補中益気湯の飲み合わせで禁忌は?6つの医薬品との飲み合わせや効果についても解説

ソファで横たわる女性

補中益気湯(ほゅちゅうえっきとう)は、元気を補う代表的な漢方薬で、全身倦怠感、食欲不振、風邪などに使用される漢方薬です。

補中益気湯と他の薬を併用する場合は、以下の点に注意が必要です。

・補中益気湯は他の薬との飲み合わせで禁忌となる医薬品はありません。

・ただし、補中益気湯に含まれる生薬と他の漢方薬に含まれる生薬が重複しないよう注意する必要があります。特に「甘草」の重複には気を付けましょう。

具体的な漢方薬やロキソニンやカロナールなどとの併用については、以下の記事で薬剤師が詳しく解説いたします。

慢性的な疲労感やだるさでお悩みの人は、ぜひ一度YOJOの薬剤師にご相談ください。

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Contents

補中益気湯と他の医薬品の飲み合わせで禁忌はある?

NG

補中益気湯と他の医薬品で禁忌となるものはありません。しかし、他の漢方薬との飲み合わせでは生薬の重複に注意が必要です。

具体的な飲み合わせの注意点は以下で詳しく解説いたします。

禁忌のものはありませんが、他の医薬品やサプリメントなどと併用する際には主治医や薬剤師に必ず伝えるようにしましょう。

補中益気湯とは?疲れ、食欲不振、風邪などに使用される漢方薬

疲れている女性

補中益気湯(ほゅちゅうえっきとう)は、元気を補う代表的な漢方薬で、気力がわかず、だるくて疲れが取れない人に用いられます。

補中益気湯の「中」は胃腸を指し、「益気」には「気(エネルギー)」を増すという意味があります。低下した消化吸収機能を改善し、元気を増す代表的な漢方薬であることから、別名「医王湯(いおうとう)」とも呼ばれます。

構成生薬

黄耆(おうぎ)、当帰(とうき)、柴胡(さいこ)、人参(にんじん)、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)、大棗(たいそう)、陳皮(ちんぴ)、甘草(かんぞう)、升麻(しょうま)、生姜(しょうきょう)

効能・効果

消化機能が衰え、四肢倦怠感が著しい虚弱体質者の次の諸症:夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症

補中益気湯が向いている人は?

食欲がない女性

補中益気湯が向いている人は、虚弱体質で元気がない人です。具体的には、

  • 体力がなく、胃腸が弱い人(食後に眠気が出やすい人)
  • 病気や過労などで疲労困憊した人
  • 手足が重だるい感じがある人
  • 食欲不振で、食べ物の味がしない人

に向いています。

なかなか疲れが取れない、食事や生活習慣を気を付けているのにだるい、などの症状がある方は、漢方薬が助けになる可能性もあります。ぜひ一度YOJOの薬剤師にご相談ください。

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補中益気湯の飲み合わせの注意点(生薬の重複に注意)

注意

補中益気湯には「甘草」が含まれているため、血清カリウム値の上昇や血圧の上昇に注意が必要です。目安としては1日に甘草を2.5g以上(グリチルリチン酸換算で100mg以上)摂取すると、低カリウム血症が起こりやすくなるため注意が必要です [1]ただし、グリチルリチン酸の吸収は腸内細菌によるものであり、個人差があるので、甘草を含む漢方薬を服用する場合は、量にこだわるよりも定期的にカリウム値のチェックを行うことが重要です。[2]

また、他の漢方薬と一緒に服用する時には生薬の重複に注意が必要です。

他の医薬品との飲み合わせで注意が必要なもの

グリチルリチン酸及びその塩類を含有する製剤には以下のようなものがあります。

グリチルリチン酸一アンモニウム、グリシン・L-システイン、グリチルリチン酸一アンモニウム、グリシン・DL-メチオニン配合錠 等

これらと併用すると、偽アルドステロン症が現れやすくなり、低カリウム血症の結果としてミオパチーも起こりやすくなります。

甘草を含む漢方薬

甘草は7割の漢方薬に含まれています。例えば、芍薬甘草湯、六君子湯、抑肝散などの漢方薬は甘草を含むため、一緒に服用する際には副作用の発現(むくみ、血圧上昇、偽アルドステロン症、低カリウム血症など)に注意が必要です。

補中益気湯の飲み合わせに関してよくある質問

疑問を持つ女性

具体的な医薬品や漢方薬との飲み合わせについて以下で詳しく解説いたします。

ロキソニンやカロナール(解熱鎮痛剤・頭痛薬)との飲み合わせは?

補中益気湯とロキソニンやカロナールなどの解熱鎮痛剤・頭痛薬との飲み合わせは問題ありません。

葛根湯(かっこんとう)との飲み合わせは?

葛根湯は風邪の初期症状や肩こりなどに使用される漢方薬です。補中益気湯と葛根湯には、「甘草」、「大棗」、「生姜」という共通の生薬が含まれているため、一緒に服用する際には注意が必要です。特に甘草の服用量が増えるとむくみ、高血圧、低カリウム血症などの副作用が現れやすくなります。
自己判断で一緒に服用することは避け、併用する際には医師や薬剤師に相談しましょう。

葛根湯と他の医薬品や漢方薬との飲み合わせについては、こちら▼の記事で詳しく解説しています。
関連記事:葛根湯と他の薬との飲み合わせを解説/ロキソニン・アレグラなどとの併用はOK?
関連記事:肩こりに漢方は効く?葛根湯以外のおすすめ漢方薬や養生法も解説

抑肝散(よくかんさん)との飲み合わせは?

抑肝散は神経の高ぶりを抑える漢方薬で、不眠、神経症、小児夜泣きなどに使用されます。補中益気湯と抑肝散には、「甘草」「蒼朮または白朮」「柴胡」という共通の生薬が含まれています。特に注意したいのが「甘草」の重複で、併用する際にはむくみ、高血圧などの副作用に注意が必要です。また、「蒼朮または白朮」の生薬が増えることにより、尿量の増加などが起こる可能性もあります。
自己判断で一緒に服用することは避け、併用する際には医師や薬剤師に相談しましょう。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)との飲み合わせは?

半夏厚朴湯は不安神経症、不眠症、自律神経失調症などに使用される漢方薬です。補中益気湯と半夏厚朴湯には、「生姜」という共通の生薬が含まれています。生姜で過敏症を起こしたことがなければ併用しても問題ないと考えられますが、生薬の量が増えることに注意し、念のため医師や薬剤師または登録販売者に相談してから服用しましょう。

半夏厚朴湯と他の医薬品や漢方薬との飲み合わせについては、こちら▼の記事で詳しく解説しています。
関連記事:半夏厚朴湯の飲み合わせで禁忌のものはある?他の薬やサプリとの飲み合わせも解説
関連記事:イライラやストレスにおすすめの漢方薬とは?

五苓散(ごれいさん)との飲み合わせは?

五苓散はむくみ、頭痛、めまい、二日酔いなどに使用される漢方薬です。補中益気湯と五苓散には「蒼朮または白朮」という共通の生薬が含まれているため、一緒に服用する際には注意が必要です。生薬の量が増えることにより、尿量の増加などが起こる可能性があります。
併用する際には、念のため医師や薬剤師または登録販売者に相談してから服用しましょう。

五苓散とその他の医薬品や漢方薬との飲み合わせについては、こちら▼の記事で詳しく解説しています。
関連記事:五苓散の飲み合わせで禁忌のものは?他薬との併用やおすすめの飲み方も解説

麻黄湯(まおうとう)との飲み合わせは?

麻黄湯は風邪の初期症状やインフルエンザに使用される漢方薬です。補中益気湯と麻黄湯には「甘草」という共通の生薬が含まれています。甘草の服用量が増えると、むくみ、高血圧、低カリウム血症などの副作用が起こりやすくなるので注意が必要です。
自己判断で一緒に服用することは避け、併用する際には医師または薬剤師に相談しましょう。

麻黄湯とインフルエンザについての詳しい内容は、こちら▼の記事でご紹介しています。
関連記事:インフルエンザは麻黄湯で治る?飲み方の注意点や他の漢方薬も紹介

補中益気湯はどんな症状に効果がある?の6つの効果を解説

漢方薬

補中益気湯は具体的にどんな症状に効果があるのでしょうか?ここでは、6つの効果について詳しくご紹介します。

食欲不振

食欲不振とは何も食べていないのにお腹が空かない状態のことをいいます。補中益気湯は、胃腸の消化・吸収機能を整えて、病気に対する抵抗力を高める働きがあるため、食欲不振にも効果が期待できます。補中益気湯に含まれる「陳皮(ちんぴ)」「生姜(しょうきょう)」「大棗(たいそう」)」には、健胃作用があり、特に「陳皮」には胃液分泌促進作用・リパーゼ亢進作用、胃運動亢進作用があり、食欲を上げる作用があります。

食欲不振に用いられる漢方薬については、補中益気湯以外にも体質や症状に合わせていくつか選択肢があります。詳しくはこちら▼の記事でご紹介しています。

風邪

風邪症状のうちでも、初期症状ではなく長引いた時の、全身倦怠感、微熱、食欲不振などがある時に用いられます。補中益気湯は、NK(ナチュラルキラー)細胞の活性を高めたり、気道系の炎症を抑えたりする効果があり、COPD(慢性閉塞性肺疾患)における食欲不振、体重減少、二次感染を予防する効果があります。[3]

風邪の治療に用いられる漢方薬については、こちら▼の記事で詳しく解説しています。

風邪に効く漢方薬の選び方とは?咳のど鼻の症状に合わせた使い分けも解説

多汗症、寝汗

異常な発汗症状が西洋医学的な診断では原因不明の場合、漢方薬が使用されることがあります。漢方医学では、発汗量の異常な増加は気虚(ききょ)が原因とされています。気虚とは胃腸機能が虚弱で生命エネルギーが低下した状態を指し、補中益気湯で気を補うことで改善される場合があります。補中益気湯に含まれる黄耆(おうぎ)や人参(にんじん)が、汗の症状に対して効果を発揮します。[4]

補中益気湯以外にも多汗症の治療に効果のある漢方薬が体質や症状によって選ばれます。こちら▼の記事で詳しく解説しています。

男性不妊

「男性不妊症」として保険適用のある漢方薬はありませんが、生活習慣や食習慣の改善に加えて漢方薬が補助的治療として用いられることがあります。その中でも、補中益気湯が最もよく使われています。補中益気湯は、精子の運動率の低下を抑制したり、運動速度や直進性を改善するといった効果が報告されています。[5]
また、以下の研究では乏精子症・精子無力症に対して、精子濃度・精子運動率ともに改善することが証明されています。

乏精子症または精子無力症のいずれかを認めた59例を無作為に投与群(補中益気湯3ヶ月以上投与)20例と対照群(非投与)39例に割り付けた。3ヶ月以降、投与群が対照群に対して英紙運動率のみ有意に高かった。また、投与群では、精子濃度と精子運動率が有意に改善された。乏精子・精子無力症14例について、平均精子濃度、平均精子運動率、平均総精子数、平均総運動性精子数が有意に改善された、重症乏精子症9例では、平均精子濃度、平均精子運動率、平均総精子数が有意に改善された。」
(参照:李泙 他, 男性不妊における補中益気湯の臨床効果について,産婦の進歩,1996,48,406-410

妊活中の男性におすすめの食べ物については、こちら▼の記事で解説しています。

【妊活に効果的な食べ物5選を解説】妊活男性におすすめの食べ物も紹介

全身倦怠感

疲れやだるさなどの全身倦怠感に対して、原因が特定できず適切な西洋薬がない場合や、食欲や体力も低下しており同時に改善したい場合などに、漢方薬が良い適応になります。
その中でも、補中益気湯は代表的な体力増進作用を持つ漢方薬で、胃腸機能が悪く、全身倦怠感があり、食後によく眠気が出やすい人に特に向いています。補中益気湯は夏バテの倦怠感にもよく用いられます。
一方、ふらつきなどの貧血症状を伴う全身倦怠感の症状には十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)の方が向いている場合があります。

倦怠感や疲れに用いられる漢方薬については、こちら▼の記事で詳しく解説しています。

倦怠感や疲れに効く漢方薬とは

がん化学療法の副作用の軽減

がんに対する治療法として、化学療法や放射線療法が一般的に使われます。これらの治療には副作用として食欲不振、嘔吐、下痢、全身倦怠感、末梢神経障害、口内炎、貧血などさまざまな症状が現れることがあります。漢方薬はこれらの副作用を軽減し、免疫系を高めて病気に対する抵抗力を高める効果があります。そのため、化学療法や放射線療法を行う際には、治療開始前から漢方薬を予防的に服用することもあります。

一般的に、抗がん剤の副作用である全身倦怠感や骨髄抑制に対応するために、十全大補湯がよく使用されます。また、胃腸症状が強い場合には補中益気湯が用いられます。

漢方薬は体質や症状によって選ばれます。お悩みの症状がある方は、お気軽にYOJOの薬剤師にご相談ください。

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補中益気湯を服用する際の注意点

注意事項

ここでは、おすすめの服用方法、副作用や妊娠中・授乳中に服用できるのかなどを解説いたします。

補中益気湯のおすすめの服用方法は?

補中益気湯は基本的にはお湯に溶かして服用するのがおすすめです。胃腸は温めることで働きが良くなるので、温かい状態で服用することで効果を高めることができます。
具体的には、エキス製剤の顆粒や細粒は100ml程度の熱湯に溶かして、人肌程度に冷ましてから服用します。ぬるま湯では溶けにくいことがあるので熱湯に溶かしてよくかき混ぜましょう。

漢方薬の服用が苦手な方には、こちら▼の記事で詳しく飲み方の工夫をご紹介しています。
関連記事:漢方薬の正しい飲み方は?上手に飲むコツや飲むときの注意点も解説

補中益気湯の副作用は?

重大な副作用

重大な副作用として以下のものが報告されています。

  1. 間質性肺炎:息切れ(呼吸困難)、空咳(痰のない咳)、発熱などが現れることがあります。
  2. 偽アルドステロン症:低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、体重増加などの症状が現れることがあるので、定期的に血清カリウム値の測定などを十分に行いましょう。
  3. ミオパチー:低カリウム血症の結果として、横紋筋融解症や筋肉の病気が現れることがあります。脱力感、筋力低下、筋肉痛、四肢痙攣・麻痺などの症状が特徴的です。
  4. 肝機能障害、黄疸:AST、ALT、Al-P、γーGTPの上昇を伴う肝機能障害、黄疸が現れることがあります。

以上の症状が現れた場合には、漢方薬の服用を中止し、速やかに医療機関を受診しましょう。

その他の副作用

その他の副作用としては、いずれも頻度不明のため起こりにくいものではありますが、過敏症(発疹、蕁麻疹など)、消化器症状(食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢など)が報告されています。
もし、過敏症の症状が現れた時にはすぐに服用を中止し、速やかに医療機関を受診しましょう。

妊娠中・授乳中でも服用できる?

妊娠中の漢方薬の服用については、催奇形性については未知の部分が多いので、原則として「妊婦への漢方薬投与は治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ」行います。もしも休薬できるのであれば、少なくとも器官形成期の間(4〜15週末)は服用しないほうが良いでしょう。[2]
ただし、補中益気湯には妊娠中に慎重に投与する必要がある生薬は含まれていないため、妊娠中でも主治医の指示のもとで服用することができます。[6] 

授乳中に関しても、特に問題なく服用できますが子どもの様子を観察して何か異常がないか確認することが重要です。母乳への移行が心配な場合は、授乳直後に漢方薬を服用するようにしましょう。

服用に注意が必要な人・服用ができない人は?

高齢者では、生理機能が低下しているため減量するなど服用量の調整に注意が必要です。
服用できない人はいませんが、「甘草」を含むことから、カリウムの喪失を起こすループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬などを服用している人は低カリウム血症が起こりやすくなるために注意が必要です。補中益気湯を継続して服用する際には、定期的な血液検査で血清カリウム値の検査を考慮しましょう。

補中益気湯に関するQ&A

Q&A

ここでは、補中益気湯に関してよくある質問についてお答えいたします。

補中益気湯の効果は服用後いつから出る?

症状により効果の感じ方は異なりますが、風邪症状の全身倦怠感や食欲不振時には1日3回の服用で数日間で効果を感じ始めることがあります。[3]
一方、慢性的な疲労感や多汗の症状などに対しては、治療期間が長くなることがあります。1ヶ月から数ヶ月間服用して効果を感じるケースもあります。

ツムラとクラシエの補中益気湯の違いは?

医療用漢方薬のツムラとクラシエの製品の違いは、以下の表のようになります。

ツムラ補中益気湯エキス顆粒 クラシエ補中益気湯エキス細粒
成分 (1日量7.5g中)オウギ4.0g、ニンジン4.0g、ソウジュツ4.0g、サイコ2.0g、タイソウ2.0g、トウキ3.0g、チンピ2.0g、カンゾウ1.5g、ショウマ1.0g、ショウキョウ0.5g (1日量7.5g中)オウギ4.0g、ニンジン4.0g、ビャクジュツ4.0g、サイコ2.0g、タイソウ2.0g、トウキ3.0g、チンピ2.0g、カンゾウ1.5g、ショウマ1.0g、ショウキョウ0.5g
剤形 顆粒剤 細粒剤
効能効果 消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症: 夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、 脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症 元気がなく胃腸のはたらきが衰えて疲れやすいものの次の諸症 虚弱体質、疲労倦怠、病後の衰弱、食欲不振、ねあせ
値段(薬価)1日量あたり 約171円 約156円

両者の違いをまとめると、

・ツムラは「ソウジュツ」、クラシエは「ビャクジュツ」を使用
・ツムラは顆粒剤でクラシエは細粒剤なので、クラシエの方が粒が細かい
・効能効果にも少し違いがある

という点が挙げられます。

処方される補中益気湯と市販の補中益気湯の違いはある?

病院で処方される医療用の漢方薬と、市販で購入できる一般用医薬品の漢方薬では、生薬の含有量が異なります。市販のものは医療用に比べて1/2〜2/3量と少なめの含有量になります。
まず手軽に試してみたい、マイルドな効き目を期待したい方は市販のものを試してみるのも選択肢のひとつです。
また、市販薬の方が医療用に比べて剤形の種類が豊富です。補中益気湯では、顆粒剤の他に錠剤やドリンク剤なども販売されています。

補中益気湯はうつにも効果がある?

漢方医学では、うつ症状は「気(エネルギー)」の不足した「気虚(ききょ)」、巡りの異常「気滞(きたい)」などが主な原因で起こると考えられています。その中でも、補中益気湯は不足した気を補う漢方薬であるため、気虚を原因とするうつ症状に伴う食欲不振や意欲低下、下痢や軟便などの消化機能の低下の症状を改善する働きがあります。[7]

うつ症状の治療に用いられる漢方薬については、こちら▼の記事で詳しく解説しています。
関連記事:うつ・気分の落ち込みに使用される漢方薬とは

補中益気湯を服用する際の生活上のアドバイス

食事を摂る女性

補中益気湯は消化器と呼吸器を同時に力づけてくれる漢方薬です。ここでは、補中益気湯の効果をより高めるための生活上、気を付けたいことをお伝えいたします。

胃腸に負担のかかる食事は避ける

漢方医学では、胃腸から「気(エネルギー)」は作り出されると考えられています。そのため、胃腸が弱っている時に負担のかかる食事をしてしまうと、より疲れやすくなったり、胃腸の調子が悪くなったりしてしまいます。

具体的には、脂っぽいもの、辛すぎるもの、冷たいものは避け、消化に良い鍋料理やスープ料理、温かいものを摂るように心掛けましょう。

消化器を補強し、元気を養う食材を摂る

薬膳の考え方では、体の気を補い、元気を養う食材を摂るように意識しましょう。

なつめ、もち米、米、小麦粉、とうもろこし、アボカド、さつまいも、里芋、じゃがいも、かぼちゃ、大豆、しいたけ、カレイ、サバ、タコ、鶏肉、豚肉、牛肉、アーモンド、いちご、オレンジ、など

【参考文献】
[1]日本漢方生薬製剤協会 カンゾウ(甘草)含有医療用漢方製剤による低カリウム血症の防止と治療法
[2]渡辺賢治 マトリックスでわかる!漢方薬使い分けの極意
[3]ファルマシア 56巻・3号・208頁 感冒の漢方治療
 
[4]漢方スクエア なぜだか急に生じる発汗異常-突然よく汗をかくようになったら-
[5]ツムラ補中益気湯エキス顆粒(医療用)添付文書
[6]公益社団法人福岡県薬剤師会 妊婦への投与に注意が必要な漢方薬
[7]ファルマシア vol47 NO.9 2011 山田和男 抑うつ・不安・不眠の漢方治療