「雨の日や台風の日には頭が痛くなる」「天気が悪くなると体調もスッキリしない…」そんな悩みをもつ人は意外と少なくありません。
天候の変化で起こる頭痛を俗に「低気圧頭痛」と呼ぶことがありますが、実は女性に多い症状であるのをご存じでしょうか。
この記事では、
・低気圧の日に頭痛が起こるのはなぜか
・低気圧頭痛はなぜ女性に多いのか
・低気圧頭痛への対策や治療薬
・低気圧頭痛に効果的な予防法
について詳しく解説します。
低気圧頭痛ってなに?
「低気圧頭痛」とは、気圧が低いときに起こる頭痛ですが、なぜこのような不調が起こるのでしょうか。これから順を追ってご説明します。
低気圧頭痛は気象病のうちの一つ
気圧、気温、湿度などの天候の変化に伴って起こる体調不良のことを「気象病」と呼ぶことがあります。たとえば、以下のような症状があげられます。
身体的な症状 | 頭痛、倦怠感、めまい、耳鳴り、肩こり、関節痛、傷跡の痛み、喘息、低血圧 |
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精神的な症状 | 不安感、気分の落ち込み、無気力、朝起きられない |
このうち頭痛は、気象病を訴える患者さんの多くに見られる症状です。天気が崩れることで痛みが増すことから「天気痛」と表現されることもあります。
気象病を起こしやすい体質チェックリスト
気象病は、正式な病名ではないことから現在のところ診断基準はありません。しかし以下のようなチェックリストでご自身が気象病である、もしくは気象病を起こしやすい体質であるかどうかを確認することができます。
気象病チェックリスト |
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(1)天気が悪くなる時に体調が悪くなる (2)天気が変わる前や雨が降る前になんとなく予想できる (3)頭痛、めまいが起こりやすい (4)肩こり・首こりがある (5)姿勢が悪い (6)乗り物酔いをしやすい (7)パソコンやスマートフォンの使用時間が長い(1 日平均 4 時間以上) (8)ストレッチや運動をすることが少ない (9)エアコンが効いている環境にいることが多い (10)ストレスを日常的に感じている |
【判定方法】
(1)(2)のどちらか1つでもあてはまれば気象病の可能性が高く、 (3)~(10) のうち3つ以上あてはまれば天候の変化で体調を崩しやすい傾向にあるため注意が必要です。
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低気圧頭痛はなぜ起こるの?
気象病の一番の原因は「気圧の変化」であると考えられています。
普段の生活で感じることはありませんが、 私たちのからだは常に全方向から気圧の影響を受けています。 そして、受けている気圧と同じ力でからだの内側から押し返すことでバランスを維持しているのです。
そのため、気圧が一定であればからだもバランスが維持しやすく体調も安定しますが、気圧が変動すると体内の圧力とのバランスが崩れ、頭痛などの体調不良が起こりやすくなります。
低気圧頭痛が起こるメカニズムとは
低気圧頭痛が起こる体内メカニズムは実は完全には解明されていません。しかし、現在のところ以下のように考えられています。
内耳が気圧の変化に過剰反応
私たちは気圧の変化を耳の中の「内耳」という部分で感じ取っています。
そして内耳にあるセンサーで受けたシグナルを、神経を介して脳へと伝えているのです。気圧の変化に敏感な方は、内耳のセンサーが過剰に反応して脳に情報を伝えてしまうために、不調を起こしやすいとされています。
さらなる詳しいメカニズムについてはまだ研究段階ですが、2019年に発表された愛知医科大学の研究では、内耳の半規管からシグナルを受け取る脳(延髄)の中で、「c-Fosタンパク質」という特殊なタンパク質が気圧の低下により増加していることが報告されています。[1]このまま解明が進めば、低気圧頭痛への有効な治療薬を開発する一助となるかもしれません。
自律神経の乱れ
自律神経とは、交感神経と副交感神経から成り、私たちの内臓や血管の働きを24時間休まずに自動的にコントロールしてくれる神経のことです。
自律神経の働きは、脳の視床下部という部分でコントロールされています。そのため、気圧の変化に敏感に反応して脳が過剰に刺激を受けてしまうと、自律神経のバランスが乱れてしまうことにつながります。[2]
自律神経はからだ全体の機能を調整している神経なので、その働きに異常が生じると、頭痛やだるさ、めまい、気分の落ち込みや不安感など、さまざまな症状が起こってしまうのです。
低気圧頭痛が女性に多い理由とは?
女性は、生理や排卵の周期に伴い、女性ホルモンの一つであるエストロゲンの量が変化します。そしてこのエストロゲンが減少するときに、頭痛(片頭痛)が起きやすいことが分かっているのです。同様の理由で、更年期世代の女性にも頭痛が起こりやすくなります。[3]
そこに気圧の変化が重なると、脳が過剰に反応してさらに痛みが増幅するため、女性は男性よりも低気圧頭痛に悩む方が多いのだと考えられます。
また、更年期の不定愁訴は、頭痛、肩こり、うつなど天気の影響を受けやすい傾向にあるのも、女性に低気圧頭痛が多い理由の一つでしょう。
低気圧頭痛への対策
では、低気圧頭痛が起こった時にはどうすれば良いのでしょうか。ここでは低気圧頭痛に有効な5つの対策をご紹介します。
薬を服用する
低気圧頭痛の痛みを和らげたり、体質を整える薬を服用したりすることは、有効な対策法の一つです。
頭痛に効く痛み止めを服用する
痛みがひどく日常生活に支障がある場合は、我慢せずに以下のような成分が入っている痛み止めを服用しましょう。
・ロキソプロフェン(ロキソニン®、バファリンEX®)
・イブプロフェン(EVE®)
・アセトアミノフェン(カロナール®、タイレノールA®、ラックル)
・アスピリン(バファリンA®)
また、市販薬の中には無水カフェインが含有されているものもあります。
低気圧頭痛には、脈打つような痛みを伴う片頭痛や、筋肉の緊張によって起こる緊張型頭痛などがありますが[4]、特に片頭痛(偏頭痛)の場合には、無水カフェインの入った合剤は脳血管を収縮させて痛みを抑える作用があるため有効性が高いという報告があります。[5]
ただし、3か月を超えて月に15日以上痛み止めを服用すると(無水カフェイン含有などの複合鎮痛薬の場合は月に10日以上)、「鎮痛薬乱用頭痛」を引き起こす可能性があるため、特に市販薬をよく飲む方は注意が必要です。
痛み止めを服用する頻度が高い場合は、早めに医療機関に相談するようにしましょう。
低気圧頭痛に役立つ漢方薬を飲む
漢方では、低気圧による不調は、気圧変化によって体内の水分バランスが乱れることで起こると考えられています。そのため、からだの水分代謝を促す作用のある漢方薬を継続して服用することで、不調を改善することができます。
・五苓散(テイラック®)
・苓桂朮甘湯
・半夏白朮天麻湯
・呉茱萸湯 など
低気圧頭痛の薬についてさらに詳しく知りたい方は、こちら▼の記事も読んでみてくださいね。
頭やからだを温める、または冷やす
低気圧頭痛が「片頭痛(偏頭痛)」からきている場合には、脳の血管が拡張して血管周囲に炎症が広がって痛みが発生しているために、冷やした方が良いとされています。
一方で、「緊張性頭痛」からきている場合には、筋肉や神経が過度に緊張し血行不良が起こっていることが原因で起こっているために、温める方が良いとされています。
また、温かいホットタオルなどで耳を温めると、内耳周辺の血液循環が改善され、老廃物や余分な水分の排出を促すために痛みが和らぐことがあります。[1]
頭痛ダイアリーをつける
頭痛の症状の変化を日頃から記録しておくと、頭痛を事前に予測することができたり、自分に合った対処法を見つけることができたりします。
記録の仕方は、以下のようなポイントを記載すると良いでしょう。[3]
頭痛ダイアリーのポイント |
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①いつからある頭痛で、痛みはいつ、どんなふうに始まるか ? ②いつまで続いたか? ③どんなとき、何をしたときに強くなるのか? ④頭のどこが、どんな痛みか(脈打つような痛みか、締め付けられるような痛みか)、強さはどうか? ⑤生活(会社・学校など)に支障があるか? ⑥どんな薬を、いつ、どのくらいのんでいるか ? |
これらの情報は、病院を受診した際に医師の診察にも非常に役立ちます。最善の治療を受けられることにもつながるため、きちんと記録しておくようにしましょう。
飛行機用耳栓をつける
飛行機用耳栓は、耳栓に特殊な性能を設けることで、外(機内)の気圧の変化の影響を急激に受けないように調節し、内耳や中耳に負担をかけないように設計された耳栓のことです。[6]外部音も通常と同程度に聞こえるため、日常生活でも問題なく使用することができます。近年では女性が使用する「天気痛耳栓」としておしゃれな商品も販売されているため、天候が悪い日などに利用してみても良いかもしれません。
天気予報や“頭痛ーる”をチェックして体調管理する
雨の日や台風の日も事前にチェックしておくことで、からだをゆっくり休めて体調を整えておくことができます。気圧に特化した情報が欲しい場合は天気予報の他に、「頭痛ーる」を利用すると良いでしょう。
最近では、気象病や天気痛対策用の専門スマホアプリもあり、いつでも手軽に情報を得ることができます。症状の経過を記録したり、おすすめの対策法を教えてくれたりといった機能を備えているものもあるため、自分で使いやすいアプリを探してみましょう。
低気圧頭痛は予防できる?
天気や気圧の変化は変えることはできませんが、低気圧頭痛はあるポイントを意識すれば、予防することや症状を軽くすることができる場合があります。
耳マッサージをする
耳の周りの血流が悪くなると、内耳がむくんで過敏になり、天気痛を起こしやすくなります。そのため痛みが出ない範囲で耳マッサージを毎日継続して行うとよいです。[4]
くるくる耳マッサージ
① 親指と人さし指で両耳を軽くつまみ、上・下・横に各5 秒ずつ引っ張る
② 耳を軽く横に引っ張りながら、後ろ方向に 5 回ゆっくり回す
③ 耳を包むように折り曲げ、5 秒間キープする
④ 手のひらで耳全体を覆い、後ろ方向に 5 回ゆっくり回す
生活習慣を改善し、自律神経を整える
自律神経を整えることで、気圧の変化に影響を受けにくいからだ作りをすることも、低気圧頭痛の予防には有効です。
まずは以下のような点を意識して、生活リズムが乱れているようであれば改善していきましょう。
・3食きちんと食べる
・睡眠をしっかり取る
・適度な運動やストレッチをする
・38~40℃のぬるめのお風呂にゆっくり浸かる
・ストレスをため込まないようにリフレッシュする
おすすめの栄養素を摂取する
低気圧頭痛を起こりにくくするためには、食事の内容も大切です。食べたらすぐに症状が治まるような即効性のある食物はもちろんありませんが、マグネシウムやビタミンB2などの栄養素は積極的に摂りましょう。また、貧血は気象病を悪化させる原因の一つにもなるので、女性の方は鉄分の摂取も意識すると良いでしょう。
・マグネシウムが豊富な食品…海藻、ナッツ類、大豆食品、バナナなどの果物
・ビタミンB2が豊富な食品…味付けのり、肉・魚類、乳製品、卵
・鉄分が豊富な食品…レバー、煮干し、貝類、小松菜、ホウレンソウ
また、コーヒーや緑茶などに含まれるカフェインには、脳の血管を収縮させる働きがあります。脳の血管の拡張が原因で起こる片頭痛(偏頭痛)の場合には、カフェインが効く可能性もありますが、多量に摂取しすぎると逆に頭痛がひどくなってしまう場合もあるため注意しましょう。
漢方薬で体調を整える
低気圧になると、血液やリンパの流れを生む圧力が低下し、全身の循環が悪くなってしまいます。
そのため、もともと冷え性や生理不順などの血行不良がある人は、低気圧になるとさらに悪化してしまい、不調を起こしやすくなってしまうのです。
普段から、冷え性や自律神経の乱れ、生理中の体調不良などが気になる方は、ご自身の体質に合った漢方薬を服用してみるのも良いでしょう。
YOJOでは体質に合った漢方薬の提案だけでなく、生活習慣についてのアドバイスなども受けられるので、気になる方はまずは無料相談から始めてみましょう。
【参考文献】
[1]愛知医科大学PRESS RELEASE(2019) “気圧の変化を感じる場所が内耳にあった”~気象病や天気痛の治療法応用に期待~
[2]佐藤純(2015)気象変化と痛み,Spinal Surgery29(2)153-156
[3]一般社団法人日本頭痛協会(2013)「女性のための頭痛講座」
[4]佐藤純(2020)〈健康PLUS〉気象の崩れが影響!?天気痛を改善
[5]一般社団法人日本神経学会(2021),頭痛の診療ガイドライン2021
[6]特開2000-201964(1999年01月14日出願),防水耳栓