葛根湯は、風邪の初期症状によく用いられる漢方薬です。その他にも中耳炎、乳腺炎などの炎症性疾患、肩こり、じんましんなどにも使用されます。
葛根湯を他の薬と併用する場合は、以下の点に注意する必要があります。
・葛根湯は他の医薬品との飲み合わせで禁忌のものはありません。
・ただし、生薬の「麻黄」「甘草」を含むため、飲み合わせで注意が必要です。
具体的に飲み合わせに注意が必要な医薬品や、ロキソニン、アレグラなどとの飲み合わせについては以下で薬剤師が詳しく解説いたします。
漢方薬で体調を管理したい、薬の飲み合わせについて詳しく知りたい、健康相談をしたい方はお気軽にYOJOの薬剤師にご相談くださいね。
Contents
葛根湯と他の医薬品の飲み合わせで禁忌はある?
葛根湯と他の医薬品との飲み合わせで禁忌とされるものはありません。しかし、他の漢方薬との飲み合わせでは生薬の重複に注意が必要です。
具体的な飲み合わせの注意点は以下で詳しく解説いたします。
禁忌のものはありませんが、他の医薬品やサプリメントなどと併用する際には主治医や薬剤師に必ず伝えるようにしましょう。
葛根湯とは?風邪薬、頭痛、肩こりに使用される漢方薬
葛根湯は風邪の初期症状に対する代表的な漢方薬です。体温を上昇させ、発汗を促すことで熱を下げ、風邪の症状を緩和する働きがあります。
その他にも、炎症性の疾患、慢性頭痛や肩こりにも使用されます。
構成生薬
葛根(かっこん)、大棗(たいそう)、麻黄(まおう)、甘草(かんぞう)、桂皮(けいひ)、芍薬(しゃくやく)、生姜(しょうきょう)
服用がおすすめの人
比較的体力がある人(実証)の風邪の初期の症状(寒気、発熱、頭痛、首・肩こり、鼻水)に効果があります。その他にも、熱性炎症性疾患(結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、乳腺炎、リンパ節炎)、肩こり、上半身の神経痛、じんま疹がある人にも用いられます。
葛根湯が向いている人は?
葛根湯は、主に体力があり、胃腸が丈夫な人に適しています。具体的には、次のような症状がある方におすすめです。
- 汗は出てないけどゾクゾクと寒気がする
- 首や肩のこりが取れない
- 頭痛、発熱、咳、のどの痛みなどの風邪の初期症状
漢方薬を服用する際は、自分の体質に合った漢方薬を服用することが効果を最大限に引き出すためには大切です。まずは自分の体質チェックしてみましょう。YOJOではLINEで簡単に体質チェックや薬剤師に質問できます。
体質や症状によっては、風邪症状でも葛根湯以外の漢方薬が適している場合があります。風邪の症状に使用される漢方薬については、こちら▼の記事で詳しく解説しています。
葛根湯の飲み合わせの注意点
葛根湯は一般的に安全性の高い漢方薬ですが、他の医薬品との併用によって予期せぬ副作用が現れる可能性もあります。以下では、他の薬との飲み合わせについて詳しく説明します。
葛根湯と頭痛薬・鎮痛薬(ロキソニン・カロナール・イブプロフェン)の飲み合わせ
頭痛薬や鎮痛薬は解熱鎮痛薬と総称され、代表的なものにはロキソニン(ロキソプロフェンナトリウム)、カロナール(アセトアミノフェン)、ブルフェン(イブプロフェン)などがあります。
葛根湯と解熱鎮痛薬を同時に服用しても、薬の作用としては問題ありません。ただし、葛根湯は「体を温め、ウイルスや細菌に対する効果を高め、自然治癒力を促進し、結果として解熱する」という働きがありますので、過度に体温を下げないよう注意が必要です。
一方、ロキソニン、カロナール、イブプロフェンなどの解熱鎮痛薬は体温を下げる効果があります。そのため、葛根湯と解熱鎮痛薬を同時に服用すると、葛根湯の効果が十分に発揮されず、風邪症状が長引く可能性があります。
併用するかどうかは個別の状況によりますが、できるだけ併用を避けることが望ましいと言えます。葛根湯を服用したけれど解熱しない場合や頭痛がひどい場合は、解熱鎮痛薬の使用を検討することもあります。具体的な指示は医師や薬剤師に相談しましょう。
葛根湯と花粉症薬・鼻炎薬(アレグラ)の飲み合わせ
花粉症の治療にはアレグラ(フェキソフェナジン塩酸塩)などの抗アレルギー薬が使用されますが、これらと葛根湯の併用は問題ありません。ただし、市販の鼻炎薬には葛根湯に含まれるエフェドリンと似た作用を持つ成分であるプソイドエフェドリンなどが含まれているものもあるので、併用には注意が必要です。
特に高齢者や持病のある方は、医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
葛根湯と甲状腺薬(チラーヂン)の飲み合わせ
甲状腺機能低下症の治療に使用されるチラーヂンS錠(レボチロキシンナトリウム)と葛根湯の併用には注意が必要です。葛根湯に含まれる麻黄のエフェドリン成分がチラーヂンの交感神経刺激作用を増強する可能性があるので、併用する際には主治医の指示のもとで薬を使用するようにしましょう。
葛根湯と麻黄湯の飲み合わせ
葛根湯と同様に、風邪やインフルエンザにも使用される麻黄湯(まおうとう)には、麻黄という生薬が含まれています。そのため、麻黄が重複することでエフェドリンの作用が増強され、交感神経刺激作用(不眠、神経過敏、動悸、疲労感、興奮など)が現れる可能性があります。
一般的には、葛根湯と麻黄湯を同時に服用することはありませんので、どちらか一方を服用するようにしましょう。風邪症状が強く、関節痛や筋肉痛がある場合には麻黄湯が選ばれることが多いです。[1]
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葛根湯と小青竜湯の飲み合わせ
小青竜湯(しょうせいりゅうとう)は、水のような鼻水や痰、くしゃみ、鼻詰まり、咳などの症状がある場合に使用される漢方薬です。風邪やアレルギー性鼻炎などで処方されることがあります。
小青竜湯にも麻黄が含まれているため、麻黄の有効成分であるエフェドリンによる作用が、葛根湯との併用により増強される可能性があるため、併用には注意が必要です。特に高齢者や持病のある方は、医師や薬剤師に相談してから服用するようにしましょう。
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葛根湯と麻黄附子細辛湯の飲み合わせ
麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)も風邪の初期で用いられる漢方薬であり、特に普段から体力のない人や高齢者に向いています。この漢方薬にも麻黄が含まれており、葛根湯と併用すると麻黄の作用が重複し、頻脈、動悸、血圧上昇などの副作用が現れる可能性があるため、注意が必要です。
基本的には葛根湯と麻黄附子細辛湯は併用することはないので、どちらか一方の漢方薬を選び、医師や薬剤師と相談して自分の体質に合ったものを服用するようにしましょう。
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葛根湯と桔梗湯の飲み合わせ
桔梗湯(ききょうとう)は、のどが腫れて痛みが強い扁桃炎などに用いられる漢方薬であり、その中には甘草が含まれています。甘草は葛根湯と重複するため、作用が強まりむくみや血圧上昇などの副作用が現れる可能性があるため、注意が必要です。
葛根湯と併用しやすいのどの炎症を抑える漢方薬として「桔梗石膏(ききょうせっこう)」があります。桔梗石膏は咳止めや化膿止めとしての効能があります。この漢方薬は桔梗と石膏という2つの生薬で構成されており、甘草の副作用が気になる方でも服用しやすい選択肢となります。
葛根湯と芍薬甘草湯の飲み合わせ
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)は、こむらがえりや筋肉痛などの急激な筋肉の痙攣に伴う痛みに使用される漢方薬です。芍薬と甘草で構成されており、葛根湯と併用する場合には甘草の重複により、むくみや血圧上昇などの副作用が現れる可能性があるため、注意が必要です。
芍薬甘草湯は通常、頓服として使用されます。ただし、医療用漢方の中には、1包あたりに2.0gの甘草が含まれる芍薬甘草湯もあるので、他の甘草を含む漢方薬(例:葛根湯)との併用には慎重さが求められます。
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葛根湯と補中益気湯の飲み合わせ
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は疲れ、食欲不振、風邪などに使用される漢方薬です。葛根湯と補中益気湯には甘草、大棗、生姜という共通の生薬が含まれているため、一緒に服用する際には注意が必要です。特に甘草の服用量が増えるとむくみ、高血圧、低カリウム血症などの副作用が現れやすくなります。
自己判断で一緒に服用することは避け、併用する際には医師や薬剤師に相談しましょう。
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葛根湯や他の漢方薬との組み合わせについて知りたい方は、ぜひご相談ください。LINE登録後、体質チェックを行った上で、薬剤師とのチャット相談が可能です。
葛根湯の飲み合わせでよくある質問
葛根湯と併用することが考えられる医薬品や飲み物との飲み合わせについて詳しく解説します。
葛根湯と市販の風邪薬の飲み合わせ(ルル、エスタック、パブロン)は?
市販の総合風邪薬には、解熱鎮痛成分としてアセトアミノフェンやイブプロフェンが一般的に含まれています。また、咳を抑える効果があるdl-メチルエフェドリン塩酸塩が含まれていることもあります。さらに、頭の重い感じを緩和する無水カフェインや炎症を抑えるグリチルリチン酸などの成分も含まれている製剤も存在します。エスタックシリーズには、生姜(しょうきょう)や桂皮(けいひ)などの生薬成分も含まれているものがあります。
以上のことから、解熱鎮痛薬と葛根湯の効果が相互に打ち消し合う可能性や、葛根湯に含まれる麻黄や甘草との重複に注意が必要です。併用する場合は、必ず医師や薬剤師に相談してから行いましょう。
葛根湯と喉の痛みの薬(トラネキサム酸)の飲み合わせは?
葛根湯とトラネキサム酸は、相互に作用を打ち消し合ったり増強したりすることはないため、一緒に服用しても問題ありません。トラネキサム酸は、抗炎症作用があるため、風邪による喉の痛みや扁桃炎の治療に使われることがあります。また、抗プラスミン作用があるため、皮膚科では肝斑(かんぱん)の治療に処方されることもあります。さらに、市販の風邪薬にもよく含まれています。
葛根湯とステロイドの飲み合わせは?
葛根湯に含まれる甘草には、ステロイドに似た作用があると言われています。そのため、プレドニン(プレドニゾロン)などのステロイドと葛根湯を併用する場合には、甘草の副作用である偽アルドステロン症や低カリウム血症が起こりやすくなる可能性があるため、注意が必要です。医師や薬剤師に相談してからの服用をおすすめします。[2]
葛根湯と抗生物質の飲み合わせは?
漢方薬に含まれる成分の一つである配糖体は、腸内細菌によって分解されて吸収されます。したがって、漢方薬の効果を十分に発揮するためには、腸内細菌の存在が重要です。しかし、抗生物質を服用すると腸内細菌叢のバランスが乱れることがあり、その結果、漢方薬の有効成分が適切に吸収されず、効果が不十分になる可能性があります。葛根湯に含まれる甘草の有効成分であるグリチルリチンも配糖体であり、腸内細菌による代謝が必要です。そのため、抗生物質と葛根湯を併用すると、葛根湯の効果が十分に発揮されない可能性があります。
このことから、抗生物質と漢方薬を併用する場合は慎重になる必要があります。併用する場合には医師・薬剤師に相談しましょう。
葛根湯と咳止めの飲み合わせは?
病院で処方される咳止めの一つであるフスコデ配合錠には、気管支を拡張する作用があるdl-メチルエフェドリン塩酸塩が含まれています。この成分と葛根湯の中の麻黄の作用が重複し、交感神経刺激作用(不眠、神経過敏、動悸、疲労感、興奮など)が現れる可能性があります。
市販の咳止め製品にも気管支拡張成分としてdl-メチルエフェドリン塩酸塩やテオフィリンが含まれているものがあります。そのため、葛根湯との併用には注意が必要です。特に高齢者や持病のある方は医師・薬剤師にご相談ください。
葛根湯と栄養ドリンク(ユンケル)の飲み合わせは?
ユンケルの栄養ドリンクには、無水カフェイン、タイソウ(大棗)エキス、ショウキョウ(生姜)流エキス、カンゾウ(甘草)流エキスなどが含まれています。無水カフェインは葛根湯の麻黄と作用が重複し、交感神経刺激作用が現れる可能性があります。また、一部のユンケルにはカンゾウ(甘草)流エキスが含まれているため、葛根湯の甘草との重複によるむくみや血圧上昇の副作用にも注意が必要です。
ただし、中にはカフェインが含まれていないタイプやカンゾウ(甘草)流エキスが含まれていないタイプもあります。葛根湯と併用する場合は、薬剤師や登録販売者に相談して、適切な選択をしましょう。
葛根湯とコーヒーの飲み合わせは?
葛根湯とコーヒーの同時摂取には注意が必要です。コーヒーに含まれるカフェインと葛根湯の成分である麻黄(まおう)のエフェドリンが相乗効果を示す可能性があります。この組み合わせにより中枢神経刺激が強まり、不眠、興奮、尿閉(前立腺肥大の方は特に注意)などの症状が起こることがあります。そのため、葛根湯を服用する際はコーヒーなどのカフェイン飲料との同時摂取を避けることが望ましいです。また、カフェイン摂取と葛根湯の服用は1時間以上の間隔を開けるようにしましょう。
葛根湯とサプリメントの飲み合わせは?
サプリメントには、生薬成分を含むものがあります。したがって、葛根湯との併用時には、摂取しているサプリメントの成分との重複に注意する必要があります。サプリメントとの飲み合わせについても、医師・薬剤師に相談することをおすすめします。
YOJOでは、体質チェックをもとにあなたに合った漢方薬をご提案するだけでなく、ご自身が服用中の薬やサプリメントなどとの飲み合わせに関する質問にもお答えいたします。ぜひ気軽にご相談ください。
葛根湯を服用する際のポイントや注意点
こちらでは、葛根湯のおすすめの服用方法や、副作用、妊娠・授乳中の服用の可否について解説しています。
葛根湯のおすすめの服用方法は?
葛根湯は他の漢方薬と同様に、基本的には食前または食間に服用します。お湯に溶かして服用するのがおすすめです。ただし、葛根湯は風邪の初期に効果を発揮する漢方薬であるため、服用のタイミングが非常に重要です。寒気がゾクッと感じられたり、首から肩にかけての凝りを感じた場合は、食前・食後に関係なくすぐに服用することがポイントです。
漢方薬の飲み方については、こちら▼で詳しく解説しています。
関連記事:漢方薬の正しい飲み方は?上手に飲むコツや飲むときの注意点も解説
葛根湯の副作用は?
葛根湯を服用して以下のような症状が現れた場合には、服用をすぐに中止し医療機関を受診しましょう。
重大な副作用 [3]
重大な副作用としては以下のものが報告されています。いずれも頻度不明のため起こることは稀です。
(1)偽アルドステロン症:低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、体重増加などの症状が現れることがあるので、定期的に血清カリウム値の測定などを十分に行いましょう。
(2)ミオパチー:低カリウム血症の結果として、横紋筋融解症や筋肉の病気が現れることがあります。脱力感、筋力低下、筋肉痛、四肢痙攣・麻痺などの症状が特徴的です。
(3)肝機能障害、黄疸:AST、ALT、Al-P、γーGTPの上昇を伴う肝機能障害、黄疸が現れることがあります。
その他の副作用 [3]
その他の副作用として以下のようなものが報告されています。いずれも頻度不明のため起こることは稀です。
過敏症 | 発疹、発赤、かゆみなど |
自律神経系症状 | 不眠、発汗過多、頻脈、動悸、全身脱力感、精神興奮など |
消化器症状 | 食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐など |
泌尿器症状 | 排尿障害など |
妊娠中や授乳中は服用できる?
葛根湯には発汗作用のある生薬「麻黄」が含まれており、胎盤への血流を妨げる可能性があるため、妊娠中の使用は避けることが推奨されます。[4]
妊娠中に風邪を引いた際の第一選択薬としては「香蘇散(こうそさん)」が知られていますが、妊娠中の風邪薬は必ず主治医の指示に従って服用するようにしましょう。
また、授乳中の服用に関しては、授乳婦が葛根湯を服用した場合、主成分の母乳中への移行量は少なく、乳児への影響はほとんどないことが報告されています。[5] しかし念の為、授乳中に葛根湯を服用する場合は、赤ちゃんの様子を十分観察し、眠りが浅い、いつもより泣くなどの様子が見られたら中止し、主治医にご相談ください。
葛根湯の飲み合わせに注意して正しく服用しよう
葛根湯は、風邪の初期に効果が期待できる漢方薬で、多くの方が飲んだことのある薬かもしれません。ただし、「甘草」や「麻黄」など副作用に注意が必要な成分が含まれているため、長期間の服用は避けたほうが良いでしょう。また、他の薬と併用する場合も、飲み合わせに注意が必要です。
YOJOでは、体質に合った漢方薬の選び方や生活習慣を改善するためのアドバイスなども薬剤師から受けることができます。なかなか改善されない不調に悩んでいる方は、YOJOの薬剤師に相談するのも良いでしょう。
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【参考文献】
[1]マトリックスでわかる!漢方薬使い分けの極意 渡辺賢治
[2]日本漢方生薬製剤協会 カンゾウ(甘草)含有医療用漢方製剤による低カリ ウム血症の防止と治療法
[3]ツムラ葛根湯エキス顆粒(医療用)添付文書
[4]公益社団法人福岡県薬剤師会 妊婦への投与に注意が必要な漢方薬
[5]公益社団法人福岡県薬剤師会 質疑応答