五苓散の飲み合わせで禁忌のものは?他薬との併用やおすすめの飲み方も解説

二日酔いの女性

五苓散は、体内の水分バランスを整える漢方薬です水滞(水毒)によるむくみ、頭痛、めまい、嘔吐、下痢、二日酔いなどの症状に効果が期待できます。

五苓散と他の薬を併用する場合は、以下の点に注意が必要です。

・五苓散は他の薬との飲み合わせで禁忌となる医薬品はありません。

・ただし、五苓散に含まれる生薬と他の漢方薬に含まれる生薬が重複しないよう注意する必要があります。

・五苓散の副作用は比較的少ないですが、過敏症や肝機能異常などの副作用がまれに報告されています。

具体的には、五苓散の構成生薬である「沢瀉(たくしゃ)、猪苓(ちょれい)、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、桂皮(けいひ)」が重複していないか確認しましょう。

これらの生薬が含まれている漢方薬には具体的に何があるのでしょうか。他の漢方薬との飲み合わせや五苓散についてのよくある質問などを、以下の項目で薬剤師が詳しく解説していきます。

むくみ、雨の日に起こる頭痛やめまい、嘔吐、下痢、二日酔いなどでお悩みの人はぜひ一度YOJOの薬剤師にご相談ください。

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五苓散の飲み合わせで禁忌のものはある?

☓のプラカードを持つ女性

五苓散との組み合わせで禁忌とされる医薬品は存在しません。また、五苓散には特に副作用が起きやすいとされる生薬である「甘草・麻黄・大黄・附子」などの生薬は含まれておらず、比較的安全に服用できる漢方薬の一つです。

ただし、他の漢方薬と併用する場合は、生薬の重複を避けるように注意する必要があります。

五苓散とは?むくみ、頭痛、めまいに使用される漢方薬

足のむくみ

五苓散は、体内の水分の不均衡を調整し、むくみ、頭痛、めまいなどの症状を改善する漢方薬です。これは、漢方医学の観点から、体内の水分のバランスを整え、水滞や水毒といった体質を改善する働きがあります。一般的な利尿薬とは異なり、脱水状態にある時は水分を体内にとどめ、過剰の時は体外に排出する働きがあり「利水剤」とも呼ばれています。

配合生薬
沢瀉(たくしゃ)、猪苓(ちょれい)、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、桂皮(けいひ)

服用がおすすめの人
体力の有無に関わらずどんな体質の人にも用いられます。口の渇きがあり、尿量が少ない場合に適しています。むくみ、頭痛、めまい、二日酔い、急性胃腸炎、下痢、悪心・嘔吐、暑気あたり、糖尿病に伴う脱水などの症状に対して効果があります。

五苓散の飲み合わせの注意点(併用注意のもの)

漢方薬

五苓散との飲み合わせの注意事項として、他の漢方薬との併用において生薬の重複を確認することが挙げられます。五苓散の成分である「沢瀉」「猪苓」「白朮または蒼朮」「茯苓」「桂皮」が他の漢方薬にも含まれていないか確認しましょう。これらの成分が重複すると、過敏症や肝機能異常のリスクが高まる可能性があります。

一方、西洋薬との飲み合わせに関しては特別な注意事項はありません。ただし、五苓散を他の薬と併用する場合には、念のため主治医や薬剤師に相談することをおすすめします。

五苓散の飲み合わせに関してよくある質問

よくある質問

こちらでは、五苓散と他の医薬品との飲み合わせについてお答えいたします。

五苓散と解熱鎮痛薬・頭痛薬(ロキソニン、カロナール)の飲み合わせは?

五苓散とロキソニン、カロナールなどの解熱鎮痛薬を同時に服用しても、飲み合わせは問題ありません。実際、五苓散には「頭痛」の症状に対する効果もあるため、頭痛時にロキソニンやカロナールなどを併用することがあるでしょう。五苓散は体内の水分の不均衡を調整する効果があり、そのため低気圧頭痛や片頭痛、生理前の頭痛などにも役立つことがあります。

五苓散と利尿剤の飲み合わせは?

五苓散と利尿剤を一緒に服用しても、通常は問題ありません。五苓散は「利水剤」として知られており、体内の水分バランスを調整する作用があります。一方、西洋薬の利尿剤は、腎臓の尿細管に作用して尿量を増加させるため、体内の水分が不足しやすくなります。しかし、五苓散は体内の水分バランスを整え、脱水症状を防ぐ役割を果たします。そのため、通常は両者を一緒に服用しても過度な脱水のリスクは低いです。
ただし、ネフローゼや心臓疾患などで利尿剤を服用している場合は、自己判断せずに必ず主治医や薬剤師に相談することをお勧めします。

五苓散と麻黄湯の飲み合わせは?

麻黄湯(まおうとう)は風邪の初期症状に使用される漢方薬で、悪寒や高熱が強い場合に選択されます。しかし、麻黄湯と五苓散の中には「桂皮」という共通の生薬が含まれているため、両者を同時に服用すると、過敏症の副作用のリスクが高まる可能性があるため注意が必要です。併用する場合は、医師、薬剤師、または登録販売者に相談してください。

五苓散と抑肝散の飲み合わせは?

抑肝散(よくかんさん)は神経の高ぶりを抑制する漢方薬で、子供の夜泣きや大人の神経症状の緩和に使用されます。しかし、抑肝散と五苓散の成分には「蒼朮または白朮」という共通の生薬が含まれているため、両者を同時に服用すると、尿量の増加などの効果が強化される可能性があるほか、過敏症の発生が考えられるため注意が必要です。併用する場合は、医師、薬剤師、または登録販売者に相談してください。

五苓散と加味逍遙散の飲み合わせは?

加味逍遙散(かみしょうようさん)は女性の不定愁訴と呼ばれるさまざまな心身の不調に対処するために用いられる漢方薬です。しかし、加味逍遙散と五苓散の成分には「茯苓」や「蒼朮または白朮」といった共通の生薬が含まれているため、これらを同時に服用すると尿量の増加などの効果が強化される可能性があるほか、過敏症の発生が考えられるため注意が必要です。併用する場合は、医師、薬剤師、または登録販売者に相談してください。

五苓散と猪苓湯の飲み合わせは?

猪苓湯(ちょれいとう)は排尿トラブルに対処する漢方薬で、主に利水作用を持つ生薬で構成されています。猪苓湯と五苓散では「猪苓」と「茯苓」などの生薬が重複しています。そのため、猪苓湯と五苓散を同時に服用すると、尿量の増加などの効果が強化される可能性や過敏症のリスクが高まる可能性があります。併用する場合は、医師、薬剤師、または登録販売者に相談してください。

五苓散と桂枝茯苓丸の飲み合わせは?

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は女性三大処方の一つで、頭痛、肩こり、月経異常、更年期障害などの症状に対処する漢方薬の一つです。桂枝茯苓丸と五苓散の中には「茯苓」が共通の生薬として含まれているため、これらを同時に服用すると尿量の増加などの効果が強化される可能性や過敏症の発生が考えられます。併用する場合は、医師、薬剤師、または登録販売者に相談してください。

五苓散と当帰芍薬散の飲み合わせは?

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は女性の冷え性や婦人科系の不調を改善する漢方薬で、女性三大処方の一つです。当帰芍薬散と五苓散の中には「沢瀉」「蒼朮または白朮」「茯苓」といった共通の生薬が含まれています。したがって、これらを同時に服用すると尿量の増加などの効果が強化される可能性や過敏症の発生が考えられます。併用する場合は、医師、薬剤師、または登録販売者に相談してください。

五苓散と小青竜湯の飲み合わせは?

小青竜湯(しょうせいりゅうとう)はサラサラとした水のような鼻水やアレルギー性鼻炎などに対処する漢方薬です。小青竜湯と五苓散の中には「桂皮」という共通の生薬が含まれています。したがって、これらを同時に服用すると、過敏症による湿疹が発生する可能性が考えられます。併用する場合は、医師、薬剤師、または登録販売者に相談してください。

五苓散と八味地黄丸の飲み合わせは?

八味地黄丸(はちみじおうがん)は加齢に伴う冷え症状、疲労、頻尿、前立腺肥大、腰痛などに効果がある漢方薬です。八味地黄丸と五苓散の中には「沢瀉」「茯苓」「桂皮」といった共通の生薬が含まれています。そのため、これらを同時に服用すると尿量の増加などの効果が強化される可能性や、過敏症による湿疹が現れるかもしれません。併用する場合は、医師、薬剤師、または登録販売者に相談してください。

五苓散と加味帰脾湯の飲み合わせは?

加味帰脾湯(かみきひとう)は貧血、不眠、精神不安などの症状の改善に使用される漢方薬です。加味帰脾湯と五苓散には「蒼朮または白朮」「茯苓」という共通の生薬が含まれています。したがって、これらを同時に服用すると尿量の増加などの効果が強化される可能性や過敏症の発生が考えられます。併用する場合は、医師、薬剤師、または登録販売者に相談してください。

五苓散と釣藤散の飲み合わせは?

釣藤散(ちょうとうさん)は慢性的に続く中年以降の頭痛やめまいなどに効果がある漢方薬です。釣藤散と五苓散には、「茯苓」が共通して含まれているため、これらを同時に服用すると尿量の増加などの効果が強化される可能性や過敏症の発生が考えられます。併用する場合は、医師、薬剤師、または登録販売者に相談してください

五苓散と葛根湯の飲み合わせは?

葛根湯(かっこんとう)は風邪の初期症状や肩こり、乳腺炎などに使用される漢方薬です。葛根湯と五苓散には「桂皮」が含まれているため、同時に服用すると過敏症による湿疹が発生する可能性があることに注意が必要です。併用する場合は、医師、薬剤師、または登録販売者に相談してください。

五苓散と半夏白朮天麻湯の飲み合わせは?

半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)は、冷え性で胃腸が弱い人のめまいや頭痛に用いられる漢方薬です。この漢方薬と五苓散には「蒼朮または白朮」「茯苓」「沢瀉」などが含まれており、これらの生薬が重複するため、同時に服用すると尿量の増加などの効果が増強される可能性があります。併用する際は、医師、薬剤師、または登録販売者に相談してください。

五苓散と苓桂朮甘湯の飲み合わせは?

苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)はめまい、ふらつき、動悸、ノイローゼなどの神経症状に用いられる漢方薬です。この漢方薬と五苓散には、「茯苓」「桂皮」「蒼朮または白朮」などの共通の生薬が含まれているため、同時に服用すると尿量の増加などの効果が増強される可能性や、過敏症による湿疹が現れる可能性が考えられます。併用する場合は、医師、薬剤師、または登録販売者に相談してください。

苓桂朮甘湯の関連記事はこちら▼
関連記事:めまいに効く漢方薬は?漢方体質別に紹介!市販薬も解説

五苓散と補中益気湯の飲み合わせは?

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は胃腸の働きを整えて元気を補う漢方薬で、全身の倦怠感、風邪、夏やせなどに効果があります。補中益気湯と五苓散には「蒼朮または白朮」などの共通の生薬が含まれています。したがって、これらを同時に服用すると、尿量の増加などの効果が強化される可能性や、過敏症による湿疹が現れる可能性が考えられます。併用する際は、医師、薬剤師、または登録販売者に相談してください。

YOJOでは、あなたに合った漢方薬のご提案だけでなく今飲んでいるお薬との飲み合わせや健康上のアドバイスも行っています。お気軽にご相談ください。

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五苓散を飲む時の注意点

注意点

ここでは、五苓散の適切な服用方法や、妊娠中や授乳中の服用の可否、子どもに対する服用などについてご紹介します。

五苓散のおすすめの飲み方(タイミング・温めて服用)

五苓散は通常、温かいお湯で溶かして服用するのが効果的です。この方法は、吸収率を高めるだけでなく、五苓散の効力を最大限に引き出すのに役立ちます。五苓散の働きが関連する「水毒(すいどく)」という体内の状態は、冷えることで悪化する傾向があるため、温かい服用が重要です。お湯で溶かすことにより、漢方薬の香りや味が際立ち、薬効も向上します。[1]
ただし、吐き気が強い場合、冷たい水で服用する方が効果的なこともあります。
五苓散を服用するタイミングとしては、基本的には空腹時の食間(食事と食事の間の時間帯で、食後2時間以上経過した空腹時)がおすすめです。ただし、片頭痛や二日酔いなどの特定の症状が出た場合は、症状が現れたら直ちに服用することもあります。

五苓散の副作用は?

五苓散は、一般的に副作用が少ないとされています。それは、特に注意すべき生薬(甘草、麻黄、大黄、附子など)が含まれていないためです。しかし、まれに過敏症状(発疹、皮膚の発赤、かゆみなど)や肝臓の異常(AST、ALT、γ‐GTPの上昇)が報告されています。
五苓散を服用する際、皮膚のかゆみや湿疹などの異常な症状が現れた場合、直ちに服用を中止し、医師に相談することが大切です。

妊娠中・授乳中は服用してもよい?

五苓散には、妊娠中に慎重に使用しなければならない生薬は含まれていません。そのため、この漢方薬は妊娠中でも医師の指示に従って安全に使用できます。実際、妊娠中のむくみ、つわり、水溶性下痢などの症状に対して五苓散が処方されることがあります。ただし、妊娠の週数による薬の影響や個人の状態により異なるので、自己判断せず、必ず主治医の指示に従って服用してください。
授乳中でも五苓散の服用には特に問題はありません。ただし、母乳への移行が気になる場合、授乳直後に薬を服用することをおすすめします。

子どもは服用してもよい?

医師の指示に従い、子どもでも五苓散を服用できます。五苓散は、乳幼児から処方されることがあり、特に急性胃腸炎に伴う嘔吐や下痢の症状に対処する際に使用されます。また、五苓散は粉薬として処方されることが一般的ですが、まだ粉薬を摂取できない年齢の子供の場合、五苓散の座薬が利用できることもあります。
市販の五苓散も存在し、中には2歳以上の子供向けに適した商品もあります。ただし、市販品を使用する際には、商品に記載されている対象年齢を必ず確認してください。
子どもに漢方薬を飲ませるコツについてはこちら▼の記事で詳しく解説しています。

漢方薬の正しい飲み方は?上手に飲むコツや飲むときの注意点も解説

シナモンアレルギーの人は過敏症を起こす可能性も

五苓散には「桂皮(けいひ)」が含まれています。桂皮は、クスノキ科のカシアという植物から得られる樹皮または周皮を乾燥させたもので、これが五苓散に使われます。 一方、お菓子や料理で使われるシナモンも、同じくクスノキ科の植物が原料として使用されています。したがって、シナモンアレルギーのある方が五苓散を服用すると、過敏症のために湿疹や皮膚のかゆみが現れる可能性があるため、注意が必要です。

五苓散に関するQ&A

Q&A

こちらでは、五苓散に関するよくある質問にお答えします。

五苓散は効果が出るまでどのくらいかかる?

五苓散は漢方薬の中でも比較的即効性があり、服用後30分から1日で効果を感じることがあるとされています。具体的な症状によりますが、めまいの症状の場合、1日から7日の間に効果が見られることが一般的です。[2]

小児の吐き気に対しても以下のエビデンスがあります。

「嘔吐を主訴に来院した小児34例に二重盲検法で五苓散座薬と補中益気湯座薬を投与し、30分後に水分を与え、吐き気・嘔吐の有無により有効性を判定した。その結果、五苓散座薬16例では有効12例(75%)、補中益気湯座薬18例では有効5例(28%)であり、両群間には有意差(p<0.05)があった。」吉田政己 他,和漢医薬誌,1990,7,506-507.[3]

また、むくみに関しても以下の臨床系のエビデンスがあります。

「妊娠浮腫15例に対し4週間以上五苓散を投与した結果、非投与18例に比較して、投与開始後約2週間の体重増加が有意に減少した。投与2週間後において、浮腫は消失と軽快を合わせて12例(80%)であった。」槇本深 他,漢方の臨,2008,55,1003-1011[3]

五苓散は毎日、長期間飲んでも大丈夫?

五苓散は副作用の起こりにくい漢方薬であるため、症状や体質によっては医師の指示のもと長期間服用することもあります。ただし、1ヶ月位(急性胃腸炎、二日酔いに使用する場合は5〜6回の服用、水様性下痢、暑気あたりに使用する場合は5〜6日間)服用しても症状が良くならない場合は服用を中止し、医師や薬剤師または登録販売者に相談しましょう。[4]

処方される五苓散と市販の五苓散の違いは?

医療機関で処方される医療用漢方薬と市販の漢方薬には、含有成分の量に違いがあります。通常、市販の漢方薬は医療用漢方薬の1/2量や2/3量の成分が含まれています。一部の市販漢方薬は医療用漢方薬と同じ量を含んでいる「満量処方」のものもあります。さらに、医療用漢方薬と市販薬では効能や効果が異なることもあります。市販の漢方薬を購入する際には、製品パッケージに記載された情報を確認することが大切です。

五苓散は水毒に効く薬ですか?

漢方医学によれば、体内のバランスである「気・血・水」の流れが乱れると、さまざまな不調が生じると考えられています。その中で、水の流れが滞り、バランスが崩れる状態を「水毒(すいどく)」または「水滞(すいたい)」と呼びます。五苓散はこの水毒を改善する効果があり、体内の水のバランスを整えてくれます。そのため、むくみ、頭痛、めまい、嘔吐、下痢など、水毒に関連する症状を緩和するのに役立つ漢方薬と言えます。

五苓散はしぶり腹に効きますか?

五苓散はしぶり腹には効果が期待できない漢方薬です。しぶり腹とは、便意はあるのに排便はない、または便意はあっても少量しか便が出ないのに頻回に便意を催す症状で、この症状の原因として直腸の炎症が関与することが考えられます。五苓散には炎症を抑える効果がないため、しぶり腹の改善には適していません。むしろ、しぶり腹の際には五苓散を服用しない方が良いとされています。
しぶり腹の症状には、「桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)」などが使用されます。詳しくはこちら▼の記事で解説しています。

便秘におすすめの漢方薬とは?選び方や市販薬についても解説

五苓散はうつ病や自律神経の不調に効きますか?

うつ病や自律神経失調症に伴う消化器症状(吐き気、下痢など)は、精神的な要因によるものがあります。このような場合の吐き気や下痢などの症状にも五苓散は効果が期待できます。五苓散に含まれる成分の一つである「茯苓(ぶくりょう)」には、精神を安定させる効果と同時に消化器症状の改善に寄与する可能性があります。

うつ病に対する漢方薬や自律神経の不調に関する漢方薬についての詳しい解説はこちら▼の記事をお読みください。

うつ・気分の落ち込みに使用される漢方薬とは

五苓散は雨の日の不調に効く薬ですか?

低気圧の影響で頭痛が起こることを「低気圧頭痛」または「気象病」と呼びます。雨の日など低気圧の時に頭痛が起こる人は、体内の水分バランスに問題がある「水毒」体質であることが多いと言われています。五苓散は、「水毒」体質を改善する漢方薬であり、雨の日に起こる頭痛やめまいなどの症状に対して効果が期待できます。
頭痛の診療ガイドライン2021にも、五苓散が低気圧頭痛に対して頓服薬として使用できることが記載されています。[5]

低気圧頭痛に用いる漢方薬については、こちら▼の記事で詳しく解説しています。

低気圧頭痛に漢方は効くの?体質や不調に合った

五苓散はダイエットにも効きますか?

五苓散はダイエットに直接的な効果はありません。ただし、むくみがある人が五苓散を服用することで、体内の水分バランスが改善され、その結果、むくみが軽減されることがあります。これにより、見た目や体重に一時的な変化が現れる可能性があります。しかし、五苓散そのものが体重を減らすための特別なダイエット薬ではないことを覚えておいてください。

ダイエットに関する漢方薬については、こちら▼で詳しく解説しています。

漢方はダイエットに効果的?おすすめ漢方薬や体質別の選び方を紹介

五苓散はどんな時に使われる?

五苓散は具体的にはどのような症状の時に使用されるのでしょうか。症状別に詳しく解説いたします。

むくみ(浮腫)

むくみ(浮腫)に関して、五苓散は漢方薬として「水毒」体質を改善し、体内の水分の分布や代謝異常を調整する効果があります。そのため、全身や特に足や顔などの限定的なむくみなど、さまざまなむくみに対して有効です。
五苓散は通常の利尿薬とは異なり、体内の水分を調整する特性があります。つまり、体が必要とするときに水分を保持し、逆に過剰な水分を排出する役割を果たします。このため、通常の利尿薬を使用する際に生じる口の渇きや脱水といった副作用が出にくい特長があります。

頭痛

五苓散は片頭痛や天気が悪いと頭痛が起こる低気圧頭痛にも効果があります。片頭痛の場合、トリプタン系などの一部の西洋薬を使うと、吐き気やむかつきなどの副作用が出ることがあります。このような副作用に悩んでいる人には、体質に合わせて五苓散や呉茱萸湯などの漢方薬も選択肢として検討できます。
さらに、五苓散の薬価はトリプタン系の薬の約1/20(頓服の場合)ほど低いため、費用面でも負担が軽減されます。

以下のようなエビデンスもあります。

頭痛を主訴とした外来患者のうち、東洋医学的診断で五苓散証(五苓散が合う体質)と判断した15例において、五苓散を2週間以上投与して自覚症状の変化を観察したところ、15例中13例(86.7%)が有効以上、2例が無効だったという報告があります。有効例では、長期間連用していた鎮痛剤などの使用頻度が減った例も多かったとのことです。[6]

嘔吐・下痢

下痢の症状の中で、特に感染性胃腸炎によるもので、腹痛が軽度であるか腹痛を伴わない場合、さらに嘔吐がある場合、五苓散が適している可能性があります。これは大人だけでなく、小児の発熱と一緒に起こる下痢の症状にも効果が期待できます。

二日酔い(お酒を飲みすぎた時)

五苓散は二日酔いによる頭痛や吐き気などの症状に対して効果があります。お酒を飲みすぎると、アルコールの利尿作用により、体は水分を失いがちです。しかし、二日酔いの際には体が脱水状態にも関わらず体にまだ水が残っている感じがして、不快なむくみや吐き気が発生することがあります。これは、体内の水分バランスが乱れている状態です。
五苓散は体の水分バランスを調整し、尿量を増やす作用があるため、頭痛や吐き気などの症状を緩和するのに役立ちます。

暑気あたり(夏バテ)

夏の熱さによる体調不良、つまり夏バテに対処する漢方薬として、清暑益気湯(せいしょえっきとう)や補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などが一般的です。しかし、五苓散も夏バテの症状に効果的な漢方薬の一つです。五苓散が有効なのは、水を飲んでも喉が渇く、尿の量が少ない、頭痛、めまい、むくみ、下痢、嘔吐などの夏バテの症状がある場合です。

起立性低血圧

起立性低血圧とは、急に立ち上がったり立ち上がった時に血圧が低下し、立ちくらみを起こすことです。五苓散と起立性低血圧に関する臨床試験で有効性が確認されています。「糖尿病患者の起立性低血圧に対する効果を無作為化比較試験で検証したところ、五苓散投与群では、立ちくらみの自覚症状は10例中9例で改善を認めました。一方、プラセボ群では10例全員で変化はなかったとのことです。」中村宏志 他,Diabetes Fronti.,200,11,561-563 [4]

乗り物酔い

乗り物酔いに対しても、五苓散は効果的です。 乗り物酔いしやすい人は通常、体内の水分バランスに問題がある「水毒(水滞)」体質のことが多いです。そのため、五苓散を乗り物に乗る前に服用すると、水分の調整が助けられ、乗り物酔いを予防するのに役立ちます。また、乗り物に酔ってから服用しても、効果は期待できます。

口の渇き・口腔乾燥症

口の渇きや口腔乾燥症に関して、五苓散は口内の水分バランスが乱れた状態に効果があります。特に、舌が歯型でくぼんでいるようにむくんでいる人に対して有効とされています。
五苓散は体内の水分バランスを正常に戻す作用を持っており、口の渇きが体内の水分バランスの乱れに起因する場合に効果が期待できます。[7]

五苓散は水毒体質に伴うさまざまな不調に対して効果があります。むくみ、低気圧時の頭痛、乗り物酔いしやすいなどでお悩みの方がぜひ一度YOJOの薬剤師にご相談ください。

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五苓散のおすすめの市販薬

病院へ行く時間がない方や、まずは気軽に市販薬を試してみたい方向けに、薬局やドラッグストアで購入できる麦門冬湯の市販薬をご紹介します。

ツムラ漢方五苓散料エキス顆粒A

引用元:ツムラHP

むくみ、頭痛、二日酔いなどに

五苓散エキスを有効成分とした商品です。1日量として医療用漢方薬の1/2量の五苓散エキスを配合しています。1日2回服用の顆粒タイプです。2歳以上から服用できます。

分類 第2類医薬品
適応する人 体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う人
形状 顆粒剤
用法・用量 1日2回食前に水又はお湯にて服用してください。
成人(15歳以上):1回1包
7歳以上15歳未満:1回2/3包
4歳以上7歳未満:1回1/2包
2歳以上4歳未満:1回1/3包
服用対象年齢 2歳以上(2歳未満は服用しないこと)
効能効果 水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔
内容量 10包/48包

「クラシエ」漢方五苓散料エキス顆粒

引用元:クラシエHP

のどが渇き、尿量が少ない方のむくみ、頭痛などに

五苓散エキスを有効成分とした商品です。1日量として医療用漢方薬の1/2量の五苓散エキスを配合しています。1日3回服用の顆粒タイプです。生後3ヶ月以上から服用できます。

分類 第2類医薬品
適応する人 体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う人
形状 顆粒剤
用法・用量 1日3回食前に水又はお湯にて服用してください。
成人(15歳以上):1回1包
7歳以上15歳未満:1回2/3包
4歳以上7歳未満:1回1/2包
2歳以上4歳未満:1回1/3包
2歳未満:1回1/4包
服用対象年齢 生後3ヶ月以上(生後3ヶ月未満は服用しないこと、1歳未満は受診優先)
効能効果 水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔
内容量 45包

テイラック

引用元:小林製薬HP

低気圧による複数の不調に/五苓散の満量処方

五苓散エキスを有効成分とした商品です。医療用漢方薬と同量の有効成分を含んだ「満量処方」です。飲みやすい錠剤タイプで、持ち運びやすい個包装タイプです。5歳以上から服用できます。

分類 第2類医薬品
適応する人 体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う人
形状 錠剤
用法・用量 1日3回食前又は食間に水又はお湯にて服用してください。
成人(15歳以上):1回4錠
5歳以上15歳未満:1回2錠
服用対象年齢 5歳以上(5歳未満は服用しないこと)
効能効果 水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔
内容量 24錠/48錠

キアガード

引用元:ロート製薬HP

蒼朮(そうじゅつ)を使用した「満量処方」タイプ

五苓散エキスを有効成分とした商品です。五苓散の構成生薬である「朮(じゅつ)」のうち、「蒼朮(そうじゅつ)」を使用しています。1日3回服用の錠剤タイプです。5歳以上から服用できます。

分類 第2類医薬品
適応する人 体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う人
形状 錠剤
用法・用量 1日3回食前又は食間に水又はお湯にて服用してください。
成人(15歳以上):1回4錠
5歳以上15歳未満:1回2錠
服用対象年齢 5歳以上(5歳未満は服用しないこと)
効能効果 水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔
内容量 24錠

五苓散を服用する際の生活上のアドバイス

白衣の女性

五苓散の効果を高めるために、気を付けたい生活習慣やおすすめの食材などをご紹介します。

水滞(水毒)を改善する食材を摂る

サラダ

水分代謝を助ける食材を摂る:水滞(水毒)は体内の水分代謝が乱れた状態を指します。この状態を改善するために、利尿作用のある食材を摂ることが重要です。不要な水分を排出することで体内の水分バランスが整います。

利尿作用のある食材
しょうが、ハトムギ、小豆、なす、きゅうり、トマト、レタス、とうがん、とうもろこし、ぶどう、すいか、あさり、烏龍茶、紅茶、など

胃腸の働きをサポートする食材を選ぶ:五苓散の効果を高めるために、胃腸の働きを良くする食材を摂ることも大切です。胃腸の働きを促進する食材を組み合わせることで、水分代謝が改善されます。

気を巡らせる食材
薬味類、柑橘系の果物、スパイス類、ジャスミン茶など

過剰な水分摂取を控える

温かい飲み物

喉が渇いた時には、急いで大量の水を飲むのではなく、口を湿らせるようにして、一口ずつゆっくりと水を飲むようにしましょう。過剰な水分摂取は水滞(水毒)を悪化させる可能性があるため、適切な水分補給が大切です。また、胃腸が冷えると消化機能が低下し水分代謝が悪化する可能性があるため、できるだけ温かい飲み物を選びましょう。

体を冷やさないようにする

湯船につかる女性のイラスト

水滞(水毒)体質の人は通常冷え性の傾向があり、冷えることでむくみが悪化することがあります。体を冷やさないように心がけましょう。温かい飲食物を摂り、お風呂では湯船に浸かるなどして体温を保つことが大切です。

【参考文献】
[1]漢方スクエア 五苓散
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