小青竜湯(しょうせいりゅうとう)は、水っぽい鼻水やくしゃみ、鼻づまりや痰をともなう咳などに効果が期待できる漢方薬です。
風邪のひきはじめのほか、花粉症やアレルギー性鼻炎、気管支喘息の治療にも広く用いられています。一方で、服用する際には自分の体質・症状に合っているかを確認し、服用のポイントを守って取り入れることが大切です。
この記事では、小青竜湯の効果や副作用、よくある質問について薬剤師が詳しく解説します。漢方薬の服用について不安な方はYOJOの薬剤師にご相談ください。
Contents
小青竜湯とはどんな漢方薬?
まずは小青竜湯の構成成分や、効く仕組みについて解説します。
小青竜湯の成分
小青竜湯に含まれる構成成分は、以下のとおりです。[1][2]
・半夏(はんげ):咳や吐き気を鎮める作用や、唾液分泌を亢進してのどの痛みを和らげる作用などがあります。
・麻黄(まおう):発汗作用や肺機能を高めて呼吸器機能を改善する作用(宣肺平喘)、抗炎症作用などがあります。
・乾姜(かんきょう):体を温める作用や余分な水分を発散させる作用などがあります。
・桂皮(けいひ):体を温めて発汗させる作用があります。
・五味子(ごみし):肺気を温めて咳や息苦しさを抑える作用があります。
・細辛(さいしん):痛み・熱をとる作用や咳を鎮める作用などがあります。
・芍薬(しゃくやく):痛みをとる作用や筋弛緩作用、抗炎症作用などがあります。
・甘草(かんぞう):炎症を抑える作用や各生薬を調和する作用などがあります。
小青竜湯が効く仕組み
漢方医学では、「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3要素が体内をバランス良く巡ることで健康が維持できると考えられています。
気は体や心を動かす生命エネルギー、血は栄養を全身に運ぶ血液、水はリンパ液、汗、涙、だ液など、血液以外の体液をさします。
小青竜湯は、体に余分にたまった「水」によって冷えた体を温めながら、水分代謝を改善する漢方薬です。さらに水の停滞によって妨げられていた「気」の巡りも改善することで、鼻づまりや水っぽい痰・鼻水などの鼻症状を抑えると考えられています。
小青竜湯の効果
小青竜湯を服用すると、以下の効果が期待できます。
水様の鼻水・鼻づまり・くしゃみ
小青竜湯は、風邪のひきはじめに起こる水様性の鼻水やくしゃみ、鼻づまり、痰をともなう咳などに効果があります。[3]
ドロッとした熱をもった鼻水ではなく、サラサラとした水っぽい鼻水に用いることがポイントです。
小青竜湯の含有成分である麻黄にはエフェドリンが含まれているため、鼻粘膜の血管を収縮させて、鼻づまりの症状を抑える効果が期待できます。
さらに、粘膜の血行を改善したり、胃腸での水分代謝を改善したりすることで鼻粘膜の防御機能を高める効果もあると考えられています。[4]
小青竜湯以外で鼻水や鼻づまり、風邪に効く漢方薬が知りたい方は、こちら▼の記事もお読みください。
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎には、花粉の飛散時期にのみ鼻炎症状が現れる「季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)」と、カビやホコリ、ペットなどが原因で時期を問わず鼻炎症状が認められる「通年性アレルギー性鼻炎」があります。
小青竜湯はアレルギー性鼻炎の適応病名をもつ唯一のエキス漢方製製剤で、鼻水・鼻づまり・くしゃみを伴う花粉症や通年性アレルギー性鼻炎の治療に広く用いられています。[4]
偽薬を対照とした多施設共同二重盲検比較試験によると、無作為的に投与した小青竜湯が通年性アレルギー性鼻炎に対して有用であることが報告されています。[5]
花粉症やアレルギー性鼻炎に効く漢方薬について詳しく知りたい方は、こちら▼の記事もお読みください。
気管支喘息・気管支炎
気管支喘息とは、気管が慢性的に炎症を起こし、何らかの刺激が加わった時に発作的に痰や咳が出て、呼吸困難やゼーゼー・ヒューヒューという音をともなう状態(喘鳴:ぜいめい)を引き起こす病気です。
小青竜湯には、抗ヒスタミン作用や抗アレルギー・抗炎症作用が報告されており、気管支喘息や気管支炎の治療にも効果を発揮します。[6]
喘息に効果の期待できる漢方薬について詳しく知りたい方は、こちら▼の記事もお読みください。
漢方薬の服用や選択について気になる点やお悩みがある方は、YOJOの薬剤師にもお気軽にご相談ください。
小青竜湯の飲み方
小青竜湯の服用を検討する際は、飲むタイミングや、自分に向いているかを確認したうえで判断しましょう。
小青竜湯を飲むタイミング
成人の方の場合は1日9.0gを2〜3回に分けて、食前もしくは食間に服用しましょう。服用する際は、コップ1杯程度の水またはぬるま湯で服用してください。[6]
飲み忘れた場合は、2回分を一度に飲まず、気がついたときに1回分飲みましょう。ただし、次の飲む時間が近い場合は、1回飛ばして次の時間に1回分飲む必要があります。
小青竜湯の服用が向いている人
通常の生活をするのに差し障りが無い、体力中等度の人で、喘鳴(ぜいめい)や咳、呼吸困難、鼻症状がある人に向きます。[3]
とくに、以下のような場合に効果が期待できます。
・ 水っぽい鼻水や痰、くしゃみ、鼻づまりともなう場合
・ 体に余分な「水」がたまって、 みぞおち付近をたたくとポチャポチャと音がする(= 心下振水音を認める ) 場合
小青竜湯の類似処方とその違い
小青竜湯と類似処方には異なる特徴があります。漢方薬の服用を検討している人は、以下の処方薬との違いについて確認しておきましょう。
小青竜湯と麻黄湯との違い
麻黄湯(まおうとう)は、体力のある方の風邪のひき始めや初期のインフルエンザに用いられる漢方薬で、体の節々の痛みや発熱、寒気がある方に対してとくに有効です。[1]
一方で、小青竜湯は体力中等度の方の、水っぽい鼻水やくしゃみ、鼻づまりや痰をともなう咳などに対して効果を発揮します。ご自身の気になる症状によって使い分けると良いでしょう。
麻黄湯の効果や服用のポイントについて、さらに詳しく知りたい方は、こちら▼の記事もお読みください。
小青竜湯と越婢加朮湯との違い
越婢加朮(えっぴかじゅつとう)は、小青竜湯の約2倍の麻黄が配合されており、配合成分である石膏(せっこう)・蒼朮(そうじゅつ)によって利水効果も高いとされています。そのため鼻粘膜浮腫による鼻づまりのほか、粘膜や皮膚の炎症を抑えて目・肌のかゆみを緩和する作用もあります。
鼻症状に加え、目・肌のかゆみや腫れ・浮腫が気になる場合は、越婢加朮湯の服用がおすすめです。
小青竜湯と麦門冬湯との違い
麦門冬湯(ばくもんどうとう)は、喉や声帯に潤いを与え、咳やしわがれ声を改善する効果のある漢方薬です。粘っこく切れにくい痰を伴って、時に激しい咳が出て顔面紅潮するような人に向いています。
一方で、小青竜湯は透明でサラサラした水様性の痰が出る人 に向く漢方薬です。
小青竜湯に適した症状をもつ人が、麦門冬湯を服用するとかえって痰の量が増えてしまう場合があるため、注意しましょう。
麦門冬湯の効果や服用のポイントについてさらに詳しく知りたい方は、こちら▼の記事もお読みください。
小青竜湯の副作用や注意点
小青竜湯には、服用する際に知っておくべき副作用・注意点があります。服用前に以下の内容を押さえておきましょう。
小青竜湯の副作用
小青竜湯の服用により、以下の副作用が報告されています。これらは頻度が不明のため発生は稀ですが、気になる異常を感じた場合は、服用を一旦中止し、医療機関を受診してください。
・間質性肺炎
間質性肺炎とは、肺の壁(間質)が炎症や損傷によって硬くなり、厚くなることでガス交換がうまくできなくなる病気です。発熱や咳、息苦しさをともなう呼吸困難、肺音の異常などがあらわれる場合があります。
・偽アルドステロン症
偽アルドステロン症とは、血圧を上昇させるホルモン(アルドステロン)が増加していないにも関わらず、あたかも過剰に分泌されているかのような症状が出る病気です。高血圧やむくみ、低カリウム、けいれん、手足の脱力感などの症状があらわれる場合があります。
・ミオパチー
ミオパチーとは、筋肉が萎縮して力が入らなくなる病気の総称で、四肢のけいれんや脱力感、麻痺などの症状があらわれます。
・肝機能障害
発赤やかゆみ、皮膚・白目が黄色くなる黄疸、褐色尿、全身倦怠感、食欲不振、血液検査でASTやALTγ-GTPなどの著しい上昇などがみられる場合があります。
・その他の副作用
種類 | 症状 |
泌尿器 | 排尿障害など |
消化器 | 食欲不振・嘔吐・悪心・胃部不快感など |
自律神経系 | 動悸・頻脈・精神興奮・不眠・発汗過多・全身脱力感など |
過敏症 | 発赤・発疹・そう痒など |
小青竜湯の注意すべき飲み合わせ
小青竜湯には、他の漢方薬や医薬品との飲み合わせで禁忌はありません。
ただし、小青竜湯には「甘草」が含まれているため、他の漢方薬と併用する場合は「甘草」の量が増えないように、重複に注意しましょう。
とくに以下のような薬と併用すると、偽アルドステロン症やミオパチーが生じやすくなる可能性があるため、注意してください。[6]
・甘草含有製剤
(例)芍薬甘草湯、補中益気湯、抑肝散など
・グリチルリチン酸およびその塩類を含有する製剤
(例)グリチルリチン酸一アンモニウム、グリシン、L-システイン、DL-メチオニン配合錠など
・ループ系利尿剤、チアシド系利尿剤
(例)アゾセミド、トラセミド、フロセミド、トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジドなど
また、小青竜湯には「麻黄」が含まれており、以下のような薬と併用することで、交感神経刺激が増強され、精神興奮・不眠・頻脈・発汗過多・全身脱力感・動悸などが起こる可能性があります。
・麻黄含有製剤
(例)葛根湯、麻黄湯、麻黄附子細辛湯など
・エフェドリン含有製剤
(例)エフェドリン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩など
・モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤
(例)セレギリン塩酸塩、ラサギリンメシル酸塩など
・甲状腺治療薬
(例)チロキシン、リオチロニンなど
・キサンチン系製剤
(例)テオフィリン、ジプロフィリンなど
併用する場合は、減量するなどして慎重に服用する必要があるため、医師や薬剤師に相談しましょう。
小青竜湯の飲み合わせについて詳しく知りたい方は、こちら▼の記事もお読みください。
小青竜湯の服用について注意すべき人
以下に該当する方は、小青竜湯を服用する前にリスク・副作用を把握しておきましょう。 [6]
妊娠中の方は服用は避ける
小青竜湯には発汗作用のある「麻黄」が含まれており、胎盤への血流に悪影響を及ぼす可能性があるため、妊娠中の服用は避けてください。[7]
授乳中の方は慎重に服用する
配合生薬の「麻黄」が、乳汁中へ移行する可能性が考えられます。授乳中の方は、治療上の有益性や母乳栄養を考慮し、継続または中止を検討しなければなりません。主治医の指示に従い、判断しましょう。[7]
こどもや高齢者が服用する際は十分に注意する
こどもが小青竜湯などの漢方薬を服用する際には、体重や年齢、症状に応じて、通常の成人用量の1/4から2/3に量を減らすことが一般的です。 [8]
また、高齢者においては、生理機能の低下により効果が強く現れることがありますので、注意が必要です。小青竜湯を服用する際は、必ず添付文書を確認し、医師の指示に従ってください。
その他の注意が必要な方
以下に該当する方は、小青竜湯における注意事項を知っておきましょう。 [6]
・虚弱体質の方や病後で体力が著しく衰えている方
副作用が起こりやすく、その症状が増強される可能性があります。
・胃腸が著しく弱っている方
食欲不振や悪心・嘔吐、胃部不快感などが起こる場合があります。
・強い発汗のある方
全身脱力感や発汗過多などが起こる場合があります。
・狭心症や心筋梗塞、重度の高血圧症、排尿障害、高度腎機能障害、甲状腺機能亢進症などの病気やその既往歴をもつ方
病気やその症状が悪化する可能性があります。
小青竜湯の市販薬
小青竜湯には市販で購入できる商品もあります。
仕事や家事などで医療機関を受診する時間がない人や、まずは手軽に小青竜湯を試してみたい人は、参考にしてみてください。
ツムラ漢方小青竜湯エキス顆粒
1日2回服用の顆粒タイプ
小青竜湯エキスを有効成分とした、1日2回服用の顆粒剤タイプの漢方商品です。1日量として医療用漢方薬の1/2量の小青竜湯エキスを配合しています。2歳以上の方から服用できます。
分類 | 第2類医薬品 |
---|---|
効能効果 | 体力中等度またはやや虚弱で、うすい水様の痰をともなう咳や鼻水が出るものの次の諸症:気管支炎・気管支喘息・鼻炎・アレルギー性鼻炎・むくみ・感冒・花粉症 |
形状 | 顆粒剤 |
用法・用量 | 1日2回食前または食間に水またはお湯にて服用。 成人(15歳以上):1回1包 15歳未満7歳以上:1回2/3包 7歳未満4歳以上:1回1/2包 4歳未満2歳以上:1回1/3包 |
内容量 | 20包 |
小青竜湯エキス顆粒クラシエ
2歳未満のお子様も服用可能な1日3回服用の顆粒タイプ
小青竜湯エキスを有効成分とした1日3回服用の顆粒剤タイプの漢方商品です。1日量として医療用漢方薬の1/2量の小青竜湯エキスを配合しています。2歳未満のお子様も服用可能です。
分類 | 第2類医薬品 |
---|---|
効能効果 | 体力中等度またはやや虚弱で、うすい水様の痰をともなう咳や鼻水が出るものの次の諸症:気管支炎・気管支喘息・鼻炎・アレルギー性鼻炎・むくみ・感冒・花粉症 |
形状 | 顆粒剤 |
用法・用量 | 1日3回食前または食間に水またはお湯にて服用。 成人(15歳以上):1回1包 15歳未満7歳以上:1回2/3包 7歳未満4歳以上:1回1/2包 4歳未満2歳以上:1回1/3包 2歳未満:1回1/4包 |
内容量 | 24包 |
小青竜湯の服用でよくある質問
これから小青竜湯の服用を検討する方に向けて、小青竜湯に関するよくある質問・回答をご紹介します。
小青竜湯の効果が出るまでどのくらいかかりますか?
小青竜湯の効果が出るまでの期間は、体質や症状によって異なります。用法・用量を守って服用いただき、1ヶ月程度服用しても症状が改善しない場合は、服用を中止し、医師・薬剤師または登録販売者にご相談ください。
小青竜湯を飲むと痩せる効果が期待できますか?
小青竜湯には、肥満症に対する効能効果や体重減少の副作用の報告はなく、痩せる・細くなるといったダイエット効果は期待できないでしょう。
痩せる効果の期待できる漢方薬について詳しく知りたい方は、こちらの記事もお読みください。
小青竜湯で喉の痛みは改善できますか?
小青竜湯は、風邪の初期段階にあらわれるくしゃみや水のような鼻水、痰といった症状に効果があります。一方で、喉の痛みや頭痛には直接的な効果は期待できないでしょう。
用法・用量を守って小青竜湯を服用しよう
小青竜湯は、体力が中等度で、風邪のひきはじめで起こる水っぽい鼻水やくしゃみ、鼻づまりや咳をともなう方が服用する漢方薬です。また、アレルギー性鼻炎や気管支喘息などにも効果が期待できます。小青竜湯を飲む際は、副作用や注意事項を踏まえ、用法用量に沿って服用してください。
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【参考文献】
[1]高山宏世 編著 腹証図解 漢方常用処方解説[改訂版]
[2]公益社団法人東京生薬協会
[3]伊藤美千穂 編著 エビデンス・ベース漢方薬活用ガイド第2版
[4]稲葉博司(2008)局所・全身的な証を考慮したアレルギー性鼻炎の漢方治療
[5]山際 幹和(2008)アレルギー性鼻炎の漢方治療
[6]ツムラ小青竜湯エキス顆粒(医療用)
[7]公益社団法人福岡県薬剤師会 妊婦への投与に注意が必要な漢方薬
[8]株式会社ツムラ 小児の漢方薬服用