大柴胡湯と防風通聖散はどっちがダイエットに効く?効果の違いや副作用などを比較

比較する女性

漢方薬を使って減量をサポートしたいと考えたとき、「大柴胡湯」と「防風通聖散」のどちらを選べば良いか迷う方も多いでしょう。これらの漢方薬には、それぞれ異なる特徴があり、自分の体質に合ったものを選ぶことが大切です。

この記事では、大柴胡湯と防風通聖散の特徴や効果、注意点について薬剤師が詳しく解説します。どちらの漢方薬が自分に適しているかを判断する参考にしてください。

肥満症でお悩みの方はぜひ一度YOJOの薬剤師にご相談ください。

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大柴胡湯と防風通聖散の違いは?

漢方生薬

肥満症の治療に効果があるとされる大柴胡湯(だいさいことう)と防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)ですが、どのような違いがあるのでしょうか。どっちを選べば良いか迷っている人のために、まずは両者の漢方薬の違いをご紹介いたします。

大柴胡湯の構成生薬、効能・効果

大柴胡湯(だいさいことう)は、体格がしっかりしていて体力がある方に向いている漢方薬です。この薬は「気」の巡りを良くし、自律神経の緊張を和らげる効果が期待できます。また、炎症を抑えたり、体の熱を冷ましたりする作用もあり、特に消化器系の不調を抱える方に適しています。さらに、体力があり、便秘しやすく、ストレスが原因で太りやすいタイプの肥満にも効果が期待されています。

大柴胡湯が合う人のイメージ

  • 固太り、筋肉質な体型
  • 便秘
  • 上腹部の膨満感
  • 肋骨の下のつかえ感・抵抗感
  • 悪心・嘔吐
  • 口の中が苦い、粘る
  • 肩こりがある
  • 頭痛、頭が重い、のぼせ感
  • 不安、不眠、神経過敏

構成生薬

柴胡(さいこ)、半夏(はんげ)、黄芩(おうごん)、芍薬(しゃくやく)、大棗(たいそう)、枳実(きじつ)、生姜(しょうきょう)、大黄(だいおう)

効能・効果 [1]

比較的体力のある人で、便秘がちで、上腹部が張って苦しく、耳鳴り、肩こりなど伴うものの次の諸症:胆石症、胆のう炎、黄疸、肝機能障害、高血圧症、脳溢血、じんましん、胃酸過多症、急性胃腸カタル、悪心、嘔吐、食欲不振、痔疾、糖尿病、ノイローゼ、不眠症
※市販で売られている一般用医薬品の中には「肥満症」の効能・効果が書かれているものがあります。

防風通聖散の構成生薬、効能・効果

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)は、体力があり、お腹の周りに脂肪がついた太鼓腹タイプの肥満症の人に適した漢方薬です。便秘がちで暑がりな人にも向いており、高血圧の随伴症状(動悸、肩こり、のぼせ)などにも効果があります。
この薬は、体力のある肥満体型の人に対して、体脂肪の減少や基礎代謝量の増加を促します。特に内臓脂肪が減少するという報告がされています。

防風通聖散が合う人のイメージ

  • お腹に脂肪がついた太鼓腹の肥満体型
  • のどが渇く
  • ほてったり寒気がしたり、一定しない
  • 便秘
  • 血圧が高め(のぼせや頭痛がある)
  • 蕁麻疹や湿疹が出やすい
  • 耳鳴りや肩こりがある

構成生薬

滑石(かっせき)、黄芩(おうごん)、甘草(かんぞう)、桔梗(ききょう)、石膏(せっこう)、白朮(びゃくじゅつ)、大黄(だいおう)、荊芥(けいがい)、山梔子(さんしし)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、当帰(とうき)、薄荷(はっか)、防風(ぼうふう)、麻黄(まおう)、連翹(れんぎょう)、生姜(しょうきょう)、芒硝(ぼうしょう)

効能・効果 [2]

腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症:高血圧の随伴症状(どうき、肩こり、のぼせ)、肥満症、むくみ、便秘

自分に合った漢方薬の選び方ー大柴胡湯と防風通聖散どっちが合う?

ダイエット

ダイエットを考える際に、自分には大柴胡湯と防風通聖散のどちらが適しているか悩むことがあるかと思います。ここでは、それぞれの漢方薬の代表的な効果についてご説明いたします。

大柴胡湯の効果

肥満症

医療用漢方製剤の大柴胡湯の効能・効果には「肥満症」の記載はありませんが、脂質代謝の改善により余分な脂質の吸収を抑える働きが報告されています。[3] そのことにより体重減少の効果も期待できます。

以下のような症例もあります。

患者さんの訴え:「胃のつかえや胸焼けがあります」

時々呑酸も生じる。美食家で飲酒も好む。舌に黄色い舌苔が付着している。少陽陽明合病と見て大柴胡湯を使用。1ヶ月で胃のつかえと胸やけが解消した。体調がいいので飲み続けたところ、気になっていた口臭がなくなり、体重も減った。(引用:医師・薬剤師のための漢方のエッセンス 幸井俊高著

肥満症の治療に使用される漢方薬についてはこちら▼で解説しています。

脂質代謝異常症

大柴胡湯には、脂質代謝を改善する効果があるため、脂質代謝異常症の治療にも役立つとされています。西洋薬のプロブコールと大柴胡湯を併用することで、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の低下を防ぎながら、トリグリセリド(中性脂肪)を減少させる効果が期待できるとの報告もあります。[4]

高血圧症

高血圧の治療では、西洋薬だけでは肩こりやめまいといった随伴症状が改善されにくいことがあります。そのような場合、漢方薬を併用することで、血圧を下げるだけでなく、こうした症状の改善にもつながることがあります。特に、大柴胡湯には自律神経を整える働きがある柴胡(さいこ)が含まれているため、ストレスを多く感じる方の高血圧に効果が期待できます。

防風通聖散の効果

肥満症

防風通聖散は体力がありお腹に脂肪がついて突き出しているような太鼓腹タイプで便秘がある肥満症の人に向いています。肥満症に対する効果としては、①脂肪を分解・燃焼する②便通を改善する③脂肪を便と一緒に排泄するなどが挙げられます。特に生活習慣病にも関連の深い内臓脂肪を減少する効果が報告されています。[5]

詳しくはこちら▼の記事で解説しています。

便秘

防風通聖散には、便通を促す大黄(だいおう)、芒硝(ぼうしょう)が含まれているため便秘症に対しても効果があります。

便秘についての関連記事はこちら▼

体質による大柴胡湯・防風通聖散の選び方のまとめ

チェック

体力があり便秘がちで、お腹が張っている太鼓腹タイプの肥満の方には、防風通聖散が第一選択となります。一方で、大柴胡湯も体力がありがっちりした体格の肥満の方に適していますが、特に怒りっぽく、脇の下から脇腹にかけて張りや違和感が強い場合には、大柴胡湯のほうがより適しています。

大柴胡湯防風通聖散
体力体力がある体力がある
体格がっちりしている、筋肉太りがっちりしている、お腹に脂肪がついた太鼓腹
その他の症状怒りっぽい、脇腹からみぞおちにかけての張り、便秘、耳鳴り、肩こりなど便秘、高血圧傾向、むくみ、肩こり、のぼせなど

自分だけではどちらの漢方薬が合っているか不安な方は、YOJOの薬剤師にご相談ください。体質チェックをもとに、さまざまなアドバイスをいたします。

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大柴胡湯と防風通聖散の副作用や禁忌事項の確認

医師

こちらでは大柴胡湯、防風通聖散のそれぞれの副作用や妊娠・授乳中の服用の可否などについて、解説いたします。

大柴胡湯の注意すべき副作用

以下のような症状が見られたらすぐに漢方薬の服用を中止し、医療機関を受診しましょう。

・間質性肺炎
黄芩を含む漢方薬では間質性肺炎の発症のおそれがあると言われていますが、原因不明な要因や薬剤性アレルギーの場合もあります。
症状としては、発熱、空咳、息切れ、呼吸困難などが挙げられます。

・肝機能障害、黄疸
中・高齢者に多く、長期投与によって発症しやすくなります。初期症状がない場合もあるので長期投与する場合は定期的に血液検査を行う必要があります。
症状としては、体がだるい、皮膚や白目が黄色くなるなどが挙げられます。

その他の副作用として、食欲不振、腹痛、下痢などの消化器症状が挙げられます。

防風通聖散の注意すべき副作用

以下のような症状が見られたらすぐに漢方薬の服用を中止し、医療機関を受診しましょう。
また、山梔子、甘草を含むので長期間漫然と服用しないようにしましょう。

・間質性肺炎
黄芩を含む漢方薬では間質性肺炎の発症のおそれがあると言われていますが、原因不明な要因や薬剤性アレルギーの場合もあります。
症状としては、発熱、空咳、息切れ、呼吸困難などが挙げられます。

・偽アルドステロン症(低カリウム血症)
甘草の成分であるグリチルリチンの含有量が多いほど発症リスクが高くなります。そのため他の甘草を含む医薬品との併用には注意が必要です。
症状としては、尿量が減少する、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、手がこわばるなどが挙げられます。

・腸間膜静脈硬化症
山梔子(さんしし)を含む漢方薬を長期間服用(多くは5年以上)することで、大腸の色調異常や潰瘍を生じ、腸間膜静脈硬化症を発症することがあります。[6]
症状としては、腹痛、便秘、下痢、腹部膨満感などを繰り返す、便潜血などが挙げられます。

・ミオパチー
低カリウム血症の結果として、筋肉の障害が現れます。
症状としては脱力感、四肢痙攣・麻痺などが挙げられます。

・肝機能障害、黄疸
中・高齢者に多く、長期投与によって発症しやすくなります。初期症状がない場合もあるので長期投与する場合は定期的に血液検査を行う必要があります。
症状としては、体がだるい、皮膚や白目が黄色くなるなどが挙げられます。

その他の副作用としては、以下のものが報告されています。

過敏症発疹、皮膚のかゆみ
自律神経症状不眠、発汗過多、頻脈、動悸、全身脱力感、精神興
奮など
消化器症状食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、軟便、
下痢など
泌尿器症状排尿障害など

妊娠中、授乳中の服用について

妊娠中に大柴胡湯や防風通聖散を服用する際には注意が必要です。どちらにも大黄(だいおう)が含まれており、子宮収縮や骨盤内の臓器への血流が増えることで流産や早産のリスクがあります(防風通聖散には、さらに子宮収縮作用がある芒硝も含まれています)。そのため、自己判断での服用は避け、必ず主治医に相談してください。
授乳中の服用についても、大黄が母乳に移行し、授乳中の赤ちゃんに下痢を引き起こす可能性があります。もし服用する場合は、赤ちゃんの様子を十分に観察しながら行いましょう。

大柴胡湯・ 防風通聖散が合わない人

バツマーク

大柴胡湯が合わない人には以下のような特徴があります。

  • 胃腸が極端に弱い人
  • 下痢・軟便傾向の人
  • 妊婦(流早産の危険性)

一方、防風通聖散が合わない人には以下のような特徴があります。

  • 妊婦(早流産の危険性)
  • 下痢・軟便がある、胃腸が弱い人
  • 狭心症・心筋梗塞などの循環器系疾患の人
  • 重症高血圧の人
  • 排尿障害のある人
  • 甲状腺機能亢進症の人
  • 腎機能障害のある人

大柴胡湯と防風通聖散以外のダイエットに効果のある漢方薬

体重計に乗る人形

大柴胡湯と防風通聖散以外で肥満症の治療に用いられることがあるのは「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」という漢方薬です。

防已黄耆湯は以下のようなタイプに向いています。

  • 体力がなく、水太りタイプ
  • 特に下半身がむくみやすい
  • 汗っかきで疲れやすい

ダイエットに用いられる漢方薬については、こちら▼の記事で詳しく解説しています。

自分だけではどの漢方薬が合っているか不安な方は、YOJOの薬剤師にご相談ください。体質チェックをもとに、さまざまなアドバイスをいたします。

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大柴胡湯と防風通聖散に関してよくある質問

疑問

こちらではよくある質問に対してお答えしています。

大柴胡湯と防風通聖散は効果が出るまでどのくらいかかる?

大柴胡湯、防風通聖散ともに、個人の体質や症状によって効果が出るまでの期間は異なりますが、減量の目的であれば少なくとも1ヶ月は服用を継続して様子をみましょう。
便秘の改善目的であれば、大柴胡湯では5〜6日、防風通聖散では1週間位服用しても症状が良くならない場合は服用を中止し、医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください。[7][8]
これらの薬は、飲むだけで痩せるものではありません。痩せるためには、食事内容の改善や運動習慣の見直しを行った上で服用することが大切です。

大柴胡湯と防風通聖散は一緒に飲んでもいいですか?

大柴胡湯と防風通聖散は、どちらも体力があり、がっしりした体格の方に適した漢方薬です。ただし、両方に「黄芩」「大黄」「芍薬」「生姜」が含まれているため、一緒に服用すると副作用のリスクが高まる可能性があります。通常は、どちらか一方だけを服用するようにしましょう。

自分に合う漢方と生活習慣の改善を組み合わせることが大切

ウォーキングする女性

肥満症を改善して体重を減らしたい場合、いわゆる「痩せ薬」は漢方薬にも存在しません。漢方では、代謝を高めたり血流を改善することで、痩せやすい体作りをサポートすることはできますが、基本は食事と運動の見直しが重要です。まずは生活習慣を整えたうえで、自分に合った漢方薬を取り入れ、無理のない減量を目指しましょう。

YOJOでは、体質に合った漢方薬の選び方や、生活習慣を改善するためのアドバイスなどを薬剤師から受けられます。体の不調に悩んでいる方は、YOJOの薬剤師にお気軽にご相談ください。
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[1]ツムラ大柴胡湯エキス顆粒(医療用)添付文書
[2]ツムラ防風通聖散エキス顆粒(医療用)添付文書
[3]後藤正子ら (1992) 実験的ミネラルおよび脂質代謝異常誘発 自然発症糖尿病モデルに対する漢方方剤 (大柴胡湯,小柴胡湯,八 味地黄丸)の効果.日本薬理学雑誌 100 (4), 353-358
[4]日本東洋医学会 EBM 委員会エビデンスレポートタスクフォース 高島敏伸, 大森啓造, 樋口直明, ほか. プロブコールと大柴胡湯の併用療法 -大柴胡湯のHDL 代謝に対する影響- . 動脈硬化 1993; 21: 47-52.
[5]メタボリックシンドロームに対する防風通聖散の有効性の検討,J Pharm Health Care Sci. 34(6) 513-521)
[6]日本漢方生薬製剤協会 漢方薬による腸間膜静脈硬化症
[7]日本漢方生薬製剤協会 大柴胡湯の確認票 
[8]国立医薬品食品衛生研究所「一般用漢方製剤の安全性確保に関する研究 安全に使うための防風通聖散の確認票」