六君子湯は「漢方の胃薬」として知られていて、特に体力のない虚証の人に使用されます。食欲不振、胃もたれなどの胃腸の不調に効果があります。
六君子湯と他の薬を併用する場合は、以下の点に注意が必要です。
・六君子湯は他の薬との飲み合わせで禁忌となる医薬品はありません。
・ただし、六君子湯に含まれる生薬と他の漢方薬に含まれる生薬が重複しないよう注意する必要があります。特に「甘草」の重複には気を付けましょう。
具体的な漢方薬やロキソニンやカロナールなどとの併用については、以下の記事で薬剤師が詳しく解説いたします。
食欲不振や胃もたれ、全身倦怠感などでお悩みの人は、ぜひ一度YOJOの薬剤師にご相談ください。
Contents
六君子湯と他の医薬品の飲み合わせで禁忌はある?
六君子湯と他の医薬品との飲み合わせで禁忌とされるものはありません。しかし、他の漢方薬との飲み合わせでは生薬の重複に注意が必要です。
具体的な飲み合わせの注意点は以下で詳しく解説いたします。
禁忌のものはありませんが、他の医薬品やサプリメントなどと併用する際には主治医や薬剤師に必ず伝えるようにしましょう。
六君子湯とは?食欲不振、消化不良などに使用される漢方薬
六君子湯は「漢方の胃薬」として知られていて、特に体力のない虚証の人に使用されます。食欲不振、胃もたれなどの胃腸の不調に効果があります。
胃腸の働きを良くする漢方薬である「四君子湯」に胃の中に溜まった「水」の停滞を改善する「二陳湯」をプラスしたものが六君子湯で、消化器系の働きを高める漢方薬です。
構成生薬
人参(にんじん)、半夏(はんげ)、茯苓(ぶくりょう)、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)、大棗(たいそう)、陳皮(ちんぴ)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)
効能・効果[1]
胃腸の弱い人で、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいなどの症状がある人の以下のような症状:胃炎、胃アトニー、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐
六君子湯が向いている人は?
六君子湯は、やせ型で体力がなく疲れやすい人や、胃腸が弱い人に適した漢方薬です。具体的には、以下のような症状がある方によく使われます。
- 食欲がなくて、すぐに疲れてしまう
- 息苦しくてすっきりしない
- 食事もおいしくないし、すぐに胃もたれする
- 食後に眠くなりやすい
- みぞおちにつかえる感じがある
- 胃痛・胸焼けがある
- 手足の冷えがある
胃腸症状でお悩みの方は、ぜひ一度YOJOの薬剤師にご相談ください。体力や症状に応じた漢方薬のご提案や生活上のアドバイスも行っています。
六君子湯の飲み合わせの注意点(生薬の重複に注意)
六君子湯には「甘草(かんぞう)」という生薬が含まれています。甘草は他の漢方薬にも含まれていることがあるため、複数の漢方薬を併用する際には、重複して服用する場合には注意が必要です。理由として、1日に甘草を2.5g以上(グリチルリチン酸換算で100mg以上)摂取すると、低カリウム血症が起こりやすいことが報告されているからです。[2]
ただし、甘草の吸収には個人差があるため、服用を続ける際は量にこだわらず、定期的に血液検査をしてカリウム値をチェックすることが重要です。
目安としては、むくみや血圧の上昇、手足のだるさ、筋肉痛などの症状が出ていないか確認しましょう。
漢方薬以外にも甘草の有効成分であるグリチルリチン酸を含む医薬品との併用には注意が必要です。
グリチルリチン酸及びその塩類を含有する製剤
グリチルリチン酸一アンモニウム、グリシン・L-システイン、グリチルリチン酸一アンモニウム、グリシン・DL-メチオニン配合錠 等
六君子湯の飲み合わせに関してよくある質問
こちらでは、六君子湯と具体的な漢方薬や解熱鎮痛薬などとの飲み合わせを解説いたします。
六君子湯と葛根湯の飲み合わせは?
葛根湯(かっこんとう)は風邪の初期症状や肩こりなどに使用される漢方薬です。六君子湯と葛根湯には「甘草」と「生姜」という共通の生薬が含まれています。特に注意したいのが「甘草」の重複で、併用する際にはむくみ、高血圧、低カリウム血症などの副作用が現れないか確認しながら服用する必要があります。自己判断で併用することは避け、医師や薬剤師に相談してから服用するようにしましょう。
葛根湯と他の医薬品や漢方薬との飲み合わせについては、こちら▼の記事で詳しく解説しています。
関連記事:葛根湯と他の薬との飲み合わせを解説/ロキソニン・アレグラなどとの併用はOK?
関連記事:肩こりに漢方は効く?葛根湯以外のおすすめ漢方薬や養生法も解説
六君子湯と加味逍遥散の飲み合わせは?
加味逍遥散(かみしょうようさん)は女性の不定愁訴(月経不順、更年期障害など)に使用される漢方薬です。六君子湯と加味逍遥散には「蒼朮または白朮」「甘草」「生姜」という共通の生薬が含まれています。特に注意したいのが「甘草」の重複で、併用する際にはむくみ、高血圧、低カリウム血症などの副作用が現れないか確認しながら服用する必要があります。その他にも「蒼朮または白朮」の量が増えることにより尿量の増加などが見られる可能性はあります。
自己判断で併用することは避け、医師や薬剤師に相談してから服用するようにしましょう。
加味逍遥散については、こちら▼の記事で詳しく解説しています。
関連記事:加味逍遙散の飲み合わせで禁忌はある?10種類の漢方薬や鎮痛剤との併用について解説
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六君子湯と半夏厚朴湯の飲み合わせは?
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)は不安神経症や不眠症などに使用される漢方薬です。六君子湯と半夏厚朴湯には「半夏」「茯苓」「生姜」という共通の生薬が含まれています。それぞれの生薬で過敏症を起こしたことがなければ一緒に服用しても問題ないと考えられますが、それぞれの生薬の量が増えることに注意し、念のため医師や薬剤師に確認してから服用しましょう。
半夏厚朴湯については、こちら▼の記事で詳しく解説しています。
関連記事:半夏厚朴湯の飲み合わせで禁忌のものはある?他の薬やサプリとの飲み合わせも解説
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六君子湯と五苓散の飲み合わせは?
五苓散(ごれいさん)はむくみ、二日酔い、頭痛などに使用される漢方薬です。六君子湯と五苓散には「蒼朮または白朮」「茯苓」という共通の生薬が含まれています。これらの生薬で過敏症を起こしたことがなければ一緒に服用しても問題ないと考えられますが、生薬の量が増えるので尿量の増加などが見られる可能性はあります。念のため医師や薬剤師に相談してから服用しましょう。
五苓散とその他の医薬品や漢方薬との飲み合わせについては、こちら▼の記事で詳しく解説しています。
関連記事:五苓散の飲み合わせで禁忌のものは?他薬との併用やおすすめの飲み方も解説
六君子湯と大建中湯の飲み合わせは?
大建中湯(だいけんちゅうとう)はお腹の冷えによる腹痛、腹部膨満感などに使用される漢方薬です。六君子湯と大建中湯には共通の生薬は含まれていません。そのため、一緒に服用しても問題ないと考えられます。
大建中湯の関連記事はこちら▼
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六君子湯と安中散の飲み合わせは?
安中散(あんちゅうさん)は胃痛、胸焼け、食欲不振などに使用される漢方薬です。六君子湯と安中散には「甘草」が共通の生薬として含まれています。そのため、併用する際にはむくみ、高血圧、低カリウム血症などの副作用が現れないか確認しながら服用する必要があります。自己判断で併用することは避け、医師や薬剤師に相談してから服用するようにしましょう。
六君子湯と半夏瀉心湯の飲み合わせは?
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)は胸焼け、神経性胃炎、口内炎などに使用される漢方薬です。六君子湯と半夏瀉心湯には「甘草」「人参」「半夏」「大棗」という共通の生薬が含まれています。特に注意したいのが「甘草」の重複で、併用する際にはむくみ、高血圧、低カリウム血症などの副作用が現れないか確認しながら服用する必要があります。また、「人参」の量が増えることにより湿疹など過敏症の症状が出る可能性もあるので注意が必要です。
自己判断で併用することは避け、医師や薬剤師に相談してから服用するようにしまよう。
六君子湯と補中益気湯の飲み合わせは?
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は疲労感、夏バテ、食欲不振などに使用される漢方薬です。六君子湯と補中益気湯には「人参」「蒼朮または白朮」「大棗」「甘草」「生姜」という共通の生薬が含まれています。特に注意したいのが「甘草」の重複で、併用する際にはむくみ、高血圧、低カリウム血症などの副作用が現れないか確認しながら服用する必要があります。また、「人参」の量が増えることにより湿疹など過敏症の症状が出る可能性もあるので注意が必要です。「蒼朮または白朮」の量が増えることにより尿量の増加などが現れる可能性もあります。
自己判断で併用することは避け、医師や薬剤師に相談してから服用するようにしまよう。
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六君子湯とロキソニンやカロナール(解熱鎮痛剤・頭痛薬)の飲み合わせは?
六君子湯とロキソニンやカロナールなどの解熱鎮痛剤との飲み合わせは特に問題ありません。しかし、胃痛や胸焼けなどの胃腸の症状があるときには胃への負担の少ない解熱鎮痛薬であるカロナールなどを選択することをおすすめします。
六君子湯とアコファイドの飲み合わせは?
アコファイドは、機能性ディスペプシア治療薬です。機能性ディスペプシアとは胃カメラなどの検査で潰瘍やがんといった病気が見つからないにも関わらず、胸焼けや胃痛などの症状があることをいいます。[3]六君子湯も機能性ディスペプシアに効果がある漢方薬として機能性消化管疾患診療ガイドライン2021に掲載されています。[4]
両者の飲み合わせは特に問題ありません。主治医の指示のもと服用するようにしてください。
六君子湯のその他の疾患に対する効果の説明や、類似処方との比較、市販薬などについてはこちら▼の記事で詳しく解説しています。
六君子湯を服用する際のポイントや注意点
六君子湯のおすすめの服用方法は?
六君子湯は胃腸が弱く、手足の冷えを感じる冷え性タイプの人に合う漢方薬です。そのため、温かいお湯に溶かして飲むのがおすすめです。溶かして飲むのが難しい場合でもなるべくお湯で服用するようにしましょう。
漢方薬の飲み方についてはこちら▼の記事で詳しく解説しています。
六君子湯の副作用は?
重大な副作用 [1]
重大な副作用としては以下のものが報告されています。いずれも頻度不明のため起こることは稀です。
(1)偽アルドステロン症:低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、体重増加などの症状が現れることがあるので、定期的に血清カリウム値の測定などを十分に行いましょう。
(2)ミオパチー:低カリウム血症の結果として、横紋筋融解症や筋肉の病気が現れることがあります。脱力感、筋力低下、筋肉痛、四肢痙攣・麻痺などの症状が特徴的です。
(3)肝機能障害、黄疸:AST、ALT、Al-P、γーGTPの上昇を伴う肝機能障害、黄疸が現れることがあります。
その他の副作用 [1]
その他の副作用として以下のようなものが報告されています。いずれも頻度不明のため起こることは稀です。
過敏症 | 発疹、蕁麻疹など |
消化器症状 | 悪心、腹部膨満感、下痢など |
服用していて気になる症状がある時は、漢方薬の服用を中止し医療機関を受診しましょう。
妊娠中・授乳中でも服用できる?
六君子湯には、妊娠中に慎重に投与すべき生薬として「半夏」が含まれています。[5]そのため自己判断での服用は避け、主治医に必ず相談するようにしましょう。
授乳中では、特に注意が必要な生薬は含まれていないので、赤ちゃんの様子を観察しながら服用することができます。母乳中への移行が気になる場合は、授乳直後に漢方薬を服用するようにしましょう。
六君子湯を服用する際の生活上のアドバイス
ここでは、六君子湯を服用する際に、効果を高めるために心がけたい生活習慣やおすすめの食材についてご紹介します。
胃腸に負担のかかるもの、過剰な水分摂取は避ける
六君子湯は、胃腸が弱く、胃に水分が溜まりやすい人に適した漢方薬です。そのため、胃腸に負担のかかる食べ物を摂ると、消化がうまくいかず、胃腸の不調が悪化する可能性があります。また、水分を過剰に摂取すると、胃に水分がさらに溜まりやすくなる可能性もあります。
したがって、胃腸に負担をかける脂っこいものや甘いものの食べ過ぎには注意しましょう。
消化器を補強し、元気を養う食材を摂る
六君子湯が向いている人は、胃腸が弱く「気」を作り出す力が弱いため、食材からも気を補うことでさらに体調の改善に役立ちます。
気を補う食材
もち米、米、小麦粉、とうもろこし、アボカド、ぶどう、さつまいも、里芋、じゃがいも、かぼちゃ、大豆、しいたけ、かれい、サバ、鶏肉、豚肉、牛肉など
過剰な水分を尿により排出する食材を摂る
六君子湯が向いている人は、胃に水分が溜まりやすい人です。そのため、過剰な水分を排出する食材を摂ることも不調の改善に役立ちます。
過剰な水分を排出する食材
いちご、メロン、スイカ、マンゴー、キウイ、ぶどう、パイナップル、玉ねぎ、山芋、アスパラガス、きゅうり、小豆、アサリ、コーヒー、ココア、緑茶、紅茶など
YOJOでは、体質に合った漢方薬の選び方や生活習慣を改善するためのアドバイスなども薬剤師から受けることができます。なかなか改善されない不調に悩んでいる方は、YOJOの薬剤師に相談するのも良いでしょう。
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【参考文献】
[1]ツムラ六君子湯エキス顆粒(医療用)添付文書
[2]日本漢方生薬製剤協会 カンゾウ(甘草)含有医療用漢方製剤による低カリウム血症の防止と治療法
[3]慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト 機能性ディスペプシア(FD)
[4]機能性消化管疾患診療ガイドライン 2021―機能性ディスペプシア (改訂第 2 版),日本東洋医学会 EBM 委員会 診療ガイドライン・タスクフォース
[5]公益社団法人福岡県薬剤師会 妊婦への投与に注意が必要な漢方薬