【薬剤師監修】肥満症の体質別(便秘やむくみに悩む人)におすすめの漢方薬3選を紹介!

肥満は現代社会で広く見られる健康問題です。適切な食事療法や運動はもちろん重要ですが、漢方薬を取り入れることも効果的な肥満対策の一つとして考えられています。漢方薬は自然由来の成分を組み合わせたものであり、体質や症状に合わせたアプローチが可能です。

この記事では、

・肥満と漢方の関係性

・肥満症に使用される漢方薬

・肥満症の漢方薬を飲む時の注意点

・漢方薬で肥満を改善する効果を最大限に引き出すポイント

について、薬剤師が詳しく解説します。

肥満とは?〜あなたは漢方薬が効くタイプか知ろう〜

お腹の肉をつまんでいる

肥満とは、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積された状態のことです。つまり、体脂肪が過度に増えた状態です。肥満は健康上好ましくないと考えられています。なぜなら、多くの生活習慣病が肥満と関連して発生するからです。

まずは、自身が肥満であるかどうかをチェックしてみましょう。最近では、若い世代でも痩せ思考から過度に痩せている人が増えていると言われています。しかし、極端な痩せは月経不順や不妊などの問題につながる可能性もあるため、まずは客観的に自己判定することが重要です。

肥満の診断基準BMIとは

肥満であるかどうか客観的に判断する基準として、体格指数BMI(Body Mass Index)というものが定められ、BMIが25以上を肥満と判定されます。[1]

BMI=体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}

(例)身長170cm、体重70kgの人の場合
 70÷(1.7×1.7)=24

BMI判定
18.5未満低体重
18.5以上25未満普通体重
25以上肥満

統計的にはBMIが22の時に病気になる確率が最も低いことから、その体重を標準体重(理想体重)と考えられています。

肥満症の定義

日本肥満学会では、肥満の人の中から、医学的に治療が必要な人たちを明確にするために「肥満症」を定めました。
肥満症とは、肥満と判定されたうち(BMI=25以上)肥満に関連する健康障害を合併するか、その合併が予測され医学的に減量を必要とする疾患と定義されています。
また、内臓脂肪型肥満と診断される場合は、健康障害の合併リスクが高いため現在健康障害を伴わない場合でも肥満症と診断されます。

【内臓脂肪型肥満とは】
ウエスト周囲径(男性85cm以上、女性90cm以上)を目安とし内臓脂肪の蓄積が疑われた場合に、CTスキャンでおへその位置で体を輪切りにした時の内臓脂肪面積が100㎠を超えている場合に診断されます。

肥満症と診断された場合、現体重の3%以上の減量を目標に治療が開始されます。3%以上の減量をすると、複数の健康障害が改善されるということがわかっているからです。まずは食事療法、運動療法、行動療法を行った上で薬物治療が導入されます。あくまで食事と運動の見直しが第一であるということが肥満症治療の大事な点でもあります。

内臓脂肪と皮下脂肪の違いは?

脂肪は体内で重要な役割を果たしていますが、その蓄積場所によって健康への影響が異なることがわかっています。特に、内臓脂肪と皮下脂肪は、それぞれ独自の特徴を持ち、健康上のリスクに対して異なる影響を与えるとされています。

内臓脂肪
内臓脂肪は、内臓の周りに蓄積される脂肪のことです。内臓脂肪は、内臓器官(肝臓、腎臓、膵臓など)の周りに存在し、腹部をぽっこりと膨らませることが特徴です。内臓脂肪型肥満では、腹囲が大きくなり、ビール腹やリンゴ型肥満と呼ばれることもあります。男性に多く、年代では男性では40代以上、女性では50代以降に多いです。
内臓脂肪の過剰な蓄積は、脂質代謝異常症や高血糖などの代謝異常や、動脈硬化性心血管疾患や血栓形成との関連も報告されているため注意が必要です。[1]

皮下脂肪
皮下脂肪は、皮下組織に蓄積される脂肪のことで、体の各部位に均等に分布します。皮下脂肪型肥満の見た目の変化としては、お腹、太もも、お尻などの下半身で脂肪が増えることで認識されることが多いため、洋ナシ型肥満と呼ばれることもあります。妊娠・授乳期の蓄えとして女性の方が皮下脂肪が付きやすいです。皮下脂肪は、体温の調節や衝撃吸収の役割を果たすほか、エネルギーの貯蔵場所としても機能します。主に見た目に関係する脂肪が皮下脂肪ですが、増えすぎると、睡眠時無呼吸症候群、関節痛、月経異常などを合併しやすいため適切な量を保つことが大切です。[2]

肥満には漢方薬が効く?

漢方

肥満症に適応のある医療用医薬品として、「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」や「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」などがあり、近年の臨床研究でも減量効果、内臓脂肪の減少などが報告されています。
自分に適した漢方薬を選ぶために、漢方の基本的な考え方をご紹介します。

漢方の基本的な考え方

漢方医学では、病気や不調は全身のバランスが崩れることで引き起こると考えられています。そのため、適切な漢方薬を選ぶには「証」と呼ばれる診断が必要です。この「証」とは、自分の体質やタイプに関連する概念であり、「気・血・水」「陰証(寒証)・陽証(熱証)」「虚証・実証」といった要素を組み合わせて個々のタイプに分類します。

このようなタイプ分けが必要な理由は、漢方薬が同じ病気に対しても個人によって適した処方が異なるからです。言い換えると、「肥満を解消したいから防風通聖散を服用する」といったように、証(タイプ)を無視して漢方薬を使用すると、効果が得られないだけでなく、予期しない副作用が生じる可能性もあるのです。

そのため、自分に合った漢方薬を選ぶ際には、証(タイプ)に基づいた適切な診断が欠かせません。
詳しく自分の体質をチェックしたい方は、YOJOの無料の体質チェックをお試しください。

【陰証と陽証】
「陰・陽」は、病気に対する体の反応の性質を表す概念です。

「陰証」は、体の反応が低下して寒さに支配された状態と考えられています。具体的には寒がりで、顔色が青白いようなタイプが典型的です。

例)寒がりで厚着を好む、温熱刺激を好む、熱い飲み物を好む、体温が低め、薄い色の尿が頻繁に出る、など

「陽証」は、病気に対する体の反応が活発で、熱に支配された状態と考えられています。暑がり、冷たいものをたくさん飲むようなタイプです。熱があって顔が赤くなっているような人が典型的です。

例)暑がりで薄着を好む、寒冷刺激を好む、冷たい飲み物を好んで多飲する、顔面が高潮、体温が高め、尿の色が濃い、など

【虚証と実証】
「虚・実」は普段の体力や、病気に対する抵抗力や反応の程度を表す概念です。

「虚証」は体力がなく、病気に対する抵抗力や反応も弱い状態です。

例)きゃしゃな体格、気力がなく疲れやすい、目の光・声に力がない、下痢しやすい、風邪を引いても症状が激しく現れない、など

「実証」は体力があり、本来は病気に対する抵抗力や反応も強い状態です。

例)がっちりした体格、気力があり疲れにくい、目の光・声に力がある、便秘しやすい、風邪を引いた時に症状が激しく現れる、など

また、「虚証」「実証」のどちらとも言えない中間タイプは「虚実中間証」と呼ばれます。

【気・血・水】
漢方の考え方では、「気・血・水」が体内をバランス良く巡ることで生命活動が維持され、健康が保たれると考えます。この「気・血・水」に異常が生じ、量が不足したり流れが滞ったりすることでさまざまな不調が現れます。

肥満と漢方の関係性

肥満症の治療の基本は、食事療法と運動療法、肥満につながる習慣を改める行動療法ではありますが、漢方薬で代謝を上げたり、便通やむくみを改善することにより減量のサポートを行うことができます。

漢方の考え方では肥満は以下のようなタイプに分類されます。

太鼓腹タイプ

体力がある実証で暑がりな陽証、お腹周りに脂肪がついたタイプです。

水太りタイプ

体力がない虚証で、寒がりな陰証、色白でぽっちゃりしていて、むくみがちな下半身太りに多いタイプです。水の巡りが滞った「水滞(すいたい)」の状態です。

ストレス太りタイプ

体力がある実証で暑がりな陽証、お腹まわりに脂肪がついた太鼓腹タイプで、怒りっぽいタイプです。気の巡りが滞った「気滞(きたい)」の状態です。

ご自身がどの肥満のタイプか詳しく知りたい方は、YOJOの無料の体質チェックをお試しください。

タイプ別肥満症に用いられる漢方薬3選

生薬

それでは、具体的に肥満症の治療に用いられる漢方薬をご紹介します。近年の臨床研究でも減量効果、内臓脂肪の減少などが報告されていて、漢方薬の効果が注目されています。

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)

太鼓腹

防風通聖散は、余分な熱を取るような生薬が多数含まれた漢方薬で、脂肪細胞を活性化して消費エネルギーを高める作用があります。そのため、肥満な方の体脂肪の減少効果、基礎代謝量の増加作用があります。その結果として、インスリン抵抗性改善作用もあります。[3]

服用がおすすめの人
体力がある実証で、お腹に脂肪が多く便秘がちな太鼓腹タイプの肥満の人に向いています。その他にも、高血圧の随伴症状(動機、肩こり、のぼせ)、むくみ、便秘がある人にもおすすめです。

配合生薬
滑石(かっせき)、黄芩(おうごん)、甘草(かんぞう)、桔梗(ききょう)、石膏(せっこう)、白朮(びゃくじゅつ)、大黄(だいおう)、荊芥(けいがい)、さんしし、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、当帰(とうき)、薄荷(はっか)、防風(ぼうふう)、麻黄(まおう)、連翹(れんぎょう)、生姜(しょうきょう)、芒硝(ぼうしょう)

使用上の注意
甘草(かんぞう)が配合されているため、他の漢方薬と併用する時には重複に注意しましょう。偽アルドステロン症が起こることがあり、症状としては低カリウム血症による不整脈、血圧上昇、むくみなどが現れることがあります。
麻黄(まおう)にはエフェドリンが含まれているため、交感神経興奮作用があります。咳止めや気管支拡張剤には似た作用があるため併用には注意しましょう。前立腺肥大の方は尿閉が起こる可能性があるためおすすめできません。
大黄(だいおう)にはアントラキノン系化合物が含まれているため、下痢の副作用が起こることがあります。また、子宮収縮作用があるとの知見もあるので妊婦にはおすすめできません
さんししを含む処方を長期間服用すると腸間膜静脈硬化症が起こることがあります。感受性には個人差が大きく具体的な限度値を示すことができないため、連用する際には定期的に大腸カメラによる検査をすることが勧められています

防風通聖散はYOJOショップでも購入できます▼

YOJOショップの防風通聖散

防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)

ふくらはぎ

防已黄耆湯は、水分代謝に働きかけてむくみを取り、倦怠感を軽くしてくれる薬です。抗肥満作用もあり、肥満症の人に対する臨床研究では、24週間の服用で体重や中性脂肪の減少が認められたと報告されています。[3]

服用がおすすめの人
体力のない虚証で、色白で筋肉が柔らかいようないわゆる水太りタイプの肥満に向いています。その他にも関節痛、むくみの改善に用いられます。

配合生薬
黄耆(おうぎ)、防已(ぼうい)、蒼朮(そうじゅつ)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)

使用上の注意
甘草が配合されているため、他の漢方薬と併用する時には重複に注意しましょう。低カリウム血症による不整脈、血圧上昇、むくみが現れることがあります。

大柴胡湯(だいさいことう)

イライラする女性

大柴胡湯は、柴胡(さいこ)という生薬を主薬とする柴胡剤のひとつで、気の巡りを改善する働きがあり、消化器系に不調がある人に使われる漢方薬です。
高脂血症に対して有効との報告があるため肥満症にも用いられます。[3]

服用がおすすめの人
体力のある実証で、便秘がちなストレス太りタイプの肥満に向いています。その他にも胃腸炎、胃酸過多症、胆石症、胆嚢炎、肝機能障害、黄疸、じんましん、不眠症、神経症などがある人に用いられます。

配合生薬
柴胡(さいこ)、半夏(はんげ)、黄芩(おうごん)、芍薬(しゃくやく)、大棗(たいそう)、枳実(きじつ)、生姜(しょうきょう)、大黄(だいおう)

使用上の注意
大黄(だいおう)にはアントラキノン系化合物が含まれているため、下痢の副作用が起こることがあります。また、子宮収縮作用があるとの知見もあるので妊婦にはおすすめできません

肥満の治療に使われる市販の漢方薬は?

市販薬を販売する薬剤師

病院を受診する時間がない、まずは手軽に試してみたいといった方向けに、ドラッグストアなどで手に入る市販の漢方薬をご紹介します。

ナイシトールZa

ナイシトールZa
引用元:小林製薬HP

お腹まわりの脂肪が気になる人に

防風通聖散エキスを有効成分とした商品です。 内臓脂肪を分解・燃焼し、お腹まわりの脂肪を落とします 。発汗や便通を促すため、肥満や高血圧にともなうむくみ・便秘・肩こりなどの症状にも効果があります。

分類 第2類医薬品
適応する人 体力が充実して、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちな人
形状 錠剤
用法・用量 1回5錠、1日3回
服用対象年齢 15歳以上(15歳未満は服用しないこと)
効能効果 肥満症、高血圧や肥満に伴う動悸・肩こり・のぼせ・むくみ・便秘、蓄膿症(副鼻腔炎)、湿疹・皮ふ炎、ふきでもの(にきび)
内容量 105錠/315錠/420錠

ビスラットアクリアEX

ビスラットアクリアEX
引用元:小林製薬HP

むくみがちな人、体脂肪を減らしたい人に

防己黄耆湯エキスを有効成分とした商品です。 ホルモン変化などで低下した水分代謝を活性化することで水分の排出を促し、むくみや水太りを改善します。 

分類 第2類医薬品
適応する人 体力中等度以下で、疲れやすく、汗のかきやすい傾向がある人
形状 錠剤
用法・用量 1回5錠、1日2回
服用対象年齢 15歳以上(15歳未満は服用しないこと)
効能効果 肥満症(筋肉にしまりのない、いわゆる水ぶとり)、むくみ、肥満に伴う関節の腫れや痛み、多汗症
内容量 70錠/210錠/280錠

コッコアポG錠

コッコアポG錠
引用元:クラシエHP

ストレスが原因で太ってしまう人に

大柴胡湯エキスを有効成分とした商品です。ストレスによるイライラを抑え、さらに脂質代謝を活性化して余分な脂肪を分解・燃焼します。ストレスによる過食でリバウンドをくり返してしまう人におすすめです。

分類 第2類医薬品
適応する人 体力が充実して、脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく、便秘の傾向がある人
形状 錠剤
用法・用量 1日3回食前に服用
成人(15歳以上):1回4錠
15歳未満7歳以上:1回3錠
7歳未満5歳以上:1回2錠
服用対象年齢 5歳以上(5歳未満は服用しないこと)
効能効果 胃炎、常習便秘、高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘、神経症、肥満症
内容量 60錠/312錠

肥満症の漢方薬の注意すべき副作用は?

はてな

漢方薬も医薬品であるため、用量や服用方法が不適切な場合やアレルギー反応が出た場合などに副作用が現れることがあります。主な副作用には、低カリウム血症、むくみ、肝機能障害、胃腸障害、発疹、動悸などが挙げられます。もし服用していて気になる症状がある場合は一旦漢方薬の服用を中止し、すぐに病院を受診しましょう。
以下では、副作用の中でも重篤な副作用をご紹介します。

間質性肺炎
階段を登ったり、少し無理をしたりすると息切れがする・息苦しくなる、空咳が出る、発熱
などが見られ、これらの症状が急に出現したり持続する場合に疑われます。[4]

偽アルドステロン症
漢方薬の構成生薬である甘草(かんぞう)の主成分であるグリチルリチンが原因で起こります。症状としては、手足のだるさ、しびれ、つっぱり感、こわばりなどがみられ、力が抜ける感じ、こむら返り、筋肉痛が現れてだんだんきつくなるのが特徴です。[5]

ミオパチー
甘草(かんぞう)を含む漢方薬を服用することで起こることのある、偽アルドステロン症による低カリウム血症の結果としてミオパチーが起こることがあります。ミオパチーとは筋肉の疾患を総称した言葉で、症状としては脱力感、四肢痙攣・麻痺などの異常がみられます。

腸間膜静脈硬化症
さんししを含む漢方薬を長期間服用(多くは5年以上)することで、大腸の色調異常や潰瘍が起こることがあります。主な症状は、腹痛、下痢、便秘、腹部膨満、悪心・嘔吐で、中には無症状(便潜血陽性を含む)のこともあります。このような症状が現れた場合は、漢方薬の服用を中止しCTや大腸内視鏡の検査を行うことが推奨されます。[6]

肥満症の漢方薬の正しい飲み方

ポイント

漢方薬は食後に服用してもいい?

漢方薬の多くは、食前または食間(食事の前後2時間)に服用するように指示されています。これは、一般的には、空腹時の方が漢方薬成分の吸収が良い、他の医薬品との相互作用が回避できるなどのメリットがあるためと考えられています。
地黄、当帰、石膏、竜骨、牡蛎、麻黄、滑石などの生薬は胃腸に負担をかけるため、胃のむかつきや胃痛が起こる可能性があります。その場合は、食後に服用することで胃腸障害の副作用を軽減することができます。
肥満症に使用される漢方薬の中で、防風通聖散には滑石、石膏、当帰、麻黄が含まれるため、胃腸が弱い人には向いていませんもし服用していて胃腸障害が出たり、副作用が心配な場合は、食後に服用しても良いでしょう。
食前・食間服用と食後服用とで大きな効果の違いはこれまで報告されていません。

漢方薬は長期服用しないと効果が出ない?

慢性疾患に対して処方されたものは、一般的に2週間程度を目安に服用して症状の改善が認められれば、継続して処方されることが多いです。肥満に用いられる漢方薬も、少なくとも2週間は服用しないと効果は出てこないでしょう。
風邪のような急性疾患に対しては、効果発現は早く、半日程で症状が改善されることがあります。

漢方薬が複数処方された場合は?

複数の漢方薬が処方された場合は、同じ生薬が併用する処方の中に重複して配合されていないか確認するようにしましょう。過量になった場合、副作用が現れやすくなります。注意すべき生薬は、甘草(かんぞう)、大黄(だいおう)、麻黄(まおう)、附子(ぶし)です。今回ご紹介した肥満症の漢方薬にはこれらの生薬が含まれているので、他の漢方薬を服用する場合は医師・薬剤師に相談するようにしましょう。

漢方薬で肥満を改善する効果を最大限に引き出すには

ランニングする女性

肥満症を改善するために漢方薬を使用する場合、食事療法と運動療法を併用することが必要です。単独で漢方薬を服用しても肥満は解消されません。肥満解消の目的は単に体重を減らすことだけでなく、減量によって健康障害を予防・改善することです。

以下では食事療法と運動療法についてご紹介します。[1]できる範囲から取り入れてみましょう。

食事療法

食事療法は肥満を解消するためにとても大切な治療の一つです。できることから取り入れてみましょう。

1.摂取エネルギーを消費エネルギーより少なくする
目標とする1日の摂取エネルギー量は、25kcal×目標体重(kg)以下とされています。目標体重は、標準体重(BMI=22となる体重)を目安に定めます。

2.炭水化物、タンパク質、脂質のバランスを考えて食べる
一般的には食事のうち、炭水化物50〜65%、タンパク質13〜20%、脂質20〜30%とすることが勧められています。
また、糖質制限食、脂質制限食は通常のエネルギー制限食より減量効果が大きいことが報告されています。しかし、糖質制限食の短期的な減量効果は報告されているものの、長期的な有効性を示すエビデンスはありません。

3.食物繊維を摂る
食物繊維を十分に摂ることは減量に役立ちます。食物繊維の摂取量が多い人は、体重、収縮期血圧、総コレステロール、LDLコレステロール、トリグリセリドが低いことがわかっています。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、18歳〜64歳は男性21g以上、女性18g以上、65歳以上は男性20g以上、女性17g以上を摂取目標量として定めています。日本人は摂取が不足している人が多いと言われているので、意識して食物繊維を摂る必要があります。
食物繊維が多く含まれる食材としては、ライ麦粉、切り干し大根、ごぼう、きのこ類、干しいちじく、干しプルーン、アボカド、海藻類などが挙げられます。[7]

運動療法

日本の「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」では、運動量を増やすための主要なメッセージとして、「+10(プラステン):今より10分多く体を動かそう」と掲げられています。この10分の運動は、約1000歩に相当します。まずは日常の活動に比べて10分多く歩くことから始めてみましょう。また、長時間座りすぎないように心掛けるだけでも活動量を増やすことができるので、意識して取り組んでみてください。

・運動の種類
肥満症では、エネルギー消費量を増やすことが減量に有効であるため、有酸素運動を中心に行うことが勧められています。有酸素運動とは、ウォーキングやジョギング、水泳などの長時間続けて行う運動のことです。さらには筋力トレーニングを併用すると、筋肉量が減って脂肪が多いタイプの肥満の予防・改善に有効です。

・時間や頻度
1日30分以上行うことが勧められています。短時間の運動を数回に分けて1日の合計が30分でも構いません。
毎日、あるいは週150分以上の頻度が推奨されています。

食事や運動以外にも肥満を解消させるために気を付けたいことはあります。ダイエット全般について詳しく知りたい方は、こちら▼の記事もお読みください。

漢方薬を正しく使って肥満を解消しよう

水を飲む女性

漢方薬は飲むだけで肥満を解消することはできませんが、食事療法、運動療法と組み合わせることによって、肥満症の方の減量に役立ちます。また、漢方薬を選ぶ時には自分の体質や体力によって合うものを選ぶことがとても大切です。

YOJOでは、ご自身に合った漢方薬を選ぶだけでなく、食事や運動についてのアドバイスも受けることが可能です。肥満に悩んでいる方はまずは3分でできる体質チェックから▼さらにLINEでのカウンセリングを経て薬剤師があなたに合った漢方薬を無料でご提案します。

【参考文献】
[1]一般社団法人 日本肥満学会 肥満症治療ガイドライン2022
[2]厚生労働省 e-ヘルスネット皮下脂肪型肥満
[3]エビデンス・ベース漢方薬活用ガイド第2版 伊藤美千穂編著
[4]厚生労働省 重篤副作用マニュアル 間質性肺炎
[5]厚生労働省 重篤副作用マニュアル 偽アルドステロン症
[6]日本漢方生薬製剤協会 漢方薬による腸間膜静脈硬化症
[7]大塚製薬 食品に含まれる食物繊維量一覧