳未満4歳以上:1回1/2包 4歳未満2歳以上:1回1/3包 2歳未満:1回1/4包 |
服用対象年齢 | 2歳以上(2歳未満は服用しないこと) |
効能効果 | しぶり腹、腹痛、下痢、便秘 |
内容量 | 24包 |
ツムラ大建中湯エキス顆粒
分類 | 第2類医薬品 |
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適応する人 | 体力虚弱で、腹が冷えて痛む人 |
形状 | 顆粒 |
用法・用量 | 1日3回食前に服用。 成人(15歳以上):1回1包 15歳未満7歳以上:1回2/3包 7歳未満4歳以上:1回1/2包 4歳未満2歳以上:1回1/3包 |
服用対象年齢 | 2歳以上(2歳未満は服用しないこと) |
効能効果 | 下腹部痛、腹部膨満感 |
内容量 | 20包/48包 |
便秘の改善に向けて漢方の服用以外にもできること
便秘の改善には、漢方薬の服用だけでなく今までの生活習慣を見直し、改善することも非常に大切です。
ここでは便秘に対しておすすめの養生法をお伝えします。
便秘に良い食べ物をバランス良く摂取しよう
1日3食、とくに朝食はきちんと食べましょう。腸を刺激して排便を促す効果が期待できます。
便秘に良い食べ物としては食物繊維が多い食品を積極的に取るのが良いでしょう。食物繊維には便の量を増やして大腸通過時間を短くしたり、食物繊維内に水分を含むことにより便性状と量を改善する作用があります。[7]
食物繊維を多くとる工夫として、たとえば白米に雑穀を混ぜたり玄米・5分精米を取り入れたりする方法があります。パンを好む場合はくるみパンや胚芽パンが良く、麺類の場合はうどんよりも日本そばの方が繊維が多く含まれます。根菜類を選んで摂取するのも良いでしょう。
また、ヨーグルトなどの乳酸菌食品も便秘対策には有効です。
慢性便秘症診療ガイドラインでも慢性便秘症に関してプロバイオティクスは排便回数の増加に有効であり、治療法として用いることが推奨されています。
腸内細菌の善玉菌は腸管運動を整え便秘を予防するといわれています。善玉菌を増やすには発酵食品、乳製品、大豆製品などの摂取を心がけると良いでしょう。
排便習慣を整えよう
排便のリズムをつくるためには、まずは規則正しい生活を心がけましょう。
胃腸の消化・吸収は睡眠中の副交感神経が優位になっているときに進みます。十分な睡眠を取ることで、翌朝の排便を促しやすくなります。また、時間に余裕をもって起きることで朝のトイレタイムを確保することもできます。
また、便意をがまんするのもよくありません。健康的な生活をしていれば、1日1回、朝食後、自然に便意を催すようになっていきます。
適度な運動を心がけよう
ストレスや運動不足は便秘を悪化させる原因の一つです。
まずは1日1回15~ 20分程のウォーキングなど、無理なく続けられる運動を取り入れてみましょう。適度な運動はストレスホルモンの分泌を減少させ、リラックス効果があることも知られています。
腸管運動を促進させるためには、激しい運動よりは有酸素運動の方が良いとされています。とくにからだをひねるような動きのある運動は腸管を刺激し、また自律神経のバランスを整えるために腸管運動を活性化させます。[7]
簡単にできる便秘におすすめのひねり運動
【起床時や就寝前にできるひねり運動】
①仰向けに寝て、両足をそろえてひざを立てる。
②息を吐きながら両ひざをゆっくりと左に倒す。
③息を吸いながらひざを戻す。反対側も同じようにくり返す。
【椅子に座ったままできるひねり運動】
①椅子に浅く腰掛けて、正面を向いて背筋をピンと伸ばす。
②背もたれを持って息を吐きながら上半身を左にひねる。
③反対側も同じようにくり返す。
腹部マッサージをしよう
1日15分、週5回、腹部マッサージを行うことで慢性便秘の症状改善に有効であるという報告があります。[7]
簡単にできる便秘におすすめの腹部マッサージ
・お腹の上に両手を重ねて置き、前から見て時計回り、「の」の字になるようにお腹をさする。
・左右の脇腹を上下に揉む
・下腹部を上に押し上げるようにして横行結腸を刺激する
排便姿勢の工夫をしよう
スクワットをするときのような姿勢は直腸肛門角が開大し、排便しやすくなることが以前から知られています。しかし現代社会では和式便所は減っており、日常でスクワットの姿勢で排便をする機会は少ないです。
そこで、洋式便器においても前傾姿勢をとることを心がけたり、足台を用いて前傾姿勢を取りやすくしたりする工夫をしてみましょう。
足台を用いた場合は、用いない場合よりも直腸圧の増加率が高く、便排出率が増加するという報告があります。[7]
温水洗浄便座のやりすぎには注意しよう
便秘で悩まれている方のなかには、トイレの温水洗浄の強い刺激で排便を促す習慣がついてしまっている方もいるかもしれません。しかし、温水洗浄の水が肛門の奥まで入ると、直腸の粘膜を保護している粘液を洗い流してしまうために、直腸粘膜が傷つき、便意の感覚も衰えてしまうことにつながります。使用するのであれば、水の勢いを弱くして、肛門の外側だけを洗うのが、正しい使い方です。[1]
市販薬に頼り過ぎないようにしよう
冒頭でも述べたように、習慣性のついてしまう刺激性下剤や浣腸は市販薬でも多く注意が必要です。また大黄やセンナ、アロエ等のアントラキノン誘導体を含む生薬も市販薬に配合されることが多いですが、これらは長期の連用で大腸メラノーシス(大腸黒皮症)を引き起こす可能性などが報告されています。
便秘薬の長期服用は避けることが大切です。[2]
併用薬の副作用ではないかチェックしよう
便秘は、薬の服用による副作用としても起こる場合があります。
便秘の原因となる薬剤には、たとえば抗コリン薬(喘息や頻尿、パーキンソン病など)、抗うつ薬、せき止め、ガン疼痛への麻薬(モルヒネ)などがあります。便秘の症状がつらい場合は、他の薬剤への変更ができないか、一度医師に相談してみてもよいでしょう。
他の危険な症状が伴っていないかチェックしよう
強い腹痛や吐き気、発熱などを伴うような便秘は、腸閉塞や大腸の潰瘍・穿孔、またはクローン病などの重大な病気が隠れている可能性もあるため、早急に受診しましょう。
また、便に血が混ざる場合、もちろんただの痔の症状の場合もあるますが、大腸がんや直腸潰瘍の可能性もあるため、放置せずに病院で検査を行うことが大切です。
YOJOでは便秘に効果的な漢方薬の相談だけでなく、便秘を改善するための生活習慣上のアドバイスも受けることができます。なかなか改善しない便秘の症状に悩まれている方は、一度YOJOの薬剤師に相談してみるのもよいでしょう。
【参考文献】
[1]一般社団法人 日本臨床内科医会 便秘
[2]眞部 紀明, 春間 賢(2019) 慢性便秘の治療 ―漢方薬の種類とその使い方― 日本内科学会雑誌 108 巻1号,55~62
[3]小児慢性機能性便秘症ガイドライン
[4]名城大学 漢方解説 麻子仁丸
[5]理化学研究所 炎症性腸疾患における漢方「大建中湯」の作用機構を解明
[6]福岡県薬剤師会 妊婦への投与に注意が必要な漢方薬
[7]高野 正太 (2019)慢性便秘症に対する食事療法,運動療法,理学療法 , 日本大腸肛門病会誌72,621-627