「なかなか痩せられない」「痩せても一時的でリバウンドをくり返してしまう」という悩みから、ダイエットのサポートに漢方薬を取り入れる方が増えています。しかし、「自分に合う漢方薬はどれがいいのかわからない」と思う方も多いかもしれません。
ここでは、6種類の漢方薬をご紹介します。
・防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん):体力があり、太鼓腹で食欲旺盛、便秘がちな方に
・防己黄耆湯(ぼういおうぎとう):胃腸が弱くて疲れやすく、むくみやすい方に
・大柴胡湯(だいさいことう):体力があり便秘がちで、ストレスで暴飲暴食してしまう方に
・桃核承気湯(とうかくじょうきとう):体力があり便秘がちで、生理不順やのぼせが気になる方に
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):比較的体力があり、ホルモンバランスが乱れて代謝が落ちている方に
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):体力がなく貧血傾向でむくみや冷えが気になる方に
この記事では、ダイエット効果の期待できる漢方薬と共に、体質に合った選び方や服用の注意点、生活習慣のポイントについて薬剤師が詳しく解説します。漢方薬の服用にお悩みの方は、YOJOの薬剤師にも相談できますよ。
Contents
太る原因から考えるダイエットに漢方を使うメリットとは
漢方薬はいわゆる「やせ薬」とは異なり、服用するだけで急激に体重が減ったりすることはありません。では漢方薬を服用することで、具体的にどのようにダイエット効果が発揮されるのでしょうか。
まずは、太る原因と共に漢方薬を服用するメリットについてご説明します。
食べ過ぎ:食欲をコントロールできる
食事から摂取したエネルギー量が消費量を上回ると、余ったエネルギーが体脂肪へと変わり、肥満につながります。
食べ過ぎに対しては、まずは食生活を見直すことが大切ですが、漢方薬を服用することで食欲がコントロールしやすくなる場合もあります。また、漢方薬の服用で自律神経が整えられ、ストレスによる過食を抑えたり、消化管の機能を改善して排泄を促したりできる場合があります。
運動不足:新陳代謝を高める
運動不足になると摂取したエネルギーが消費できずにからだに蓄積されます。また、筋力が低下して基礎代謝も落ちるため、からだが太りやすい状態になります 。
運動不足は内蔵脂肪型の肥満を引き起こし、 生活習慣病にもつながることが知られています。
運動不足の状態を漢方だけで改善することは難しいですが、漢方薬の種類によっては内臓脂肪の燃焼を助けるものもあります。
ストレス:自律神経を整える
ストレスにより、自律神経が乱れることでからだ全体の血流の悪化を招きます。すると内臓が冷えやすくなり、基礎代謝が低下して肥満につながります 。
また、ストレスは摂食中枢を刺激し、満腹中枢を鈍化させます。
漢方薬を服用して自律神経を整えたり、からだを温めて血行を促したりすることで、ストレスによる過食や基礎代謝の低下を抑えられる場合があります。
むくみや冷え:余分な水分を除く・血行促進する
冷えにより血行不良や胃腸機能の低下が起こると、体内に余分な水分や老廃物がたまりやすくなります。その結果、むくみができて、いわゆる“水太り”の状態になってしまいます。
くり返すむくみは、漢方薬を服用して余分な水分の排出を促したり、血行を促進してからだ全体を温めたりすることで、改善できる場合があります。
女性の性周期:ホルモンバランスの乱れを整える
女性ホルモンの一つであるエストロゲンには、脂肪の燃焼を促す働きがあります。そのため生理不順や更年期でホルモンバランスが乱れたり、エストロゲンの分泌量が減少したりすることで、脂肪がつきやすい状態になってしまいます。
漢方によってはホルモンバランスの乱れを整えることで、ダイエット効果が期待できるものもあります。
ダイエットしたい人が漢方を選ぶ時のポイントとは
上記のように太ってしまう原因はさまざまあり、体質によっても適した漢方薬は異なるため、漢方薬のダイエット効果を正しく引き出すためにはご自身の心身の状態や体質に合わせた漢方薬を選ぶことが大切です。
ここでは「気・血・水」と「証」の考え方についてご紹介します。
「気・血・水」で心身の状態を把握する
気・血・水は心身の不調の原因を知る目安となります。
気(き):心身を動かす生命エネルギーのことです。
血(けつ):血液や血液の中に含まれる栄養のことです。
水(すい):リンパ液、汗、涙、だ液など、血液以外の体液のことです。
気血水はバランスが大切で、たとえば、「気」が不足すると胃腸機能が低下したり、「血」の流れが滞ると血行不良になったり、「水」の巡りが滞るとむくみや冷えの原因になったりすることで太りやすくなります。
「証」で体質を把握する
証は個々の体質や今のからだの状態を知る目安となり、同じ人でも時期や環境によって異なる場合があります。
実証(じっしょう):余分なものを体外へと排出することができていない状態
虚証(きょしょう):からだに必要な気・血・水が不足している状態
ご自身の状態や体質については、こちらの体質チェックから確認できます。
ダイエット効果が期待できる漢方薬6選
では、ダイエット効果のある漢方には、どのようなものがあるのでしょうか。
具体的な漢方薬の種類と、それぞれの特徴や選び方についてお伝えします。
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん): 体力があり、太鼓腹で食欲旺盛、便秘がちな方に
食事によってカロリー(熱量)を取り過ぎると、胃腸に熱がこもりやすくなります。その結果、消化機能の低下や便の乾燥をもたらし、便秘や肥満の原因となってしまうのです。
防風通聖散は、からだを温めることで発汗を促し、腸の熱を下げながら体内に蓄積された不要物の排出を促す漢方薬です。
全身の新陳代謝を高めて脂肪を燃焼させる作用をもつため、お腹まわりの皮下脂肪を減らすだけでなく、内臓脂肪にも効果が期待できます。
服用がおすすめな人
体力のある実証タイプの人の「脂肪太り」におすすめの漢方薬です。
特に、太鼓腹で食欲旺盛、便秘、のぼせ、赤い吹き出物ができる人に服用が向いているでしょう。
服用上の注意
妊娠・授乳中の人は服用を避けましょう
「大黄・芒硝」に子宮収縮作用があるため流早産をまねく恐れがあります。また授乳中も大黄が母乳中に移行して、乳児の下痢を引き起こす場合があります。
複数の漢方薬を長期で服用する場合は注意しましょう
配合生薬に「甘草」が含まれています。複数の漢方薬を長期で服用する場合には、偽アルドステロン症などの副作用が起こりやすくなるため、定期的に血液検査をしましょう。
病気の治療で食塩制限をしている人は注意しましょう
配合生薬の「芒硝」は含水硫酸ナトリウムの一種であり、食塩と同じナトリウムが含まれています。
不眠、発汗、動悸などの副作用が起こる可能性があります
「麻黄」が含まれているために不眠や発汗過多、全身脱力感、動機・頻脈、精神興奮などを引き起こす可能性があります。また、一部の咳止めや甲状腺の機能を補う薬などには麻黄と似た作用をもつお薬があるため、併用する場合には注意しましょう。
長期服用に注意しましょう
「山梔子」が含まれており、長期服用(多くは5年以上)で大腸粘膜に異常が生じる例が報告されています。
防風通聖散はYOJOショップでも購入できます▼
防己黄耆湯(ぼういおうぎとう):胃腸が弱くて疲れやすく、むくみやすい方に
防己黄耆湯は、胃腸の消化を助ける作用とともに、からだの水分代謝を高めることで、余分な老廃物を尿として排出する働きがあります。
また内臓脂肪型肥満は、血液中の中性脂肪や悪玉コレステロールが増えてしまい、動脈硬化の原因にもなりやすい肥満です。防已黄耆湯には、内臓脂肪型肥満および動脈硬化の予防効果がある可能性についても研究で報告されています。[1]
服用がおすすめな人
虚証タイプで体力は虚弱~中程度、疲れやすく胃腸が弱い人におすすめの漢方です。虚証タイプの人は気の不足から水・血の流れが滞っていわゆる「水太り」の状態になっています。
特に下半身太りが気になる人で、水太りによる関節の痛みやだるさがある人、多汗症の人も使用すると良いでしょう。
服用上の注意
複数の漢方を長期で服用する場合は注意しましょう
防己黄耆湯には「甘草」が含まれており、複数の漢方を服用している場合は重複して副作用が起こりやすくなります。
大柴胡湯(だいさいことう):体力があり便秘がちで、ストレスで暴飲暴食してしまう方に
大柴胡湯は、自律神経に働きかけながら消化管機能を整える作用があります。
精神安定作用をもつ生薬が配合され、ストレスによる過食を抑えることから、いわゆる「ストレス太り」に有効な漢方薬です。
さらに大柴胡湯には、脂質代謝を高めることで余分な脂肪の吸収を抑える作用があり、特に中性脂肪やコレステロールを下げる働きが報告されています。[2]
服用がおすすめな人
実証タイプの便秘の訴えがある人で、ストレスから暴飲暴食してリバウンドをくり返してしまう人におすすめの漢方です。特に筋肉質の人に効きやすく、体力があり元気な人の胃炎、便秘、高血圧のほか、肥満に伴う肩こり・頭痛・神経症などにも効果があります。
服用上の注意
妊娠・授乳中の人は服用を避けましょう
「大黄」が配合されているため、妊婦の流早産や、母乳中に移行して乳児の下痢を引き起こす恐れがあります。
大黄配合の漢方の重複に注意しましょう
下痢や軟便の副作用が悪化する可能性があります。
桃核承気湯(とうかくじょうきとう):体力があり便秘がちで、生理不順やのぼせが気になる方に
桃核承気湯には、血液の巡りを良くして熱を分散させるとともに、消化管の働きを整えて便通を改善してくれる作用があります。[3]
また、女性ホルモンの一つであるエストロゲンが減少すると、脂質代謝が低下して太りやすくなります。さらに血の巡りが滞ることで生理不順や生理痛、のぼせなどにもつながります。桃核承気湯はこのような女性特有の症状に効果を発揮するため婦人薬の一つとしてよく使われています。
服用がおすすめな人
実証タイプの肥満で、血行不良があり便秘がちな人、ホルモンバランスの乱れからくる冷えのぼせ(ホットフラッシュ)がある人におすすめの漢方です。
特に下腹部が張るような慢性的な便秘の人に効果を示すために、ダイエット効果が期待できます。
服用上の注意
妊娠・授乳中の人は服用を避けましょう
緩下作用のある「大黄・芒硝」や、血行を強く促進する作用のある「桃仁」は、特に妊娠中の女性が服用すると流早産の危険が高まります。
複数の漢方を長期服用する場合は注意しましょう
桃核承気湯には「甘草」や「大黄」が含まれており、複数の漢方を服用している場合は重複して副作用が起こりやすくなります。
病気の治療で食塩制限をしている人は注意しましょう
配合生薬の「芒硝」には食塩(塩化ナトリウム)と同じナトリウムが含まれています。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):比較的体力があり、ホルモンバランスが乱れて代謝が落ちている方に
桂枝茯苓丸は、血行不良を改善することで、冷えの緩和やホルモンバランスの乱れを整える作用があります。
ホルモンは脂質の代謝や自律神経の働きなどに関与します。
更年期における脂質代謝の低下において、桂枝茯苓丸は中性脂肪の代謝を促進し、動脈硬化や心筋梗塞の予防に効果があることが報告されています。[4]
服用がおすすめな人
比較的体力がある人向けで、ホルモンバランスの乱れから冷えやのぼせを伴う肥満に効果があります。血行不良を改善するのが主な作用であるため、生理不順や生理痛、更年期障害の他、しみ、湿疹、にきびに悩んでいる人にも効果が期待できます。
服用上の注意
妊娠・授乳中の人は服用を避けましょう
血行を強く促進する作用のある「桃仁・牡丹皮」は、特に妊娠中の女性が服用すると流早産の危険が高まります。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):体力がなく貧血傾向でむくみや冷えが気になる方に
当帰芍薬散には、血の不足を補うとともに水の巡りを良くすることで、からだ全体を温めて代謝を整える作用があります。全身のむくみや水太りにも効果的です。
服用がおすすめな人
虚証タイプでホルモンバランスの乱れを伴う肥満の人におすすめの漢方です。むくみや冷え、貧血・生理不順などの症状が気になる人に向きます。
服用に注意が必要な人
胃腸が弱い人:食欲不振や吐き気、嘔吐や下痢などを起こしやすい人は、副作用で胃部不快感などの消化器症状が起こる場合があります。
ご自身の体質や症状に合った漢方薬の選択に悩まれている方は、YOJO薬剤師に相談できます。
市販で購入できるダイエット向け漢方薬6選
まずは手軽に漢方を試してみたいという方向けに、薬局やドラッグストアなどで購入できるダイエット向け漢方をご紹介します。
ナイシトールZa
お腹まわりの脂肪が気になる人に
防風通聖散エキスを有効成分とした商品です。
分類 | 第2類医薬品 |
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適応する人 | 体力が充実して、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちな人 |
形状 | 錠剤 |
用法・用量 | 1回5錠、1日3回 |
服用対象年齢 | 15歳以上(15歳未満は服用しないこと) |
効能効果 | 肥満症、高血圧や肥満に伴う動悸・肩こり・のぼせ・むくみ・便秘、蓄膿症(副鼻腔炎)、湿疹・皮ふ炎、ふきでもの(にきび) |
内容量 | 105錠/315錠/420錠 |
ビスラットアクリアEX
むくみがちな人、体脂肪を減らしたい人に
防己黄耆湯エキスを有効成分とした商品です。
分類 | 第2類医薬品 |
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適応する人 | 体力中等度以下で、疲れやすく、汗のかきやすい傾向がある人 |
形状 | 錠剤 |
用法・用量 | 1回5錠、1日2回 |
服用対象年齢 | 15歳以上(15歳未満は服用しないこと) |
効能効果 | 肥満症(筋肉にしまりのない、いわゆる水ぶとり)、むくみ、肥満に伴う関節の腫れや痛み、多汗症 |
内容量 | 70錠/210錠/280錠 |
コッコアポG
ストレスが原因で太ってしまう人に
大柴胡湯エキスを有効成分とした商品です。
分類 | 第2類医薬品 |
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適応する人 | 体力が充実して、脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく、便秘の傾向がある人 |
形状 | 錠剤 |
用法・用量 | 1日3回食前に服用 成人(15歳以上):1回4錠 15歳未満7歳以上:1回3錠 7歳未満5歳以上:1回2錠 |
服用対象年齢 | 5歳以上(5歳未満は服用しないこと) |
効能効果 | 胃炎、常習便秘、高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘、神経症、肥満症 |
内容量 | 60錠/312錠 |
ツムラ漢方61桃核承気湯エキス顆粒
のぼせて便秘症状のひどい方に
桃核承気湯エキスを有効成分とした商品です。
分類 | 第2類医薬品 |
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適応する人 | 体力が中等度以上でのぼせて便秘しがちな人 |
形状 | 顆粒 |
用法・用量 | 1日2回食前に服用。 成人(15歳以上):1回1包 15歳未満7歳以上:1回2/3包 7歳未満4歳以上:1回1/2包 4歳未満2歳以上:1回1/3包 |
服用対象年齢 | 2歳以上(2歳未満は服用しないこと) |
効能効果 | 月経不順、月経困難症、月経痛、月経時や産後の精神不安、腰痛、便秘、高血圧の随伴症状(頭痛、めまい、肩こり)、痔疾、打撲症 |
内容量 | 20包 |
「クラシエ」漢方桂枝茯苓丸料エキス錠
冷えやホルモンバランスの乱れから代謝が落ちれいる人に
桂枝茯苓丸エキスを有効成分とした商品です。
分類 | 第2類医薬品 |
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適応する人 | 比較的体力があり、ときに下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどの訴えがある人 |
形状 | 錠剤 |
用法・用量 | 1日3回食前又は食間に服用。 成人(15歳以上):1回2錠 15歳未満7歳以上:1回1錠 |
服用対象年齢 | 7歳以上(7歳未満は服用しないこと) |
効能効果 | 月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、血の道症、肩こり、めまい、頭重、打ち身(打撲症)、しもやけ、しみ、湿疹・皮膚炎、ニキビ |
内容量 | 48錠/90錠 |
ツムラ漢方23当帰芍薬散エキス顆粒
冷え性でむくみが出やすい人に
当帰芍薬散エキスを有効成分とした商品です。
分類 | 第2類医薬品 |
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適応する人 | 体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、 頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などの訴えがある人 |
形状 | 顆粒 |
用法・用量 | 1日2回食前に服用。 成人(15歳以上):1回1包 15歳未満7歳以上:1回2/3包 7歳未満4歳以上:1回1/2包 4歳未満2歳以上:1回1/3包 |
服用対象年齢 | 2歳以上(2歳未満は服用しないこと) |
効能効果 | 月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による 障害(貧血、疲労倦怠、めまい、むくみ)、めまい・立ちくらみ、頭重、 肩こり、腰痛、足腰の冷え症、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴り |
内容量 | 20包/48包 |
市販の漢方薬と病院で処方される漢方薬の違いとは
漢方薬には、上記のように薬局やドラッグストアで購入できる「市販薬」と、病院で医師の診察を受けた上で処方される「医療用医薬品」の2種類があります。その違いと市販の漢方でもダイエット効果は期待できるのかについてお伝えします。
市販の漢方薬も医療用漢方と成分は同じ
漢方薬に配合されている生薬成分の種類は、「市販薬」と「医療用医薬品」で基本的に違いはありません。
そのため継続して飲み続けることで、市販の漢方薬でも一定のダイエット効果が期待できると考えられます。
成分の品質は異なる場合もある
ただし、自然由来の生薬から作られる漢方薬は、成分の品質を一定に保つことが大変難しい医薬品です。そのため、成分含量や飲み心地などは、製造するメーカーや製造時期によっても多少異なる場合があります。
漢方薬の効果をきちんと引き出すためには、医療用医薬品と同様に高品質な生薬を配合して作られている漢方薬を選ぶことも大切です。
ダイエット目的で漢方薬を服用する場合は保険適用にならない
病院で処方される医療用漢方薬は保険適用で1~3割負担で購入できますが、ダイエットや美容目的で服用する場合には、原則自費になります。
ただし、医師の診察のもとで「肥満症」と診断された場合は、「防風通聖散」や「防己黄耆湯」などの一部の漢方薬が保険適用になる場合もあります。
肥満症と漢方薬の効果や、正しい飲み方についてさらに詳しく知りたい方は、こちら▼の記事もお読みください。
漢方のダイエット効果が出るのはどれくらい?
漢方薬を服用してから効果を実感するまでの期間は、漢方薬の種類や症状の程度、生活習慣などによって個人差が出てきます。
一般的には、ダイエット効果を実感するまでには少なくとも1ヶ月以上の継続は必要です。3ヶ月~半年以上継続することで、体質が改善され、症状が安定するようになります。
ダイエット目的で漢方を飲む際の注意点
ダイエット効果を期待する場合、太りやすい体質を改善する目的で取り入れる人がほとんどです。そのため、服用が長期にわたるケースが多いことから、以下の点に気を付けながら服用することが大切です。
漢方でも重大な副作用が起こる可能性がある
漢方薬も薬であるため、服用した際に重大な副作用が起こることもあります。
特に以下のような副作用には注意が必要です。
・肝機能障害
無症状のまま血液検査で判明することが多いですが、発熱、全身の倦怠感、吐き気・嘔吐、黄疸などが出ることもあります。悪化すると肝炎を引き起こし命に関わります。 黄芩を含む生薬で多く報告されていますが、 甘草、柴胡、半夏、沢瀉、人参、生姜 などでも注意が必要です。[5]
(例)大柴胡湯、桂枝茯苓丸、防風通聖散、防己黄耆湯、当帰芍薬散
・偽アルドステロン症
偽アルドステロン症は、甘草を多量に長期服用することで起こります。 手足のだるさやしびれ、こわばりの他、高血圧、動悸、吐き気・嘔吐などの症状が出ます。
(例)防風通聖散、防己黄耆湯、桃核承気湯
・薬剤性肺炎、間質性肺炎
息切れや咳、呼吸困難、発熱といった症状が起こります。
諸説ありますが、黄芩を含有する漢方で症状が出る傾向にあると考えられています。
(例)防風通聖散、 大柴胡湯
特に漢方薬を併用する場合は注意が必要
複数の漢方薬を併用することで、生薬が重複し、副作用の発現リスクが高まります。
たとえば、「甘草」は漢方薬のおよそ7割に含有されていることから、併用すると重複する可能性が高く、偽アルドステロン症などの発症リスクが高まります。
また、「大黄・芒硝」が重複すると下痢しやすくなります。「〇〇承気湯」という名前の漢方には大黄・芒硝のどちらかまたは両方が含まれているため、チェックする際の目安にしてみてください。
漢方薬の飲み合わせや西洋薬・サプリメントとの併用の注意点について具体的に知りたい方は、こちら▼の記事もお読みください。
【関連記事】防風通聖散の飲み合わせで禁忌や注意点は?リベルサスや7つの漢方薬との併用も解説
【関連記事】当帰芍薬散との飲み合わせに禁忌はある?ロキソニンやビタミン剤との併用も解説
【関連記事】桂枝茯苓丸の飲み合わせで注意するものは?飲み方や他の漢方薬との併用も解説
漢方のダイエット効果を引き出すコツ
漢方でダイエットを成功させるためには、体質や症状に合った漢方薬を取り入れると共に、食生活や生活習慣の見直しを行うことも大切です。
食生活を見直す
しっかり噛んでゆっくり食べる
「早食い」は、満腹中枢が働くまでに時間がかかり、食欲が抑えられずに食べ過ぎをまねきます。早食いを防ぐためにはよく噛むことです。目安として30回以上はよく噛んで食事をするようにしましょう。
また、噛むことで自律神経の交感神経が刺激され、脂肪の代謝を活性化させてくれます。自然と顔の筋肉を動かすことにもつながるため、リフトアップにも効果的です。
タンパク質の摂取量を増やす
タンパク質はからだの筋肉を作るための重要な栄養素です。
筋肉量をきちんと維持しなければ、からだの基礎代謝が落ちてしまい、脂肪を燃焼することができません。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 によると、タンパク質の推定平均必要量は 成人の男性で50g、女性で40gとされています。普通の食生活をしていれば問題なく摂取できる量ですが、カロリーの低い野菜を中心として食事を続けていると、不足してしまう可能性もあるので注意しましょう。
3食きちんと食べる
必要な食事をしっかり取らないと、からだは必要なエネルギーを作り出すために筋肉を分解してしまいます。すると基礎代謝は落ち、痩せにくい体質になるだけでなくリバウンドをくり返しす原因にもなります。
特に朝食を抜くと空腹の時間が長くなります。すると昼食時に血糖値が急激に上昇し、インスリンが過剰分泌して脂肪を蓄えやすくなるため、注意しましょう。
食べる時間帯を工夫する
食べることに不安がある人は、食べる時間帯を工夫してみましょう。
栄養学の観点からみると、朝食は7~8時、昼食は12~13時、夕食は18~20時の間で取れると理想です。食事の間隔は栄養素の消化吸収をふまえて4~6時間あけると良いでしょう。
私たちのからだの中にはBmal1(ビーマルワン)という生活リズムをコントロールし、脂肪の蓄積にも関与するタンパク質が存在します。このBmal1の分泌量は22時~深夜2時の間で増えるとされており、この時間に食事をすると太りやすくなるため、注意が必要です。
運動や筋トレをする習慣をつける
ダイエットには、無酸素運動と有酸素運動を組み合わせて行うと良いとされています。
・無酸素運動:具体的には筋トレや短距離の全力疾走、ウエイトトレーニングなどがあげられます。筋肉や血液中に貯蔵されている糖をエネルギーにして行う運動です。消費カロリーは低いですが筋肉を鍛えてからだの基礎代謝を上げる効果があります。
・有酸素運動:具体的にはウォーキングやジョキング、水泳、ヨガなどがあげられます。呼吸で取り入れた酸素により脂肪と糖をエネルギーに変えるため、脂肪燃焼効果が高くダイエットに効果的です。
無酸素運動と有酸素運動を組み合わせる場合は、はじめに無酸素運動を行い、そのあとに有酸素運動を20分程度目安に行うのがオススメです。
先に無酸素運動を行うことで、「成長ホルモン」が分泌され、有酸素運動による脂肪の燃焼効率を促進してくれます。
睡眠時間をしっかり確保する
睡眠時間は7~8時間程度は確保することで、痩せやすい体質になります。
睡眠時間が短いと、食欲抑制ホルモンである「レプチン」の分泌が低下し、逆に食欲増進ホルモンである「グレリン」の分泌が増加するために、食べ過ぎをまねきます。
また、脂肪の燃焼効率を高めてくれる「成長ホルモン」は、22時~深夜2時をピークに分泌されます。この時間帯に良質な睡眠を取ることは痩せやすいからだ作りをするためには非常に大切です。
そのためにも、15時以降のカフェインの摂取は避け、睡眠の2~3時間前の激しい運動・寝酒・スマホやテレビの視聴はできる限りやめるようにしましょう。
温活する
「温活」とは、基礎代謝を高めて平均体温を上げ、体の健康を維持・増進することです。温活で体温が上がると全身の血行が促進されるために、必要な酸素や栄養素が全身に行き渡り基礎代謝が向上します。
消費されるエネルギー量が増えるため、結果的に痩せやすく太りにくい体質になり、ダイエット効果も期待できます。
漢方の選択で不安な場合はYOJO薬剤師に相談を
漢方で痩せやすいからだ作りをするためには、体質に合った漢方薬を選択し、用法用量を守って根気よく服用を続けることが大切です。合わない漢方薬を飲み続けると、効果が出ないだけでなくからだに悪影響が出る場合もあります。
ご自身に合った漢方薬の選択が不安な人は、一度YOJOの薬剤師に相談してみましょう。体質に合った漢方薬の提案や、注意すべき副作用、生活習慣についてのアドバイスも受けられますよ。
【参考文献】
[1]吉田麻美,高松順,吉田滋,北岡治子,増井義一,大澤仲昭 (1998) 内臓肥満型糖尿病患者に対する防已黄者湯の効果.日本東洋医学雑誌第49(2), 249-256
[2] 後藤正子,林幹男,等々力徹,瀬山義幸,山下三郎 (1992) 実験的ミネラルおよび脂質代謝異常誘発 自然発症糖尿病モデルに対する漢方方剤 (大柴胡湯,小柴胡湯,八 味地黄丸)の効果.日本薬理学雑誌 100 (4), 353-358
[3]渡辺一郎 (1995) 桃核承気湯のエキス剤の臨床効果,日本東洋医学雑誌.45(3)557-561
[4] 臼杵悊 ,荻田幸雄(2001)東洋医学 更年期,日本産科婦人科学会雑誌.53(9)241-245
[5] 五野由佳理,小田口浩,早崎知幸,鈴木邦彦,及川哲郎,村主明彦,赤星透,花輪壽彦(2010)漢方薬による薬物性肝障害の症例検討. 日東医誌 Kampo Med Vol.61 No.6 828-833