麻黄湯の飲み合わせで禁忌は?9種の医薬品との飲み合わせを詳しく解説

布団にくるまって寝る女性

麻黄湯は風邪やインフルエンザの初期に使用される漢方薬です。体力がある人や新陳代謝の活発な子どもに向いています。

麻黄湯と他の薬を併用する場合は、以下の点に注意が必要です。

麻黄湯は他の薬との飲み合わせで禁忌となる医薬品はありません。

ただし、麻黄湯に含まれる生薬と他の漢方薬に含まれる生薬が重複しないよう注意する必要があります。特に「甘草」と「麻黄」の重複には気を付けましょう。

具体的な漢方薬やロキソニンやカロナールなどとの併用については、以下の記事で薬剤師が詳しく解説いたします。

漢方薬の飲み方や飲み合わせなどについて不安な方はYOJOの薬剤師にご相談ください。

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麻黄湯と他の医薬品の飲み合わせで禁忌はある?

NG

麻黄湯は、他の医薬品との飲み合わせで禁忌とされるものはありませんが、注意が必要な場合があります。他の漢方薬を併用する際は、同じ生薬が重複しないように気を付けましょう。また、一部の医薬品を併用すると、副作用が出やすくなる可能性があるため、注意が必要です。
禁忌とされる薬はありませんが、他の医薬品やサプリメントを使う際は、必ず主治医や薬剤師に相談しましょう。

具体的な注意点については、以下で詳しく説明します。

麻黄湯とは?風邪やインフルエンザに使用される漢方薬

煎じ液と生薬

麻黄湯は、風邪の初期症状やインフルエンザの初期に使われる漢方薬です。乳児の風邪による鼻詰まりにも効果があります。体力がある人に適した漢方薬です。

構成生薬
杏仁(きょうにん)、麻黄(まおう)、桂皮(けいひ)、甘草(かんぞう)

効能・効果 [1]
悪寒、発熱、頭痛、腰痛、自然に汗の出ないものの次の諸症:感冒、インフルエンザ(初期のもの)、関節リウマチ、喘息、乳児の鼻閉塞、哺乳困難

麻黄湯の効果についてはこちら▼の記事で詳しく解説しています。

麻黄湯が向いている人・向いていない人

寒気を感じる女性

麻黄湯は、もともと体が丈夫で体力のある人や新陳代謝が活発な子どもに向いている漢方薬です。また、病気の初期の時に向いています。
具体的には、以下のような症状がある方によく使われます。

  • 悪寒、発熱(汗はかいていない)
  • 頭痛
  • 鼻詰まり
  • 喉の痛み
  • 腰痛
  • 関節痛・筋肉痛
  • 喘息

一方で、麻黄が多く含まれているため、高齢者や心臓病のある方は特に注意が必要です。具体的には、以下の症状がある方は症状が悪化する可能性があるため、麻黄湯の服用は適していません。

  • 病後の衰弱期や著しく体力が落ちている人
  • 著しく胃腸が弱い人(胃痛、胸焼け、吐き気などがある人)
  • 汗を大量にかきやすい人
  • 狭心症、心筋梗塞など循環器系の疾患がある人
  • 排尿障害のある人
  • 重度の高血圧である人
  • 甲状腺機能亢進症の人
  • 高度の腎障害がある人

ご自身の体質や適した漢方薬について知りたい方は、YOJOの薬剤師にご相談ください。

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葛根湯との違いと使い分け方法

考え事をする女性

風邪の初期症状に使われる漢方薬には、麻黄湯以外にも「葛根湯」が有名です。両者とも体力があり胃腸が丈夫な人の風邪の初期症状に用いられる漢方薬ですが、麻黄湯の方が体を温める力が強く、発熱や関節痛など症状が強い場合に適しています。一方、風邪の初期症状でも特に首から肩にかけてのこわばりがある場合は葛根湯の方が適しています。

葛根湯の効果についてはこちら▼の記事で詳しく解説しています。

麻黄湯の飲み合わせの注意点

注意点

麻黄湯には「麻黄」と「甘草」という、生薬が含まれており、これらに注意が必要です。これらの成分が含まれる他の医薬品と併用すると、生薬の量が増え、副作用が起こる可能性が高くなります。併用する場合は、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。

麻黄には有効成分であるエフェドリンが含まれています。このため、以下の医薬品と併用すると、不眠や発汗過多、頻脈、動悸、全身の脱力感、興奮などの症状が出やすくなります。そのため、減量するなど、慎重に服用する必要があります。

  • 麻黄を含む漢方薬(葛根湯、小青竜湯、麻黄附子細辛湯など)
  • エフェドリン類を含む医薬品(エフェドリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩・塩酸プソイドエフェドリンなど)
  • モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤(セレギリン塩酸塩、ラサギリンメシル酸塩 等)
  • 甲状腺製剤(チロキシン、リオチロニン 等)
  • カテコールアミン製剤(アドレナリン、イソプレナリン 等)
  • キサンチン系製剤(テオフィリン、ジプロフィリン 等)

甘草の有効成分はグリチルリチン酸です。これを含む医薬品と併用すると、偽アルドステロン症が発症しやすくなるため、注意が必要です。また、低カリウム血症が原因で、手足に力が入りにくくなる、筋肉痛、痙攣や麻痺といったミオパチーの症状が現れることもあります。

  • 甘草を含む漢方薬(芍薬甘草湯、補中益気湯、六君子湯など)
  • グリチルリチン酸及びその塩類を含有する製剤(グリチルリチン酸一アンモニウム・グリシン・L-システイン、グリチルリチン酸一アンモニウム・グリシン・DL-メチオニン配合錠 など)

麻黄湯の飲み合わせに関するよくある質問

Q&A

ここでは、麻黄湯と他の医薬品の飲み合わせについて詳しく解説しています。

麻黄湯と麦門冬湯の飲み合わせは?

麦門冬湯(ばくもんどうとう)は乾いた咳の症状に使用される漢方薬です。麻黄湯と麦門冬湯には「甘草」という共通の生薬が含まれています。そのため、併用する際にはむくみ、高血圧、低カリウム血症などの副作用が現れないか確認しながら服用する必要があります。自己判断で併用することは避け、医師や薬剤師に相談してから服用するようにしましょう。

麻黄湯と銀翹散の飲み合わせは?

銀翹散(ぎんぎょうさん)は、風邪による喉の痛みに使用される漢方薬です。麻黄湯と銀翹散には共通の生薬である「甘草」が含まれているため、併用するとむくみや高血圧、低カリウム血症などの副作用が出る可能性があります。自己判断での併用は避け、必ず医師や薬剤師に相談してから服用しましょう。

ただし、麻黄湯は寒気を伴う風邪に、銀翹散は寒気はなく発熱が中心で喉の痛みがある風邪に使用されるため、通常はこれらを一緒に使うことはありません。

銀翹散についてはこちら▼の記事でも解説しています。
関連記事:風邪に効く漢方薬の選び方とは?咳のど鼻の症状に合わせた使い分けも解説

麻黄湯と桔梗湯の飲み合わせは?

桔梗湯(ききょうとう)は、喉の痛みや咳、扁桃炎に使用される漢方薬です。麻黄湯と桔梗湯には共通の生薬である「甘草」が含まれているため、併用するとむくみや高血圧、低カリウム血症などの副作用が出る可能性があります。自己判断での併用は避け、必ず医師や薬剤師に相談してから服用しましょう。

麻黄湯と葛根湯の飲み合わせは?

葛根湯(かっこんとう)は、麻黄湯と同じく風邪の初期に使われる漢方薬です。麻黄湯と葛根湯には共通の生薬である「甘草」と「麻黄」が含まれているため、同時に使うとむくみや高血圧、低カリウム血症、興奮、動悸、不眠などの副作用が出ることがあります。そのため、自己判断で併用するのは避け、服用前に必ず医師や薬剤師に相談しましょう。

通常は、葛根湯と麻黄湯を一緒に使うことは少なく、どちらか一方だけを選んで服用するのが一般的です。

麻黄湯と五苓散の飲み合わせは?

五苓散(ごれいさん)は、むくみ、頭痛、めまいなどに使用される漢方薬です。麻黄湯と五苓散には共通の生薬である「桂皮」が含まれているので、生薬の量が増えることにより過敏症のリスクが高まる可能性があります。併用する際には医師や薬剤師に相談してから服用しましょう。

麻黄湯と補中益気湯の飲み合わせは?

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は、胃腸の働きを整えて元気を補う漢方薬です。麻黄湯と補中益気湯には共通の生薬である「甘草」が含まれているため、併用するとむくみや高血圧、低カリウム血症などの副作用が出る可能性があります。自己判断での併用は避け、必ず医師や薬剤師に相談してから服用しましょう。

麻黄湯とカロナールやロキソニン(解熱鎮痛剤)の飲み合わせは?

副作用の点では、特に問題はありません。しかし麻黄湯は、体温を上げてウイルスを排除する体の防御機能を助けることで風邪を治す漢方薬です。そのため、カロナールやロキソニンなどの解熱鎮痛剤で熱を下げてしまうと、麻黄湯の効果が十分に発揮されない可能性があります。副作用の点では特に問題がなくても、自己判断で併用するのは避け、併用する場合は必ず医師や薬剤師に相談しましょう。

麻黄湯とペラック®T錠の飲み合わせは?

ペラック®T錠は市販で販売されている医薬品で、咽頭炎、扁桃炎(のどの痛み、のどのはれ)、口内炎に効果があります。ペラック®T錠には有効成分としてトラネキサム酸、カンゾウ乾燥エキスが含まれています。[2] そのため麻黄湯と一緒に服用すると「甘草」が重複し、むくみや高血圧、低カリウム血症などの副作用が出る可能性があります。自己判断での併用は避け、必ず医師や薬剤師に相談してから服用しましょう。

麻黄湯と抗生物質の飲み合わせは?

副作用の点では、特に問題はありません。しかし、漢方薬は腸内細菌の働きで体に吸収されるため、抗生物質を使うと腸内細菌が変化し、漢方薬の効果が弱くなる可能性があります。そのため、明らかな細菌感染がない場合は、麻黄湯と抗生物質の併用は避ける方が望ましいです。自己判断で併用するのは避け、服用する際は必ず医師や薬剤師に相談しましょう。

麻黄湯を服用する際のポイントや注意点

ポイント

こちらでは麻黄湯のおすすめの飲み方や副作用について解説いたします。

麻黄湯のおすすめの服用方法は?

通常、成人は1日7.5gを2~3回に分けて、食前または食間に服用します。ただし、年齢や体重、症状に応じて量を調整する必要があるため、医師や薬剤師の指示に従ってください。[1]

基本的には、空腹時に白湯で飲むことが推奨されます。理由は、漢方薬の吸収率が高まるからです。特に、麻黄湯には「麻黄」が含まれており、麻黄の有効成分であるエフェドリンは、胃酸のpHによって吸収が変わります。食後に服用すると、麻黄による副作用(胃腸の不調、興奮、動悸、不眠)などが出やすくなることがあるため、空腹時に飲むことで副作用を抑えることが期待できます。[3]

麻黄湯の副作用は?

麻黄湯の副作用は以下のものが報告されています。いずれも頻度不明であるため、発生は稀ですが服用していて気になる症状が現れた際には、服用をすぐに中止し医療機関を受診しましょう。

重大な副作用

偽アルドステロン症: むくみ、血圧上昇、手足のだるさやしびれ、筋肉のつっぱり感やこわばりが現れた場合は、服用を中止しましょう。力が抜ける感じやこむら返り、筋肉痛がひどくなる場合も、早めに医師や薬剤師に相談してください。

ミオパチー、横紋筋融解症: 脱力感、筋力低下、筋肉痛、手足の痙攣・麻痺、赤褐色の尿が見られた場合は、服用を中止し、医師に相談しましょう。

その他の副作用

種類症状
過敏症皮膚のかゆみ、湿疹、皮膚の赤み、など
自律神経系症状不眠、発汗過多、頻脈、動悸、全身脱力感、精神興
奮、など
肝臓の症状肝機能異常(血液検査によるAST、ALTの値の異常)
消化器症状食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、など
泌尿器症状排尿障害など

妊娠中・授乳中でも服用できる?

麻黄湯には「麻黄」が含まれているため、胎盤への血流が低下する可能性があり、妊娠中は原則として服用を避けます[4]

また、授乳中に麻黄湯を服用すると、麻黄の有効成分であるエフェドリンが母乳に移行するため注意が必要です。[5]
授乳中の赤ちゃんに、ほてりや寝付きが悪くなるといった症状が現れることがあるので、服用時には赤ちゃんの様子を慎重に観察する必要があります。必ず主治医の指示に従って服用してください。

麻黄湯に関するよくある質問

疑問

こちらでは麻黄湯に関してよくある質問にお答えしています。

麻黄湯はどのくらいで効果が出ますか?

麻黄湯は即効性のある漢方薬であるため、感冒や鼻かぜに対しては数回の服用で効果を感じられます。感冒や鼻かぜに使用する場合は、5.6回服用しても(その他の症状に使用する場合は1ヶ月くらい)症状が改善しなければ服用を一旦中止し、医師や薬剤師または登録販売者に相談しましょう。[6]

麻黄湯は喉の痛みに効果はありますか?

麻黄湯には、「甘草」が含まれているため抗炎症効果があります。また、「杏仁」が含まれているため、咳を抑える効果が期待でき、咳が和らぐことで喉の痛みも軽減される可能性があります。さらに、喉の痛みに効果がある漢方薬としては、桔梗湯や桔梗石膏もあります。

麻黄湯を服用する際の生活上のアドバイス

麻黄湯は、体を温めて発汗を促し、風邪を治す漢方薬です。服用する際には、体を冷やさずに温めることで、より効果が高まります。以下では、麻黄湯を服用する際のポイントをご紹介します。

体を温め発汗を促す食材を摂る

生姜、にんにく、ネギ、しそなどの体を温め発汗を促す食材がおすすめです。

おすすめのメニュー

・生姜、ネギをたっぷりと入れたお粥やスープ

・鶏肉や卵、生姜、にんにく、ネギを入れたおじや

など

厚着をして温かい飲み物を飲んで体を温める

寒気やくしゃみ、鼻水が出て風邪かなと感じたときに麻黄湯を服用した場合は、普段より1枚多く服を着て、温かい飲み物を飲み、体を温めましょう。そうすることで、麻黄湯の体を温める効果がより発揮されます。

麻黄湯の飲み合わせに注意して正しく服用しよう

熱がある女性

麻黄湯は、「甘草」や「麻黄」など、飲み合わせに注意が必要な生薬が含まれている漢方薬です。他の医薬品を服用する際には、成分が重複していないか確認してから使用する必要があります。また、麻黄湯は飲むタイミングも重要で、風邪やインフルエンザの初期症状に服用することが効果的です。

YOJOでは、体質や症状に合った漢方薬の選び方について、薬剤師からアドバイスが受けられます。なかなか改善されない不調に悩んでいる方は、YOJOの薬剤師に相談するのも良いでしょう。

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【参考文献】

[1]ツムラ麻黄湯エキス顆粒(医療用)添付文書
[2]第一三共ヘルスケア ペラック®T錠添付文書
[3]渡辺賢治著 マトリックスでわかる!漢方薬使い分けの極意
[4]公益社団法人福岡県薬剤師会 妊婦への投与に注意が必要な漢方薬
[5]株式会社ツムラ 小児の漢方薬服用
[6]日本漢方生薬製剤協会 麻黄湯の確認票