黄連解毒湯の効果とは?飲み方のポイントや注意点も解説

イライラする女性

黄連解毒湯(おうれんげどくとう)は、体の余分な熱を冷まして炎症やのぼせ、イライラなどを改善する作用のある漢方薬です。

鼻血や不眠症、二日酔い、アトピー性皮膚炎、口内炎、更年期のイライラ…など様々な症状の治療に用いられる黄連解毒湯ですが、服用する際には、体質・症状に合っているかや、服用の注意点についてきちんと確認して取り入れることが大切です。

この記事では、黄連解毒湯の効果や副作用、よくある質問について薬剤師がくわしく解説します。漢方薬の服用について不安な方はYOJOの薬剤師にご相談ください。

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黄連解毒湯とは

漢方生薬

まずは黄連解毒湯がどのような漢方薬なのか、構成成分や服用が適する方についてお伝えします。

黄連解毒湯の成分

黄連解毒湯は、体の熱を冷まし、消炎解毒作用をもつ4種類の生薬から構成されています。[1]

・黄連(おうれん)…心・胃・肝・胆の熱を冷ます
・黄芩(おうごん)…心・肺・腸の熱を冷ます
・黄柏(おうばく)…腎・膀胱の熱を冷ます
・山梔子(さんしし)…心・肝・肺・腎の熱を冷ます

漢方医学には「三焦(さんしょう)」という概念があり、人の体を大きく3つに分けて、胸から上を上焦、真ん中を中焦、へそから下を下焦と呼びます。黄連解毒湯は感染症や急性炎症などの病邪が原因でうまれる余分な熱「実熱(じつねつ)」が三焦にこもっているような状態の時に用いると良いとされます。

黄連解毒湯の服用が向いている人・向いていない人

黄連解毒湯が合う人は、体力中等度もしくはそれ以上(実証タイプ)の人で、のぼせて顔面紅潮し、イライラしやすい人です。胸からみぞおちにかけてつかえ感がある場合や、のぼせて鼻血・頭痛・耳鳴りがする場合にも向きます。
一方で、体の弱い虚証タイプの人は一般に黄連解毒湯の服用は向いていません。

黄連解毒湯と三黄瀉心湯の違い

黄連解毒湯の類似処方として、三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)があげられます。三黄瀉心湯は、体の熱や炎症をとり、体力がある人ののぼせやイライラなどを改善する漢方薬です。
黄連解毒湯との大きな違いは、三黄瀉心湯には「大黄(だいおう)」の生薬が配合されており、瀉下効果に優れているために便秘傾向が強い場合に選択されます。[1]

黄連解毒湯の効果

かゆい女性

黄連解毒湯を服用することで、具体的には以下のような効果が期待できます。

鼻出血の改善

黄連解毒湯は、体の止血機能を働かせ、炎症などの熱をの発生を伴う鼻出血に対して、止血効果が期待できます。構成生薬の「黄連」「黄柏」は、合わさることで止血作用と熱を冷ます作用が一層強まります。

臨床ではその優れた止血作用から、鼻出血のほかにも消化管出血歯肉出血などにも用いられることがあります。

不眠症の改善

不眠症の症状は、以下の4つの症状に分類されます。
・入眠障害…寝つきが悪い
・中途覚醒…眠りについても途中で目が覚める
・早朝覚醒…早朝に目覚めて二度寝ができない
・熟眠障害…朝起きた時に疲れがとれていない

黄連解毒湯は不眠症の改善効果があり、特にほてりや興奮が続いて寝付けない(入眠障害)、不快感で途中で目が覚めてしまう(中途覚醒)ような不眠に対して高い効果が期待できると考えられます。[2]

不眠症の治療に用いられるそのほかの漢方薬や使い分けについて、さらに詳しく知りたい方はこちら▼の記事もお読みください。

二日酔いの改善

二日酔いとは、お酒を飲み過ぎた日の翌日に起こる、吐き気や頭痛、めまいなどの不快な症状を指します。

黄連解毒湯は酒毒を消す作用があることから、二日酔いの改善に効果が期待できます。お酒を飲んだ当日に、酔いがなかなか醒めずに顔が赤くなっている時に服用すると良いでしょう。頭痛や動悸がする場合や、お酒と共に脂っこいものを食べ過ぎて胃炎を起こした場合にもおすすめです。

ほかに二日酔いの代表的な漢方薬としては、「五苓散(ごれいさん)」があげられます。二日酔いに対する五苓散と黄連解毒湯の使い分けについて、さらに詳しく知りたい方はこちら▼の記事もお読みください。

皮膚の炎症やかゆみ(アトピー性皮膚炎など)の改善

黄連解毒湯は体の熱を冷まして、皮膚の炎症や痒みを抑える効果があります。

アトピー性皮膚炎に対しては、特に皮膚表面のかゆみや赤みが強く、搔き壊した部分から滲出液が出ている場合などの湿熱を伴う急性期の状態に選択されます。

アトピー性皮膚炎の治療に用いられるそのほかの漢方薬や使い分けについて、さらに詳しく知りたい方はこちら▼の記事もお読みください。

更年期障害の症状緩和

日本女性は約50歳で閉経を迎えますが、この閉経前後の約10年間を「更年期」と呼びます。更年期には急激なエストロゲン量の低下により、ホルモンバランスや自律神経のバランスが崩れやすくなり、以下のような症状を引き起こします。
【更年期障害の主な症状】
・血管運動系…のぼせ、ホットフラッシュ、動悸、息切れ、高血圧など
・精神神経系…イライラ、不眠、抑うつ、情緒不安定、めまい、耳鳴り、頭痛など
・その他…食欲不振、吐き気、肩こり、疲労感、抜け毛など

黄連解毒湯は、体力が中等度以上の方の更年期が原因で起こる、のぼせやホットフラッシュ、イライラ、不眠、高血圧、めまいなどの症状に効果が期待できます。

更年期障害の治療に用いられるそのほかの漢方薬や使い分けについて、さらに詳しく知りたい方はこちら▼の記事もお読みください。

黄連解毒湯の飲み方のポイント

漢方生薬

ここでは、黄連解毒湯を服用する際のポイントについてお伝えします。

服用する回数やタイミング

黄連解毒湯は定められた量を1日2~3回に分けて、水または白湯で服用します。
ただし、用法用量は商品や服用者の症状、年齢・体重などによっても異なるため、必ず医師の指導や添付文書の指示に従って服用しましょう。

また服用するタイミングは食前または食間です。食前とは食事の20~30分前、食間とは食事と食事の間2時間くらいの空腹時を指します。

黄連解毒湯が飲みにくい場合のコツ

黄連解毒湯は苦みがある処方のため、飲みにくいと感じる場合もあります。そのような場合には、以下の工夫をすることで、漢方薬がぐんと飲みやすくなります。

【方法①】水または白湯を先に口の中に含んでから服用する
漢方薬の顆粒を摂取する前に水または白湯を口に含み、その上で漢方薬を服用します。これにより、漢方薬が舌に直接触れないため苦みを感じにくくする効果が期待できます。
【方法②】オブラートに包んで服用する
オブラートで漢方薬を包んだ後、少量の水の入ったコップに入れて溶かします。数分後オブラートが徐々に溶け始めたあたりで水と一緒に飲み込むと、つるっとのどを通って漢方薬の味を感じずに服用しやすくなります。

また、ほてりがあり白湯で飲むのがつらい人は、冷たくした水と一緒に服用すると、黄連解毒湯の場合はより効果が出やすいこともあります。

漢方薬の服用について、悩んでいる方はYOJOの薬剤師にも相談できます。

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黄連解毒湯の副作用と飲むときの注意点

医師

ここでは、黄連解毒湯を飲む際の注意点についてお伝えします。

黄連解毒湯の注意すべき副作用

黄連解毒湯では、頻度不明で以下の副作用が報告されています。[3]

過敏症 皮膚のかゆみ、発疹・発赤など
消化器症状 吐き気・嘔吐、食欲不振、胃部不快感

過敏症の副作用が出た場合は、すぐに漢方薬の服用を中止しましょう。消化器症状が出た場合には、服用のタイミングを食前から食後に変更して様子を見て、症状が落ち着かない場合には中止し、医療機関を受診しましょう。

また、重大な副作用としては以下のような症状も報告されています。

間質性肺炎 階段の上り下りといった少しの動作で息切れがする。空咳や発熱の症状がある。
肝機能障害 発赤、かゆみ、皮膚・白目が黄色くなる黄疸、褐色尿、全身倦怠感、食欲不振、血液検査でASTやALTγ-GTPなどの著しい上昇などがみられる場合がある。
腸間膜静脈硬化症 長期服用により、腹痛や下痢、便秘、腹部膨満がくり返しみられる。

黄連解毒湯の飲み合わせについて

黄連解毒湯は他の医薬品との飲み合わせで、禁忌となる医薬品はありません。
ただし、他の医薬品やサプリメントと併用する場合には、服用する前に医師や薬剤師、登録販売者に確認しましょう。

漢方薬の飲み合わせを考えるポイントについて、さらに詳しく知りたい方はこちら▼の記事もお読みください。

黄連解毒湯の市販薬

ドラッグストアと処方箋

黄連解毒湯は市販でも購入できる漢方薬です。薬局やドラッグストアで販売されている黄連解毒湯の商品には、例えば以下のようなものがあります。

ツムラ漢方15 黄連解毒湯エキス顆粒

ツムラ漢方15 黄連解毒湯エキス顆粒
引用元:ツムラHP

黄連解毒湯エキスを有効成分とした漢方商品です。1日量として医療用漢方薬の1/2量の黄連解毒湯エキスを配合しています。1日2回服用します。

分類 第2類医薬品
効能効果 体力中等度以上で、のぼせぎみで顔色赤く、いらいらして落ち着かない傾向のあるものの次の諸症:鼻出血、不眠症、神経症、胃炎、二日酔、血の道症(※)、めまい、動悸、 更年期障害、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ、口内炎
形状 顆粒剤
用法・用量 1日2回食前または食間に水またはお湯にて服用。
成人(15歳以上):1回1包
15歳未満7歳以上:1回2/3包
7歳未満4歳以上:1回1/2包
4歳未満2歳以上:1回1/3包
内容量 20包

「クラシエ」漢方黄連解毒湯エキス顆粒 [45包]

「クラシエ」漢方黄連解毒湯エキス顆粒 [45包]
引用元:クラシエHP

黄連解毒湯エキスを有効成分とした漢方商品です。1日量として医療用漢方薬の1/2量の黄連解毒湯エキスを配合しています。1日3回服用します。

分類 第2類医薬品
効能効果 体力中等度以上で、のぼせぎみで顔色赤く、いらいらして落ち着かない傾向のあるものの次の諸症:鼻出血、不眠症、神経症、胃炎、二日酔、血の道症、めまい、動悸、更年期障害、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ、口内炎
形状 顆粒剤
用法・用量 1日3回食前または食間に水または白湯にて服用。
成人(15歳以上):1回1包
15歳未満7歳以上:1回2/3包
7歳未満4歳以上:1回1/2包
4歳未満2歳以上:1回1/3包
2歳未満:1回1/4包
内容量 45包

黄連解毒湯についてよくある質問

よくある質問

ここでは、黄連解毒湯の服用でよくある質問とその回答について、まとめてお伝えします。

黄連解毒湯に痩せる効果はある?

黄連解毒湯を服用することで痩せる効果はありません。

漢方薬を取り入れたダイエットやその注意点について詳しく知りたい方は、こちら▼の記事をお読みください。

黄連解毒湯の効果はいつから出る?

黄連解毒湯は、鼻出血や二日酔いに対しては効果の発現が早く、数日以内に効果が認められます。しかし、そのほかの症状については継続して服用することが必要です。効果が出るまでの期間は個人差がありますが、1か月程度は服用を続けましょう。

黄連解毒湯が効かない場合は?

鼻出血や二日酔いで服用する場合には、5~6回服用しても症状が良くならない場合には服用を中止して相談することが大切です。

そのほかの症状についても、1か月以上服用して症状の改善が認められない場合には、体質や症状に合っていない可能性もあるため、医師や薬剤師または登録販売者に相談しましょう。

なお黄連解毒湯が合わない場合、例えば以下のように、体質や症状に合わせて他の漢方薬が検討されることもあります。

・体力中等度以上で、のぼせやイライラのほかに便秘の症状が強い場合
三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)
・神経の高ぶりが激しく、動悸の症状も気になる場合
抑肝散(よくかんさん)
・イライラや不眠症などの精神症状はあるが、虚弱体質で性周期に連動して症状が強くなる場合
加味逍遥散(かみしょうようさん)

YOJOでは、体質に合った漢方薬の選び方や生活習慣を改善するためのアドバイスなども薬剤師から受けることができます。なかなか改善されない不調に悩んでいる方は、YOJOの薬剤師に相談するのも良いでしょう。

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【参考文献】
[1]高山宏世編著 漢方常用処方解説
[2]不眠に対する黄連解毒湯の有用性(2011),Phil漢方No.34,12-13
[3]ツムラ黄連解毒湯エキス顆粒(医療用)