温活とは?冷えの原因とおすすめの対策法を解説

靴下をはく女性

「温活(おんかつ)」という言葉を聞いたことがある方は多いかもしれません。冷えは放置すると、むくみや体重増加、頭痛、倦怠感などの体の不調や、不妊症・難産などの重い病気につながる可能性があります。そのため冷えを改善して体を温める「温活」が今、注目されています。

この記事では、

・体が冷える原因と温活をするメリット
・おすすめの温活法
・冷えの改善に効果の期待できる漢方薬

について、薬剤師がくわしく解説します。
冷えによる不調や体質に合った漢方薬の選び方について悩まれている方は、YOJOの薬剤師にご相談ください。

体質チェックをはじめる

温活って何?

湯たんぽとポット

「温活」とは、基礎代謝を高めて平均体温を上げ、体の健康を維持・増進することです。1957年の10~50代男女3000人を対象とした東京大学の調査において、日本人の平均体温は36.89℃と報告されました。しかし現代の日本人の平均体温は、60年前と比べると約0.7℃下がっていると言われており [1]、平熱を高めるための「温活」が注目されています。

温活をするメリット

温かい飲み物を飲む女性

温活にはさまざまなメリットがありますが、主に以下のような効果があると言われています。

基礎代謝がアップする

基礎代謝とは、生命活動を行うために最低限必要となるエネルギーを指します。温活で体温が上がると全身の血行が促進されるために、必要な酸素や栄養素が全身に行き渡り基礎代謝が向上します。
消費されるエネルギー量が増えるため、結果的に痩せやすく太りにくい体質になり、ダイエット効果も期待できます。

免疫力がアップする

私たちの体は、体温が1℃下がると免疫力が約30%下がると言われています。[2]
基礎体温を上げて血行が良くなると、白血球(免疫細胞)が体内を巡回して細菌やウイルスを捉えやすくなるために免疫力が向上します。また体温が上がると体の中で酵素が活性化するため、食べ物の分解・吸収が進みます。その吸収された栄養を細胞に届けて新陳代謝が良くなることで免疫力や自然治癒力を上げる効果が期待できるのです。

冷え性や肩こりなどの不調に効果がある

温活で体温が上がると冷え性の改善につながります。冷えからくるお腹の不調や頻尿、関節のこわばり、生理痛などの体の不調に効果が期待できるでしょう。
また血行不良によって筋肉に老廃物が蓄積して起こる肩こりや腰痛、十分な栄養が皮膚に行き渡らずに起こる肌荒れや乾燥なども、温活で改善する可能性があります。

生理不順や不妊にも効果が期待できる

低体温により体が冷えてしまうと、血行不良で卵巣や子宮に十分な栄養が行き渡らなくなるために、生理不順や排卵障害などの不妊の原因になることがあります。 そのため温活をすることで、妊活への効果が期待できる場合があります。
温活は妊活で取り入れられる対策の一つですが、他の対策法についても知りたい方はこちら▼の記事もお読みください。

妊活は何から始めたらいい?妊活のポイントや不妊治療についても解説

体が冷える原因

冷えを感じる女性

体の冷えは元々の体質だけでなく、普段の生活習慣から引き起こされている場合もあります。温活を取り入れる前に、まずは体を冷やしやすい習慣をしていないか確認してみましょう。

運動不足

運動をする習慣がない方は、体の基礎代謝が低下して血液の循環が悪くなります。また運動不足で筋肉量が減少してしまうと、体内で効率よく熱を産生することができずに体が冷えてしまう原因になります。冷え性が女性に多いのは、男性よりも筋肉が少なく脂肪も多いためです。脂肪は一度冷えると温まりにくい性質をもちます。

ストレスや睡眠不足

過度のストレスや睡眠不足は、自律神経の乱れを引き起こす原因になります。自律神経は体温調節をする重要な役割を担っているため、正常に機能しなければ体温調節がうまくできずに冷えのぼせが起きたり、末端の血流が悪くなって手足の冷えを起こす原因にもなります。

偏食や冷たい飲食物の摂取

偏食でビタミンやミネラルが不足すると、血液がドロドロになり血行障害の原因になります。とくに鉄分の不足は貧血を引き起こし、酸素を運搬する赤血球が減るために冷えや体力低下を招きます。
また冷たい飲食物の摂取は体内温度を急激に下げてしまいます。内臓が直接冷やされることで血行や代謝が悪くなるほか、腸が冷えることで消化酵素の働きが落ちて便秘や下痢の原因にもなります。

頻繁な痛み止めの服用

生理痛や頭痛などで頻繁に痛み止めを服用する方は、徐々に血行不良が進んで冷えを起こしてしまう可能性があります。例えばロキソニンやボルタレンなどの痛み止めは、痛みの原因物質であるプロスタグランジンの分泌を抑制して痛みを抑えます。しかしプロスタグランジンには血管を広げたり発熱を促したりする作用もあるために、その働きが抑えられ続けると血管が収縮して血行不良が起こり、体が冷えやすくなってしまうのです。

喫煙

喫煙が習慣化している方は冷えやすい傾向にあります。タバコに含まれるニコチンが血管を急激に収縮して末梢の血流が低下するためです。逆に、厚生労働省の報告によれば禁煙して20分後には血圧と脈拍が正常値まで下がり、手足の温度が上がると報告されています。[3]

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取り入れやすい温活法

温かい飲み物を飲む女性

ここでは具体的な温活法についてご紹介します。

体を温める飲食物を摂取する

温かい飲み物

冷たい飲食物などの体を冷やす食材は避けて、体を温める食材を取りましょう。
体を温める作用・冷やす作用のある食べ物は、例えば以下のようなものがあります。

体を温める飲食物 生姜、にんにく、唐辛子、ネギ、にんじん、ゴボウ、ごま、黒豆、紅茶、ほうじ茶、ウーロン茶、ココア、生姜湯など
体を冷やす飲食物 生野菜、バナナ、梨、白砂糖、ビール、緑茶、コーヒーなど

体を温める食材は、寒い地方で採れる食材冬が旬のものに多いです。また色が黒っぽい食材や、辛み・塩味が強いもの水分が少ない乾物も温める作用があります。
一方で体を冷やす食材は、暖かい地方・南国で採れる食材夏が旬のもの色が白っぽい食材に多いです。生ものや生野菜は胃腸を冷やすため蒸す・焼くなどの加熱をしてから摂取すると良いでしょう。

湯船につかって入浴する

湯船につかる女性

入浴はシャワーで済ませるのではなく、湯船に浸かって全身を温めるようにしましょう。38~40℃程度の心地よいと感じるぬるめのお湯に浸かることで、副交感神経が優位になり血管が拡張されて血行が良くなります。
入浴時間は心身に大きな負担がかからない、10~15分程度がおすすめです。

防寒グッズを取り入れる

防寒グッズ

寒い日には体の熱を逃がさないように、保温することも大切です。とくに「3首」と呼ばれる首・手首・足首や、お腹、耳を守るようにしましょう。耳は百脈(全身の経路)につながっているため、耳が冷えると全身が冷えやすくなります。
マフラーや手袋、靴下・レッグウォーマー、腹巻、帽子、耳あてなどの防寒グッズを活用して、しっかり温めましょう。

適度な運動やストレッチを行う

ウォーキングする人

運動は新陳代謝を促すのに最も有効な対策の一つです。ハードな運動は必要なく、まずは1日20~30分のウォーキングを取り入れてみると良いでしょう。腕を振ってやや早歩きで行うとより効果的です。
また自宅でスクワットやつま先立ちを1日30回程度行うなどのストレッチも良いです。普段の生活で少し体を動かすことを意識しながら生活するようにしてみましょう。

冷えの改善法についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もお読みください。

冷え性を改善するためには?原因や冷え性のタイプについても解説

温活におすすめの漢方薬

漢方薬

温活には、漢方薬の服用もおすすめです。
東洋医学では気・血・水の3要素がバランス良く巡ることで、健康な状態を維持できると考えられています。例えばが不足すると、全身が冷えやすくなり、胃腸の働きも低下します。またの巡りが悪くなると手足の末端にまで温かい血液が行き渡らずに、冷えを悪化させる原因となります。の巡りが滞るとむくみや下半身の冷えが見られる場合があります。

温活に効果的な漢方薬には、以下のようなものがあり、体質や症状に合わせて使い分けることが大切です。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

当帰芍薬散は、血の不足を補い水の巡りを良くすることで、代謝を上げる作用があります。血行を改善して全身に必要な栄養分を行き渡らせ、体を温めます。
配合生薬である「当帰(とうき)・川芎(せんきゅう)」に血を補って血行を良くする作用があるほか、「芍薬(しゃくやく)」が筋肉のけいれんを和らげ、血管の状態を良くします。さらに「沢瀉(たくしゃ)・茯苓(ぶくりょう)・白朮(びゃくじゅつ)」といった水の代謝を整える生薬が配合されています。

また、当帰芍薬散は脳や卵巣に作用して卵胞発育や排卵、黄体機能といった幅広い範囲に効果が報告されており、不妊症においても、黄体機能不全や排卵障害への治療効果を期待して臨床で用いられる場合があります。[4]

服用がおすすめな方
体力虚弱で冷え性や貧血傾向のある方
におすすめの漢方です。生理不順や生理痛、めまい、むくみ、耳鳴りの症状にも効果が期待できます。

服用上の注意
胃腸が弱く、食欲不振や吐き気・嘔吐、下痢などの症状が現われやすい方
は、副作用で胃部不快感などの消化器症状が起こる場合があります。

不妊症や妊活に効果の期待できる他の漢方薬についても知りたい方は、こちら▼の記事もお読みください。

不妊症と漢方の効果とは?漢方薬の選び方と妊活法も解説

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

桂枝茯苓丸は、血や水の代謝に働きかけて、血行不良を改善します。そして下半身の冷えや体の栄養不足を緩和して、身体機能を高める作用があります。
配合生薬の「桂皮(けいひ)」には、血管を拡張して体を温める働きがあります。さらに「桃仁(とうにん)・牡丹皮(ぼたんぴ)」が血液の流れを改善します。

服用がおすすめな方
比較的体力があり
のぼせて足が冷える人におすすめの漢方薬です。そのほか、生理不順や更年期、めまい、肩こり、にきびやしみなどの症状にも効果が期待できます。

服用上の注意
虚証タイプで抵抗力が弱っている方や胃腸が弱い方、疲れやすい方には合わない場合があります。
妊娠中や妊娠の可能性がある方は服用を避けましょう。配合生薬の「桃仁・牡丹皮」には、血行を強く促して流早産を招く恐れがあります。

加味逍遙散(かみしょうようさん)

加味逍遥散は、気の巡りを良くしたり血の滞りを改善したりする働きがあります。
私たちの体は過度のストレスがかかると気の巡りが悪くなり、血の巡りにも影響を及ぼすと、東洋医学では考えられています。
配合生薬の「柴胡(さいこ)・薄荷(はっか)」には、気を静めてイライラや緊張をほぐす作用があります。さらに「当帰(とうき)・芍薬(しゃくやく)」などの複数の生薬が血行を促進して、結果的に冷えを改善します。

服用がおすすめな方
体力が中等度以下で、イライラやのぼせ感、肩こり、疲労感があるような方
の冷え性に効果が期待できます。

服用上の注意
妊娠中や妊娠の可能性がある方は服用を避けましょう。血行を強く促進する作用のある「牡丹皮」は、妊娠中に服用すると流早産のリスクが高まります。
複数の漢方薬を服用する場合は注意ましょう。配合生薬の「甘草」が重複し、偽アルドステロン症などの副作用が起こりやすくなる可能性があります。

冷えに効果の期待できる他の漢方薬について知りたい方は、こちらの記事もお読みください。

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YOJOでは体質や症状に合った漢方薬の相談だけでなく、生活習慣上のアドバイスも受けることができます。冷えによる不調や温活について相談したい方は、一度YOJOの薬剤師に相談してみるのもよいでしょう。

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【参考文献】
[1]一般社団法人日本温活協会
[2] 株式会社ツムラ 冷え改善のススメ 岡村 麻子監修 
[3]厚生労働省 禁煙の効果
[4] 戸田稔子ら(2021), 瘀血あるいは気滞を除く随証治療で当帰芍薬散へ導き当帰芍薬散で妊娠出産にいたった不妊の3症例, 日本東洋医学雑誌 72 (4), 377-382.